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オーストラリアの環境問題への取り組みとサステナブルツーリズム

2026 5/28
サステナブルツーリズム
SDGs サステナブルツーリズム 持続可能な観光
2024-10-22026-5-28
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広大な大自然、コアラやカンガルーなどの野生動物、世界最大のサンゴ礁であるグレートバリアリーフなどで世界的に有名なオーストラリアは、環境問題にも積極的に取り組んでいます。

一方で、オーストラリアは気候変動の影響を特に受けやすい国でもあります。森林火災の頻発、干ばつの長期化、グレートバリアリーフでのサンゴ白化、海洋プラスチック汚染など、さまざまな環境問題に直面しています。

*サステナブル・ディベロップメント・レポート:各国のSDGsの取り組みを100点満点で点数化したSDGs達成度(SDG Index)を公表し、ランクづけしている

こうした危機感を背景に、2025年9月には2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比62〜70%削減する新たな国別目標(NDC)を国連に提出するなど、政府・州・企業による対策が加速しています。[1]

本記事では、「オーストラリアの環境問題と取り組み」を知りたい読者に向けて、環境問題を抱えるオーストラリアがどのようにして改善へ取り組み、サステナブルツーリズムを実践しているのかについて解説します。

目次

オーストラリアで起きている環境問題

近年、オーストラリアでは森林火災、水不足、海洋汚染などの環境問題が発生しています。過去の事例を含め近年、オーストラリアでは森林火災、水不足、海洋汚染などのさまざまな環境問題が発生しています。世界最大のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」でも、海水温の上昇による大規模なサンゴ白化が繰り返し起きています。[2][3]

森林火災

オーストラリアでは、過去に(1939年、1983年、2009年)大規模な森林火災が発生し、数十名の死亡者を出した歴史があります。

その後オーストラリア政府は深刻な森林火災を未然に防ぐため、森林管理を実施してきましたが、2019年9月から2020年2月にかけて、またも大規模な森林火災が発生。これにより約30名が死亡し、約3,000件の住宅およびビルが焼失しました。

また、この大規模火災は野生動物にも甚大な被害をもたらしています。

推計10億頭以上の動物が犠牲になり、ニューサウスウェールズ州では灰や汚物による汚染が原因で多数の魚が死滅しました。コアラについては、ニューサウスウェールズ州を中心に8,000頭以上が死亡・負傷したと推計されています。

その後も2024年は高温・乾燥傾向が続き、2025年の冬は記録的な多雨となったため、2025–26年シーズンは草原の成長による燃料増で「森林火災リスクが高まる」とNSW州の消防当局が警戒を呼びかけています。[4][5]

水不足

オーストラリアでは、水不足も大きな問題となっています。

乾いた大陸として有名なオーストラリアは、古い大陸で平坦な地形が特徴です。そのため、ごく一部の地域では年間降水量が 4,000mm 以上ありますが、国土の 8 割が平均年間降水量600mm未満であり、5割は300mm未満です。国全体での平均年間降水量は534mmであり、 年間平均降水量が1,718mmである日本と比べると日本の約3分の1程度です。

このような水不足の状況により、オーストラリアでは干ばつが深刻化しています。

このまま地球温暖化が進み、干ばつの規模が拡大していけば、牧草の減少で食肉や羊毛の輸出も落ち込むなど農業にも大きな影響を与えることになるでしょう。

海洋汚染

オーストラリアでは、2023–24年度に約320万トン(3.2百万トン)のプラスチックが廃棄物として発生しました。全体の回収・リサイクル率は約14%にとどまっており、残り約86%はプラスチックゴミとして埋め立て処理などされています。

また、年間約13万トンのプラスチック廃棄物が海や河川などに流出していると推計されています。[6][7]

数多くの野生動物が生息するオーストラリアにおいて、プラスチックゴミの問題は非常に深刻です。ウミガメや海鳥などの海洋生物がプラスチックゴミをえさと間違えて飲み込んでしまい死亡する事例もあり、生態系にも大きな影響を与えています。

オーストラリア包装協議会(APCO)の最新データによると、2023–24年度のプラスチック包装のリサイクル・堆肥化率は20%にとどまっており、国家目標(2025年70%)には大きな隔たりがあります。

一方で「問題のある使い捨てプラスチック」については、2017–18年比で46%削減が進んでおり、対策の効果は着実に出始めています。[8][9]

