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オーバーツーリズム対策の補助金制度を解説|最新情報と採択事例も紹介

2026 1/09
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム 持続可能な観光 補助金
2026-1-21

近年、観光地に過剰な観光客が集中する「オーバーツーリズム」が、世界各地で問題となっています。

オーバーツーリズム対策には、新たな制度やシステムの導入といった方法が挙げられますが、いずれも一定の資金が必要です。資金面に課題を抱え、効果的なオーバーツーリズム対策を講じることができず、さまざまな問題が発生している地域も少なくありません。

こうした状況を受けて日本では、オーバーツーリズム対策のための補助金制度「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」が策定されました。受入れ環境の整備や需要の管理・分散、マナー違反防止など、オーバーツーリズム解消に向けた取り組みが補助対象となっています。

本記事では、オーバーツーリズム補助金の制度概要や支援内容、採択事例などについて詳しく解説します。

目次

オーバーツーリズムとは?背景や問題点を解説

オーバーツーリズムとは、観光地に旅行者が集中し、地域住民の生活環境や観光資源に悪影響を及ぼす現象です。[1]

オーバーツーリズムが発生する背景には、円安による訪日外国人の急増や、SNSでの情報拡散により、特定の観光地に旅行者が集中しやすくなったことがあります。加えて、格安航空会社(LCC)の普及や民泊の増加により、観光へのアクセスが容易になったことも、要因のひとつです。

オーバーツーリズムの問題点は、地域住民の生活に直接的な影響を与える点にあります。具体的には、以下のような問題が発生しています。

  • 観光客による騒音やゴミの増加
  • 交通渋滞の深刻化
  • 特定スポットにおける混雑の発生
  • 賃料や住宅価格の上昇

さらに、観光地の自然環境や歴史的建造物の劣化、地域文化の商業化といった問題も発生。オーバーツーリズムは一時的な経済効果をもたらす一方で、長期的には地域の持続可能性を脅かす事態として問題視されています。

「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」とは

「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」は、オーバーツーリズム問題を解消し、持続可能な観光地をつくるための補助金制度です。

地域が抱える具体的な課題に応じた取り組みを、政府が財政面から支援します。

目的と基本方針

本事業の目的は、日本の各地域がオーバーツーリズムによって発生する問題に対処するための取り組みを、経済的に支援することです。

オーバーツーリズムを解消し、持続可能な観光地域づくりを実現するためには、地域の実情に応じた具体策が必要です。本事業では、各地域がそれぞれの実情に適した対策を取るために必要な費用の一部を政府が支援します。[2]

対象となる事業者・団体

本事業の支援対象となるのは「地方公共団体」「登録観光地域づくり法人(DMO)」「民間事業者」の3つです。

申請主体によって「地域一体型」と「実証・個別型」の2類型に分けられます。[3]

地域一体型実証・個別型
申請主体地方公共団体または観光地域づくり法人(DMO)地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者
主な要件申請主体を中心とした地域の関係者による協議の場を設けること
地域の関係者による協議の場で、地域住民の意見を取り込んだ対策計画を策定すること
申請主体が地方公共団体以外の者である場合には、関係する地方公共団体との連携が必要
申請主体が地方公共団体以外の者である場合には、関係する地方公共団体との連携が必要
補助対象事業者地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者
特徴地域全体で課題解決に取り組む個別の実証実験や先進的な取り組みに適している

地域一体型は、地方公共団体または観光地域づくり法人(DMO)を中心に、地域住民や事業者と連携して事業を進める形式です。関係者による協議の場を設け、地域住民の意見を取り入れた対策計画の策定などが義務付けられています。

一方、実証・個別型は、地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)または民間事業者が申請主体となり、その主体が補助金を受けて事業を実施する形式です。

本事業において「申請主体」とは、補助対象事業者が実施する補助事業を取りまとめて計画・申請を行う団体を指します。一方で「補助対象事業者」とは、補助事業を実施する事業者を指します。

オーバーツーリズム補助金の支援内容や仕組み

オーバーツーリズム補助金を活用するには、補助率や補助額、申請から支援までの流れを正確に理解しておく必要があります。とくに、地域一体型と実証・個別型の違いは、支援内容に影響するため、事前にしっかりと理解しておきましょう。

