エミレーツ航空|1年間で500トン以上のプラスチックとガラスをリサイクル

アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空は、機内で廃棄されたガラス瓶やペットボトルを回収し、2022年に合計500トンをリサイクルしたと発表しました。ペットボトルは、洗浄後フレーク状に砕かれ、溶かしてペレットになり、プラスチック製品のメーカーが回収し再利用します。ガラス瓶も色ごとに分けて粉砕され、「カレット」と呼ばれる再溶解可能なリサイクルガラスとして、ドバイのガラスメーカーに送られ製品の原料として利用されます。
エミレーツ航空は、ガラスやプラスチックのリサイクルだけでなく、環境に配慮した素材を使用する取り組みも行っています。
リサイクル&リユースへの取り組み

エミレーツ航空では、毎日数百万食の機内食を乗客に提供しています。機内食に使用される食器類がフライト後にどうなるか気になる方もいるでしょう。
実は、エミレーツではこれらの食器類をフライト後に徹底的にリサイクルし、再利用する取り組みを進めています。当社は廃棄物の削減とプラスチックの再活用に力を入れ、大規模なクローズドループ・リサイクル・プログラムに投資しています。この取り組みにより、使用後の食器類は埋め立て処分されるのではなく、エコノミークラスやプレミアム・エコノミーで使用されるトレー、軽食用の皿、容器などは再度回収され、洗浄・粉砕を経て新しい製品に生まれ変わります。
さらに、製造プロセスはアラブ首長国連邦内の専用施設で行われているため、輸送による環境負荷も軽減されています。製造施設は太陽光発電を活用し、水の使用を最適化し、廃棄物を最小限に抑えるなど、持続可能性を重視した設計が施されています。
エミレーツの取り組みは、循環型社会の実現に向けた重要なステップであり、地球環境への負担を少しでも減らすことを目指しています。
食品廃棄物の削減に向けた革新的な取り組み
食品廃棄物は、私たちの生活や経済、そして地球環境に多大な影響を与えています。食料資源を無駄にしないことは、持続可能な未来を築くために欠かせない重要な課題の一つです。そこで、エミレーツ航空では、機内食の廃棄を減らすための先進的な取り組みを行っています。具体的には、お客様がフライト中に注文する機内食のデータを収集し、追跡する新しい技術を導入しました。この技術により、乗客の満足度や食事の消費に関する詳細なデータを収集することが可能になります。
収集されたデータは、最新の人工知能(AI)を活用して解析され、将来の注文数や食事の好みを予測します。予測機能により、エミレーツはフライトに搭載する機内食の量と種類を効率的に最適化することが可能です。結果、機内で提供される食事の質を維持しつつ、食品廃棄量を30%から40%削減することに成功しています。AI技術に基づいた注文管理システムは、過剰な食材の用意を防ぎ、必要な量だけを準備することを可能にしています。
また、エミレーツは今後さらなる技術の改良を予定しており、食品廃棄量の削減を60%から70%にまで高めることを目指しています。今後の技術開発により、より精密な需要予測が可能になり、食品資源の無駄を最小限に抑えることが期待されています。乗客の満足度を損なうことなく、持続可能な航空サービスの提供に一歩近づくことができるのです。
エミレーツ航空は、食品廃棄物削減に向けた革新的な取り組みを通じて、地球環境への配慮と持続可能性の推進に貢献し続けています。
エミレーツ・フライト・ケータリングの革新的な垂直農場
エミレーツ・フライト・ケータリング(EKFC)は、持続可能な農業技術を推進するため、ドバイに最新の垂直農場を建設しています。この垂直農場では、上下に積み重ねる形で農産物を栽培する革新的な手法を採用しており、限られたスペースを最大限に活用しつつ、あらゆる環境条件下での生産を可能にしています。従来の農法では必要な広大な土地を使わずに生産できるこのシステムは、都市部での食料生産を効率化する画期的なソリューションです。
