今年の3月に「Messe Berlin(メッセ・ベルリン)」にて開催された世界最大級の旅行業界見本市「ITB Berlin(アイーティービー・ベルリン)」は、国や地域別に分かれてそれぞれのホールに展示される豪華な国家パビリオンが見物ですが、それ以外にも9つの主要なセグメント(分野)によって構成されています。
その中でも注目度が高まっているセグメント「Adventure Travel & Responsible Tourism」に焦点を当て、サステナブルツーリズムや環境保護についてレポートしていきます。前回に続き、「ITB Berlin」現地レポートの第二弾としてお届けします。

サステナブルツーリズムを含む専門分野「Adventure Travel & Responsible Tourism」
今年の「ITB Berlin」では、テーマごとに以下の9つの主要セグメントが設けられました。

Adventure Travel & Responsible Tourism:アドベンチャーやスポーツ、エコツーリズムに加え、サステナブルな観光や環境保護に特化した分野。
Travel Technology:AIや予約システム、ホテルテクノロジー、決済ソリューションなど、旅行業界のデジタルトランスフォーメーションを支える技術を紹介。
MICE:会議や研修旅行、国際会議、イベントなど、ビジネスイベントの企画・運営に関わる分野。
Luxury Travel:「HOME of LUXURY」として、高級ホテルや特別な旅行体験を提供するサプライヤーとバイヤーのための専用エリア。
Medical & Health Tourism:医療サービスやスパ、ウェルネスなど、健康や治療を目的とした旅行に関連する分野。
LGBTQ+ Tourism:LGBTQ+コミュニティに向けた旅行商品やサービスを扱う、世界最大級の専門パビリオン。
Business Travel:出張管理や企業の旅行担当者向けに、戦略や最新の知見を共有。
Youth & Economy Accommodation:若年層向けの旅行やホステル、低価格帯の宿泊施設を中心とした分野。
Career / Talent Hub:観光業界への就職・転職を目指す学生や専門家、教育機関、企業が集まるネットワーキングの場として機能。

9つの主要セグメントの中から「Adventure Travel & Responsible Tourism」「Medical & Health Tourism」「LGBTQ+ Tourism」の3つの専門エリアがひとつのホール内に設けられました。中でもサステナブルツーリズムを含めた「Adventure Travel & Responsible Tourism」には、27か国から50を超える出展者が参加し、開催前から注目を集めていた専門分野の一つです。
アドベンチャー・トラベルは世界の旅行市場において最も急成長している分野の一つとされ、アクティブで自然志向の体験型旅行の広がりとともに、持続可能性や社会的責任を重視した旅行商品の需要も拡大しています。

同セグメントで特に大きな存在感を示していたのが、「Global Sustainable Tourism Council(GSTC)」です。持続可能な観光の国際基準「GSTCスタンダード」を策定・管理する非営利団体である「GSTC」は、今回が初出展となり、野生動物保護とアストロツーリズムの両立を目指す取り組みなど、持続可能な観光基準を紹介しました。

さらに、GSTCのディレクターであるRoi Ariel氏がステージに登壇し、「Sustainable Tourism with Local Communities」をテーマに講演を行いました。地域コミュニティを観光の中心に据える重要性や、オーバーツーリズムがもたらすリスクについて言及し、文化保全と利益の公正な分配を重視した持続可能な観光モデルの必要性を示しました。
また、GSTCと共通のビジョンを掲げる北海道観光振興機構も初出展しました。同機構は北海道の観光振興を担う団体であり、近年はアドベンチャートラベルとサステナブルツーリズムを重要な戦略として位置付けています。2024年に札幌市がGSTCメンバーに加盟したことを背景に、北海道全域でGSTCスタンダードを活用した観光地づくりを推進しており、その取り組みを世界に発信するために参加したとのことです。

その一環として、2025年10月には弟子屈町において「GSTC公認トレーニング」が実施されました。摩周湖観光協会の主催のもと、地域の観光関係者が持続可能な観光の国際基準を体系的に学ぶ3日間の研修が行われています。弟子屈町は2023年に「Green Destinations」による「世界の持続可能な観光地トップ100」に選出されるなど、先進的な観光地域として高く評価されています。
他にも、国際的に価値のある地質遺産(ジオヘリテージ)を保護し、ツーリズムに活用している「UNESCO Global Geoparks」をはじめ、Adventure Travel Trade Association、Myclimate、European Centre for Eco and Agro Tourism、Studienkreis für Tourismus und Entwicklungなどが出展しました。


リゾートホテルや施設も積極的に取り入れるサステナビリティ
個人的に注目したのは、サステナブルツーリズムの専門エリア「Adventure Travel & Responsible Tourism」だけでなく、国家パビリオンのある国や地域別エリアにおいても、持続可能な取り組みを推進するホテルチェーンや観光施設が出展していた点です。そのスタイルは、地域の自然や文化を活かしたアクティビティ、地産地消を取り入れた食体験やワークショップ、ウェルネスを重視した健康的なプログラムなど多岐にわたります。
例えば、インド・ケララ州を拠点とする「Somatheeram Ayurveda Group」は、世界初のアーユルヴェーダ・リゾートとして知られ、専属の医師やセラピストが常駐する治療特化型の施設を展開しています。豊かな自然環境の中で、ヨガやメディテーションを組み合わせた滞在体験を提供し、ゲスト一人ひとりの体質に合わせたベジタリアン料理を提供。使用する食材やハーブの多くは、リゾート内の自社菜園で有機栽培されたものを使用しています。

さらには、プラスチック製品の使用を避け、ガラス瓶やリネン製のバッグなどを使用し、雨水の再利用、排水処理施設によるガーデニングへの再利用、600種以上のハーブを保護し、生物多様性を守る活動を行っています。
日本パビリオンに出展していた「都ホテル&リゾーツ」グループでは、サステナブルな取り組みも積極的に推進しています。例えば、「シェラトン都ホテル大阪」では、宴会場の屋根約1,200㎡に太陽光パネルを設置し、自家発電によるCO2排出削減を実施しています。
また、「都シティ 大阪本町」「都ホテル 京都八条」「都ホテル博多」などを含む計16施設では、客室でのペットボトル入り飲料水の提供を廃止し、各フロアに設置したウォーターサーバーから専用のウォーターカラフェ(再利用可能な容器)に水を汲むスタイルへ順次移行しています。これらの取り組みは、2027年度中の完了を目指して進められています。
最後に
「ITB Berlin」では、特にラグジュアリーリゾートホテルチェーンやウェルネスを推進するリゾート施設で、環境に配慮した取り組みが積極的に進められていることがわかりました。中でも印象的だったのは、もともと100%サステナブルをコンセプトに掲げる「BIO HOTELS」のようなホテルではなく、一般的なホテルチェーンや大型リゾート施設が、再生可能エネルギーの活用やプラスチック削減、地産地消の推進など、できることから段階的に取り組みを進めている点です。旅行業界全体において、サステナブルツーリズムの重要性が広く浸透し、それが新たなスタンダードになりつつあることを実感しました。

