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癒やしを超える「森林セラピー」の効果 | リトリートや保全活動としての活用

2026 2/19
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム 地域の事例 持続可能な観光 森林セラピー
2026-2-25

森林浴やヨガといった森林でのアクティビティは、単なる癒やしを超えたさまざまな効果があります。こうした効果は科学的に証明され、治療法などにも活用されていることから「森林セラピー」とも呼ばれています。

本記事では、森林セラピーがもたらす具体的な効果や、企業活動における活用方法、環境保全としての役割などを解説。国内の先進事例やプログラムを設計する際のポイントについても紹介します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

森林セラピーがもたらす「心と体の再生」

森林浴の代表的な効果としては、ストレスの低下が挙げられます。

長野県で行われた研究では、森林内で60分間の歩行を行った結果、ストレスホルモンであるコルチゾールの低下が確認されました。[1]

また、森林の樹木はフィトンチッドと呼ばれる物質を発散します。フィトンチッドには、NK細胞(免疫力を高める細胞)を活性化させる効果があるため、森林浴は免疫力向上にも効果的です。[2]

さらに、森林環境でヨガや瞑想を行えば、これらの効果はさらに高まります。

森林という環境に、ヨガや瞑想を組み合わせる。この複合的なアプローチにより、森林セラピーは単なるリラクゼーションを超えた、心と体の本質的な再生をもたらします。

リトリートや環境保全としての森林セラピーの活用

画像出典:一般社団法人 森と未来

森林セラピーは、心身の健康に効果的であることから、リトリートとして活用されるケースが増加しています。とくに近年は、社員のウェルビーイングを重視する企業や団体が、森林セラピーを積極的に取り入れています。

さらに、森林という空間への注目が高まることで、林業以外の森林の活用方法も広がりました。。結果的に、森林を保養型の観光地として活かす動きが進み、、環境保全にもつながる取り組みも増えています。

森林セラピーがリトリートや企業研修で注目を集める理由

森林セラピーを活用したリトリートは、従業員のウェルビーイング向上に適しています。

近年、企業の評価基準として財務指標だけでなく、従業員の心身の健康や働きがいといったウェルビーイングも重視されています。

森林環境でのリトリートは、ストレス軽減や疲労回復に効果的です。そのため、従業員の満足度や組織へのエンゲージメントを高め、離職率の低下にもつながると考えられています。

また、森林セラピーは創造力や集中力を高める効果も確認されており、企業研修としても活用可能です。[3] 実際に、自然環境の中で新人研修を行ったり、チームビルディング活動を行ったりする企業が増えています。

森林セラピーを活用した環境保全活動

これまでは、主に林業を中心に利用されてきた森林を、保養型観光地として活用する動きが高まっています。地域の自然資源に新たな価値を見出すことで、環境保全につなげる試みです。

また、森林浴プログラムを通じて、参加者に森林空間の適切な利用方法や、生態系の重要性を伝える教育的な活動も展開されています。

実際に森を歩き、樹木や植生に触れる体験は、環境保全への関心を高める効果的な手段です。参加者は森林の持つさまざまな面を肌で感じることで、自然保護の重要性を深く理解できます。

さらに、これらのプログラムで得た収益を植林や間伐、生物の保護といった活動資金に充てることで、より持続的な森林管理につながります。

森を訪れる人々が心身の回復を得ると同時に、森林環境の維持にも貢献する。こうした好循環が、森林セラピーの新しい価値として期待されています。

国内の森林セラピー活用事例4選

森林セラピーを地域資源として活用する動きは、日本各地で増加中です。地域の自然環境や文化的背景を活かしながら、リトリートプログラムや環境保全活動、企業研修など、さまざまな形で森林空間を活用する事例が生まれています。

癒しの森(長野県信濃町) | 20年以上続く保養型観光地づくりのパイオニア

画像出典:観光庁

長野県信濃町は、疲労回復やリフレッシュを目的とした保養型観光地を目指し、全国に先駆けてまちづくりを進めてきた地域です。

2003年より、自然環境を守りながら観光資源として活用する「癒しの森」事業を推進。2006年には、第1期森林セラピー基地(森林セラピーを受ける環境が整った地域)に認定されました。[4]