グレートバリアリーフのサンゴ白化

オーストラリア政府の海洋科学機関AIMSによると、2024年のグレートバリアリーフでは観測史上5回目(2016年以降では5回目)の広範囲な大規模サンゴ白化が発生し、航空調査を実施した1,080礁のうち約74%で白化が確認されました。

特に北部のグレートバリアリーフでは、2024–25年の年次報告で硬質サンゴ被覆率が前年比24.8%減となり、過去39年間の調査で最大の年間低下を記録しました。南部でも30.6%減と大きく悪化しており、温暖化と海水温上昇がサンゴ礁の存続を脅かしている現実が浮き彫りになっています。[10]

オーストラリアの環境問題対策

オーストラリアは深刻な環境問題を解決するために積極的な取り組みを進めています。

気候変動対策|2035年に最大70%削減へ

オーストラリアでは、気候変動による異常気象や干ばつ、森林火災が頻発し、自然生態系と生活環境に大きな影響を与えています。これを受けて、政府は2050年カーボンニュートラルの実現を掲げ[11]、再生可能エネルギーの導入を強化。特に太陽光や風力発電の普及が進んでおり、一般家庭にも屋根置き太陽光パネルが広く浸透しています。

また、グリーン水素など新エネルギー産業の育成も推進されており、脱炭素社会への移行は本格的です。

2025年9月には、パリ協定に基づく新たな国別目標(NDC)として、2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比62〜70%削減する目標を国連に提出しました。

ただし、提出された国家通報では、現行政策を維持した場合の2035年時点の排出削減見通しは「2005年比51%」とされており、62〜70%の目標達成には追加の政策強化が不可欠です。

観光事業者や企業にとっても、脱炭素対応は経営課題として避けて通れない段階に入っています。

水資源の保全と農業の持続可能化

乾燥した気候にあるオーストラリアでは、水資源の管理が重要課題です。マレー・ダーリング流域計画などにより、水の公平な配分や環境保全が図られています。[12]

農業分野では、水利用効率の高い栽培技術や再生型農業が注目されており、気候変動に強い農業システムへの転換が進んでいます。

生物多様性の保全と森林火災対策

オーストラリアには多くの固有種が生息していますが、環境破壊や森林火災により多くの動植物が絶滅の危機に瀕しているのが問題です。

政府は保護区域の設置や先住民の知恵を活かした土地管理を進めています。たとえば、「クールバーニング」という伝統的な焼却方法の導入により、大規模な山火事のリスクを減らすという取り組みが効果的です[13]。

NSW州では2024–25年シーズンに約37万7,290haを計画的焼却(ハザードリダクション)の対象として計画しましたが、降雨の影響などで実施面積は約10万ha程度にとどまりました。2025–26年シーズンに向けては、条件の良いタイミングで焼却を前倒しで進めるなど、運用を柔軟化しています。

海用プラスチックゴミ回収装置「Seabin(シービン)」の開発

出典:Seabin公式

シービンは、バケツ型の海洋プラスチックゴミ回収装置です。湖など他の水面に浮遊するゴミも回収できます。

世界各地の海でマリンスポーツを楽しんできたオーストラリア出身の2人が、「陸にはゴミ箱があるのに、なぜ海にはないの?」と疑問を抱いたことをきっかけに、海用プラスチックゴミ回収装置を開発しました。

2014年からプロジェクトが始まり、ヨーロッパで試行錯誤を重ね、2017年1月に正式に製造・販売されました。2022年時点で53以上の国と地域で1,100台以上のシービンが稼働しており、その後もさらに拡大を続けています。[14]

シービンは次のようにゴミを収集します。

  • 浮き桟橋にシービンを取り付ける
  • 吸い込み口が水面を上下に稼働することにより浮遊しているゴミが吸い寄せられる
  • 水と一緒に集まったゴミが水面から吸い込まれ、キャッチバッグ(ゴミ回収袋)に回収される
  • 吸い込んだ水のみを水中ポンプから排出する
シービンの画像
出典:株式会社平泉洋行

シービンの吸い込み口は直径50㎝、重量は40kgで、ビニール袋やタバコの吸殻、表層油やプラスチックが小さくなったマイクロプラスチックなども回収できます。定期的にキャッチバッグのゴミを回収するだけで清潔な水辺環境が維持できます。

