Responsible Travel(責任ある旅行)|旅をもっと意味のあるものに

企業にとって、持続可能な旅行を提案することは、社会的責任を果たしつつブランド価値を高める重要な要素です。
では、どのようにして環境保護や地域貢献を重視した旅行を提供できるのでしょうか?
「Responsible Travel(レスポンシブルトラベル)」は、厳格な環境基準と地域社会への配慮を徹底し、持続可能な旅行を目指しています。[1] 同社の持続可能な旅行モデルは、企業に新たな可能性を提供します。
本記事では、同社が実践する環境保護、地域貢献、旅行者への配慮を統合したアプローチを紹介します。
企業が参考にすべきポイントを押さえ、実践的なアプローチを学びたい方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
Responsible Travelとは?
Responsible Travelは、旅行者・環境・地域社会の三者に対し同等の責任を果たす、真に持続可能な旅を提供する旅行会社です。設立以来、一貫して利益優先ではなく、訪問先の自然や文化、住民の幸福を最重視する姿勢を貫いてきました。
Responsible Travelは2001年に英国で創業されました。創設者ジャスティン・フランシス氏が大学院で観光と保全を学ぶ中、観光産業の「楽園パッケージ化」が引き起こす環境破壊や地域住民への影響に危機感を抱き、持続可能な旅行のモデル構築を決意。
指導教授ハロルド・グッドウィン氏とともに「責任ある旅行(Responsible Travel)」の概念を確立し、業界に新風を吹き込みました。
独自のビジネスモデルは、400を超えるツアーオペレーターと提携し、厳格な責任基準で商品を審査・選定する点にあります。
旅行前には環境負荷や地域貢献度を明示し、旅行後には40,000件以上のレビューを通じて品質向上を図ります。利益追求に偏らず、地球・人々・パートナーすべてに配慮するその姿勢が、多くの企業や旅行者に支持されています。
Responsible Travelの特徴
Responsible Travelは、従来の旅行業界とは一線を画す、以下の4つの特徴を持っています。
- 環境保護
- 地域貢献
- 多様な旅行者ニーズへの対応
- 透明性の確保
これらを体系的に組み合わせ、旅行者、環境、地域社会が全てが共に利益を得られるような革新的な旅行の形を確立しました。
環境配慮を基盤とした旅行設計
Responsible Travelの環境への取り組みは、単なる表面的な配慮ではなく事業の根幹に据えられています。
同社では掲載される全ての旅行商品を環境基準でスクリーニングし、現地環境および地球全体への負の影響を積極的に削減する旅行のみを厳選。
具体的には、2020年1月から1時間未満の国内線を含む旅行商品の販売を停止し、顧客に対して目的地での滞在期間を延ばすことを提案しています。
現在では全ての旅行にて旅行先でのエネルギー節約も促進。社内では、以下の包括的な環境方針を実施しています。
- 「削減・再利用・リサイクル」原則を徹底
- ペーパーレス化や使い捨てプラスチックの排除
- 公共交通機関の積極利用(従業員の95%が実践)
地域社会との共生を実現する仕組み
同社の地域社会への貢献は「Trip for a Trip」制度に象徴されています。
顧客が1回旅行をするたびに、社会的な配慮を必要とする子どもたちに日帰り旅行を提供するこの制度では、売上の平均1%を投資し、これまでに8000人以上の子どもたちの人生にポジティブな変化をもたらしました。
同社が扱う全ての旅行は、現地住民の雇用創出と収入向上を最優先とし、地域企業との連携を強化することで観光収入の地元還元効果を最大化しています。
宿泊施設や旅行会社には、現地文化への理解を深める情報提供を義務付け、旅行者の文化的感受性を高める取り組みも行っています。
多様な旅行者ニーズへの対応
Responsible Travelは、様々な予算やニーズに合わせた旅行スタイルを提供しています。特にアクセシビリティに配慮し、2015年に「アクセシブル・トラベル・ガイド」を立ち上げました。
予算旅行から車椅子対応ツアー、ボランティア旅行までさまざまなツアーを選べ、誰でも楽しめるプランが揃っています。
アクセシブルトラベルでは、視覚障がい者向けツアーや認知症などの特別な配慮が必要な旅行者向けの静かな宿泊施設など、見えないニーズにも対応。
また、ソロ旅行者には小グループツアーを提供し、個人旅行と団体ツアーの中間として自由度とサポートを両立しています。
予算制約のある旅行者には、DIY旅行の代替案として、費用効率の良い小グループ参加や自己ガイド型旅行を提案しています。
業界をリードする透明性の確保
同社の透明性確保システムは、40,000件を超える旅行者レビューを中核としています。
これらのレビューは単なる満足度評価ではなく、責任ある観光政策に関する詳細なフィードバックを含み、以下の3つの方法で活用されています。
