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第5次画観光立国推進基本計画が示す日本のリジェネラティブな観光地域づくり

2026 4/23
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム ニュース 持続可能な観光
2026-4-12026-4-23
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2026年3月27日、政府は新たな観光政策の指針となる「観光立国推進基本計画」を閣議決定した。[1]

2026年度から2030年度を対象とする第5次計画では、訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円という高い数値目標が掲げられている。一方で、それ以上に重要なのは、観光の「量」から「質」への転換が明確に打ち出された点だ。

なかでも注目すべきは、「リジェネラティブな観光地域づくり」という言葉が、計画本文に明記されたことである。これは、従来のサステナビリティをさらに一歩進め、観光を通じて地域の自然や文化を「守る」だけでなく、「回復・再生」へと導くという考え方だ。

観光が単なる消費活動ではなく、地域の未来を共につくる営みへと変わっていく。

この計画を読み解くことで、私たちが「リジェネ旅」として提案してきたリジェネラティブツーリズム(再生型観光)のあり方が、いまや国家戦略の中に位置づけられ始めていることが見えてくる。

目次

数字の裏にある国内観光の質的転換

画像出典:観光立国推進基本計画 | 観光政策・制度 | 観光庁

まず計画の輪郭を確認する。2025年の実績値として、訪日外国人旅行者数は過去最高の約4,268万人、消費額は同じく過去最高の約9.5兆円を記録した。コロナ禍前の2019年比でも大きく上回るこの数字は、日本の観光が量的には成熟期に入ったことを示している。

一方で、京都や富士山に象徴されるオーバーツーリズムの問題は深刻化し、「旅行者の増加を歓迎できない」という地域住民の声も顕在化してきた。

この現実を踏まえ、観光立国推進基本計画では基本方針の第一に「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」を掲げた。かつての計画が「いかに多くの旅行者を呼び込むか」を主眼としていたのに対し、今回は「住んでよし・訪れてよし・働いてよし」という三つの「よし」を軸に据えたのである。

住民が誇りを持てる地域でなければ観光も成り立たないという、当たり前でありながらこれまで後回しにされてきた視点が、本計画の根底に流れている。

「リジェネラティブ」という言葉の登場

計画の第3章第1節「観光地の強靱化」の冒頭には、「自然資本の地域観光への利活用推進」という項目がある。
ここでは、地域の豊かな自然を「重要な観光資源」と位置づけたうえで、次のように記されている。

(前略)自然資本を地域の観光推進に有効に利活用するとともに、それにより得られた資金や人材などを自然資本の保全・回復に回すといった保全・回復と活用が好循環するリジェネラティブな観光地域づくりを推進し、地域のWell-beingや魅力向上、地方創生を実現する

(出典:観光立国推進基本計画)

「サステナブル(持続可能)」という言葉が「現状を維持する」ニュアンスを持つのに対し、「リジェネラティブ(再生型)」は「旅行者が訪れるたびに地域が豊かになっていく」という動的な概念だ。

旅行者が消費するだけでなく、その行動が自然環境の回復や文化の継承に直接貢献する循環。これがリジェネラティブツーリズムの本質であり、今回の計画はその考え方を政策言語として正式に採用した。

世界の観光トレンドをリードしてきたコスタリカやカナダ、あるいはニュージーランドが実践してきた哲学が、日本の国家計画に組み込まれた意味は大きい。

観光地がもつ自然資本・文化資本を「消費」から「再生」へ

計画全体を俯瞰すると、リジェネラティブな思想は複数の施策領域に横断的に埋め込まれていることがわかる。

自然資本:自然と共に再生する観光の実現

自然資本の文脈では、国立公園の「保護と利用の好循環」が繰り返し強調されている。2031年の国立公園制度100周年を目標に、全35の国立公園で民間活用による魅力向上を進めながら、同時にネイチャーポジティブ(生物多様性の回復)を軸とした地域づくりを推進する方針だ。

脱炭素・脱プラスチックといった環境配慮型の受入環境整備も明示されており、観光が自然を消費するのではなく自然と共に再生するという方向性が示されている。

文化資本:旅行者が担い手となる地域文化・伝統の継承

文化資本の面では、ユネスコ無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」や「和食」、そして2025年度に提案が決定した「温泉文化」「神楽」を観光資源として活用する施策が盛り込まれている。

ここで重要なのは、単なる観光資源化ではなく、「旅行者の消費が文化の継承・保護に還元される」という設計が意図されている点だ。

歴史的建築物のリノベーションによる宿泊施設化、伝統芸能の体験コンテンツ化。これらはいずれも、旅行者が文化の担い手となることで地域の伝統が生き続けるという、循環型の構造を持っている。