補助額・補助率の目安

地域一体型と実証・個別型の補助額、補助率は以下の通りです。

補助上限額・補助率地域一体型実証・個別型
補助上限額8,000万円5,000万円
補助率日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)ロゴマークを取得する場合は補助率2/3、その他の場合1/2地域全体の観光地域づくりに関わる事業(協議の場の運営や地域全体のオーバーツーリズム対策の計画策定など)に係る経費については定額400万円の補助補助率1/2

地域一体型の場合、補助上限額は8,000万円に設定されています。補助率については、日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)ロゴマークを取得する場合は2/3、その他の場合は1/2です。

また「地域全体の観光地域づくりに関わる事業(地域全体のオーバーツーリズム対策の計画策定など)」については、定額400万円の補助が受けられます。400万円以上の経費がかかる場合、超過額分は2/3または1/2の補助が適用されます。

一方、実証・個別型の補助上限額は5,000万円、補助率は1/2です。地域一体型と比較して小規模な取り組みを想定した設定となっており、個別の実証実験や先進的な取り組みに適した支援内容といえます。

支援までの流れ

オーバーツーリズム補助金の支援は、以下のような流れで行われます。

  1. 計画申請

申請主体が提出書類を作成し、申請します。申請主体が地方公共団体以外の場合は、関係する地方公共団体からの同意書を得るなど、連携が必要です。

  1. 計画採択

本事業の事務局が内容の確認・審査を行い採否を判断します。

  1. 交付申請

計画が採用された場合、申請主体は交付申請書類を準備し、提出します。必要に応じて補助事業計画などを修正して再提出する場合もあります。

  1. 交付決定

交付申請の内容が審査され、問題がなければ交付が決定します。

  1. 事業実施・実績報告

事業の実施とその実績を報告します。

  1. 交付額決定

実績報告の審査が行われ、問題なければ事業に使用した経費の額に応じて交付額が決定します。

  1. 補助金請求

補助金の請求手続きを行います。

  1. 補助金交付

補助金が交付されます。

計画申請から補助金交付までには複数の審査段階があるため、各ステップで求められる書類や要件を事前に確認しておきましょう。

審査の観点

本事業の審査では、地域課題の分析から効果測定、実施体制まで多角的に評価されます。とくに審査で重要な観点は以下の通りです。

  • 地域の現状把握

オーバーツーリズムによって地域が抱える問題を特定し、適切に分析できているか

  • 計画の具体性と効果性

オーバーツーリズムによって地域が抱える課題について、具体的かつ効果的な取り組みが計画されているか

  • 指標設定の適切性

具体性・計画性があり、十分な効果が期待できる取り組みとなっているか

  • 実施体制の妥当性

適切な実施体制となっているか(適切な関係者の協力を得られているかなど)

  • 持続可能性

単年度の取り組みで終わることなく、次年度以降も続く中長期的な取り組みとなっているか

申請前に各観点を満たす計画を準備しておきましょう。

令和7年11月時点の公募状況

令和7年11月時点では、三次公募まで行われています。三次公募の受付は終了し、採択結果もすでに公表されています。

一次から三次までの各公募の実施期間は以下の通りです。

  • 一次公募:令和7年2月17日(月)~令和7年3月14日(金)
  • 二次公募:令和7年5月12日(月)~令和7年6月11日(水)
  • 三次公募:令和7年8月1日(金)~令和7年8月22日(金)

一次公募と二次公募では「地域一体型」と「実証・個別型」の両方の類型で公募が行われましたが、三次公募は「実証・個別型」のみの公募となりました。

令和7年11月時点では三次以降の公募は確認できていません。今後の公募情報については、観光庁の公式サイトなどで最新情報を確認してください。

オーバーツーリズム補助金の支援対象となる取り組み例

画像出典:観光庁

オーバーツーリズム補助金では、受入れ環境の整備から地域住民との協働まで、幅広い施策が補助対象に含まれます。[4]

補助対象事業具体的な取り組み例
受入れ環境の整備・増強手ぶら観光の整備、周遊バスの実証運行など
需要の適切な管理パークアンドライドのための駐車場整備、入域制限の実証・導入、入場料金の導入など
需要の分散・平準化人流データの収集・分析、混雑状況の可視化など
マナー違反行為の防止・抑制多言語案内板やデジタルサイネージの設置、ICTゴミ箱の設置、マナー啓発看板の整備など
地域住民と協働した観光振興地域住民向けセミナーの開催、地域住民へのアンケート調査、住民参加型イベントの開催など
調査・分析制度導入にあたっての専門家の意見聴取、事業の効果検証など
地域全体の観光地域づくりに関わる事業協議会運営、地域の観光計画に関する効果・検証、地域住民などの理解・認知度向上のための説明会開催など

