京都では現在、観光客数がコロナ禍前を上回り「観光公害」とも呼ばれるオーバーツーリズムが深刻な社会問題となっています。
とくに清水寺や祇園、嵐山といった人気エリアでは、歩行が困難になるほどの混雑や、公共交通機関のひっ迫、観光マナーの問題などが発生している状況です。
一方で、こうした状況に対し、京都市や地域住民、観光事業者は持続可能な観光の実現に向けたさまざまな対策を進めています
本記事では、2026年時点の最新データをもとに、京都のオーバーツーリズムの現状や原因、具体的な問題点をわかりやすく解説します。さらに、観光客としてできる混雑回避のコツやマナーについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

京都のオーバーツーリズムの現状【2026年最新】

京都市では現在、観光客の急激な増加によりオーバーツーリズム問題が深刻化しています。
コロナ禍で一時的に落ち込んでいたインバウンド需要はすでに完全回復し、2025年の大阪・関西万博の影響もあり、2026年現在も観光客の増加傾向が続いています。
その結果京都市内の人気観光地では、地域住民の日常生活に支障が出るほどの混雑が発生。たとえば、市バスでは満員状態が常態化し、通勤・通学で利用する地域住民が乗車できないといった問題も報告されています。
また、多様な観光客が訪れるようになり、マナーや常識の違いが目立つようになったことで、以下のような迷惑行為も多発しています。[2]
- ごみのポイ捨てや路上での飲食
- 舞妓・芸姑への無断撮影や追跡行為
- 私有地への無断立ち入り
京都大学の調査では、地域住民の80%以上が公共交通機関の混雑で混乱している」と回答するなど、京都市内のさまざまな場所でオーバーツーリズムによる影響が発生している状況です。[3]
京都でオーバーツーリズムが発生した原因

京都のオーバーツーリズムは複数の要因が重なり合って発生した問題です。以下のような、さまざまな背景が絡み合って現在の状況を引き起こしています。
- 為替の影響によるインバウンドの増加
- SNS拡散による観光客の集中
- 京都の地理的特徴による混雑の発生
- 交通インフラの不足

為替の影響によるインバウンドの増加
円安の進行は、京都をはじめとする日本各地のオーバーツーリズムを加速させる要因となっています。[4]
2022年以降の円安進行により、外国人観光客にとって日本での旅行費用が実質的に大幅に安くなり、これまで以上に日本が魅力的な旅行先として認識されるようになりました。
とくに京都は、日本らしい伝統文化や歴史的景観を体験できる都市として人気が高く、多くの外国人観光客が集中しています。
さらに、2025年の大阪・関西万博の開催により関西エリア全体への観光需要が拡大し、京都への流入も増加。結果として、特定の観光地に人が集中しやすい状況が加速しています。
SNS拡散による観光客の集中
近年のオーバーツーリズムを語る上で欠かせないのが、SNSの影響です。InstagramやTikTok、YouTubeなどの普及により「写真映え」や「動画映え」する観光地が世界中に拡散されるようになりました。
京都では、祇園の街並みや嵐山の竹林、清水寺の風景などがSNSで頻繁に取り上げられ、外国人観光客にも強い印象を与えています。
SNSの影響力は従来の観光ガイドブックや旅行会社のプロモーションを大きく上回っており、オーバーツーリズムを発生させる要因として新たな課題となっています。
京都の地理的特徴による混雑の発生
京都市の地理的特徴も、オーバーツーリズム問題を加速させる要因となっています。
京都市は三方を山に囲まれた盆地地形であり、市街地は限られた範囲に集中している構造です。
加えて、清水寺や祇園、先斗町などの主要観光地が商業地域や住宅地域と隣接しているため、観光客と地域住民の生活動線が重なり、混雑が発生しやすい状況を作り出しています。[5]
東京や大阪のような大都市圏と異なり、観光地を分散させる物理的な余地が限られているため、京都では都市構造そのものがオーバーツーリズムを引き起こしやすくなっています。
交通インフラの不足
京都市の交通インフラ不足は市バスへの過度な依存を生み出し、オーバーツーリズムによる混雑を深刻化させています。
京都市内は地下鉄が2路線のみで、JR線や私鉄を含めても電車路線が他の大都市に比べて圧倒的に不足しています。
そのため、市民も観光客も移動手段として市バスを利用することが多く、主要観光地を結ぶバス路線では慢性的な混雑が発生。[6] さらに、京都市バスは距離に関係なく一律230円と格安なため、コストを重視する観光客の利用が集中しています。
オーバーツーリズムによって京都観光が直面する問題点