- 旅行会社への消費者監査として送付し、継続的改善を促進
- 他の旅行者が閲覧できるようサイトに掲載
- マーケティング活動での透明性確保
さらに重要なのは、誤解を招く宣伝を行った事業者の即座な除名制度です。
多くの場合、顧客の懸念を受けた事業者が自主的に持続可能性を改善し、その証拠がサイトで公開される建設的なサイクルが確立されています。
各旅行ページの下部には「この旅行がどのような違いをもたらすか」が明記され、旅行者は具体的な社会・環境貢献を事前に理解できる仕組みになっています。
Responsible Travelの具体的なサービス内容
Responsible Travelが提供するサービスは、鑑賞型のツアーとは一線を画し、旅行という行為を通じて環境保護や社会貢献を「自分ごと」として実践するための具体的なアクションが組み込まれています。
「TRIP for a TRIP」による子ども支援
「TRIP for a TRIP」は顧客が1回旅行をするたびに、経済的な困窮や教育機会の不足といった、社会的に不利な立場にある子どもたちに日帰り旅行を提供する画期的な社会支援制度です。
この仕組みで、すでに8,000人以上の子どもを支援してきました。
この制度の魅力は、顧客に追加費用が一切かからない点と、支援の透明性にあります。日帰り旅行先は世界各地に広がり、各地域の文化やコミュニティに貢献しています。
- ジンバブエのムクヴィシ・ウッドランド
- ルーマニアのピアトラ・クライウイ国立公園
- ラオスのルアウ・バッファロー酪農場
- カンボジアのアンコールワット
- インドのヘンリー島など
コスタリカ野生動物ホリデー
コスタリカ野生動物ホリデーは15日間にわたって中央アメリカの多様な生態系を探索する包括的プログラムです。
下記のような地域で様々な体験ができます。
- アレナル火山でのハイキング
- ピエドラス・ブランカス国立公園のレインフォレストロッジでの宿泊
- モンテベルデとサベグレクラウドフォレストへの訪問
- ジャングル・雲霧林・マングローブ湿地
太平洋とカリブ海両沿岸のビーチこの旅行の特徴は、野生動物観察の充実度にあります。
レインフォレストの樹冠でナマケモノ・サル・オオハシを、トルトゥゲロ国立公園の保護されたビーチではアオウミガメの観察が可能です。
環境保護にも配慮し、現地の小規模で家族経営の宿泊施設を活用することで地域コミュニティに直接利益をもたらしています。
アフリカサファリと野生動物体験
南アフリカ車椅子対応サファリは、Responsible Travelのインクルーシブ旅行への取り組みを象徴するプログラムです。
このツアーでは、ケープタウン、クルーガー国立公園、ビクトリア滝を巡る12日間の行程で、身体的制約のある旅行者でも安心してアフリカの大自然を満喫できます。
身体的な制約がある方でもアフリカの旅を心から楽しめるよう、ハード・ソフト両面から環境を整備しています。
カテゴリー | 具体的なサポート内容 |
---|---|
宿泊施設 | スロープ、大型ドア、バリアフリーの共用エリアを完備 段差のないシャワーや入浴用椅子を備えた客室 |
移動手段 | 電動リフトと車いす固定システムを搭載した専用バンを利用 |
観光・食事 | 訪問先の安全性とバリアフリー対応を事前に検証 レストランにはスロープが設置多様な食事にも対応 |
サポート | 旅行に精通した経験豊富なスタッフが24時間体制でサポート |
シルクロードの小グループツアー
シルクロードツアーは古代の交易路を辿る最大16人の小グループ旅行として実施しています。
ウズベキスタン・キルギスタン・中国を通る16日間のツアーから、5つのスタン諸国を巡る23日間の包括的なツアーまで多様なコースを用意し、サマルカンドなどの著名都市から観光の恩恵を受けることが少ない遠隔地域まで幅広くカバー。
このツアーの独自性は、小規模・家族経営の宿泊施設や地元ユルトキャンプでの宿泊にあります。
キルギスタンでは近隣村落の女性たちが作る伝統工芸品を販売する女性組合を昼食場所とし、ドゥンガン族・キルギス族の民話や黄金のワシによる狩猟の実演を通じて文化理解を深めます。
また、電車利用による移動も多用し、環境負荷を最小限に抑えながら持続可能な旅行を提供しています。
まとめ
Responsible Travelは、企業が持続可能な旅行を提供し、社会的責任を果たすための理想的なモデルを示しています。
環境保護や地域社会への貢献を最優先にした旅行設計は、企業のブランド価値を向上させ、顧客からの信頼を得るための強力な手段です。
また、アクセシビリティや多様な旅行者ニーズに対応するプランの豊富さは、幅広い顧客層に対応する企業にとって大きなメリットとなります。
自社のサービスにResponsible Travelのような責任ある旅行の要素を取り入れることで、持続可能なビジネスの実現と、企業としての社会的貢献を同時に達成できるでしょう。
今すぐ、持続可能な旅行の未来に向けた第一歩を踏み出し、社会的価値を高める取り組みを始めてみませんか?
参考文献