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インバウンド増加とオーバーツーリズムの関係|観光振興の裏で守るべき住民の暮らし

2026 6/19
リジェネラティブツーリズム
インバウンド オーバーツーリズム サステナブルツーリズム 持続可能な観光
2026-6-25
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近年、世界各地の有名観光地でオーバーツーリズムの問題が深刻化しています。

深刻化している要因の一つが、インバウンドの増加です。インバウンド需要の増加は経済効果をもたらす一方で、過度な混雑やマナー問題など地域に負担を与える側面もあります。

こうした課題に対し、現在の観光地や自治体に求められているのは、観光振興と地域住民の生活を両立させながら、適切な対策を進めることです。本記事では、日本の京都やスペインのバルセロナの事例から、そのヒントを探ります。

目次

インバウンドと日本のオーバーツーリズムの関係とは?

2025年は日本を訪れるインバウンドの数が4,268万人を記録し、過去最高となりました。[1] 円安の影響により、日本は宿泊費や飲食費、交通費などが比較的安く、インバウンドにとって魅力的な旅行先となっています。

インバウンド需要の拡大は、日本に大きな経済効果をもたらしています。その最大の理由は、国内観光客に比べて一人当たりの消費額が多いためです。2025年のデータでは、国内観光客の旅行支出が1人当たり約4万円だったのに対し、インバウンドは約22.8万円に上りました。[2] 

しかしその一方で、受け入れ態勢が不十分な観光地では、インバウンドの急増によってオーバーツーリズムの問題が発生しています。

インバウンドの増加による日本のオーバーツーリズム問題

インバウンド増加に伴い、日本各地では以下のようなオーバーツーリズム問題が発生しています。

  • 言語の壁による情報不足
  • 文化・マナーの違いによるトラブル
  • 訪日観光のゴールデンルートへの極端な集中

オーバーツーリズム対策で大切なのは、問題が起きている理由や状況を正確に理解し、解決に向けて動くことです。そのためにも問題が起きている背景を理解しましょう。

言語の壁による情報不足

多言語対応が不十分な地域では、注意事項やマナー、交通ルール、ごみの分別方法などが、訪日外国人観光客に十分伝わらないという問題が生じています。言葉の壁による情報不足は、悪意のないルール違反を生み、現場の混乱や思わぬ事故・トラブルを引き起こしかねません。

とくにインバウンドの受け入れ態勢が整備されていない地方の観光地では、こうした問題が多発しています。

文化・マナーの違いによるトラブル

日本を訪れるインバウンドは、それぞれ異なる文化やバックグラウンドを持っていることが多いです。そのため日本では当たり前となっている「暗黙のルール」を知らないまま行動してしまい、以下のようなトラブルにつながってしまうケースがあります。

  • 路上飲食やごみのポイ捨て
  • 電車やバスなどでの大声での会話
  • 私有地への無断侵入
  • 神社仏閣などでのマナー違反

こうした問題を防ぐために、事前にルールの周知やマナー啓発を行い、トラブルにならない仕組みを作ることが求められます。

訪日観光のゴールデンルートへの極端な集中

インバウンドは、東京や京都、大阪などの“日本での定番ルート”に集中しやすい傾向があります。そのため、一部地域だけが急激に混雑したり、ごみが増加したりするなど、観光負荷が偏ってしまう状況が起きています。

京都の事例|観光振興と地域住民の暮らしの両立を目指す取り組み

京都 清水寺

京都市は日本の中でもインバウンド需要が高い観光地です。京都市では観光振興と地域住民の暮らしの両立を目指し、インバウンド向けに以下の取り組みなどを行っています。[3]

  • 多言語のマナー啓発チラシの配布
  • 手ぶら観光の促進

多言語のマナー啓発チラシの配布

京都では、インバウンドに向けたマナー啓発のために、英語・中国語・韓国語の3カ国語で書かれた「MIND YOUR MANNERS」というチラシを配布し、以下の11個のルールを伝えています。[4]

  1. 静かに京都を楽しもう(公共施設では声の大きさに気をつけよう)
  2. 人込みを避けよう(混雑しているところを避け、自分の京都を見つけよう)
  3. 手ぶら観光を楽しもう
  4. 自分のエコバッグと水筒を持ち歩こう
  5. 地元産の工芸を購入しよう
  6. ポイ捨てしない(罰金を科される)
  7. 文化施設や古い建物、壊れやすい物を大事に扱おう
  8. 芸者を呼び止めないで(勝手に写真を撮らないで)
  9. 禁止されるところで写真は撮らないで
  10. 道をふさがない(京都の狭い道では、密着しないで)
  11. 道路では禁煙(罰金を科される)

チラシは文字だけでなくイラストも入れることで、異なる文化をもったインバウンドにも理解しやすい内容にしています。

京都市が発行するインバウンド向けのマナー啓発チラシ
画像出典:公益社団法人 京都市観光協会(DMO KYOTO)

また京都市は、このチラシの内容を海外の旅行会社向け情報誌や、航空機の機内誌へのマナー啓発記事にも掲載しています。

手ぶら観光の推進

インバウンドは大型のスーツケースを持ち歩いて移動していることが多く、交通の混雑につながっています。そこで以下のサービスを提案し、荷物を持たずに観光してもらう「手ぶら観光」を推進しています。[5]

