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GDS-Indexとは?100万人都市で採用されるサステナブルツーリズムを加速させるデスティネーション評価指標

2026 5/28
リジェネラティブツーリズム
GDS-Index サステナブルツーリズム 各国の事例 持続可能な観光
2026-6-9
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 気候変動や生態系への過度な負荷、住民の生活環境の悪化など、オーバーツーリズムに起因する影響をはじめ、観光産業が抱える課題は年々複雑化しています。単なる「環境に配慮した旅」という段階を超え、観光地そのものが社会・環境・経済の各側面で再生力(リジェネラティブ)を備えることが、いま世界的に求められています。

 こうした文脈の中で注目を集めているのが、GDS-Index(Global Destination Sustainability Index)です。本記事では、GDS-Indexとは何か、その仕組みや機能、そして日本のサステナブル観光にとってどのような意味を持つのかについて、詳しく解説します。

目次

GDS-Indexとは何か

GDS-Movement公式サイトの「GDS-Index」に関するページのトップ画像
画像出典:Global Destination Sustainability Index

 GDS-Indexとは、デスティネーション(観光地)のサステナビリティ・パフォーマンスを測定・評価し、継続的な改善につなげるための国際的なベンチマークプログラムです。[1]

運営主体であるGDS-Movement(Global Destination Sustainability Movement)の本部はオランダ・アムステルダムにあり、世界100以上のDMO(Destination Management Organisation:観光地マネジメント組織)や自治体が参加しています。コペンハーゲンやフランダース(ベルギー)、モントリオールなど、世界をリードする持続可能な観光地が名を連ねている点も特徴です。

 重要なのは、GDS-Indexが「認証」や「ラベル」ではないということです。一度取得して終わりの資格ではなく、継続的なパフォーマンス向上を前提とした改善プログラムとして設計されています。

各デスティネーションが自らの課題や弱点を可視化し、先進的な地域とのベンチマークを通じて学び合いながら、段階的により持続可能な仕組みへと転換していく。そのプロセスそのものを支援する枠組みといえます。

GDS-Indexの4つの柱 | 評価の仕組み

GDS-Indexの評価指標に関する図解画像
画像出典:Global Destination Sustainability Index

GDS-Indexは、70以上の評価指標(年次で更新)を用い、デスティネーションのサステナビリティを以下の4つの主要カテゴリーから包括的に評価します。(下記の評価内容は、2026年4月末時点のものです)

カテゴリー評価内容
環境パフォーマンス(Environmental Performance)気候変動対策、エネルギー、温室効果ガス排出、水資源管理、循環型経済、廃棄物、大気汚染物質、生物多様性など、都市・地域の環境負荷と再生力を多角的に評価します。
社会パフォーマンス(Social Performance)安全・治安、健康とウェルビーイング、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)、アクセシビリティ、住民満足度や地域との関係性など、人と社会へのインパクトを測定します。また、Social Progress Imperative IndexやCorruption Perceptions Indexなど外部の第三者データソースも活用されます。
サプライヤーパフォーマンス(Supplier Performance)ホテル、空港、PCO・DMC、レストラン、ベニュー、観光アトラクション、学術機関など、観光サプライチェーン全体におけるサステナビリティの取り組みを評価します。
デスティネーションマネジメント(Destination Management Performance)観光戦略、ガバナンス、指標管理と情報開示、キャパシティビルディング、ステークホルダー連携、訪問者管理など、持続可能な観光地運営の仕組みそのものを評価します。

環境への配慮にとどまらず、ガバナンスやサプライチェーン、地域社会との関係性までを含めて、観光地のあり方を統合的に評価している点が特徴です。

また、他の観光サステナビリティ認証と異なり、人口50万人以下の小規模都市に加え、50万人以上の中規模・大規模都市も多く参加しています。[2] 特にGDS-Indexの上位都市は、人口100万人前後の中規模都市が中心です。

そのため、持続可能性の実装においては、大規模都市の評価にも適用可能であり、「ちょうどよいスケール」を持つ都市が多い点も大きな特徴といえます。

GDS-Indexのプロセス | 参加から改善まで

GDS-Indexは、一度評価を受けて終わるものではなく、デスティネーションが継続的に学び、改善を重ねていく「循環型の仕組み」として設計されています。参加は公式サイトからの問い合わせを起点に、運営組織であるGDS-Movementとの対話を通じて進められます。

対象は主にDMOや自治体です。参加意向を示し、評価指標や必要データの説明を受けてエントリーした後、環境・社会・サプライヤー・マネジメントに関する情報を提出し、評価が行われます。

