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「残さない」はデザインできる。ビュッフェにおけるゼロ・ウェイスト戦略

2026 5/22
Regenerative tourism
Sustainable Tourism ゼロ・ウェイスト ニュース Corporate Case Study Case Studies from Various Countries Sustainable Tourism 食品ロス
2026-5-27
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サラダ、フルーツ、パンにデザート。朝の日差しが差し込む部屋で、彩り豊かな料理が並ぶ光景はビュッフェならではの醍醐味です。ホテルに泊まる楽しみとして、朝食を挙げる人も少なくないでしょう。しかし、その裏側では、並べられた料理の多くが廃棄されている現実があります。

「もったいない」と感じつつ、「仕方がない」と諦めてはいませんか。今、この現状をデザインやAIの力で変えようとする動きが広がっています。しかも食品ロスを減らすだけでなく、利益率も向上している事例もあるのです。本記事では、環境的にも経済的にも持続可能な戦略をご紹介します。

TOC

なぜ朝食ビュッフェは食品ロスの温床なのか

UNEP(国連環境計画)の2024年のレポートによると、世界で生産された食料の3分の1以上が廃棄されています。外食やホテルなどのサービス産業が発生させる食品ロスは、世界全体の28%を占めています。[1]

日本でも、食品ロスは深刻な問題です。消費者庁の推計では、日本の食品ロスは2023年度で約464万トン。1人あたりに換算すると年間約37kgにのぼります。[2]これは、毎日おにぎり1つ分くらいの食品を捨てている計算です。

私たちは幼い頃から「もったいない」という言葉に親しみ、食べ物を粗末にしないよう教えられてきました。それにもかかわらず、なぜ日本でも多くの食品ロスが生まれてしまうのでしょうか。そこには、個人の意識だけでは解決できない、社会や業界の構造的な問題があります。

なかでも朝食ビュッフェは、食品ロスが発生しやすい典型的な場面のひとつです。限られた時間でゲストを満足させるため、常に「美しく、たっぷりと」料理を並べ続ける必要があると考えられてきたからです。

しかし、過剰な準備は「もったいない」だけでなく、経営上の大きなコスト負担にもなります。そこで今、単に「食べ残さないで」と呼びかけるのではなく、食べ残しが出ない「仕組み」そのものを見直す動きが注目されています。

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宿泊施設やレストランの食品ロス対策5選

宿泊施設やレストランの食品ロス対策は大きく分けて5つあります。

  1. AI技術などを使って食品ロスを把握
  2. 食材の有効活用
  3. 食品ロスの少ない仕組みの導入
  4. 社内のロスを外部に転用
  5. コンポストを用いた資源循環

これらは単に実行するだけでなく、取り組む「順番」も重要です。

まずは、何が、どこで、どれだけ捨てられているかを知ることから始めます。次に、調理の過程で出る食品ロスに着目し、食材を有効に活用できる方法を考えます。

ビュッフェの場合は3つめの「食品ロスが出にくい仕組みの導入」が特に重要です。料理の並べ方や提供方法で大幅に食品ロスを削減できます。それでも余ってしまった食品は地域のコミュニティなどに販売・提供し、最終的に残ったものはコンポストでたい肥化して自然に還す、という流れが理想的です。

AI技術などを使って食品ロスを把握

食品ロスを減らす第一歩は、何をどれだけ捨てているかを見えるようにすることです。感覚ではなくデータで把握することにより、改善ポイントが明確になります。また、対策の実施前後のデータを活用することで、取り組みの効果を社内外へ発信する際に役立ちます。

近年、外資系の宿泊施設で導入が広がっているのが、AI食品廃棄管理システムのWinnow(ウィノウ)です。

AI食品廃棄管理システムWinnow(ウィノウ)の公式サイトトップページ
画像出典:Hotel Food Waste Management | AI Trusted by Hilton, Marriott, Accor & IHG | Winnow

Winnowは、厨房で廃棄される食材をカメラと計量器で記録し、「何が、いつ、どれだけ捨てられたか」を可視化できる仕組みです。Hilton(ヒルトン)、Mandarin Oriental Hotel Group(マンダリン オリエンタル ホテル グループ)、Marriott(マリオット)などにも導入されています。[3]

Mandarin Oriental Hotel Groupは、AI食品廃棄管理技術のWinnowを、2025年末までに全40の宿泊施設へ導入する方針を発表しています。この発表のきっかけになったのが4施設で行った6カ月のパイロットテストです。テストでは、食品ロスを36%削減しました。これは年間で66トンの食品ロス削減、289トンのCO2排出削減に加え、約20万ドルのコスト削減につながる計算です。[4]

食材の有効活用

食品ロス対策を行う上で、まずは社内だけでも始められる取り組みがあります。それは、仕込みの段階から、食材をどこまで使い切れるかを考えることです。

たとえば、野菜の皮や茎、きのこの軸、パンの端などは、見方を変えれば別の料理に活かせます。スープやだし、ソース、クルトン、プディングなどに活用すれば、まだ価値を持った食材として使えます。

食材の有効活用をレストランと行っている起業家で、前述のWinnow社でゼロ・ウェイスト料理アドバイザーも行うヴォイチェフ・ヴェフ氏は、同じ食材を複数の料理で使うメニュー構成を提案したり、豆類や自家製のピクルスのような保存がきく食材を多く取り入れたりすることを推奨しています。

実際に食品ロスゼロを掲げる高級店も、ワシントン、リスボン、バリ島など世界各地で増えています。中でも、メキシコ市の「Baldío」は、メニュー作りの段階から食品ロスを強く意識しているレストランです。

Baldioの料理
画像出典:Baldio – Cuauhtémoc – ミシュランガイドレストラン

新たなメニューを作る際は、どのような食品ロスが出そうかを話し合い、食材を見直したり、端材を他のメニューに活用できないか議論します。[5]