新しい施設は13万平方フィート(約12,000平方メートル)の広さを持ち、従来の開放型農地に比べて約99%少ない水量で農産物を育てることができます。それにもかかわらず、900エーカーの広さを持つ従来の農場と同等の量の収穫が見込まれています。垂直農場での栽培方法は、水の節約や土地利用の効率化に加えて、農産物の供給の安定性を高めることができます。気候変動の影響を受けにくく、持続的な食料供給が可能になるのです。
EKFCは、この垂直農場で、無農薬で育てられた新鮮な葉物野菜を毎日2,700kg生産することを目指しています。これにより、エミレーツの機内食やラウンジで提供されるサラダやその他の料理の品質を高めるだけでなく、地域社会や他の顧客向けにも安全で持続可能な食品を供給することが可能になります。さらに、垂直農場は農薬や化学肥料を使用せず、清潔な栽培環境を維持することで、より安全で栄養価の高い食品を提供します。
エミレーツ・フライト・ケータリングの垂直農場プロジェクトは、限られた資源でより多くの生産を可能にし、環境負荷の低減と持続可能な農業の促進を実現するものです。このような取り組みは、エミレーツが掲げる持続可能な未来の実現に向けた重要な一歩であり、環境保護への貢献と共に、乗客の満足度を高めることを目指しています。
環境保全に取り組むディルマ・ティーとのパートナーシップ
エミレーツ航空は、1992年以来、ディルマ社と長期的なパートナーシップを築いており、ファーストクラスの乗客には、特別にブレンドされたエミレーツのシグネチャ・ティーを含む、ディルマ社の高品質なティーを提供しています。これまでに、ディルマ社が厳選した10種類以上のティーが機内で楽しめるようになっています。
ディルマ社は、単なるティーメーカーではなく、地域社会への貢献や環境保護に重きを置いている企業です。高品質なティーの生産を通じて、社会的・環境的な持続可能性を追求することに取り組んでいます。
2017年、ディルマ社は地球環境への負荷を軽減するため、カーボンニュートラルの目標を達成しました。この達成には、二酸化炭素の排出量削減と相殺のためのさまざまな努力が含まれています。
たとえば、すべての紅茶農園でのバイオ炭の活用を始め、持続可能なエネルギー供給のための施策も導入されました。具体的には、スリランカ・ペリヤゴダにあるディルマ本社には、太陽光発電施設が設置され、また2つの農園には水力発電施設が導入されています。同社は再生可能エネルギーの利用を拡大し、環境への負担を最小限に抑えつつ生産を行っています。
ディルマ社の取り組みは、単にティーの品質向上にとどまらず、地域の持続可能な発展を支える要素でもあります。エミレーツ航空との提携を通じて、同社のティーは持続可能性と高品質を兼ね備えた商品として世界中の乗客に提供され、エミレーツの持続可能な空の旅の一環としての役割を果たしています。
リサイクルプラスチックから作られたブランケットの提供

エミレーツ航空の長距離路線のエコノミークラスでは、リサイクルペットボトルから作られたブランケットを6年前から提供しています。1枚のブランケットあたり、28本のリサイクルペットボトルが原材料として使用されています。同社は、6年間で合計9500万本以上のペットボトルを埋立処分ではなく、原料に変えることで、新たな原料の消費を回避することができました。また、リサイクルブランケットの製造工程は、従来のブランケット製造時と比較して、温室効果ガス排出量を約70%削減します。
責任ある調達
エミレーツ航空は、自社のサプライヤー規約に環境配慮に関する要件を盛り込んでいます。同社は、製品の設計段階からライフサイクル全体を考慮し、責任ある消費を行うことを大切にしています。例えば、木製の紅茶やコーヒー用のマドラー、紙製のストロー、機内販売用のバッグは、責任を持って管理された森林からの木材や紙を使用して製造されます。
サステナブルな素材を使った子ども用のアメニティ

エミレーツ航空では、搭乗客に提供する子ども用のアメニティやベビーキットなどもリサイクルプラスチックといった環境に配慮された原材料を積極的に活用しています。
ベルトバッグ、ダッフルバッグ、バックパックは、100%ペットボトルからリサイクルされた糸で作られています。エミレーツの子ども用バックパックは、1つあたり5.5本、ダッフルバッグは1つあたり7本のリサイクルペットボトルから作られており、これまで合計で800万本のペットボトルを埋立処分ではなく原料に変えることで、資源の消費削減に貢献しています。