食・農との連携:地域体験と一次産業の好循環

食・農との連携では、農山漁村での「農泊」を通じた滞在型観光が重点施策として位置づけられている。

2029年度までに農泊地域の年間延べ宿泊者数1,200万人泊、売上額2,200億円という具体的数値目標を設定しながら、農林水産業の活性化と旅行者の地域体験を結びつけようとしている。「ガストロノミーツーリズム」や「酒蔵ツーリズム」も同様に、地域の食文化を媒介に旅行者と生産者が直接つながる回路を形成するものだ。

「住民生活の質」を数値目標にした意味

今回の計画で特徴的なのは、オーバーツーリズムの未然防止を数値目標として明示したことだ。

「旅行者の戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立に取り組む地域数」を2030年までに100地域とする目標が設定されている。2025年時点での実績は47地域であり、地域住民が関与する協議体を設置し、混雑・マナー違反等の課題に対する計画を策定した地域として認定される仕組みだ。

観光の恩恵を「旅行者だけでなく住民にも」という視点は、リジェネ旅の根幹をなす原則と重なる。リジェネラティブツーリズムを先進的に実践するセーシェルやコスタリカなどの事例でも、地域住民の経済的・文化的エンパワーメントが不可欠な要素とされている。

日本での新たなアプローチとして、DMO(観光地域づくり法人)が「住民と旅行者双方の満足度向上」を使命として位置づけられ、宿泊税・入域料といった旅行者負担の財源を地域再生に還流させる仕組みの整備が促されている点は、評価に値する。

リジェネ旅、ビジネスへの示唆

この計画は、観光コンテンツを開発・提供する事業者にとっても重要な羅針盤となる。いくつかの点を整理しておきたい。

「高付加価値化」と「地方誘客」の連動

第一に、「高付加価値化」と「地方誘客」は不可分のテーマとして推進される。

2023年時点で訪日旅行者全体の約2%にすぎない高付加価値旅行者(富裕層)が消費額の約19%を占めるというデータを踏まえ、計画は全国14のモデル観光地でのコンテンツ磨き上げや受入環境整備を支援している。本物の自然体験・文化体験に高い対価を払う旅行者層は、リジェネラティブなコンテンツへの親和性が最も高い層でもある。

アドベンチャーツーリズムとエコツーリズムの推進

第二に、アドベンチャーツーリズムとエコツーリズムが明示的に推進される。

自然・文化・アクティビティを組み合わせた「日本の本質を深く体験するコンテンツ」として、これらが地方誘客と消費拡大の両方に効果があると位置づけられた。

自然資本への投資が旅行者体験の質を高め、その収益が自然保護に還元されるというリジェネラティブな循環を、政策が後押しする形になっている。

DXとの融合による「スマートなリジェネラティブツーリズム」

第三に、DX(デジタルトランスフォーメーション)との融合が重要な実装手段とされている。

混雑の可視化、需要の分散・平準化、旅行者データを活用したマーケティング。これらは環境負荷を低減し、旅行者体験を向上させながら地域の持続性を高めるためのツールだ。

計画はAIや生成AIの活用も視野に入れており、テクノロジーを通じた「スマートなリジェネラティブツーリズム」の展開が期待される。

2030年に向けた問いかけ | 観光立国の新たなステージ

もちろん、課題もある。観光立国推進基本計画において「リジェネラティブ」という言葉は登場したものの、それを測る指標や認証の仕組みはまだ整っていない。

JSTS-D(日本版持続可能な観光ガイドライン)に沿った認証地域は2025年に118地域に達したが、国際認証を受けた地域は目標の50地域に対し30地域にとどまる。持続可能性をさらに超えた「再生」の定量化は、次の課題として残されている。

それでも、「観光立国推進基本計画」という国家の最上位文書に「リジェネラティブ」という概念が埋め込まれたことの意義は小さくない。行政、DMO、事業者、旅行者。それぞれの役割を問い直す共通言語が生まれたとも言える。

旅は、訪れるたびにその場所を少しだけ良くしていけるものだ。そのような旅の設計と体験を積み重ねていくこと。それがリジェネ旅の本質であり、今回の計画が指し示す方向でもある。2030年を目標年とする観光立国の次のステージは、数の競争から再生の循環へと重心が移っていく時代の始まりかもしれない。

参考文献

[1]観光立国推進基本計画 | 観光政策・制度 | 観光庁

リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム ニュース 持続可能な観光
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