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「管理」から「投資」へ ─ 持続可能な調達が地域と観光の価値を高める理由

2026 4/23
経済(働き方、生産・消費、産業・技術)
CO2削減 持続可能な観光
2026-2-32026-4-23
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調達のあり方は、これまで品質やコスト管理として語られてきました。「どこから調達するかを縛られる」「調達先が限られて価格が上がる」といった懸念を持つ担当者も少なくありません。

しかし今、観光事業者に求められているのは、調達を地域経済循環への投資として再定義する視点です。

たとえば、地産地消やエシカル(環境や人に配慮した選択)な調達は、Scope3排出量の削減に直結すると同時に、地域経済乗数効果を高め、「地域独自のガストロノミー」という競争力あるストーリーを生み出します。

本記事では、国際的な持続可能な観光の国際基準であるGSTCの観光事業者向け基準を参考にしながら、持続可能な調達リストを実務としてどのように構築すべきかについて、具体例を交えながら解説します。

目次

調達を、管理から未来への投資へ

観光事業者にとって、調達の選択は単なるコスト判断ではなく、地域経済への投資行為そのものです。

たとえば、ある宿泊施設が以下のどちらを選ぶかを考えてみます。

  • 全国一律価格の大手卸から食材を調達する
  • 地元の農家・加工業者・物流事業者から段階的に調達する

後者の場合、支払われたお金は地元農家の収入となり、そこから地域内での雇用、設備投資、別の地元事業者への発注へと波及します。この資金の循環が、地域経済乗数効果を生み出します。[1]

地域のどの生産者・加工業者・物流事業者とパートナーを組むのか、また、どの品目を地域調達の対象として優先するのか。これらの選択は、単なる購買判断にとどまらず、地域産業の将来のかたちを左右する、政策的な意味を持つ判断だと言えます。

Scope3(サプライチェーン起因)排出量削減と調達戦略の関係

Scope3排出量は、観光事業者による温室効果ガス排出量の中で最も割合が大きく、かつ管理が難しい領域です。一般的には、Scope3排出量の多くが「購入した製品・サービス」「輸送」「委託先の活動」に由来することが示されています。[2]

  • 海外輸入食材 → 長距離輸送・冷蔵保管による排出増
  • 地域内調達 → 輸送距離短縮・中間工程削減

このように、調達先の見直し自体が排出削減策になります。

さらに、再生可能エネルギーを使用している加工業者や、環境配慮型農業をするサプライヤーを優先することで、排出削減の努力がサプライチェーン全体に波及します。[3]

地域経済乗数効果を高める持続可能な調達リスト

「地域経済乗数効果」とは、地域内で消費された1円が、どれだけ地域内で循環するかを示す概念です。観光事業者が地域から調達することで、次のような資金の流れが生まれます。

  1. 事業者が地域内で生産・加工・付加価値創出が行われた商品・サービスを調達する
  2. 関係する事業者が、地域内で雇用や原材料購入、設備投資を行う
  3. そこで得られた所得が、さらに地域内で消費される

OECD(経済協力開発機構)の分析でも、地域調達は間接雇用・誘発雇用を増やし、地域経済への波及効果を高めることが示されています。[4]

ここで重要なのは「地域」をあいまいな言葉のまま使わないことです。地域調達を進めるにあたり、事業者自身がどこで生産・加工・価値創出が行われているものを“地域”とみなすのかを、実務上わかる形で定義することが重要になります。

たとえば、「生産地から一定距離圏内(例:100km圏内)」や、「同一市町村内」「同一県内」といったように、距離や行政区分を基準として、自社にとって現実的な定義を設定します。この際、取引先が地元企業であっても、原材料や製品の大部分が域外・海外から調達されている場合は、地域調達として扱わない、といった整理も有効です。

実際に、Accor Groupの一部ホテルでは、生産地からおおむね100km圏内の農場や生産者と連携する取り組みが紹介されています。[5] これはグループ全体で統一された定義ではありませんが、「どこで価値が生まれているか」を重視して「地域」を具体化している好例といえます。

観光事業者は、こうした前提のもとで調達リストに

  • 地域調達比率
  • 地域雇用率
  • 地域付加価値率

といった評価軸を組み込むことで「価格の安さ」だけではなく、地域への実質的な貢献度を意識した調達を無理なく制度化できます。

トレーサビリティが信頼と物語(ストーリーテリング)を生む

トレーサビリティ(供給履歴の追跡可能性)は、食品安全のためだけの仕組みではありません。FAO(国際連合食糧農業機関)のガイダンスでは、トレーサビリティは信頼確保と説明責任の基盤と位置づけられています。[6][7]

