3月3日から5日の3日間に渡り、「Messe Berlin(メッセ・ベルリン)」主催による世界最大級の旅行業界見本市「ITB Berlin(アイーティービー・ベルリン)」が開催されました。「ITB Berlin」とは、世界各国の観光産業の専門家、政府機関、国家観光局、旅行会社、ツアーオペレーター、航空会社、ホテルチェーン、デスティネーションマーケティング団体などが一堂に集まり、国際的な商談や交流を行う重要な場として、毎年ベルリンで開催されています。通常の一般に向けた接客型の展示会ではなく、観光産業のプロフェッショナル同士が取引や契約を行うためのB2B商談をメインとした見本市です。
主催のメッセ・ベルリンは、1921年に創立され、100年以上の歴史を持つ見本市の企画、運営などを行う企業です。シャルロッテンブルク区に約190,000㎡の面積を誇る広大な専用展示スペースを所持しており、1930〜50年代に建てられた多くの建造物は文化財に指定されています。「ITB Berlin」以外にも、世界2大家電見本市のひとつ「IFA」や世界最大級の農業、食品、園芸の見本市「Internationale Grüne Woche」といった国際的な見本市を多く手掛けています。

国々の特徴を活かした豪華さなパビリオンが見もの
「ITB Berlin」は今年で創立60周年を迎え、世界166カ国から5,601社が出展し、約9万7,000人が来場しました。3日間とも天候に恵まれ、2月28日にイランで勃発した戦争の影響により、中東地域での空域閉鎖や多くのフライトが欠航したにも関わらず、昨年とほぼ変わらない水準を維持することに成功しています。それについて、メッセ・ベルリンCEOのマリオ・トビアスは以下のように述べています。
60周年を迎えた今年の「ITB Berlin」は、改めて世界の市場を結びつけ、将来のビジネスに向けた共同の議論を促進するとともに、とりわけ中東情勢など地政学的緊張が高まる時代において、国際的な対話と協力の場としての重要性を示すことができました。また、業界の鏡として、コンタクトの構築、意見交換、そして、ビジネスを行うための信頼できる枠組みを提供することができました。

メッセ・ベルリンには27のホールがあり、ドイツ、ヨーロッパ各国、アジア、中東、アフリカ、南北アメリカなど、国や地域別に分かれてそれぞれのホールに展示されます。各国の観光局、航空会社、ホテル、旅行会社、地域自治体などで形成された巨大で豪華な国家パビリオンが圧巻の存在感を放っており、「ITB Berlin」の最大の見どころとなっています。

観光スポットや伝統文化など、特徴を活かしたオブジェや装飾、写真パネルなど、一目でどこの国や地域か分かるように工夫されており、本格的な飲食カウンターも併設されています。また、商談スペースは、ホテルや旅行会社別にテーブルが分かれており、まるでレストランやラウンジのような豪華なインテリアや贅沢なVIPルームまで完備されていることに驚きました。ヨーロッパ諸国のエリアでは、ワイングラスを片手に商談している人たちを多く見かけ、文化の違いを感じました。
国家パビリオンだけでなく、同国の航空会社やホテルチェーン、ツアーコンダクターのパビリオンも並び、小規模や個人事業主が出展する小さなブースも含めると1ホールだけでも数え切れないほど多く、全てのホールを見て回るだけでも1日では時間が足りません。


地域の文化や習慣がオブジェで表現されています。

会場内を見て回るだけでも楽しく、世界を旅している気分を味わうことができるのも「ITB Berlin」の醍醐味と言えます。筆者個人の感想としては、2026年のホスト国がアンゴラだったことも影響しているのか、アフリカ地域のホールが最も活気に満ち溢れていました。
出展者の多くが民族衣装に身を包み、至るところで伝統舞踏や音楽のパフォーマンスが披露され、バンドによる生演奏やダンスを見ることができました。また、ソウルフードやドリンクの試飲食が無料で振る舞われ、来場者を喜ばせていました。


各国のホールを回りながら感じたのは、スパやヨガ、デトックスなどのウェルネス、ウォータスポーツなどの体験が豊富なビーチリゾート、料理や伝統工芸などのローカル文化に触れることができるアクティビティ、アルプスや北欧などの山岳地域でトレッキングやサイクリングなど、無理せず楽しめるアクティビティを取り入れているツアーが多く目に止まりました。
これらのアクティビティは昔から存在する旅のオプションプランとして定番ですが、短期間で何ヶ所も移動するのではなく、一箇所に留まり、心身ともにリラックスできる環境でゆっくりと過ごす滞在型の旅に需要が高まっていると感じました。他にも、プライベートヴィラやクルーズといったラグジュアリープランや農村に滞在するファームステイなど、街の喧騒から逃れ、豊富な自然の中で非日常的な体験を望む人が現代社会には多いのかもしれないと感じました。
旅におけるテクノロジーの進化
「ITB Berlin」は、世界各地の観光プロモーションだけでなく、主要テーマのひとつでもあるAIにフォーカスした「Travel Technology」のセグメントも存在します。航空、ホテル、レンタカーなどの在庫と価格をリアルタイムで管理し、旅行代理店や予約サイトに提供するシステムとして業界大手のAmadeusやSabre、Travelport、VISA、Stripe、Revolut、PayPalなどの決済ソリューション、予約システムの Apaleo、AI・音声エージェントのDerbySoft、The Trip Boutique、Qualidayなど、大手企業からスタートアップに至るまで、6つのホールを埋め尽くほど多くの企業が出展しています。

各ブースは大きくないですが、どこも人集りができるほど人気で、国家パビリオンと違い、スタンディングスタイルで商談を行っている姿が印象的でした。かつてはニッチな分野とされていた旅行におけるテクノロジー機能ですが、現在ではスマートフォンのアプリケーションひとつで予約や決済が可能な時代になりました。特に今年は、AIによる予約やカスタマーサービス、個別の旅行体験の最適化など、スマート予約エンジンからバーチャルアシスタントまで幅広く紹介されており、旅行業界においてもAIの導入と需要性が高まっていくことを実感しました。

最後に
世界最大規模を誇る「ITB Berlin」は、一体どれだけの経済効果があるのでしょうか?公式発表によると、470億ユーロ相当の取引や購買が決定がされており、この数字は「ITB Berlin」の期間中に成立した取引のみに基づいているとのことです。
ちなみに、出展料は㎡単価で計算され、パビリオンやブースの制作費、プロモーション費まで含めると、少なくとも一万ユーロ、大規模出展になると数十万ユーロに及ぶと言われています。しかし、多額のコストが掛かったとしてもそれ以上の経済効果を生み出すことができる「ITB Berlin」に出展する価値があると言えます。中東情勢が不安定な中でも世界中から集まってくることにも納得です。


2日目と3日目の2日間のみの滞在でしたが「ITB Berlin」は旅行における全ての分野が詰まった見本市であると実感しました。このレポートでは見本市の全体の様子をご紹介しましたが、次回は「Medical & Health Tourism Pavilion」「Adventure Tourism」「Business Travel」「LGBTQ+ Travel」のセグメントについて、さらには、特に印象に残った分野や出展ブース、授賞式などについてレポートします。
なお、「ITB Berlin」は、すでに2027年は3月16日から18日まで開催されることが公式サイトにて発表されました。来年のホスト国は、リゾート地として不動の人気を誇るモルディブに決定しています。旅行のトレンドや傾向によって出展内容やテーマも変わってくるため、来年の「ITB Berlin」にも注目したいです。
