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テクノロジー×リジェネラティブツーリズムが拓く最先端の観光を解説

2026 1/19
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム テクノロジー 企業事例 各国の事例
2026-1-28

リジェネラティブツーリズムとは、旅行者が地域の環境や文化の再生に貢献しながら、豊かな体験を得る新しい観光のあり方です。

近年は、AI・IoT・AR/VRといった先端テクノロジーを活用することで、より効果的なリジェネラティブツーリズムを実現する取り組みが国内外で広がっています。

たとえば、訪問者の行動データを分析して観光地への負荷を分散させたり、VR技術で自然を傷つけずに深い体験を提供したりするケースが増えています。このように、テクノロジーは持続可能な観光を支える鍵となっているのです。

本記事では、テクノロジーを活用したリジェネラティブツーリズムの基本的な考え方から、国内外の最新事例、実践ポイントまで詳しく解説します。

目次

テクノロジーを活用したリジェネラティブツーリズムとは

テクノロジーを活用したリジェネラティブツーリズムとは、AI・IoT・AR/VRなどの先端技術を用いて、再生型の観光を実現する取り組みです。

従来の観光が地域資源を消費する傾向にあったのに対し、テクノロジーの力を取り入れることで自然環境への負荷を抑えながら、地域文化の保全と継承を支援する新しい観光のあり方だといえます。

リジェネラティブツーリズムの基本

リジェネラティブツーリズムとは、旅行先をよりよくして帰る旅のスタイルです。[1] 再生型観光とも呼ばれ、訪問者が地域に到着したときよりも、去るときによりよい状態になっていることを目指します。

サステナブルツーリズムが環境・文化の保全や地域の持続性を重視するのに対し、リジェネラティブツーリズムはさらに一歩進んで、積極的な地域の再生・回復を目的としています。

リジェネラティブツーリズムで推奨される具体的な取り組みは、以下の通りです。

  • 環境に配慮した移動手段の利用
  • 地元の事業やサービスの支援
  • 地元の人々との交流や伝統の体験
  • 心身の再生・健康プログラムへの参加

こうした活動を通じて、旅行者自身も豊かな体験を得ながら、地域の環境や文化の再生に貢献できます。その両立を目指す観光の形がリジェネラティブツーリズムです。

テクノロジー活用が注目される背景

近年、多くの観光地ではオーバーツーリズムによる、次のような問題が目立つようになっています。

  • 人気スポットの過度な混雑
  • 交通渋滞の深刻化
  • 自然・文化資源の破壊や劣化

これらの問題は、観光客数やその行動が適切にコントロールされていないことが要因と考えられます。その解決策として期待されているのがテクノロジーの活用です。

テクノロジーを活用することで、観光客の数や行動を規制・管理しやすくなります。

たとえば、スマートフォンやセンサーを活用して観光客の行動を追跡すれば、リアルタイムで混雑状況を把握し、別ルートや別スポットへの分散を促すことが可能です。

その結果、地域資源への負荷を軽減しつつ、快適な観光体験を提供できます。

観光体験を豊かにする主要テクノロジーとその役割

AIは観光客の行動を予測して混雑を緩和し、IoTは環境データをリアルタイムで可視化することで観光地の管理を効率化。さらにAR/VRは、自然や文化を傷つけることなく深い体験を提供する手段として活用が進んでいます。

AIによる行動予測・混雑緩和

近年、多くの観光地では、AIを用いた情報収集とそれらを活用した取り組みが進められています。

たとえば、年間500万人が訪れる埼玉県秩父市では、混雑緩和と情報収集のためにAIカメラを導入しています。

観光客が集中するスポットや駐車場に多数のAIカメラを設置し、混雑状況を「見える化」。観光スポットの混雑状況や駐車場の空き状況、タクシー待機列の有無などをAIで解析し、その結果をポータルサイトで発信しています。[2]

AIの活用はリアルタイムな情報把握と、継続的な情報収集に有効です。これにより、訪問者は混雑を避けた快適な観光ができるようになり、地域側は持続性のある観光地づくりを進めやすくなります。

IoTによる環境データの可視化と観光地管理

IoTセンサーは、自然環境の状態を把握し、観光地を管理する上で有効な手段です。

IoTセンサーとは、周辺のアナログな情報を電気信号に変換し、デジタルな情報として扱えるようにする装置を指します。

IoTセンサーを活用すれば、温度・湿度・圧力・照度といった環境に関する情報や人の有無、設備の状態などあらゆる情報を数値データとして収集・管理することが可能です。[3]