リジェネ旅
海洋プラスチック汚染の問題とSDGs|環境に与える影響と解決策 世界各地から海に流れ込むプラスチックごみの量は年間800万トンと言われています。誤飲により海鳥やイルカなど多くの動物が命を落としたり、珊瑚礁の白化現象により気候変…

国家プラスチック戦略による使い捨てプラスチックの削減

プラスチック製品は私たちの暮らしに必要不可欠ですが、石油由来のプラスチックは製造や処分の際に、大量の二酸化炭素を排出します。

オーストラリア政府は、プラスチックによる環境汚染への対応をさらに推進するため、2021年に「国家プラスチック戦略(National Plastics Plan)」を発表しました。

この戦略は、以下の5つの項目で構成されています。

  • プラスチックの利用防止
  • リサイクル
  • 消費者教育
  • 河川・海洋保護
  • 研究開発

「利用防止」の項目では「プラスチック廃棄物を減らすための最も簡単な方法は、不要な使い捨てプラスチックを使用しないこと」と記載されており、産業界に対して各種プラスチックの段階的な使用廃止を求めています。

州ごとに進むプラスチック規制の強化

オーストラリアでは、州ごとにも使い捨てプラスチック規制が進んでいます。

たとえばクイーンズランド州では、2021年9月からストロー、カトラリー、皿、ボウル、飲料用マドラーなどの提供・供給を禁止しました。病院や介護施設向けなど一部の例外を除き、流通・卸売業者も対象です。

また、NSW州は2025年に「NSW Plastics Plan 2.0」を発表しました。2030年までに全散乱ごみを60%削減し、2035年までにプラスチック廃棄物の75%転換を目指しています。国の方針に加え、州レベルでも規制と削減目標が具体化されつつあります。[15]

オーストラリアのサステナブルツーリズム

オーストラリアでは、自然や世界遺産、多彩な生態系と先住民の文化を生かしたサステナブルツーリズムを実践しています。

国家戦略「THRIVE 2030」のもとで、2023年に「サステナブル・ツーリズム・ツールキット」が整備されました。これは、観光事業者が持続可能な観光に取り組むためのガイドラインです。

さらに2026年3月には、観光業界全体で環境や地域社会に配慮した取り組みを進めるための指針として、「サステナビリティ・イニシアチブ」も新たに発表されています。[16][17]

自然とのつながりを深める―クレイドル・マウンテン・ハッツ・ウォーク

クリイドル・マウンテン

タスマニアはオーストラリアの中でも特に自然のままの環境が残されているエリアです。クレイドル・マウンテン・ハッツ・ウォークは、そんなタスマニアの世界遺産地域を歩きながら、手つかずの自然を体感できるトレッキングツアーです。

このツアーでは、クレイドル・バレーのワルダイムからセント・クレア湖までの65kmを6日間かけて歩きます。道中では、オーストラリアの多様な風景を楽しむことができます。

太古の雨林や平原などの素晴らしい景色を通して自然とのつながりを深めることで、自然保全への意識が高まります。

グレイドル・マウンテンの詳細はこちら:クレイドル・マウンテン ー セント・クレア湖国立公園ガイド – オーストラリア政府観光局

世界遺産を旅する―ポート・アーサー史跡

タスマニア州、西オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州にはオーストラリアの囚人が住み働いていた、印象的な刑務所の建物、兵舎、広大な地所などの囚人遺跡群が散在しています。

なかでも19世紀半ばに囚人の労働で建てられたタスマニア州のポート・アーサー(Port Arthur)は、オーストラリアで最も保存状態の良い囚人遺跡群の一つです。

ポート・アーサーからの脱出ウォーキング・ツアーは夜間のゴーストツアー。自由を求めて脱獄を試みた囚人たちの実話を聞いて、歴史が蘇る体験ができます。

オーストラリアには世界遺産に指定されている20の素晴らしい自然と文化遺産があります。これらの場所は、観光客が訪れるほどに世界遺産としての重要性が高まり、将来にわたる保護をより確実にします。

ポートアーサーゴーストツアーの詳細はこちら:Port Arthur Historic Site

野生動物を守る―カンガルー島の絶滅危惧種を保護する

南オーストラリア州にあるカンガルー島(Kangaroo Island)は2019年から2020年にかけての山火事で甚大な被害を受けました。その後、オーストラリアは再生に尽力していますが、ツアーに参加することで再生の一助となることができます。