  • メニューに「○○町△△農園の野菜」と明記
  • 生産者の顔や栽培方法を紹介
  • 季節ごとの仕入れ背景をストーリー化

これにより、食材は単なる原価項目ではなく、「体験価値」へと転換されます。

地域ならではのガストロノミーを生み出すための、調達先の選び方

地産地消やエシカル調達は、ただ食材を「地域で買う」だけで完結しません。調達リストを通じて地元生産者と連携し、季節性や製法、担い手のストーリーを組み合わせて提供することで、観光客にとって「ここでしか味わえない体験」になります。

これは価格競争からの脱却を意味し、観光地としての差別化に直結します。GSTCの観光事業者向け基準では、持続可能な調達や地域の経済的便益を重視する項目が明記されています。例えば調達においては、地域産品やフェアトレード、再利用可能な資材を優先すること、またサプライヤーとの契約に環境面の要件を明確にすることなどが考えられます。こうした考え方を調達ポリシーに反映し、実務として取り組んでいくことが重要です。[8][9]

持続可能な調達リストの作成ステップ

持続可能な調達リストを構築するには、現状を可視化し、地域資源を把握し、評価・契約・発信までを一貫して設計することが重要です。以下では、実務でそのまま使える形で、段階的に進めるためのステップを整理します。

  1. 調達先のマッピング

自社が調達を行っている生産者、加工業者、物流事業者を洗い出し、それぞれの能力(供給可能量、品質、価格など)や所在地を整理したうえで、リスト化・マッピングを行います。

  1. 評価基準の設定

リスト化・マッピングした調達先の情報をもとに、評価を行います。まず、供給可能量や品質、価格といった基本的な条件を確認します。そのうえで、自社の事業に合った持続可能性の指標を設定します。

指標の例としては、地域経済への貢献度を示す地域経済乗数効果(地域内雇用率、地元原材料の使用比率)、環境面の指標(CO2排出量の推定、輸送距離、環境認証の有無)、社会面の指標(労働条件やジェンダーへの配慮)などが挙げられます。

これらの項目を総合的に評価し、調達先ごとにスコアを付けていきます。[10]

  1. 契約・調達条項の整備

選定した持続可能性の指標や基準を調達先との契約書に反映し、環境への配慮やトレーサビリティに関する情報を提供してもらうことを明記します。あわせて、技術面でのサポートや認証取得に向けた支援を行うことで、中小事業者も無理なく参加できる仕組みをつくることができます。

  1. 情報公開とストーリーテリング

どのような考え方で調達を行っているのかを、メニューやツアー説明、パンフレットに盛り込み、訪れた人に地域の魅力や背景を伝えます。このような分かりやすい情報発信は、企業からの信頼や評価にも役立ちます。[11]

モニタリングと継続的改善

調達リストは静的なものではなく、定期的に評価・更新する必要があります。Scope3算出、地域経済指標(雇用・付加価値)、トレーサビリティの遵守状況をKPI化し、年次レビューで改善目標を設定してください。GHGプロトコルの算定ガイダンスやGSTC基準のモニタリング指標を活用することで、第三者に説明できる透明性が確保できます。[12]

まとめ

調達リストの整理は、ルール対応のためだけに行うものではありません。地域経済や環境に良い影響を生み出すための、大切な投資でもあります。また持続可能な調達方針を明確にし、発信することで、取引先にも自社の考え方が伝わり、地域の中でお金や価値が循環しやすくなります。さらに、調達の背景が見えることで、地域ならではのストーリーを持つ観光コンテンツづくりにもつながります。まずは、自社の調達の現状を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献

[1]Input-Output Tables | OECD

[2]Corporate Value Chain (Scope 3) Standard | GHG Protocol

[3]Scope 3 Calculation Guidance | GHG Protocol

[4]What gets measured gets managed: Tapping into local procurement in the mining industry to advance development – Development Matters

[5]Promoting Responsible Sourcing: Transforming Dining Experiences with Local and Organic Practices

[6]FOOD TRACEABILITY GUIDANCE

[7]FOOD CONTROL SYSTEMS I Traceability I Food Safety and Quality | FAO

[8]GSTC Attraction Criteria

[9]GSTC Destination Standard

[10]GSTC Standards

[11]EU Guidebook on Sustainable Tourism for Development

[12]Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions

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CO2削減 持続可能な観光
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