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環境省「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン2.0版」を公表

2026 4/23
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム ニュース 持続可能な観光
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令和8年3月31日、環境省自然環境局国立公園課は「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)」を公表した。[1] 本ガイドラインは単なる施設管理基準の更新にとどまらず、日本の国立公園を舞台とした観光のあり方そのものを問い直す、野心的な文書である。

サステナビリティを「守る」ためのルールに留まらず、自然と人と地域経済が互いを再生させる「リジェネラティブツーリズム(再生型観光)」の実践指針として読み解くとき、その意義はいっそう鮮明になる。

目次

「満喫」から「再生」へ、ガイドライン策定の背景

画像出典:国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)

環境省が進める「国立公園満喫プロジェクト」は、日本の国立公園を世界水準のデスティネーションとして確立することを目指してきた。その中核を担う宿泊施設については、令和5年6月に策定された「国立公園ブランドプロミス」のブランドメッセージ「その自然には、物語がある」に集約される約束をどう体現するかが問われてきた。

今回のガイドライン2.0版は、そうした問いに対する、官民協働の現時点における到達点である。全68項目のチェックリストを通じて宿泊施設に求められるのは、豪華さや快適さではなく、「国立公園に来なければ得られない体験」の核となることだ。そのビジョンはリジェネラティブツーリズムの思想と深く共鳴している。

リジェネラティブツーリズムとは、観光によって消費された自然・文化・地域社会を元の状態に戻す(サステナブル)だけでなく、訪れることで生態系や地域コミュニティがより豊かになっていく状態を目指す考え方だ。ガイドラインには、その思想がチェック項目の随所に織り込まれている。

構造から読む「コア項目」と「ステップアップ項目」の二層設計

画像出典:国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)

ガイドラインは全5分類・8小分類の枠組みで構成され、国立公園内すべての宿泊施設が充足を目指す「コア項目」と、理想像としての「ステップアップ項目」に分かれる。

この二層設計の特徴は、画一的な義務付けではなく、施設の規模や立地条件、運営体制に応じた段階的な実装を可能にしている点だ。新設・更新時に本ガイドラインを参照することも推奨しており、施設整備の上流工程からサステナビリティ思考を埋め込む仕掛けになっているため、実務上の現実感がある。

さらに特徴的なのは、グループ会社や地域事業者との機能分担を認め、地域全体を一つの「ホスピタリティ・エコシステム」として捉える視点だ。宿泊施設単体での完結を求めず、地域の観光協会、ガイド事業者、地元飲食店、農林漁業者との連携を評価軸に組み込んでいる。これはリジェネラティブツーリズムが本質的に「個の努力」ではなく「関係性の設計」によって実現されるという考え方と一致する。

サステナビリティの実装 | 環境配慮項目の全体像

ガイドラインのサステナビリティ関連項目は、以下の4領域に体系化されている。

  • 地産地消・調達
  • エネルギー・脱炭素
  • 廃棄物
  • 水資源

脱炭素の文脈では、GHGプロトコルに基づくScope1・Scope2排出量の測定(No.42)、再生可能エネルギーの使用割合把握(No.44)、カーボン・クレジットを活用したオフセット(No.43)がステップアップ項目として位置付けられている。特にカーボン・クレジットについては「地域と共生し、自然公園法等の関係法令を遵守したプロジェクトにより創出されたもの」という条件が付されており、単なるオフセットに留まらず、地域の自然保護プロジェクトへの資金循環を促す設計になっている。

廃棄物領域では「ゼロ・ウェイスト」を目指す方針の策定(No.50)が求められる。定義にある通り、リサイクルの促進だけでなく「そもそもの消費を減らす」という上流思考が明記されており、消費型ホスピタリティからの脱却を促している。

水資源においては環境配慮型洗剤・バス用品の使用(No.51)、温泉資源の状態把握(No.52)が組み込まれている。国立公園内の宿泊施設が温泉を利用する場合、その資源が国立公園の生態系と直結していることを踏まえると、これは単なる節水ではなく生態系保全と一体化した取り組みである。

リジェネラティブの核心「保護と利用の好循環」の制度設計

本ガイドラインがリジェネラティブツーリズムの文書として象徴的なのは、第3章「持続可能な国立公園づくりへの参画」の小分類3-1「保護と利用の好循環の仕組み作り」である。

No.24では、土産物や宿泊プランに自然環境保全費用を付加した商品を販売し、売上の一部を当該国立公園の保全活動に還元することが求められる。訪問という行為そのものが保全への投資になる構造。これはリジェネラティブツーリズムの中核的な価値命題に他ならない。

さらにNo.23では、宿泊客自身が自然環境保全に参加する機会の設置が求められる。観光客を「消費者」から「参加者」「共創者」へと位置付け直すこの視点は、セイシェルのリジェネラティブツーリズム戦略や欧州のネイチャーポジティブ観光政策と同じ方向性を示している。

地域との共生、ストーリーテリングとインタープリテーション

本ガイドラインで繰り返し強調されているのが「ストーリー」の概念だ。「自然・暮らし・文化など地域の資源をつなぎ、その風景地の成り立ちや価値を伝えるもの」と定義されるストーリーの発信は、コア項目(No.11)として全施設に求められる。

ステップアップ項目では「インタープリテーション計画」の策定(No.55)も登場する。用語集の定義によれば、インタープリテーション計画とは「その場所らしさ、ならではの価値」の探求を基礎とした、地域と来訪者のコミュニケーションの在り方を可視化したものである。

これは、宿泊施設を単なる「宿」から「地域の物語の入口」へと再定義する取り組みだ。宿泊客が翌朝、ガイドとともに里山を歩き、地元の農家が育てた食材で朝食をとり、施設のスタッフからその土地の風土と歴史を聞く。そうした体験の連鎖が「内面の変化(トランスフォーメーション)」を生む、というビジョンがガイドラインの用語集にも明示されている。

環境省の新ガイドラインが提唱する実践サイクルと今後の展望

画像出典:国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)

「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)」は「理解→確認(自己評価)→計画→推進」という継続サイクルを推奨しており、年1回の定期的な自己評価と計画の見直しを促している。取組成果の外部公表(No.5・6)や多言語対応(No.7・62)もステップアップ項目として組み込まれており、インバウンド需要の取り込みとグローバルな情報発信も射程に入っている。

課題があるとすれば、自己評価方式を採用しているため施設間の取組水準が可視化されにくい点だ。今後、第三者認証や地域単位での集計・公表の仕組みが整備されれば、ガイドラインの実効性はさらに高まるだろう。

国立公園を世界からの目的地とする目標と、リジェネラティブツーリズムの理念は本質的に親和性が高い。「自然を消費して稼ぐ観光」から「訪れることで自然と地域が再生される観光」へ。本ガイドラインは、その転換点を示す重要な一里塚である。

参考文献

[1]「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(2.0版)」の公表について | 報道発表資料 | 環境省

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