たとえば、東京都千代田区の丸の内仲通りでは、街の緑化効果をセンサーカメラで検証する取り組みが行われています。温熱環境や人流データを収集し、緑化で環境がどのように変化し、人流にどのような影響を及ぼすのかを計測。

その結果から、データに基づいた環境改善と観光地管理の可能性が示されています。[4]

IoTセンサーで得られたデータは、今後の街づくりや観光環境の改善に活かされ、訪れる人がより心地よく過ごせる空間づくりに活用されます。

また、アプリや案内板を通じて快適な休憩場所や歩きやすい日陰ルートの提案なども可能です。訪問者はこうした情報から自分が快適に過ごせるルートや場所を選択できるようになります。

AR/VRがつくる安全かつ深い自然・文化体験

AR/VRは、現地の魅力を損なわずに、安全で深い体験を提供する技術として広がりつつあります。

たとえば、紅葉の名所として知られる長野県箕輪町では、シーズンを問わず紅葉体験ができるVRコンテンツを作成し、専用サイトで公開しています。[5]

これにより、足の不自由な方や地理的制限のある方でも、長野県三輪町の紅葉を体験できるようになりました。また、VRで事前体験を行うことにより、現地への訪問意欲が高まる効果も期待できます。

文化分野の例としては、、奈良文化財研究所の「文化財デジタルアーカイブ」を活用したVR展示が挙げられます。現存しない遺跡や非公開文化財をVRで再現。貴重な文化資源を保護しながら、多くの人々が楽しめる環境を整えています。[6]

スマートシティ×ツーリズムの最新事例3選

スマートシティを、観光分野に応用する取り組みが国内外で増加しています。スマートシティとは、先端的なテクノロジーとサービスを活用し、誰もが快適に過ごせることを目指した街づくりのことです。

観光の場面では、訪問者の行動データを活用した混雑緩和や、アプリによる情報発信などが行われています。都市のデジタル基盤を観光体験の向上と地域課題の解決につなげることで、リジェネラティブツーリズムを推進しています。

鎌倉市(神奈川県) | 人流データを活用した分散観光

画像出典:国土交通省

神奈川県鎌倉市では、人流データを活用した分散観光に取り組んでいます。

鎌倉・江の島周辺は訪日外国人旅行者にとっても人気の高いのエリアです。その一方で、一部エリアにおいては以下のような問題が発生しています。

  • 混雑による道路渋滞
  • 鉄道・バスなど公共交通機関の混雑・遅延
  • ごみのポイ捨てなど来訪者のマナーに関する迷惑行為

こうした課題に対して、鎌倉市は人流ビッグデータの取得と分析により、状況の可視化と課題解消を図りました。[7]

システムの導入により混雑エリアや観光客の動線、混雑時間帯を把握。混雑状況や周遊ルートを発信し、観光客の自発的な行動変容を促しています。

データにもとづき訪問者自身が混雑を回避できるようにすることで、観光客が自らオーバーツーリズム対策に貢献できる設計になっています。

つくば市(茨城県) | スマートシティ「つくばモデル」

画像出典:つくば市

つくば市では、交通渋滞などの問題解消に向けてスマートシティ「つくばモデル」構想を進めています。[8]

具体的には以下のような取り組みを行っています。

  • パーソナルモビリティのシェアリングサービス
  • 外国人向け多言語ポータルアプリの作成
  • ハンズフリーチケッティング
  • ビッグデータを活用した交通や人流の分析・改善

とくにパーソナルモビリティのシェアリングサービス「つくモビ」は、リジェネラティブツーリズムの観点からも重要な取り組みです。自動車移動の代わりにパーソナルモビリティ機器を利用することで、観光客はつくば市の交通渋滞解消に寄与できます。同時に、まちのにぎわい創出に貢献できる仕組みです。

バルセロナ(スペイン) | アプリによる混雑情報発信・代替ルートの提示

画像出典:Turisme de Barcelona

バルセロナでは、持続可能な観光地管理の一環としてアプリ「Check Barcelona」が活用されています。[9] Check Barcelonaは、以下のような機能を備えたアプリです。

