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観光地である前に、豊かな故郷であること。大洲市が実践する、住民のための「観光まちづくり」【後編】

2026 4/22
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リジェネラティブツーリズム
シビックプライド 企業事例 取材 大洲 愛媛 持続可能な観光 空き家再生
2026-4-23
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【前編】では歴史的建造物の再生とファイナンスの仕組みを、【中編】では関係人口や外部事業者を巻き込む、エコシステムの構築について触れてきた。愛媛県大洲市が仕掛けるモデルは、地方創生の先進事例として着実な成果を上げている。

しかし、どれほど優れた事業スキームを構築し、多くの観光客を呼び込んだとしても、それが地域住民の納得感や次世代への還元に結びつかなければ、その街は一過性のブームに頼る「消費される場所」として、やがて活力を失いかねない。

今回の【後編】では、観光まちづくりの真のゴールである「地域内への還元」に焦点を当てる。DMOが実践する組織内の目線合わせから、住民の暮らしを豊かにする店づくり、そして次世代の教育への波及まで。今回も引き続き、一般社団法人キタ・マネジメントの井上さんにお話を伺った。

井上 陽祐さん
一般社団法人キタ・マネジメント 企画課係長・CMO / 株式会社KITA代表

愛媛県大洲市出身。双日(株)を経て大洲市へUターン。地域DMO設立に携わり、2018年に(株)KITAを創業。現在は日本最大級の分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲城下町」のオーナーとして古民家再生に取り組む。

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まずは手を動かし、町の人と顔を合わせることから

地域を巻き込み、外の資本を導入して経済を回していく。こうしたプロジェクトを支えているのは、組織内部における地道な「目線合わせ」だ。キタ・マネジメントが大切にしているのは、華やかな企画を立てる前に、自分たちの足で現場の空気を知ることである。

この姿勢の原点は、2017年に結成されたNPO法人「YATSUGI」にある。当時、彼らが最初に取り組んだのは、管理に困っている空き家の清掃や空気の入れ替え、障子の張り替えといった、自分たちの手ですぐにできる小さな手入れだった。

YATSUGI
画像出典:キタ・マネジメント

歴史ある建物を残したいと願いつつも、どうすればいいか分からず取り壊しを考えていた所有者たち。YATSUGIのメンバーは、まずは自分たちが建物に入り、掃除をしたり人の気配を作ったりすることで、建物の傷みを少しでも食い止めようとした。そこでの対話や内覧の立ち会いを通じて、所有者の想いと「ここで何かを始めたい」事業者を丁寧につないでいった経験が、今のまちづくりの土台となっている。

こうした「まずは自分の手を動かし、現場を知る」というDNAは、現在のキタ・マネジメントの新人教育にも受け継がれている。新入社員は入社後の約半年間、地域の拠点施設である「まちの駅 あさもや」の運営に携わる。レジ打ちや品出し、清掃、観光客への案内といった実務を経験することを、組織の共通言語を作るための大切なステップと位置づけているのだ。

この現場での時間は、特に都市部から戻ってきたUターン人材にとって、町に馴染むための大切なステップになっている。

実際に働くスタッフの中には、大手企業などでキャリアを積んで帰郷した者も少なくない。彼らが戻ってきた理由は、単なる郷愁だけではない。都市部で培ったスキルを活かせるフィールドが地元にあり、かつ新しい試みを許容する環境が整いつつあることを、外側の視点から感じ取っているのだ。

一方で、外の世界を知る強みはあるものの、地元とはいえ「いまの大洲」で暮らす人々の感覚までは、すぐには掴みきれないこともある。

いきなりデスクに向かって戦略を練るのではなく、あえてレジに立って近所の方と挨拶を交わし、住民が何を求めているのかを肌で感じる。そんなふうに、まずは現場で町のリズムを理解しようとする謙虚な姿勢があるからこそ、地域の人々との間にも、少しずつ信頼関係が築かれていく。

「住民のため」の店づくり

観光まちづくりが進み、来訪者が増えるにつれて生じやすい課題がある。それは、町並みが観光客向けの土産物店や飲食店ばかりになり、地域住民の生活圏から切り離されてしまうことだ。