京都のオーバーツーリズムは、単なる混雑にとどまらず地域住民の生活環境悪化から伝統文化の衰退まで、以下のようなさまざまな問題を引き起こしています。
- 公共交通機関の過度な混雑
- 観光マナー問題と地域トラブル
- 日本人観光客の京都離れ
- 文化や体験の「コモディティ化」
さまざまな問題が相互に関連し合いながら京都観光の持続可能性を脅かしている状況です。
公共交通機関の過度な混雑
京都市バスでは観光客の集中により、地域住民の日常生活に支障をきたすほどの深刻な混雑が発生しています。
観光客の大量乗車や大きな荷物を持つ乗客により、定員を大幅に超過し、通勤・通学・買い物などで日常的に市バスを利用している住民が乗車できない事態が多発。
市バス路線の中でも観光地を結ぶルートでは、平日・休日を問わず慢性的な混雑状態が続き、住民の生活交通としての機能が大きく低下しています。
観光マナー問題と地域トラブル
観光客の増加に伴い、マナー違反や地域トラブルも深刻化。京都ではとくに以下のような問題が指摘されています。
- 舞妓・芸妓への無断撮影や追跡
- 私有地や路地への無断立ち入り
- 路上での飲食やゴミのポイ捨て
祇園周辺では、観光客による迷惑行為が問題となり、一部の私道で立ち入り禁止措置が取られるなど、観光規制が強化される事態にも発展。[7] こうしたトラブルは、地域住民と観光客の対立を生む要因にもなっています。
日本人観光客の京都離れ
インバウンド急増による混雑や宿泊料金の高騰により、日本人の京都離れが進んでいます。
ソフトバンクと長崎大学の共同研究では、2022年と2024年のゴールデンウィーク期間(5月3〜5日)に東京都から京都市東山区を訪れた人数が半減したことが判明しました。[8]
宿泊客数の構成比も大きく変化し、2024年の京都市の調査によると日本人宿泊客が809万人だったのに対し、外国人宿泊客は821万人と全体の過半数を占める状況です。
このように混雑回避や宿泊費高騰などの理由から、日本人観光客が他の観光地に流れる傾向が強まっており、国内観光における京都への認識が変化しています。
文化や体験の「コモディティ化」
インバウンド観光の拡大は、京都の文化や街並みにも変化をもたらしています。
たとえば、400年以上の歴史を持つ「京の台所」錦市場では、15年間でインバウンド向けの居酒屋などの飲食店が倍以上に増加しました。その一方で、120年以上続いた老舗を含む昔ながらの生鮮食品店が減り続けています。[10]
このような変化により、本来の地域文化や生活の場が「観光向けの商品」として消費される「コモディティ化」が進行しています。
歴史的な文化や伝統は京都観光の根幹であり、コモディティ化は京都観光の持続可能性を脅かす重大な問題です。
観光客ができる京都のオーバーツーリズム対策

京都のオーバーツーリズムは行政や事業者だけでなく、観光客一人ひとりの行動によっても大きく改善できる問題です。
少しの工夫や意識の変化が、混雑の緩和や地域との共存につながります。
混雑する時間帯・時期を避ける
観光時間をずらすだけでも、混雑の影響を大きく軽減できます。
京都の人気観光地は、10時〜15時頃が最も混雑するピーク時間帯とされています。[11] この時間を避け、早朝や夕方以降に訪れることで、比較的ゆったりと観光を楽しむことが可能です。
最近は、リアルタイムで各観光地の混雑状況を確認できる「京都観光快適度マップ」も提供されているので、こうしたツールも積極的に活用しましょう。

混雑回避に役立つ京都観光快適度マップ|【京都市公式】京都観光Navi
また、以下の時期は特に混雑が激しくなります。
- 桜シーズン(3月下旬〜4月上旬)
- 紅葉シーズン(11月中旬〜下旬)
- ゴールデンウィーク・年末年始
そのため、1月・6月・9月などの比較的観光客が少ない時期を選ぶのもオーバーツーリズム対策として有効です。
市バスではなく電車・徒歩を活用する
市バスは主要観光地を結んでいるため非常に便利ですが、その分混雑しやすく、地域住民の生活にも影響を与えています。
代わりに以下のような移動手段を選ぶことで、混雑緩和に貢献できます。
- JRや私鉄(京阪電車・阪急電鉄など)を利用する
- 地下鉄を活用する
- 近距離は徒歩やレンタサイクルを利用する
とくに京都は徒歩でも楽しめるエリアが多いため、移動そのものを観光体験として楽しむのもおすすめです。
有名観光地だけでなく“穴場”を訪れる
観光客の集中を避けるためには、訪れる場所を分散することも効果的です。清水寺や嵐山、祇園といった定番スポットだけでなく、比較的混雑が少ないエリアにも目を向けてみましょう。
たとえば、以下のようなエリアがあります。
- 西陣エリア(伝統文化や町家が残る地域)
- 伏見エリア(酒蔵や歴史的街並み)
- 大原・鞍馬エリア(自然豊かな郊外)
こうした地域を訪れることで、より深い京都の魅力に触れられるだけでなく、観光客の分散にもつながります。
「量より質」の観光を意識する
短時間で多くの観光地を巡るのではなく、ひとつの場所をじっくり楽しむ「質の高い観光」も重要です。
たとえば、以下のような楽しみ方があります。
- 文化体験(茶道・工芸体験など)に参加する
- 地元の飲食店や商店を利用する
- 日帰りではなく長期滞在をして地域を深く知る
こうした観光スタイルは、地域経済への貢献度が高く、混雑の分散にもつながります。
京都で実施されているサステナブルツーリズムの取り組み事例