  • 観光地や駐車場のリアルタイムな混雑状況確認
  • 観光施設のチケット空き状況の確認
  • 観光施設の事前予約
  • 代替ルートや代替施設の提示

本アプリは、利用者が自ら混雑を回避できるよう設計されています。混雑している施設を避けたり混雑している時間帯を避けて行動できるため、観光の体験価値を高められます。

人気スポットだけでなく、周辺の観光地域にも人の流れを促す効果があります。地域の文化保全やにぎわいづくりにもつながる取り組みです。その点で、本事例は利用者の快適性と地域の持続可能性を両立させた、先進的な実践例といえます。

自然・文化体験を深めるテクノロジー活用の事例

テクノロジーの活用は、観光客数の抑制や管理だけでなく、自然や文化を保護しながら観光体験の質を高める手段としても有効です。具体的には、以下のような活用方法が考えられます。

  • プロジェクションマッピングによる没入型の自然体験
  • 多言語対応のデジタル案内による文化理解の促進
  • VRを活用した環境負荷の少ない観光

日々、テクノロジーを用いた新しい観光のアプローチが登場しています。実際の事例を参考に、テクノロジーの活用方法を学びましょう。

伊勢志摩国立公園(三重県) | 体験型プロジェクションマッピング

画像出典:日本国立公園

三重県にある伊勢志摩国立公園では、プロジェクションマッピングによる体験型アクティビティがを提供されています。[10]

体験型プロジェクションマッピングとは、プロジェクションマッピングで投影した対象に触れることで、映像が変化する操作型のコンテンツです。

伊勢志摩国立公園の体験型プロジェクションマッピングでは、壁や地面に映像を投影し、自然環境とそこに生息する動植物を紹介しています。訪問者は画面に出ているアイコンに触れることで、言語の選択や動植物の詳しい解説などを見ることが可能です。

訪問者は、体験型の深い学習を通して普段目にすることのない生態系に触れ、保護の必要性を「自分ごと」として捉えられるようになります。これにより、ごみを持ち帰る意識が高まったり、保護活動を積極的に行ったりするなどの行動変容につながります。

東武日光駅前(栃木県) | 多言語対応デジタル案内板

画像出典:表示灯株式会社

栃木県日光市の東武日光駅では、多言語対応のデジタル案内板という形でテクノロジーを観光に活用しています。

日光駅改札外コンコースには「ハイレゾ・ヒナタ」というデジタルサイネージを設置。日光の主な観光スポットをパノラマ地図で掲載したり、日光駅発着のバス路線やのりば案内を表示したりしています。[11]

ハイレゾ・ヒナタの特徴は、多言語に対応している点です。近年、日光市では外国人旅行者が増加していることから、日本語での表示に加えて英語・中国語(繁体・簡体)・韓国語・タイ語の6つの言語での表示にも対応しています。

観光客は日光周辺の観光情報の取得や、公共交通機関の利用による自動車移動の削減が可能に。これにより、地域の環境負荷軽減に貢献できます。

慶良間諸島国立公園(沖縄県) | VR展示

画像出典:NHK Enterprises

沖縄県の慶良間諸島国立公園にある、座間味ビジターセンター「青のゆくる館」では、VRを利用した展示が行われています。[12]

本展示では、透明度の高さで世界的に知られる慶良間の海と大自然をVRで再現しています。映像は世界唯一の12K解像度を誇る360°カメラで撮影されており、実際にダイビングしているような感覚で、美しい慶良間の海と多様な生態系を体感可能です。

実際に慶良間の海に潜るには、技術や環境への配慮から高いハードルがありますが、VRなら環境への負荷をかけずに海の中の様子や生態系を観察できます。貴重な自然環境を保護しながらその魅力を人に伝えられる点で、リジェネラティブツーリズムの理想的な実践例の一つといえるでしょう。

ニュージーランド | VRを活用したバーチャルツアー

画像出典:Virtual Journeys

ニュージーランドの旅行会社「Virtual Journeys New Zealand」は、VRを活用したバーチャルツアーを提供しています。[13]

VRを活用することで自宅にいながら自然豊かな島々、自然遺産公園、自然保護地域といったニュージーランドの主要観光施設を体験可能です。また、同社では人気観光スポットだけでなく、以下のようなアクティビティやツアーも提供しています。

  • ヘリコプターゴルフ
  • カヤック体験
  • ワインツアー
  • クルーズツアー
  • 農場ツアー
  • ウェルネスツアー

手軽さやコスト面だけでなく、環境保護につながることもバーチャルツアーのメリットです。移動によるCO2の排出削減やアクシデントによる自然環境・文化遺産破壊のリスク低減など、自然環境への負荷を減らす効果があります。

