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サステナブルツーリズムとは?基本から課題・問題点まで簡単に解説

2026 8/31
リジェネラティブツーリズム
2026-9-3
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2025年の訪日外国人観光客数は約4,268万人で、初めて4,000万人を超えました。[1] 旅行消費額も9兆円台に達しています。[2]

数字だけを見れば、日本の観光産業は好調に思えるでしょう。しかし現場では、混雑による住民生活への影響や、収益が地域に残らないといったさまざまな課題が膨らんでいます。

そこで近年注目されているのが、サステナブルツーリズムという考え方です。本記事では、サステナブルツーリズムの意味や、似た言葉との違い、国際基準と国内のガイドライン、国内外の実例などについて詳しく解説します。

目次

サステナブルツーリズムとは

「サステナブルツーリズムとは」に関する記事のイメージ画像

サステナブルツーリズムとは、地域の環境・文化・経済を守りながら、地域の持続的な発展を目指す観光のあり方です。

旅行者が満足し、事業者が利益を得て、地域が資源と暮らしを保つ。この3つを同時に成り立たせることを目指します。

そもそもサステナビリティとは何か

サステナビリティ(持続可能性)は、「将来の世代が必要とするものを損なわずに、現在の世代の必要を満たす」という考え方が出発点になっています。

重要なのは、サステナビリティが「我慢すること」ではないという点です。将来にわたって使い続けられる状態を保つのが目的であり、活動そのものを止める必要はありません。

観光に当てはめれば、特定の活動をやめるのではなく、地域に負担をかけない観光の形を探るという意味になります。

サステナブルツーリズムの定義

国連機関であるUN Tourism(国連世界観光機関、旧UNWTO)は、サステナブルツーリズムを「現在および将来の経済的・社会的・環境的影響を十分に考慮し、訪問者、産業、環境、受入地域のニーズに対応する観光」と定義しています。[3]

注目したいのは、訪問者(旅行者の満足)、産業(事業者の収益)、環境(自然資源)、受入地域(住民の暮らし)という4者が並列で示されている点です。

つまり、住民の生活を守るために旅行者の体験価値を下げることも、旅行者の満足のために住民に負担を強いることも、どちらもこの定義から外れます。4者のバランスをどう取るかを問い続ける姿勢そのものが、サステナブルツーリズムの本質なのです。

なぜいまサステナブルツーリズムが必要とされるのか

近年、観光が地域にかける負担は無視できないものになっています。それに伴い、旅行者も旅先をどう選ぶかという価値観が変わり始めました。

受け入れる側と訪れる側の双方で変化が起きた結果、サステナブルツーリズムという考え方が広がっているのです。

観光が地域に与える影響の拡大

観光が地域に与える影響は、時代とともに拡大しています。

古くから指摘されてきたのが、マスツーリズムによる弊害です。20世紀後半、交通機関の発達と旅行商品の低価格化によって大量の旅行者が同じ場所へ押し寄せ、経済効果と引き換えに、自然環境への負荷や景観の画一化が進みました。

そして近年加わったのが、オーバーツーリズムによる負担です。特定の時期や場所に旅行者が集中し、道路や交通機関の過度な混雑、ごみやマナーをめぐる摩擦が発生しています。

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こうした課題は、その場しのぎの対策だけでは解決できません。「量」を追う観光から「質」を重視する観光へ、観光のあり方そのものを見直す視点が求められています。

旅行者の価値観の変化

旅行者の価値観にも大きな変化が生じています。近年の旅行者は、旅先の選び方や、旅先でのお金の使い方としてサステナビリティを重視するようになっているのです。

Booking.comが2025年に34の国・地域の32,000人を対象に実施した調査では、93%が持続可能な選択をしたいと回答し、73%が自分の支出が地域社会に還元されることを望むと答えています。[4] 地域の暮らしや文化に触れ、自分が使ったお金が地域に届く実感を得られる旅に、価値を感じる層が増えているのです。