信濃町では、木の葉に触れたり、鳥の声や川の音を聞いたりといった基本的な森林内での活動に加え、以下のようなプログラムを提供しています。[5]

  • 調和療法(森の中でのヨガ)体験
  • 薬草や野草を使った植物療法体験
  • 爪もみ療法体験
  • 川などを使った水療法体験
  • 夜の森体験
  • ノルディックウォーキング

森林環境に、町独自の療法を組み合わせた体験を提供している点が特徴です。

企業や団体による利用も多く、社員の福利厚生や精神的リフレッシュ、身体的健康を目的とした研修の場として活用されています。[6]

さらに、癒しの森商品の共同開発に興味のある企業とも、積極的に協定や契約を実施。森林セラピーを核とした、地域経済の活性化にも取り組んでいます。

花背森林空間活用協議会(京都府花背地域) | 森林保全と地域活性化の両立

画像出典:京都市

花背地域は、京都市左京区の山間に位置するエリアです。

花背森林空間活用協議会が中心となり、地域活性化と森林保全を両立させるさまざまな取り組みが展開されています。

主なアクティビティは、以下のとおりです。[7]

  • 森林浴の体験会
  • 宿泊や食事とセットになった森林浴プログラム
  • 現在の森林環境が抱える問題について学ぶワークショップ
  • 林業体験とグループワーク

参加者の心身の健康維持だけでなく、森林を持続可能なものにするための教育的側面も重視している点が、花背地域の大きな特徴です。

参加者が体験を通じて森林環境が抱える課題を理解し、保全活動への関心が高まるよう設計。花背地域の取り組みは、森林セラピーと環境保全を結びつける先進的なモデルとして注目されています。

石川県森林公園(石川県津幡町) | 体験から環境教育まで段階的アプローチ

画像出典:石川県森林公園

石川県森林公園は、森林セラピー基地に指定されている自然豊かな公園です。広大な森林をそのまま活かし、四季折々の変化に富んだ里山の自然を楽しめる環境が整っています。

アウトドアやスポーツが楽しめる施設に加え、森林学習や木育(木や森との関わりを通じて豊かな心を育む取り組み)のための施設、動物愛護施設も整備されているのが特徴です。[8]

石川県森林公園では、以下のような段階的なプログラムを通して、森林セラピーを推進しています。[9]

【森林セラピーロード】
科学的に癒しの効果が実証され、森林セラピーに適していると認定された道。石川県森林公園では、湖畔沿いや森林内など5つのコースが整備されている

【森林セラピープラス】
セラピーロードでの散歩や休息に、ヨガやハンモックといったプラスアルファの活動を組み合わせたプログラム

【森林セラピーユアーズ】
ヨガや笑いヨガ、ハンモック、ノルディックウォーキングなど、心身の健康を促すプログラム

【森林セラピーアクト】
里地里山、森林の保全など、森林の持つさまざまな機能を学ぶ森林環境教育プログラム

体験プログラムで心身を整えたうえでセラピーアクトという形で環境教育・環境保全につなげる仕組みです。森林セラピーの効果に加えて、参加者の森林への理解を深める効果的なアプローチといえます。

森と未来 | 企業と森をつなぐ包括的なサポート体制

画像出典:一般社団法人 森と未来

森と未来は、森林での体験プログラムや環境教育を通じて、森林の維持・保全活動を行う一般社団法人です。NPO法人や地域の飲食店、施設などと協力しながら、全国で森を未来につなげるための活動を展開しています。[10]

個人向けの森林セラピー体験に加え、企業向けのプログラムも充実しているのが特徴です。

代表的なプログラムが、人材育成に最適な「TIME FOREST 研修」です。

本プログラムは、森が持つ効果を活かして、感性を育てることを目的としています。森のリラックス効果や創造性・柔軟性の向上、集中力の向上、自己内省といった効果を活用し、普段の職場では得られない気づきを与えています。