評価と改善は透明性の高いプロセスで行われ、主に以下の4つのステップで進行します。

  1. ベンチマーキング(測定)
  2. アセスメント(分析)
  3. コンサルティング(改善)
  4. コミュニケーション(発信)

初年度は現状把握が主な目的となり、翌年以降はその結果をもとに改善を繰り返していく点が、GDS-Indexの大きな特徴です。

1. ベンチマーキング

第三者的な枠組みのもと、デスティネーションの環境・社会・サプライヤー・マネジメントに関するパフォーマンスが評価・可視化されます。70以上の指標に基づいて評価が行われ、世界の他都市との比較やランキングが示されることで、自らの現在地と課題が明確になります。

2. アセスメント

ベンチマーキングの結果をもとに、カテゴリーごとの強みと改善余地を詳細に分析します。その上で、サステナビリティ戦略や政策、具体的な取り組みを高度化するための推奨事項が提示され、先進デスティネーションのベストプラクティスも共有されます。

3. コンサルティング

さらに踏み込んだ変革を目指すデスティネーションに対しては、個別のコンサルティング支援が提供されます。国家レベルの観光局から都市規模のDMOまで対象とし、観光やMICE分野におけるサステナブル/リジェネラティブなモデルへの移行を、実務レベルで伴走支援します。

このステップは必須ではなく、各デスティネーションのニーズに応じて活用されます。

4. コミュニケーション

測定・評価・改善のプロセスを外部に発信することも、GDS-Indexの重要な要素です。
優れた取り組みや成功事例を可視化し、都市のブランド価値向上につなげると同時に、観光・イベント産業全体への知見共有とインスピレーション創出にも寄与します。

GDS-Indexが選ばれる7つの理由

GDS-Indexへの参加がデスティネーションにもたらす主な価値は、以下の7点に整理できます。

  1. データに基づく意思決定の高度化:
    世界のデスティネーションとの比較を通じて、自らの現在地や強み・課題を客観的に把握できます。感覚ではなくデータに基づいた意思決定が可能になります。
  2. 戦略改善のための専門的な示唆:
    GDS-Movementの知見や先進事例をもとに、実務に落とし込める具体的な改善アクションが得られます。単なる評価にとどまらず、次の一手が明確になります。
  3. デスティネーション内の共創と変革の促進:
    行政、DMO、観光事業者、サプライヤーなど、多様なステークホルダーを巻き込みながら、地域全体での変革を推進するきっかけとなります。
  4. 第三者評価による信頼性の向上:
    GDS-Indexは認証制度ではないものの、国際的な評価フレームワークに基づく結果として、企業や会議主催者(MICE)に対する信頼性の高い指標として機能します。
  5. サステナビリティの取り組みの可視化と発信:
    データに裏付けられたストーリーを発信することで、サステナブル志向の旅行者や国際会議の誘致につながります。都市ブランドの向上にも寄与します。
  6. 効率的な改善プロセスの実現:
    何から着手すべきかが明確になるため、試行錯誤にかかる時間やコストを削減できます。体系的なフレームワークに沿って改善を進められる点が強みです。
  7. グローバルネットワークへのアクセス:
    GDS-ForumやGDS-Awardsなどを通じて、世界の先進的なデスティネーションと知見を共有し、実践的な学びとネットワーキングの機会を得ることができます。

UN SDGsとの連携 | 国際アジェンダとの整合性

国連の持続可能な開発目標(SDGs)17項目
画像出典:SDGsってなんだろう? | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

GDS-Indexは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)17項目と強く整合した設計となっている点が特徴的です。観光地の取り組みを国際的なサステナビリティの枠組みと接続する役割を担っています。

環境・社会・経済・ガバナンスといった多面的な指標を通じて、各デスティネーションがSDGsの達成にどのように貢献しているかを可視化します。

また、GDS-Movementは、国連が主導する「One Planet Sustainable Tourism Programme」に関与し、「観光における循環経済(Circular Economy)」に関する議論や実践にも参画。こうした国際的なプラットフォームとの連携により、GDS-Indexは単なる地域評価ツールにとどまらず、グローバルな潮流と連動した実践フレームワークとして位置づけられています。

このことは、GDS-Indexに参加することが、単なる観光振興施策ではなく、国際的なサステナビリティアジェンダへのコミットメントを示す行為であることを意味します。都市としての方向性や意思を、世界に対して明確に発信する手段ともいえるでしょう。