日本にも、食品ロスをなるべく出さないように食材を有効活用しているレストランがあります。ミシュランガイド東京で三つ星とグリーンスターを獲得しているレフェルヴェソンスでは、野菜の端材を賄いのサラダや、野菜だしに活用。限られた食材で時間内に美味しい料理を作る賄い係が若手シェフの登竜門になっています。[6]

食品ロスの少ない仕組みの導入

朝食ビュッフェの食品ロスは、並べ方や取り方を変えるだけでも減らせます。大切なのは、ゲストに我慢を求めるのではなく、自然に食べ切れる流れをつくることです。

ノルウェーの研究者による、北欧のホテルチェーンを対象にした研究では、次の2つのシンプルな工夫が食品ロスの削減に効果的だとわかりました。[7]

一つ目は、お皿のサイズを小さくすることです。人は大きな皿を使うと、余白を埋めようとして無意識に盛りすぎてしまいます。皿を小さくすれば、自然と1回の量が適正になり、食べきれないリスクを減らせます。

二つ目は、「何度もお料理を取りに来てください」という旨の案内を7カ国語で掲示したことです。何度もビュッフェを取りに来ることが社会的に受け入れられる土壌を作っています。

どちらの工夫も、ゲストの満足度を下げることなく、食品ロスを約20%削減することに成功しています。

さらに、ホテル側のコスト削減にもつながる可能性が示されました。小さな皿は大きな皿よりも交換費用が安く、掲示の作成費用も安価なうえ、食品ロスが減るので経費が削減されるからです。

こうした考え方は、個別の研究だけにとどまりません。Accor(アコー)やHiltonなどの主要な宿泊施設グループは、食品廃棄半減に向けた「Recipe for Change」というコミットメントに参加し、小分け提供、その場で仕上げる調理、こまめな補充、廃棄量の計測などを進めています。[8]

社内のロスを外部に転用

どれだけ工夫しても、宿泊施設やレストランでは余剰食材が出ることがあります。そんなときに大切なのが、食べられるものをごみにせず、施設の外に循環させることです。

日本で広がっている代表例がフードシェアリングアプリ「TABETE」です。

食品ロスを削減するフードシェアリングサービス「TABETE」の公式サイトトップページ
画像出典:TABETE – 食品ロスを削減するフードシェアリングサービス

まだ安全においしく食べられるのに、売り切るのが難しい商品をアプリ上に出品し、利用者が予約・決済・受け取りまで完結できます。

ホテルにとっては、コストの削減だけでなく、これまで捨てていた商品を売上にできる点が大きなメリットです。館内ベーカリーのパン、デリ、宴会後の未提供分などを、時間限定で効率よく販売できれば、食品ロス対策と収益確保を両立できます。[9]

また、海外発の「Too Good To Go」の事例でも、余剰食品を「サプライズバッグ」としてアプリ販売し、利用者の日常行動の中で食品ロス削減に参加できる仕組みが広がっています。[10]

コンポストを用いた資源循環

どうしても食べられない部分まで、完全になくすことはできません。そこで最後に必要になるのが、食べられない部分を資源として循環させる仕組みです。

たとえば、卵の殻やコーヒーかす、調理の過程で出るどうしても食べられない部分は、コンポストでたい肥にしたり、飼料やバイオガスの原料として活かしたりできます。

重要な点は、最初からコンポストに頼らないことです。Hiltonは、まずは再利用・転用・寄付・リサイクルを行い、埋立処分は最後の手段という考え方を示しています。この順番はとてもわかりやすく、宿泊施設の食品ロス対策の基本にもなります。[11]

思い出に残るビュッフェは心が満たされたビュッフェ

学生時代、私にとって、ビュッフェといえば、元を取るためにいかに沢山食べるかの戦いでした。苦しいくらいにお腹いっぱい食べて、友人と「明日からダイエットしようね」と言いながら帰ったのも良い思い出です。しかし大人になると、慌ただしく席を立つビュッフェが、どこか苦手になっていました。

そんな私の意識を変えたのは、とあるビュッフェレストランでの体験です。そこは「何度も席を立つこと」を推奨してくれる場所でした。自分の体調に合わせて少しずつ料理を楽しみ、友人との会話もゆっくりと味わうことができたのです。

何度も席を立つのに、不思議とそわそわしません。それはきっと「焦らなくて良い」「自分のペースで良いんだよ」と、デザインを通して伝えられたからかもしれません。「残さない」仕組みが整ったビュッフェは、地球に優しいだけでなく、私たちの心も豊かに満たしてくれるのではないでしょうか。

[1]UNEP, “Food Waste Index Report 2024. Think Eat Save: Tracking Progress to Halve Global Food Waste”

[2]消費者庁「2023(令和5)年度食品ロス量推計値の公表について」

[3] Winnow

[4] Mandarin Oriental Hotel Group, “MANDARIN ORIENTAL EMBRACES ARTIFICIAL INTELLIGENCE TO SET A NEW STANDARD IN FOOD WASTE REDUCTION FOR LUXURY HOSPITALITY ”

[5] Bloomberg「「捨てない料理」に挑む高級レストラン-2万円のコースに込めた食品ロスへの思いとは」

[6] Yahooニュース、Forbes JAPAN「「賄い」が組織の在り方を変える? 三つ星レストランを支える食」

[7]The Decision Lab, “How smaller plates reduced hotel food waste by 20%”

[8] One Planet, “Recipe of Change”

[9]TABETE

[10]Too Good To Go

[11] TriplePundit, “Hilton is Reducing Hotel Food Waste With Creative Cooking and AI”

Regenerative tourism
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Japanese