地域の実情に応じて最適な施策を選択し、効果的なオーバーツーリズム対策を進めることが求められます。

「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」の採択事業例

「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」では、一次から三次までの公募が実施され、全国各地のさまざまな取り組みが採択されました。

以下に、各公募で採択された事業の一部を紹介します。[5]

地域一体型の採択事例

申請主体地域事業名公募回
小樽市北海道小樽市小樽市における「観光がもたらす恩恵」と「市民の安心快適な暮らし」の両立による持続可能な観光地域づくり実施計画一次公募
一般財団法人箱根町観光協会神奈川県箱根町箱根エリアにおける地域一体となった持続可能な観光地域づくり推進事業一次公募
奈良県奈良県橿原市、桜井市、明日香村世界遺産登録を見据えた「飛鳥・藤原の宮都」におけるオーバーツーリズム未然防止対策一次公募
蔵王町宮城県蔵王町蔵王ジオパークを活用した「宮城オルレ 蔵王・遠刈田温泉コース」におけるオーバーツーリズム未然防止による満足度向上推進モデル事業二次公募
一般社団法人南丹市美山観光まちづくり協会京都府南丹市かやぶきの里における持続可能な受入れ環境整備事業二次公募
沖縄県沖縄県那覇市首里杜地区を中心とした暮らしと観光が両立した住みやすく魅力的なまちづくり二次公募

実証・個別型の採択事例

申請主体地域事業名公募回
北海道旅客鉄道株式会社北海道全域繁忙期の混雑緩和策およびマナー・安全対策強化の取り組み一次公募
鶴ヶ城ナイトウォーク実行委員会福島県会津若松市鶴ヶ城における誘客分散のためのサステナブルナイトウォーク事業一次公募
公益財団法人東京タクシーセンター東京都大田区乗車効率向上を図るためのタクシー乗り場改善計画一次公募
一般社団法人ニセコプロモーションボード北海道倶知安町、ニセコ町、蘭越町北海道ニセコ地域におけるオーバーツーリズム対策事業二次公募
東日本旅客鉄道株式会社長野県松本市長野県松本市「松本駅」エリアにおけるICTゴミ箱設置によるオーバーツーリズム未然防止二次公募
京都府京都府宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久御山町、井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、精華町、南山城村、三重県伊賀市お茶の京都エリア・伊賀エリアへの誘客促進による京都市内のオーバーツーリズム対策事業二次公募
一般社団法人雪国観光舎新潟県湯沢町清津峡シャトルバス運行による渋滞緩和と平準化事業三次公募
株式会社JTB静岡支店静岡県伊豆市「3人乗り電動バイクを活用した新たな人流形成による2次交通課題解決事業」~観光客の行動範囲拡大と市内中心地混雑の緩和~三次公募
公益財団法人福岡観光コンベンションビューロー福岡県福岡市各種ビジネスモデルの収斂と掛け合わせによる「スーツケース問題」の課題解決を図る実証と調査事業三次公募

オーバーツーリズム対策の3つの具体的な手法

画像出典:観光庁

オーバーツーリズム対策には、さまざまな手法があります。以下の3つの代表的なオーバーツーリズム対策を参考に、地域の課題に適したものを選びましょう。

  • データの活用
  • 交通対策
  • 情報提供

データの活用

人流データや混雑状況の可視化は、観光客の分散を促す施策として多くの地域で導入されています。

たとえば鎌倉市では、地域ごとのデータを収集し、混雑状況を表示するマップを作成しています。データに基づいたリアルタイムな混雑状況を発信することにより、観光客は混雑状況を事前に確認でき、空いている時間帯や場所を選択して訪問できるようになりました。

他にも、データの活用は時間や場所ごとの混雑状況の把握などにも役立ちます。

交通対策

オーバーツーリズムが発生している多くの地域では、過度な交通渋滞が発生し、地域住民の生活や緊急車両の通行に悪影響を与えています。そのため、交通対策はオーバーツーリズムを解消するうえで欠かせない施策です。

交通対策の代表的な手法に、パークアンドライドという方法があります。パークアンドライドとは、市街地周辺部に駐車し、市街地では公共交通機関の利用を促す手法です。[6] 市街地への自動車の流入抑制に効果的で、多くの地域で導入されています。

