日本では観光需要の回復にともない、人気観光地での混雑や住民生活への悪影響など、オーバーツーリズムによるさまざまな課題が発生しています。こうした状況を受け、2026年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画(第5次)」では、オーバーツーリズム対策を含む観光政策の方向性が示されました。
本記事では、国内外の最新事例をもとに、自治体が持続可能な観光地づくりを進めるためのヒントを探ります。
日本のオーバーツーリズムの現状

日本では東京、京都、大阪などの都市部や、世界遺産などの人気観光地に人が集中し、オーバーツーリズム問題が深刻化しています。
オーバーツーリズムへの対策として日本政府もさまざまな支援を行っており、地方への誘致や人気観光地周辺での場所・時間の分散を試みています。
たとえば世界遺産の白川郷では、2026年12月1日から団体バス駐車場を完全に事前予約制とする予定です。[1] 予約時間ごとに駐車枠を区切ることで、時間的な分散が期待されます。
オーバーツーリズムによる地域住民や観光地への影響
オーバーツーリズムによって、地域住民の暮らしに以下のような影響が発生しています。[2]
- 観光動線が住宅地や生活動線に入り込み、住民生活に支障が出ている
- 通行や滞留が集中し、安全や移動に支障が出ている
- 騒音・路上飲食・喫煙・ごみのポイ捨てなどが発生し、観光客と住民との摩擦が生じている
- 景観や地域の観光資源に悪影響が生じている
観光客を増やすだけでなく、いかに地域住民の暮らしも守るかという点が、自治体の課題となっています。
オーバーツーリズムが起こる要因についてはこちらの記事をご覧ください。

日本政府が目指している方向性
日本政府は観光政策の基本的な方針を示した「観光立国推進基本計画(第5次)」を2026年3月に閣議決定しました。観光立国推進基本計画(第5次)では、主に以下のような施策が示されています。[3]
- インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立
- 国内交流・アウトバウンド拡大
- 観光地・観光産業の強靱化
とくにオーバーツーリズムに関係する「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」では、新たな数値目標が設定されています。観光客の受入れと住民生活の質の確保との両立に取り組む地域を、47地域(2025年度実績)から100地域に拡大する目標です。
また、「手ぶら観光の推進」などによる過度な混雑やマナー違反への対応強化、地方誘客及び消費拡大に効果の高い観光コンテンツの充実などを通じて、地方への誘客と需要分散を図る方針も示されています。
観光立国推進基本計画の詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。

オーバーツーリズムの現状 | 国内外で進む最新対策事例

国内外では、深刻化するオーバーツーリズムに対し、観光の質を高めながら地域の暮らしを守る対策が重視されています。各地の取り組みを参考に、観光の質向上と住民生活の保護を両立するヒントを探りましょう。
バルセロナ|宿泊税の大幅な引き上げ
バルセロナは2012年から宿泊税を導入していますが、2026年4月に大幅な引き上げを行いました。[4] 同市では2026年4月1日から、1人の観光客に対して、1泊当たり2~7ユーロの「観光施設宿泊税」と、5ユーロの「地方税」を徴収しています。

地方税は今後も2029年まで毎年1ユーロずつ引き上げる予定で、1泊あたり最大8ユーロとなる予定です。[5]

フィレンツェ|短期賃貸規制の拡大
フィレンツェでは短期賃貸の普及によって、地域住民向けの住宅不足や賃料の値上がりといった問題が起きていました。
そこで2026年5月に、短期賃貸の新規営業禁止区域について、大幅に拡大する方針を発表。

これにより市内の約16平方キロメートルの範囲で新たな短期賃貸物件の開設が2年間禁止され、規制対象となる住宅数は、35,593戸から103,000戸以上へと、ほぼ3倍に増える見込みです。[6] [7]
ギリシャ|ビーチ利用規制の強化
ギリシャでは、2026年夏に向けて特別保護対象のビーチを238か所から251か所へ拡大しました。
保護対象のビーチでは以下のような行為が禁止されます。[8]
- サンベッド・パラソルのレンタル
- ビーチバー・ウォータースポーツ設備の設置
- 大音量の音楽、大規模イベントの開催
- 車両の乗り入れ
- 桟橋や遊歩道などの構造物設置、ホテルによる実質的な「私有化」利用
美観、地形、環境の面で重要な海岸の保護を強化し、貴重な生息地や、そこに生息する動植物種を守る方針です。
京都市|手ぶら観光の拠点増強
京都市では、大型のスーツケースを持ち歩く観光客の増加により、公共交通機関などで混雑やトラブルが発生していました。
そこで荷物を持たずに観光してもらう「手ぶら観光」を推進。2026年4月には三菱UFJ銀行の京都支店において、銀行初となる「手ぶら観光サービス」のトライアルを実施しています。[9]

手ぶら観光の手段として「送る」「預ける」「コインロッカー」の3つの選択肢を用意し、観光客が自分に合った方法を選べる仕組みを整えています。[10]

オーバーツーリズムの現状から考える持続可能な観光のあり方
オーバーツーリズムに悩む多くの都市が、目標を単なる「観光客数の増加」から「持続可能な観光の実現」へとシフトしています。
たとえば「宿泊税」の導入も、そのための施策のひとつです。宿泊税には、観光客の過剰な流入をコントロールする効果があるだけでなく、集めた税金を地域の環境保全やインフラ整備に還元できるメリットがあります。
地域に住む人と観光客が、お互いに気持ちよく過ごせる場所をつくること。観光地がこの先もずっと愛され、生き残っていくためには、こうしたサステナブルな視点が求められています。
オーバーツーリズムの現状に関するよくある質問(FAQ)

オーバーツーリズムは、多くの観光地にとって深刻な問題です。ここでは、その原因や具体的な対策について、よくある質問をまとめました。
地域住民と観光客が、共に笑顔になれる観光地づくりのヒントを見つけましょう。
オーバーツーリズムの対策にはどのような手法がありますか?
オーバーツーリズムには主に4つの対策が有効です。
- 混雑していない地域や時間帯への分散
- リアルタイムの混雑情報の発信などデジタル技術の活用
- 地域や施設への入場制限
- 観光税の導入やサービスの有料化
オーバーツーリズム対策についての詳しい内容は、以下のの記事をご覧ください。

オーバーツーリズムが発生しやすい地域の特徴は何ですか?
オーバーツーリズムは、その地域の「受け入れキャパシティ(許容量)」を超えて、過度な観光客が集中してしまったときに発生します。具体的には、以下のような特徴を持つ地域で起こりやすくなります。
- 物理的なスペースが限られている地域
- 生活インフラと観光エリアが重なっている地域
- インフラ整備が追いついていない地域
観光地の受け入れキャパシティとオーバーツーリズムの関係について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考文献
[3]国土交通省 観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)(概要)」
[4]Guide to tourist tax in Spain: green tax 2026 – Civitfun
[5]The Parliament of Catalonia passes an increase of the tourist tax | Tourism
[7]Florence plans major expansion of Airbnb curbs beyond historic centre | Reuters