京都市では、オーバーツーリズムの深刻化を受けて、観光客の分散や地域文化の保護を目的とした以下のような取り組みを展開しています。
- 観光客の分散・誘導
- リアルタイム混雑情報システムの導入
- ルール整備と観光マナーの強化
ここでは、京都市が実際に行っている具体的な対策とその効果をわかりやすく解説します。
観光客の分散・誘導をうながす取り組み
京都市では観光客の集中による混雑緩和を目的として、デジタル技術を活用した分散誘導施策に積極的に取り組んでいます。
具体的には、混雑を避けた地域を巡るデジタルスタンプラリーの実施や、人気観光地周辺にある隠れた名所の紹介などを行っています。
こうした取り組みの結果、人気観光地の嵐山からほど近い嵯峨エリアへの観光客が約30%増加しました。嵐山に集中していた観光客を周辺地域に誘導することで、観光地全体の混雑緩和と地域経済の活性化の両立が図られています。
これらの取り組みは、持続可能な観光地経営のモデルケースとして注目を集めています。
混雑を見える化するデジタル施策
京都では観光客の自主的な混雑回避を促すため、混雑状況を可視化するデジタルシステムの導入を進めています。[12]

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 時間や時期ごとの混雑状況を表示するヒートマップ
- 場所ごとの混雑状況を表示するヒートマップ
- 混雑状況を発信するライブカメラ
観光地側が一方的に観光客を誘導するのではなく、観光客の選択に委ねることで、観光体験の質向上とオーバーツーリズム対策を両立させています。
ルール整備と観光マナーの強化
京都では観光客数の適正化を図るため、法規制や自主ルールの設定を行っています。
代表的な取り組みとして、宿泊施設利用者に対する宿泊税の設定が挙げられます。[13]
これにより、観光客数の抑制とともに観光客増加で生じた費用のための財源確保を実現しました。
また2022年11月には、観光に関わる全ての人が守るべき行動基準「京都観光モラル」を策定。[14] 観光事業者や観光客が守るべき具体的な基準を明文化することで、観光に関わる全ての人のモラル向上に貢献しています。

さらに2026年3月時点では、京都市は市民以外の市バス運賃の値上げも検討中です。市民以外の運賃を最大350~400円に、反対に市民は200円にまで値下げする予定で、2027年度中の導入を目指しています。[15]
京都のオーバーツーリズムから考える観光の持続性
京都では現在、観光客の増加によってオーバーツーリズムが深刻化し、混雑やマナー問題、地域文化への影響など、さまざまな課題が顕在化しています。
しかしその一方で、京都市や観光事業者は、観光客の分散やルール整備といった具体的な対策を進めており、持続可能な観光への転換が着実に進みつつあります。
今後の京都観光において重要なのは「観光客数の多さ」ではなく「観光の質」を高める視点です。そしてそれは、行政や事業者だけでなく、観光客一人ひとりの行動によっても大きく左右されます。
混雑する時間や場所を避ける、地域のルールやマナーを守る、そしてその土地の文化や暮らしに配慮する——そうした小さな選択の積み重ねが、京都の未来を守ることにつながります。


参考文献
[2] 京都市民が嘆く「舞妓パパラッチ」の悪行三昧 観光客は舞妓にとって「危険な存在」でもある | レジャー・観光・ホテル | 東洋経済オンライン
[3] 京都のオーバーツーリズムの現状と観光地のデ・マーケティング
[4] オーバーツーリズムとは? 原因や影響、問題点や対策を具体例付きで解説:朝日新聞SDGs ACTION!
[5] 京都のオーバーツーリズム問題 ―住民が感じる実質的な不便と今後の改善策について― | 同志社大学 グローバル・コミュニケーション学部
[6] 京都府京都市 | オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光地域づくり(先駆モデル地域) | 事例集・支援ツール | 観光庁
[7] 京都・祇園で相次ぐ観光客の迷惑行為 本当は立てたくないけど…「警告高札」さらに増設|京都新聞デジタル 京都・滋賀のニュースサイト
[8] 日本人の「京都離れ」は本当に起きてる? 地元と大学などが研究始動 [京都府]:朝日新聞
[9] 京都市観光協会データ月報(2025年12月および年次速報) | 公益社団法人 京都市観光協会(DMO KYOTO)
[10] 市場の役割薄れゆく、京の台所 訪日客向け飲食店増、生鮮食品店減 | 毎日新聞
[12] 京都観光を取り巻く情勢を踏まえた今後の方向性について