また、周遊バスの運行も交通対策の代表的な手法です。主要観光地に停車するバスを運行することで、マイカーの利用を抑制できます。

情報提供

情報提供は、混雑解消やマナー違反の防止など、さまざまな目的で活用できます。具体的な情報提供の方法としては、以下のような手段が挙げられます。

  • 多言語案内板の設置
  • 多言語Webサイトの開設
  • デジタルサイネージの設置
  • マナー啓発看板の設置

とくに訪日外国人が多い地域では、多言語案内板や多言語Webサイトが効果的です。

岐阜県高山市では、英語や中国語、韓国語などで作成されたマナー啓発看板を設置し、観光客のマナー意識向上を図っています。[7] 取り組みはメディアでも取り上げられ、訪日外国人・外国人モニター・住民から高い評価を得ました。

オーバーツーリズム補助金を活かすために重要なポイント

オーバーツーリズム補助金を効果的に活用するには、申請段階から事業実施、そして事業終了後までを見据えた計画づくりが不可欠です。

以下の3つのポイントを参考に、オーバーツーリズム補助金を効果的に活用するための計画を立てましょう。

  • 地域課題を明確化する
  • 住民・事業者・行政の協働体制をつくる
  • デジタル技術の活用による管理体制を整える

地域課題を明確化する

オーバーツーリズム補助金を効果的に活用するには、まず地域が抱える課題を具体的かつ正確に把握しましょう。観光客の集中による交通渋滞が問題なのか、ゴミの増加や騒音が問題なのかなど、課題によって取るべき対策は大きく異なります。

課題の明確化には、人流データや混雑状況の分析に加えて、地域住民へのアンケート調査やヒアリングを通じて、リアルな問題点を把握することが重要です。また「観光客が多い」という漠然とした認識ではなく「どの時間帯にどの場所で混雑が発生している」など、できるだけ具体的に課題を掘り下げましょう。

オーバーツーリズム補助金の審査においても、地域の現状を適切に把握し、問題の要因を適切に分析できているかは評価基準の一つです。補助金制度を活用するのであれば、データに基づいた客観的な課題設定を行いましょう。

住民・事業者・行政の協働体制をつくる

一過性ではなく、持続的なオーバーツーリズム対策に取り組むには、地域住民・観光事業者・行政の協働体制が欠かせません。

とくにオーバーツーリズム補助金における地域一体型の申請では、関係者による連携が義務付けられており、各関係者の意見を取り入れた対策計画の策定が求められます。

協働体制をつくるには、定期的な会議の開催や情報共有の仕組みづくりに加えて、各主体の役割分担を明確にすることが大切です。たとえば、住民は地域の実情を伝える役割、事業者は実践的な施策を提案する役割、行政は全体の調整と支援を行う役割を担うといった形で、それぞれが主体的に関わる体制を整えましょう。

デジタル技術の活用による管理体制を整える

オーバーツーリズム対策の効果を最大化するには、デジタル技術を活用した管理体制の整備が重要です。デジタル技術は、課題の明確化から施策の策定、効果の検証まで、あらゆる段階で活用できます。

具体的には、以下のような活用方法が考えられます。

  • 人流データ、交通データの収集
  • 混雑状況の可視化、情報発信
  • 予約システムの導入

補助金申請時には、導入するデジタル技術の活用方法と、期待される効果を具体的に明示することが大切です。

まとめ | オーバーツーリズム補助金を活用して持続可能な観光地づくりを

オーバーツーリズムは、観光振興と地域の環境、そして住民の生活をいかに両立させるかという点で、これからの観光地が向き合うべき重要な課題です。

オーバーツーリズム補助金は、こうした課題解決に向けた具体的な取り組みを財政面から支援する制度です。地域の実情に応じた受入れ環境の整備、需要の管理・分散、マナー違反防止など、幅広い施策が対象となっています。

補助金を効果的に活用するには、地域課題の明確化、協働体制の構築、デジタル技術を活用した管理体制の整備が重要です。

本記事で紹介した採択事例や申請のポイントを参考に、地域の関係者と連携しながら持続可能な観光地づくりに取り組んでいきましょう。

参考文献

[1] オーバーツーリズムとは?解決策や自治体の対策事例を紹介 | ジチタイムズ

[2] オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業 公募要領(令和7年8月1日版)

[3] オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業 事前説明会

[4] 令和6年度補正予算「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」特設サイト

[5] 採択事業一覧 | 令和6年度補正予算「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」特設サイト

[6] パーク・アンド・ライド

[7] 「住んでよし、訪れてよし」の持続可能な地域の実 現に向けた観光課題対策事業




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