【2025年2月】ロサンゼルスの山火事の最新情報|原因や観光産業の取り組みを解説

2025年1月7日、ロサンゼルスを襲った大規模な山火事は、28名の命を奪い、1万6,000以上の建物を焼失させました。約20万人が避難を強いられ、経済損失は2,500億ドルに上ると見込まれています。[1][2]
しかし、被害は特定のエリアに限られ、火災で被害のあった地域以外は旅行者の受け入れを続けています。ユニバーサル・スタジオやサンタモニカ・ピアなど、主要な観光施設も通常通り営業中です。[3]
本記事では、現地の最新状況と観光への影響を伝えながら、私たち旅行者にできる支援方法を紹介します。Dine LAレストランウィークや宿泊施設の利用など、具体的な支援の形を詳しく解説していきます。
ロサンゼルス山火事の最新情報
2025年1月7日に発生したロサンゼルスの山火事は、2月上旬までに完全な鎮火を迎えました。ロサンゼルス西部の高級住宅地で、太平洋沿岸に位置する地域で発生したパリセイズ火災とロサンゼルス郡東部の内陸部に位置する地域で発生したイートン火災を中心に、複数の火災が発生し、総焼失面積は50,000エーカー以上、(東京ドーム約4300個に相当)に及びました。
この未曾有の災害により、少なくとも28名の尊い命が失われ、16,000以上の建造物が焼失。約20万人が避難を余儀なくされる事態となりました。経済的損失は2,500〜2,750億ドルに達すると推計され、米国史上最も甚大な自然災害の一つとなっています。
2025年2月時点では、ロサンゼルスの海岸線に沿って南北に走る主要道路、パシフィックコーストハイウェイは部分的に通行が制限されており、マリブ付近の海岸沿いチャウタウカ通りからカーボンビーチテラスまでの区間は、緊急車両と復旧作業車両のみが通行可能な状況です。[4]
山火事の原因
今回の大規模火災の直接的な原因は現在も調査中ですが、複数の要因が重なって被害を拡大させたことが明らかになっています。
気候変動の影響により、カリフォルニアの乾季が冬季まで延長。この異常な気象パターンに、強力なサンタアナ風(ネバダ州とユタ州から南カリフォルニアに向かって吹く乾燥した強風)が重なったことで、火災の急速な拡大を引き起こしました。[5]
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)気候科学者のパーク・ウィリアムズ氏によると、気候変動は山火事の燃料となる植生の乾燥度に約25%寄与しており、火災の規模拡大に大きな影響を与えたとされています。
特筆すべきは、近年の「気象の振り子現象」と呼ばれる極端な気候変動です。2022年から2024年の記録的な降雨により植生が急増し、その後の極度の乾燥により、大量の可燃物が生まれました。
2018年にカリフォルニア州北部のビュート郡パラダイスで発生した大規模火災でも、同様の現象が見られました。この現象は気候変動がもたらす新たなリスクとして注目されています。
ロサンゼルスで発生した山火事が観光に及ぼす影響
山火事から1ヶ月が経過し、ロサンゼルスの観光への影響は限定的なものとなっています。被害は主にパシフィック・パリセーズ、マリブ、アルタデナ、パサデナ北部、ロサンゼルス郡北部のキャスティーク湖周辺に集中しており、市内の98%のエリアは通常通りの旅行者受け入れが可能です。
ロサンゼルス国際空港やLAメトロも通常運行を維持しており、観光客は安心してロサンゼルスを訪れることができます以下、主な観光スポットのアクセス状況を紹介します。
閉鎖中または制限のある施設・エリア
- パシフィック・コースト・ハイウェイ(ロサンゼルスの海岸線沿いの主要道路、チャウタウカ通りからカーボンビーチテラスまで通行制限中)
- ゲッティ・ヴィラ(パシフィック・パリセーズの丘の上の美術館)
- トパンガ州立公園(サンタモニカ山脈の自然公園)
- ウィル・ロジャース州立歴史公園(パシフィック・パリセーズの海岸沿いの公園)
通常営業中の施設
- ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド(ハリウッドヒルズのテーマパーク)
- サンタモニカ・ピア(サンタモニカビーチの遊園地付き桟橋)
- ハリウッドサイン(ハリウッドヒルズの丘の上の看板)
- ウォーク・オブ・フェーム(ハリウッド大通りとバイン通り沿いにある世界的に有名な歩道)
- クリプト・ドットコム・アリーナ(ダウンタウンのスポーツ施設)
- ディズニーランド・リゾート
- ドジャースタジアム
- グリフィス天文台(ロサンゼルス東部のグリフィスパーク内)
観光産業への経済的影響
ロサンゼルス観光産業は、2023年に過去最高となる404億ドルの観光収入を記録していましたが、今回の山火事により大きな打撃を受けています。
気象現象に対する経済の影響を測定しているAccuWeatherによると、今回のロサンゼルスで発生した山火事の経済的総損失額を2,500〜2750億ドル、日本円にして約40兆円(2025年2月18日現在)と推定。この数字はカリフォルニア州のGDPの6.5%に値します。
観光産業への経済的影響は深刻な様相を見せています。短期的な予約のキャンセルが相次ぎ、長期的な予約にも影響が出始めています。特にパサデナやグレンデール、バーバンクなどの火災影響地域では、避難者や緊急対応要員の受け入れにより、ホテルの稼働率が30%上昇しました。
一方で、ダウンタウンロサンゼルスでは需要が5%、ハリウッドやビバリーヒルズのホテルでは約20%の需要の減少が報告されています。しかし、ロサンゼルス観光局は、観光業を通じた地域経済の早期回復を目指しています。
旅行を通じての支援
山火事被害からの復興期において、一般旅行者の来訪は経済効果だけでなく、地域社会の再建を支える重要な役割を担っています。ロサンゼルスの観光産業は、地域経済の重要な柱として54万人以上の雇用を創出し、1,000を超える地元企業の事業基盤となっているからです。