「リジェネラティブ観光」との接続。サステナブルを超えた先へ

GDS-Movementが掲げるミッションは、「人々が、訪れる場所としても、集う場としても、暮らす場所としても魅力的で再生的なデスティネーションを創り出せるよう、必要なマインドセット・スキル・ツールを提供し、その実現を後押しすること」です。

GDS-Indexは、この“リジェネラティブ(再生型)”という考え方を、観光地のマネジメントに具体的に落とし込むための実践的なフレームワークとして機能しています。観光を通じて、生態系・社会・経済をより良い状態へと回復・再生していくことを目指しています。

また、小規模な地方都市から大都市圏まで、それぞれの状況や発展段階に応じて取り組みを進められる設計になっている点も特徴です。こうした柔軟性を背景に、欧州を中心とした先進的な観光地だけでなく、アジア太平洋地域にも広がりを見せています。

GDS-Index Liteという入門的な選択肢

GDS-Index Liteに関する公式サイトのトップ画像
画像出典:Join GDS-Index Lite

最近提供が始まったGDS-Index Liteは、フルプログラムへの参加前に活用できる簡易版の評価サービスです。すべての指標を網羅する本格的なベンチマーキングに比べ、よりコンパクトな項目で構成されており、初めてGDSに触れるデスティネーションでも取り組みやすい設計となっています。[3]

まずは自らの現状を把握し、どこに強みや課題があるのかを整理したい。そんな初期段階のDMOや自治体にとって、有効な“入り口”となる位置づけです。

また、フルプログラムに進む前の準備ステップとして活用することで、必要なデータ整備や組織内の理解醸成を段階的に進めることができます。

このようにGDS-Index Liteは、サステナビリティやリジェネラティブな観光に取り組みたいものの、どこから始めるべきか迷っているデスティネーションに対して、参入障壁を下げる実践的な第一歩を提供しています。

2026年、EUグリーントランジション指令への対応

2026年版のGDS-Indexは、2026年9月に施行が見込まれる「EUグリーンクレーム指令」との整合を図るため、大幅な見直しが予定されています。この指令は、企業や自治体による環境配慮の主張に対し、科学的根拠や透明性の確保を求めるものであり、いわゆるグリーンウォッシュの防止が主な目的です。

これを受け、GDS-Indexでも評価指標やデータ要件の厳格化が進むと考えられます。単なる取り組みの有無ではなく、その実効性や測定可能性がより重視される方向に進む見込みです。

結果として、デスティネーションには、より高い説明責任とデータ管理能力が求められることになります。

日本の観光地にとっての示唆

日本では現在、オーバーツーリズムへの対応、地方観光の活性化、インバウンド戦略の見直しが同時に進んでいます。こうした状況の中で、GDS-Indexのような国際的ベンチマークに参加することは、観光地にとって大きな意義を持ちます。

具体的なメリットは3つ挙げられます。

まず、国際市場への発信力の強化です。欧米を中心に、企業やMICEバイヤーはデスティネーションのサステナビリティ実績を重視する傾向が強まっており、第三者評価は競争力を高める重要な要素となります。

次に、データドリブンな観光戦略の構築が可能になる点です。70以上の指標に基づき、感覚ではなく客観的なデータで現状を把握し、戦略に反映することができます。さらに、世界の先進的なDMOや専門家とのネットワークにアクセスできる点も大きな価値であり、新たな取り組みやイノベーションのきっかけとなります。

また、リジェネラティブ観光を「理念」から「実践」へと落とし込むツールとしても、GDS-Indexの重要性は高まっています。

GDS-Indexはサステナブルツーリズム認証制度とは異なり、合否を判定する仕組みではなく継続的な改善を促すプログラムとして設計されています。評価結果はTop 40ランキングとして公表され、2025年版ではヘルシンキが1位を獲得しています。

実際に上位にランクインする都市を見ると、コペンハーゲンやストックホルム、モントリオールなど、環境政策だけでなく市民参加やサプライチェーン全体の変革を進めている都市が並びます。

これらの都市に共通しているのは、「観光を成長の手段」としてだけでなく、「都市をより良くするための手段」として位置づけている点です。

GDS-Indexは、その変革のプロセスを可視化し、加速させるための実装ツールです。日本の観光地にとっても、これからの時代に求められるのは、単なる集客ではなく、地域・社会・自然とともに価値を再生していく視点です。

リジェネラティブな観光への転換は、すでに世界で始まっています。その流れにどう向き合い、どのように実装していくのか。いま、問われているのはその具体的な一歩です。

参考文献

[1]Global Destination Sustainability Index

[2]2024 GDS-INDEXREPORT

[3]Join GDS-Index Lite

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