  • 京都駅から宿へ、宿から京都駅へ荷物を送るサービス
  • 交通系電子マネーでの決済や空き状況を確認できるコインロッカーサービス
  • ロッカーに入らない大きさの手荷物を、窓口で預かってもらえるサービス

「手ぶら観光」は交通機関での混雑を緩和するだけでなく、通行人の妨げや騒音被害など地域住民とのトラブルを防ぐ目的もあります。京都のオーバーツーリズム問題の詳しい現状や対策については、こちらの記事をご覧ください。

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バルセロナの事例|民泊規制など住民優先への転換

バルセロナは一都市だけでも年間2,610万人(2025年)の観光客が訪れる、世界有数の観光地です。[6] バルセロナの人口は約170万人ほどであり、人口の15倍ものインバウンドが訪れることで、住民生活に直接的な支障が出ています。これを受けて、2025年には住民による大規模なデモ活動が行われました。[7]

そこで、バルセロナは“観光と住民生活のバランス”を最重要課題として掲げ、観光客をマネジメント(管理)する政策に転換しています。

観光施設宿泊税(IEET)と地方税

バルセロナの対策で特徴的なのが、宿泊税の活用方法です。同市では1人の旅行者に対して2026年4月から今までの2倍となった1泊当たり2~7ユーロの「観光施設宿泊税」を徴収しています。

また「地方税」も前年から1ユーロ上がり、5ユーロとなりました。[8] 地方税は今後も2029年まで毎年1ユーロずつ引き上げて最大8ユーロとなる予定です。[9]

バルセロナの観光施設宿泊税と地方税の一覧
画像出典:Guide to tourist tax in Spain: green tax 2026 – Civitfun

観光税は、観光地をPRする広告費などに充てられるのが一般的です。しかしバルセロナは「ReCiutat基金」を立ち上げて、税収を住民生活に還元できる仕組みへと舵を切りました。観光税の一部から集めたお金で、地域の学校の空調設備を導入するなど、観光地が地域にプラスの影響をもたらす仕組みを整えています。[10]

クルーズの規制

バルセロナは世界有数のクルーズ港です。しかし、クルーズ船の観光客は消費が少ない割に、急激な混雑や排ガス増加をもたらすことが問題視されています。

そこで、バルセロナではクルーズ船の受け入れを規制するため、以下のような対策を行っています。

  • 12時間未満の滞在を伴うクルーズ船へのより高い税負担
  • クルーズターミナルの削減
  • 大型クルーズ船の管理強化(寄港数の制限、到着時間の分散など)
  • 到着後に市内へ向かう大量の観光バスの規制(予約管理、駐車時間の制御など)
  • 環境規制の強化(CO2削減、港湾の環境基準の引き上げなど)

Airbnbなどのライセンス制限や違法民泊の対策

観光客の増加による宿泊施設不足を背景に、一般の住宅をAirbnbなどの民泊施設へと転用するケースが増えています。その結果、地域住民のための住宅供給が減少し、家賃や住宅価格が高騰。地域住民が住み慣れた町を離れなければならなくなるなど、深刻な問題が発生しています。

そこでバルセロナ市はAirbnbを含むHUT(民泊施設)に対する規制に乗り出しました。市内を4つのエリアに分け、ライセンスの新規発行を制限したり、ベッド数の上限を設けたりしています。

さらに、無許可で運営される違法な民泊施設への検査と摘発を強化しています。[11]

バルセロナ市の民泊規制エリアを示したマップ
画像出典:Government Measure for Tourism Management 2024-2027

バルセロナのオーバーツーリズムの詳しい現状や対策についてはこちらの記事をご覧ください。

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インバウンドによるオーバーツーリズム解決には「観光の質」が重要

インバウンドの需要が多い観光地では、多言語によるマナーの啓発や、トラブルになっていることを直接解決するための対策が求められています。さらに先を見据えれば、観光客数を制限しつつも、観光税の導入などを通じて、地域への収益を維持・向上させる仕組みが必要です。

ルールを厳格化したり税を徴収したりすれば、観光客にとって一定のハードルにはなります。だからこそ、今後の観光政策においては、地域の文化や暮らしを守りながらも旅行者の満足度を高めていく「量から質への転換」が強く求められているのです。

参考文献

[1]JNTO「訪日外客数(2025 年 12 月推計値)」

[2]国土交通省 観光庁「【インバウンド消費動向調査】2025年暦年の調査結果(確報)の概要」

[3]京都市情報館「外国人観光客等へのマナー啓発の取組等について」

[4]DMO KYOTO「マナー啓発ツール 「MIND YOUR MANNERS」チラシを作成いたしました!」

[5]HANDS FREE KYOTO「ABOUT 手ぶら観光とは」

[6]El Observatorio del Turismo en Barcelona「Destination Barcelona closes 2025 with 26.1 million tourists and €14,041M in economic impact」

[7]GLOBE+「オーバーツーリズムでバルセロナが悲鳴 地元民ら反発デモ、観光客に水鉄砲も」

[8]Civitfun「Guide to tourist tax in Spain: green tax 2026」

[9]Barcelona「The Parliament of Catalonia passes an increase of the tourist tax」

[10]Barcelona「Citizen Return from Tourism – ReCiutat Fund」

[11]Ajuntament de Barcelona「Government Measure for Tourism Management 2024-2027」

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