これは、ロサンゼルス観光局のアダム・バーク局長が発表した声明の核心です。旅行者の訪問は、被災地の回復を支える重要な力となると強調しています。[6][7]
以下に、旅行者ができる具体的な支援方法をご紹介します。
Dine LAレストランウィーク
Dine LAレストランウィークは、1月24日から2月7日までの15日間、ロサンゼルス郡全域で開催された大規模な食のイベントです。82の地域から約400店舗が参加し、世界30カ国以上の料理が振る舞われました。
注目すべきは、ミシュラン認定33店舗を含む高級レストランも参加している点です。価格帯は、ランチコースが15ドルからと手頃で、ディナーは各店舗が独自の価格を設定。
さらに、このイベントは被災地支援も兼ねており、予約1件につき5ドルが赤十字社に寄付され、10万ドルの支援金が集まりました。[8]
宿泊施設の利用
宿泊施設を利用するだけでも、間接的にロサンゼルスを支援できます。宿泊施設が稼働することで、地域の雇用が維持され、清掃会社やリネンサービス、食材供給業者などの関連企業も事業を継続できるからです。
実際にロサンゼルスの宿泊施設では、被災者支援と旅行者受け入れを両立させながら復興に取り組んでいます。
また、ACホテルやキンプトンホテル、ホテルインディゴなど多くの施設が避難者のペット料金を免除するなど、きめ細かい支援を展開しています。サンタバーバラのホテルは被災者に20%の割引を適用するなど、近隣地域のホテルも支援の輪を広げています。
このように、非常時でも宿泊施設が満室営業を続けることは、地域経済を支え、将来の観光産業回復への架け橋となる重要な役割を担っているのです。
地域イベントへの参加
地域イベントの参加が、被災地支援につながる場合もあります。実際に、さまざまなイベントが開催されており、特にFireAid復興支援コンサートとフリーズ・ロサンゼルスが注目を集めています。
1月30日開催のFireAidでは、Intuit DomeとKia Forumの2会場でレディー・ガガなどの著名アーティストが出演し、全世界にライブ配信されました。[11]
また、2月20日から23日まで開催されたフリーズ・ロサンゼルスでは、29のギャラリーが参加する国際的なアートフェアを通じて、「LA Arts Community Fire Relief Fund」による被災アーティストへの支援が行われました。[12]
両イベントの収益は、被災地のインフラ再建や避難家族への支援、さらには火災防止技術の開発促進に活用される予定です。これらのイベントは、エンターテインメントを通じて被災地を支援でき、復興に直接貢献できる機会となっています。
復興への道|観光レジリエンスの重要性
観光レジリエンスとは、地域社会が自然災害などの危機的状況に直面した際、その困難を乗り越えながら、新しい環境に順応し、回復していく力のことを表します。
この概念は、2011年の東日本大震災を契機に、日本の観光研究分野で広く認識されるようになりました。被災地の観光産業が示した強靭な回復力と、地域コミュニティの結束力が、観光レジリエンスの重要性を実証する機会となったのです。
今回のロサンゼルスで発生した山火事からの復興においても、観光産業の回復力が重要な役割を果たしています。市内98%のエリアが通常営業を維持し、観光インフラの大部分が機能し続けていることは、この地域の強靭な観光レジリエンスの証といえます。
例えば、ロサンゼルスは地域社会全体で復興に取り組み、旅行者の受け入れと被災者支援を同時に進めています。この危機を通じて、地域のレジリエンスと連帯が強化されており、より強靭な観光地としての基盤が築かれつつあります。
最後に
2025年1月7日に発生したロサンゼルスの山火事は、28名の尊い命を奪い、1万6,000棟以上の建物を焼失する大惨事となりました。経済損失は2,500億ドル以上に達すると予想され、観光産業も大きな影響を受けています。
しかし、市内の98%のエリアは通常営業を維持し、観光を通じた復興への取り組みが進んでいます。Dine LAレストランウィークやFireAid復興支援コンサートなど、様々なイベントを通じて被災地支援の輪が広がりつつあります。
ロサンゼルスの観光産業は54万人の雇用と1,000以上の地元企業を支える地域の柱です。旅行者の訪問は、地域の回復に欠かせない力となります。この危機を乗り越え、より強靭な観光地として再生を目指すロサンゼルスに、旅行者も支援の手を差し伸べることができるでしょう。


参考文献
[1]2025 Incident Archive|カリフォルニア州森林火災保護局 (CAL FIRE)
[2]AccuWeather |MEDIA ADVISORY
[3]FAQ よくある質問:ロサンゼルスへの渡航について|カリフォルニア観光局/Visit California
[4]FOR IMMEDIATE RELEASE|カリフォルニア州交通局/California Department of Transportation (Caltrans)
[5]Climate Change A Factor In Unprecedented LA Fires|UCLA
[6]LA County Wildfire Updates|ロサンゼルス観光局/Discover Losangeles
[7]WILDFIRE RESOURCES FOR MEETINGS & EVENTS|ロサンゼルス観光局/Discover Losangeles
[8]Dine LA Restaurant Week|ロサンゼルス観光局/Discover Losangeles
[9]カリフォルニアの愛の実践:LAが団結|カリフォルニア観光局/Visit California
[10]Airbnb.org offers temporary housing to people impacted by Los Angeles wildfires |Airbnb
[12] Frieze|Applications Now Open for the LA Arts Community Fire Relief Fund