その結果、旅が地域へどのように還元されるかを具体的に語れるかどうかが、旅先として選ばれる理由になり始めています。

サステナブルツーリズムの種類と似た言葉との違い

サステナブルツーリズムは、観光のあり方全体を問う考え方です。

エコツーリズムやグリーンツーリズムのように「旅の形」として語られるものの多くは、この考え方を特定の場所や目的に合わせて形にした実践だと捉えると整理しやすくなります。

エコツーリズムとの違い

エコツーリズムは、自然環境や生態系を対象に、その保全と観光利用、地域振興を両立させる旅の形です。ガイドの案内で自然を体験し、その収益を保全に還元する仕組みが代表例です。

サステナブルツーリズムとエコツーリズムの違いは、対象範囲にあります。エコツーリズムが主に自然環境を対象とするのに対し、サステナブルツーリズムは自然に加えて、文化、住民の暮らし、地域経済までを対象にします。

グリーンツーリズムとの違い

グリーンツーリズムは、農山漁村に滞在し、農林漁業の体験や地域の人々との交流を楽しむ旅の形です。都市と農村の交流を進める政策として、1994年頃から広がりました。[5]

サステナブルツーリズムとの違いは、出発点の置き方にあります。

グリーンツーリズムが「旅行者が農山漁村で何を楽しむか」から組み立てられるのに対し、サステナブルツーリズムは「地域に何を残すか」を出発点とします。

担い手の確保、資源の保全、収益の配分といった、地域を守るための仕組みづくりまで踏み込む点が大きな違いです。

リジェネラティブツーリズムとの関係

リジェネラティブツーリズム(再生型観光)は、現状を維持するだけでなく、訪問によって地域が訪問前より良い状態になることを目指す考え方です。

サステナブルツーリズムが、地域の環境や文化を「損なわないように守る」ことを土台にするのに対し、リジェネラティブツーリズムは「回復させる」ところまで踏み込みます。持続可能性を確保したうえで次に目指す段階と捉えると、実務に落としやすくなります。

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サステナブルツーリズムに関する代表的な国際基準と日本向けガイドライン

GSTCのロゴ画像
画像出典:GSTC Destination Standard | GSTC

サステナブルツーリズムに関係する基準やガイドラインは、国内外に数多くあります。

なかでも、日本の観光事業者や地域の関係者がまず押さえておきたいのが、国際基準の「GSTC-D」と、それを日本の実情に合わせて作成された「JSTS-D」の2つです。

項目GSTC-DJSTS-D
正式名称GSTC Destination Criteria日本版持続可能な観光ガイドライン
策定GSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会)観光庁
対象世界の観光地日本の地域
主な内容観光を管理する体制づくり、来訪者数の管理、地域経済への貢献、文化資産の保護、廃棄物やエネルギーの管理など、多岐にわたる評価項目と達成度を測る指標[6]GSTC-Dに準拠し、日本の地域が自らの状況を点検できる形へ整理した項目[7]

GSTC-Dは、持続可能な観光の国際基準を策定する非営利団体GSTCが、観光地を対象に定めた基準です。JSTS-Dは、それを土台に観光庁が日本向けへ落とし込んだ指針にあたります。

押さえておきたいのは、どちらもあくまで基準であり、合格や不合格を判定するものではないという点です。自分の地域や事業の現状を把握し、どこに課題があるのかを可視化するために使うことが大切です。

国内外のサステナブルツーリズムの取り組み事例2選

日本でも、サステナブルツーリズムに取り組む地域は着実に増えています。ここでは、リジェネ旅がこれまでに取材した中から、国内外の事例を1つずつ紹介します。

事例を読む際は、その地域が何に困っていたのか、そのために何を変えたのか、結果として地域に何が残ったのかという3点に注目してみてください。

関門DMO|2都市をひとつに束ねるインフラツーリズム

下関と門司港
画像提供:一般社団法人 海峡都市関門DMO

本州と九州が、最短約650メートルの海を隔てて向かい合う関門海峡。山口県下関市と福岡県北九州市門司区からなるこのエリアは、それぞれが強い歴史や文化を持つゆえに、旅行者が対岸へ足を運ばない「県境・海峡による分断」が長年の課題でした。