エコノミークラスの持続可能なアメニティ
エミレーツ航空の長距離便では、エコノミークラスおよびプレミアムエコノミークラスの乗客に無料のアメニティキットを提供しています。
アメニティキットは、自然界の4つの重要な要素である「火・水・土・空気」をモチーフにしたデザインが特徴です。ポーチは、耐久性と環境性能を兼ね備えた洗濯可能なクラフト紙で作られ、無害な大豆ベースのインクを使用して印刷されています。環境配慮型のポーチは、デザインだけでなく、素材にも細かなこだわりが込められています。
アメニティキットの中身も同様に、持続可能性を重視した設計です。たとえば、歯ブラシは麦わらとプラスチックを組み合わせた素材から作られ、リサイクル可能な仕上がりになっています。さらに、靴下やアイマスクは再生プラスチックから製造され、廃棄物削減の一助となるよう工夫されています。各アイテムの包装紙は、90%にライスペーパーを使用することで、環境に配慮した取り組みが実現可能です。
エコフレンドリーなアメニティキットは、ただ快適なフライトを提供するだけでなく、持続可能な未来への意識を促す役割も果たしています。エミレーツ航空は、United for Wildlifeと連携し、絶滅危惧種の保護に積極的に取り組んでいます。アメニティキットには、ウミガメ、アフリカゾウ、スミレコンゴウインコ、ゴリラ、サメ、ライオン、センザンコウ、クロサイといった、世界的に絶滅の危機に瀕している動物たちがデザインとして描かれています。デザインは、保護の必要性を訴え、乗客に自然環境の保護への関心を高めてもらうことが目的です。
資源の削減・再利用・リサイクルへの積極的な取り組み
エミレーツ航空では、資源の有効活用と環境負荷の軽減を重視し、さまざまな部門で循環型経済の実現に向けた取り組みを行っています。当社の事業部門では、資源の消費削減に加え、使用済みアイテムを別の用途に転用し、耐用年数に達した資材のリサイクルを積極的に推進。こうした取り組みは、循環型社会の構築に欠かせない要素であり、持続可能な未来を目指す上で重要な役割を果たしています。
IT部門では、「印刷前に考えよう」キャンペーンを展開し、印刷量の削減を促進しました。このキャンペーンにより、わずか8か月間で印刷量は33%も減少し、数百万枚のコピー用紙と200万kWh以上の電力が節約されました。紙の消費と電力使用を大幅に削減することに成功し、環境負荷の軽減に貢献しています。
また、引退した航空機の機材もリサイクル可能です。フライト研修施設部門では、エミレーツ・エンジニアリングから提供された機材を活用し、訓練施設のインテリアをアップグレードする取り組みを行っています。たとえば、退役したエアバスA340-500から取り外された座席を再利用し、緊急脱出シミュレーターや客室サービス研修シミュレーターに2席ずつ改造しました。座席の耐用年数をさらに5~7年延長し、50席分の新しい座席の導入コストを削減することができました。
エミレーツ・フライト・ケータリングは、世界有数の機内食ケータリング企業であり、リサイクリングプログラムの導入により、事業規模に見合った資源の再利用が可能です。紙やダンボール、アルミホイル、缶、ペットボトル、プラスチック容器など、さまざまな素材をゴミ処理場に送らずに転用しています。多くの素材は、エミレーツの機体がドバイに到着した後に回収され、再利用されます。
さらに、エミレーツ・フライト・ケータリングは、エミレーツ環境グループが推進する「アルミ缶を活かす取り組み」にも貢献しており、エミレーツの機体から回収された数千キロのアルミ缶を毎年寄付しています。資源の循環利用を促進し、廃棄物削減に貢献することが目標です。
最後に
エミレーツ航空は、さまざまな持続可能な取り組みを通じて、環境保護への貢献と効率的な資源活用に取り組んでいます。リサイクル、再利用、食品廃棄物の削減、垂直農場での持続可能な食料生産など、すべての活動が循環型経済の実現に向けた重要なステップです。これらの革新的な取り組みは、持続可能な未来への意識を高めると共に、より良い世界の実現に寄与しています。
エミレーツ航空は、乗客の快適な旅を提供しながら、環境への責任も果たすことを目指しています。