エクセプショナル・カンガルー・アイランド(Exceptional Kangaroo Island)のツアーでは、オーストラリアの中でも特に希少なカンガルー島に生息する有袋類のスピントプシスやテリクロオウムなどの動物を見ることができます。

コアラやカモノハシなど、オーストラリアにはユニークな野生動物が多数存在しています。動物たちを保護し、生息地を守るツアーに参加することで、地球環境の保護に協力できます。

エクスセプショナル・カンガルー・アイランドの詳細はこちら:Exceptional Kangaroo Island

古代の文化に浸るー先住民のガイド付きウォーキングツアー

オーストラリア先住民の文化は、地球上で最古の部類に属しています。彼らの土地を徒歩で訪れるガイド付きツアーに参加することで、サステナブルな暮らし、マインドフルネス、スピリチュアリティなどを体験できます。

クイーンズランド州のポート・ダグラス(Port Douglas)地域に位置するデインツリー・レインフォレスト(Daintree Rainforest)は、見事な美しさを誇る世界遺産です。

この土地には、本物の熱帯雨林の民であるクク・ヤランジ(Kuku Yalanji)族が住んでいます。ここでは、熱帯雨林は単なる木々やツル植物の集まりではなく、伝統的な薬や自然の食材の宝庫として扱われています。

1日または半日のガイド付きヌガディク・ドリームタイム・ウォーク(Ngadiku Dreamtime Walk)では、ガイドと一緒に土地を散策し、薬用植物の使用法から採集術、黄土色の絵画まで、古代の伝統について学ぶことができます。

これらの先住民体験は、THRIVE 2030戦略が重点分野に挙げる「First Nations観光」と方向性が一致しており、訪問そのものが先住民コミュニティの経済的自立と文化継承を支える仕組みとして位置づけられています。

ヌガディク・ドリームタイム・ウォークの詳細はこちら:Dreamtime Walks | Mossman Gorge Centre

オーストラリアの環境問題から考える、私たちにできること

環境問題を解決するためには、社会のあり方を従来とは大きく変えなければいけません。そのためには、政府だけでなく企業や個人も一体となって問題に取り組む姿勢が必要です。

気候変動の影響を強く受けるオーストラリアでは、国民の危機感と政策対応が連動して進んでいます。しかし、2035年排出削減目標の達成にはさらなる政策強化が必要で、プラスチック包装のリサイクル率や一人当たり排出量などの構造的課題も残っています。

気候変動は特定の国だけで解決できる問題ではありません。日本でも気候変動による自然災害が身近な課題になっています。

現状を少しでも良くするために、まずは「プラスチック製品を購入する機会を減らす」など一人ひとりができることから始めることが大切です。

参考文献

[1]UNFCCC|Australia’s 2035 Nationally Determined Contribution(2005年比62〜70%削減/2025年9月提出)

[2] Australian Institute of Marine Science(AIMS)|Coral bleaching events

[3] AIMS/GBRMPA|Aerial surveys of the 2024 mass coral bleaching event on the Great Barrier Reef

[4] The Guardian|NSW firefighters warn of dangerous 2025–26 bushfire season after wet winter(2025年9月)

[5] NSW Rural Fire Service|Fire Season Outlook 2024–2025(377,290ha計画/実績約10万ha)

[6] The Guardian|Australia’s amount of plastic waste surges as recycling rates fail to improve(2025年8月):プラスチック廃棄物320万トン(2023–24年度)

[7] Australian Parliament|Plastic Pollution Inquiry Report:年間13万トンが海・河川流出(CSIRO推計)

[8] APCO|National Packaging Targets Beyond 2025(2023–24年度進捗/プラ20%・問題プラ46%削減)

[9] APCO|Australian Packaging Consumption and Recovery Data 2023–24(2017–18年ベースライン、46%削減)

[10] AIMS|Annual Summary Report of Coral Reef Condition 2024/25(北部 −24.8%、南部 −30.6%)

[11] 2050年温室効果ガス排出量実質ゼロの目標に向けて

[12]資料7 オーストラリアにおける流域管理の権限委譲に関する動向 について

[13] カルチャー・バーニング |WWFオーストラリア |カルチャー・バーニング |WWFオーストラリア

[14] CB Insights|Seabin Project(2022年時点で53か国以上・1,100台以上稼働)

[15] NSW EPA|Plastics Plan 2.0(2025年11月発表)

[16] Tourism Australia|THRIVE 2030 Strategy

[17] Austrade|Sustainable tourism(THRIVE 2030)

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