そのため、観光客は、体験価値を損なうことなく自然や文化の保全に貢献できます。

テクノロジーとツーリズムを組み合わせる実践ポイント

テクノロジーとリジェネラティブツーリズムを組み合わせるには、単に最新技術を導入するだけでは不十分です。地域が抱える課題を正確に把握し、適切なテクノロジーを選ぶことが欠かせません。収集したデータを効果的に活用できる体制を整える必要があります。

さらに、最初から大規模な導入を行うのではなく、段階的に実装し、効果を検証しながら改善を重ねることも重要です。

地域課題から逆算して活用するテクノロジーを選ぶ

テクノロジーを導入する際は、まず地域が抱える固有の課題を明確にすることが重要です。どれほど優れたテクノロジーを導入しても、それが地域課題の解決につながらなければ意味がありません。

以下のように地域が抱える課題から逆算して、活用するテクノロジーを選びましょう。

地域課題観光客増加による混雑訪日外国人の受入れ体制自然保護
テクノロジーの活用例AIによる人流・交通データの収集と分析多言語デジタル案内板の設置VRによるバーチャルツアーの実施

このように、解決したい課題を出発点にすることで、テクノロジー導入の方向性がぶれにくくなります。

データ活用のための体制を整える

テクノロジーを導入してデータを収集しても、それを活用できる体制がなければ効果は限定的です。テクノロジーの導入と並行して、それらを活用するために次のような体制を整えましょう。

  • データを収集するためのシステム導入
  • 各主体が収集したデータを共有するためのシステム整備
  • データをもとにした戦略立案体制
  • 専門人材の確保・育成

行政やDMO(観光地域づくり法人)といった、地域の観光関係者が連携してデータを共有し、PDCA サイクルを回す体制を整えることで、テクノロジーの真価を引き出せます。

段階的に導入して効果を検証する

テクノロジーの導入は、いきなり大規模に行うのではなく段階的に進めることも重要です。

AIカメラやIoTセンサーといったシステムの導入には、多大なコストがかかります。しかし、新たなテクノロジーを導入したからといって必ずしも成果が得られるとは限りません。

導入したテクノロジーが地域課題に適していなかったり、地域の運用体制に合致していなかったりするとかえって余計なコストが生じてしまいます。

初めは小規模な試験導入を行い効果を検証することで、こうしたリスクを低減できます。試験導入後は定期的な評価と改善を繰り返して徐々に規模を拡大し、地域に最適なテクノロジー活用の形を確立しましょう。

まとめ | テクノロジー×リジェネラティブツーリズムが導く未来の観光

テクノロジーの活用は、リジェネラティブツーリズムを実現する効果的な手段です。AIによる混雑緩和、IoTによる環境管理、AR/VRによる体験の深化など、先端技術は訪問者の満足度を高めながら地域の環境や文化の再生を支援します。

本記事で紹介した国内外の事例が示すように、目的によって利用すべきテクノロジーは異なります。地域課題から逆算してテクノロジーを選び、段階的に導入を進めながら、地域に適したテクノロジーの活用方法を模索してください。

日々進化するテクノロジーの力を活用して、未来につながる観光地づくりを目指しましょう。

参考文献

[1] リジェネラティブ・ツーリズムとは・観光用語集 – JTB総合研究所

[2] 観光渋滞はみんなの損。AIカメラで混雑「見える化」し対策 | 地域社会DXナビ

[3] IoTに必須のIoTセンサーとは何か。種類と特徴、活用シーンを解説|Microsoft Azureコラム|東京エレクトロンデバイス

[4] AI 技術を用いた人流計測により緑化の効果を検証

[5] 360°VRで巡る長野県箕輪町

[6] YouTubeなぶんけんチャンネル「XR平城京 ~古代の都をAR・VRで体験~」 – なぶんけんブログ

[7] 鎌倉・藤沢エリアにおける旅行者の意識と行動変容への取組みに関する実証事業

[8] つくばスーパーサイエンスシティ構想2.0

[9] A new app will improve visitor-flow management at different tourist sites

[10] 先端技術の事例 | 環境省

[11] デジタルサイネージ観光案内図「ハイレゾ・ナビタ」を東武日光駅に設置!

[12] 世界唯一のカメラが捉える未知の世界 12K360度水中VRカメラ映像

[13] Virtual Journeys – Virtual Vacations




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