さらに、森と未来では以下のような企業支援も実施。

  • 企業向けSDGs活動支援:都会の森や地域の森林空間利用に関するサポート
  • 講演・コンサルティング:環境経営、地域との協働などを支援
  • 森林サービス産業支援:地域の森を活用した森林サービス創出の支援

企業が森林セラピーを導入する際の計画段階から実施、その後の展開まで、総合的なサポート体制を整えています。

森林セラピーを設計する際の重要なポイント

森林セラピーを地域や組織で導入する際には、独自性の確率と段階的な成長という2つの視点が重要です。

地域固有の自然資源に物語性を組み合わせて差別化を図りつつ、まずは小規模な取り組みから始めましょう。その後、参加者の反応を見ながら内容を磨き上げることで、魅力的かつ持続可能なプログラムづくりにつながります。

自然資源とストーリーの組み合わせで独自性を生み出す

森林浴やヨガといった基本的な活動は、多くの地域で提供できます。そのため、他地域との差別化を図るには、自分の地域ならではの要素が欠かせません。

たとえば、地域に伝わる民話や歴史的背景を、森林散策のルートに組み込むといったことが考えられます。これにより、参加者は単なる癒し体験を超えた深い学びを得られます。

他にも、薬草文化が根付く地域であれば植物療法と組み合わせたり、修験道の歴史がある森では精神性を重視したプログラムを設計したりするなど、設計の幅が広かります。

自然資源そのものは時間とともに変化しにくいものです。しかし、そこに紐づくストーリーは地域の文化や人々の営みを反映した唯一無二の要素です。

参加者が「この場所でしか得られない体験」と感じられるプログラムを設計することで、リピーターの獲得や口コミの広がりが期待できます。

小さく始めて育てる

森林セラピーの導入は、最初から大規模なプログラムを構築するのではなく、単発や短期のイベントとして小さく始めることが重要です。小規模ではじめれば、リスクを抑えながら継続的な運営できます。

初期段階では、参加者の反応を丁寧に観察し、フィードバックを収集することに重点を置きましょう。

以下のような点に注意することで、改善点が明確になります。

  • 森林散策の所要時間は適切か
  • ヨガや瞑想といったプログラムの質は十分か
  • ガイドの説明はわかりやすいか

参加者の声を反映しながらプログラムを磨き上げていくことは、単なる品質向上にとどまりません。試行錯誤を重ねることで運営側のノウハウが蓄積され、地域の特性に合った独自スタイルの確立にもつながります。

森林セラピーがもたらす癒やしを超えた効果

森林セラピーは単なるリラクゼーションにとどまりません。個人の健康増進、組織の活性化、地域の環境保全を同時に達成する包括的な取り組みです。

ストレス軽減や免疫力向上といった効果は科学的にも証明されており、さまざまな場面で活用できます。

森林セラピーの活用範囲が広がれば、それだけ観光地としての価値や企業向けプログラムの価値も高まります。結果的に森林空間の価値そのものが高まり、環境保全の動きも活発化します。

森林セラピーを通じて、心身を整えながら自然環境の保全にも貢献する。そうした好循環を、あなたの地域や組織でも実践してみましょう。

参考文献

[1] 森林浴における唾液中コルチゾール濃度と主観評価の関係

[2] Effect of forest bathing trips on human immune function – PMC

[3] Effects of forest bathing and the influence of exposure levels on cognitive health in the elderly: Evidence from a suburban forest recreation area – ScienceDirect

[4] 長野県信濃町 癒しの森事業

[5] 森林セラピー | 信州信濃町 癒しの森®

[6] 企業の皆様へ | 癒しの森モデルプログラム | 信州信濃町 癒しの森®

[7] お宝No.463 森林浴で心と体の健康づくり – みんなでつくる京都

[8] 森林公園について – 石川県森林公園

[9] セラピーロード – 森林セラピー基地 津幡町・里山の森と湖「石川県森林公園」 – 津幡町ホームページ(商工観光課)

[10] 森と未来 ―森林浴(shinrin-yoku)で都会の人と、地域の森を繋ぐ―




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