この課題を打破し、2つの都市を「ひとつの観光エリア」としてマネジメントするために立ち上がったのが、一般社団法人海峡都市関門DMOです。関門DMOが取り組んだのは、両都市を物理的につなぐ「関門橋」や「トンネル」といった社会インフラを観光資源と捉え直すインフラツーリズムでした。

具体的には、鉄道トンネルの海底試掘坑を歩くツアーや、現場担当者が案内する国道トンネルのバックヤード見学などを企画します。2都市を分断していた海峡そのものを、両者をつなぐ「共通の資源」へと位置づけ直したのです。

関門DMOがGreen Destinationsのイベントで表彰される様子
画像提供:一般社団法人 海峡都市関門DMO

この取り組みは国際的にも高く評価され、「Green Destinations Top 100」※のデスティネーション・マネジメント部門で世界3位に選出されました。

※ Green Destinations Top 100:Green Destinations(世界の持続可能な観光地やそのビジネス、地域社会を支援する国際的な組織)が、持続可能な観光に取り組む地域を選び、その事例を世界へ紹介する仕組み

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タイ|国全体で進める「量から質」への転換

グローバルカンファレンスのオープニングセッションで登壇している、タイ国政府観光庁(TAT)のタパニー・キアットパイブーン(Thapanee Kiatphaibool)長官

世界有数の観光大国として知られるタイは、長らく入込客数や外貨獲得額といった「量的指標」を重視してきました。しかし、現在は国レベルで大きな方針転換を図っています。旅行者をどう受け入れ、地方へ分散させ、地域経済へ還元するかという「質的な価値」の追求へと舵を切ったのです。

タイの取り組みのなかで、とくに参考になるのが「中小事業者を置き去りにしない設計」です。

国際基準をそのまま現場に持ち込むと、資金やノウハウの乏しい事業者は対応できません。そこでタイは、デジタルツール「Green Scan System」を導入し、事業者が自己評価から認証取得まで段階的に進められるようにしました。

高い国際基準をただ押し付けるのではなく、自国の事業者が使える形に「翻訳」したこと。これが、国全体でサステナブルツーリズムの裾野を広げる最大の鍵となっています。

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サステナブルツーリズムにおける課題と問題点

サステナブルツーリズムを推進しようと一歩を踏み出したものの、計画通りに進まず壁にぶつかる地域や事業者は少なくありません。取り組みを確実に前へ進めるために、つまずきやすい課題と問題点を事前に理解しておきましょう。

認証取得が目的化し、現場の運用が止まる

認証やアワードは、関係者を動かすきっかけとして有効です。しかし取得そのものがゴールになると、その後の運用が続かなくなります。

GSTC-DやJSTS-Dは地域の現状を測るための物差しであり、認証やアワードはその結果に対する評価にすぎません。取得後も数値を測り続け、改善を回す体制がなければ、掲げた基準は形だけのものになります。

認証を「取ること」よりも、その基準で「測り続けること」に価値があると捉え直しましょう。

追加の費用と人員が発生することが多い

サステナブルツーリズムの取り組みでは、追加の費用と人員が発生することが少なくありません。省エネ設備の導入やガイド育成といった初期投資に加え、廃棄物の分別や報告書の作成など、通常業務に上乗せされる作業も生じます。

予算や人手が限られる現場では、こうした負担を特定の担当者の熱意で乗り切ろうとしがちです。それでは、その担当者が離れた時点で取り組みが止まってしまいます。

宿泊税の活用や価格への転嫁など、取り組みを継続できる仕組みを先に整えましょう。

実態が伴わない発信はグリーンウォッシュと受け取られる

グリーンウォッシュとは、環境や社会に配慮しているように見せかけながら、実態が伴っていない状態を指します。観光では、根拠を示さないまま「サステナブルな宿」「地域にやさしいツアー」と打ち出す発信が当てはまります。

近年は規制も強まっており、場合によっては措置命令や課徴金の対象になり得ます。グリーンウォッシュを避ける方法は難しくありません。何をどこまで実施し、何がまだできていないのかを具体的に示すことが重要です。

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サステナブルツーリズムを実践するための5つのステップ

取り組みが途中で止まる原因の多くは、着手の順序にあります。現状を把握しないまま指標を決めれば実態と噛み合わず、関係者の合意を後回しにすれば実行段階で立ち止まります。

サステナブルツーリズムを実践するための順序を、5つのステップで整理します。

  1. 現状を把握する
  2. 関係者で話し合いを行う
  3. 取り組む範囲や指標を決める
  4. サービスや事業へと反映する
  5. 発信し、改善を回す

1.現状を把握する

最初に行うのは、感覚ではなく数値で現状を捉えることです。来訪者数と混雑の状況、宿泊施設や交通の受け入れ容量、廃棄物やエネルギーの使用量、地域に還元されている観光消費の割合などを確認します。

AIカメラによる人流の計測や予約データの集計など、数値を測る仕組みを整え、JSTS-Dのようなガイドラインと照らし合わせれば、より客観的に現状を分析できます。

2.関係者で話し合いを行う

次に、自治体や観光事業者、住民など、観光や地域の関係者が集まって現状を共有します。立場が違えば見えている課題も異なるため、事業者だけで方針を固めてから住民に説明するのは避けましょう。

また、話し合いは一度で終わりではなく、継続的に重ねることが大切です。

3.取り組む範囲や指標を決める

すべての取り組みに同時に着手はできません。把握した数値と共有した課題をもとに、優先する範囲を絞ります。

あわせて目標とする指標も決めましょう。来訪者数だけを追うと量的な拡大を意識してしまうため、旅行者1人あたりの消費額、地域内調達比率、住民満足度など、目的に合ったものを選びます。

4.サービスや事業へと反映する

ここまでで決めた方針を、実際の商品や運営に落とし込みます。体験プログラムに地域の文化や保全活動を組み込む、地元産の食材や資材の比率を上げる、繁忙期の集中を緩和する料金設定や予約制を導入するといった形です。

あわせて考えたいのが費用の回収方法です。保全にかかる費用を体験や宿泊の価格へ織り込むなど、負担を事業のなかで回収できる形にしておくと、よりサステナブルな取り組みになります。

5.発信し、改善を回す

最後に、実施した内容と結果を具体的に発信しましょう。抽象的な理念ではなく、何をどれだけ実施し、どのような数値になったのかを示すことが、旅行者の信頼と次の来訪につながります。

また、発信して終わりにせず、1で決めた指標を定期的に測り直して次の計画に反映することも大切です。この循環が回って初めて、サステナブルツーリズムの取り組みは地域に定着します。

サステナブルツーリズムは地域の暮らしと観光を両立させる手段

サステナブルツーリズムというと環境への配慮が思い浮かびますが、それだけを指す言葉ではありません。地域の環境・文化・経済のバランスを保ちながら、住民の暮らしと観光事業を同時に成り立たせるための手段です。

まずは自分の地域と事業の現状を把握し、関係者と課題を共有するところから始めてみてください。測って、話し合って、直す。この積み重ねが、10年後も選ばれる観光地をつくります。

サステナブルツーリズムに関するよくある質問

サステナブルツーリズムに取り組み始めると、多くの方が同じ疑問にぶつかります。観光事業者や自治体から寄せられることの多い疑問に答えます。

小規模な宿や個人事業でも取り組めますか?

取り組めます。大規模な設備投資がなくても、地元産の食材や資材への切り替え、使い捨てアメニティの見直し、地域の文化を組み込んだ体験の提供など、着手できる範囲は多くあります。

観光事業者は具体的にどのような取り組みをしていますか?

業種を問わず広がっているのは、地域内調達の比率を高める、廃棄物とエネルギーの使用量を測って削減する、地域の文化や保全活動を体験商品に組み込む、といった取り組みです。いずれも売上と地域への還元を同時に設計している点が共通しています。

参考文献

[1] 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」

[2] 観光庁「訪日外国人旅行消費額(確報)」

[3] UN Tourism「Sustainable development」

[4] Booking.com「2025 Sustainable Travel Research」

[5] 「農泊」の推進について:農林水産省

[6] GSTC「GSTC Destination Criteria」

[7] 観光庁「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」

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