キタ・マネジメントが貫いているのは、観光客を呼ぶための「まちづくり」ではなく、あくまで住民のための「観光まちづくり」であるという姿勢だ。

この活動の根底にあるのは、観光客向けの店を増やすことではない。本屋や古着屋といった文化的なインフラを整え、そこに暮らす人々の日常を少しずつ彩っていく。そんな、住民が「この町なら面白い暮らしができる」と感じられる環境づくりこそが、全ての取り組みの軸となっている。

病院の手術室を改修した本屋
病院の手術室を改修した本屋

井上さんが構想するコインランドリーを誘致する計画は、地域課題をポジティブに解決する素晴らしいアイデアだ。大洲の歴史的な町並みに残る長屋は、中庭こそあれど、通りに面したベランダがない。洗濯物を干すスペースが限られており、特に高齢者にとって、軒下での物干し作業は一苦労だという。

だからこそ、「カフェ併設のコインランドリー」がこの町には必要なのだ。洗濯を待つ間、おばあちゃんたちが集まって井戸端会議に花を咲かせる。もちろん、近隣に滞在する観光客にとっても、そこは実用的な拠点となるはずだ。

観光という言葉の先にあるべきなのは、そこに住む人々の「手ざわりのある暮らし」を守り、少しだけ便利で豊かなものにしていくこと。井上さんの視線は、常に生活者の体温に近いところにある。

住民を想う姿勢は、利益の還元方法にも明確に表れている。宿泊事業で得た収益の1割は市の歳入となり、貴重な文化財を守る原資となる。さらに、収益の多くは自社の利益として囲い込むのではなく、景観の維持や空き地の整備といった「町の品格」を保つための活動に再投資されている。自社物件の維持と同じ熱量で、地域の日常を守るためにお金を使っているのだ。

かつては空き地だった駐車場
かつては空き地だった駐車場

また、現場での素早い対応も大切にしている。地元区長から「水路の蓋が割れていて危ない」といった相談が寄せられれば、近くで作業している自社の工事関係者を手配し、すぐさま修繕にあたることもある。行政の手続きを待っていられないような、細かなインフラの補修を、民間が機動的に担うことで町全体の安全性が高まっている。

そこに暮らす地域住民から愛され、日常的に使われている店や空間は、観光客から見ても「その土地の息遣い」が感じられる魅力的な街景として映る。

観光地としての見栄えを優先して整えるのではなく、まず住民が安心して暮らせる土壌を整え、収益を還元していく。こうした住民中心のアプローチが、結果として大洲のまちづくりを持続可能なものにしている。

観光が高校生たちの「主体性」を呼び起こす

観光まちづくりの真の価値は、目に見える経済効果や景観の美しさだけでなく、その町で育つ次世代が「自分たちの町には可能性がある」と確信できるかどうかにかかっている。

愛媛県立大洲高等学校を中心に展開される「探究学習」は、観光という装置が教育現場をアップデートしている好例だ。

今回の取材では、同校で探究学習を牽引する大西先生と、探究学習を伴走するキタ・マネジメントの伊賀さんにもお話を伺った。大洲高校の探究活動は、キタ・マネジメントが実務組織として深く伴走することで、学校教育の枠を超えた「生きた学び」へと進化している。

(左)大洲高校 大西愛弓先生(右)キタ・マネジメント 伊賀綾乃さん
(左)大洲高校 大西愛弓先生(右)キタ・マネジメント 伊賀綾乃さん

探究学習の取り組みは3年前、愛媛県教育委員会の事業をきっかけに「学校内で完結せず、地域課題を住民と協働して解決する」という方針を打ち出したことに始まった。学校側は、古民家再生の最前線に立つキタ・マネジメントへ連携を打診。生徒たちが実際に古民家がホテルへと再生される現場を歩き、一線で活躍する大人たちの熱量に直接触れることで、教科書にはない「リアルな学び」が動き出した。

当初、生徒たちが挙げる地域の課題は「遊ぶ場所がない」「交通が不便」といった、都会と比べたマイナス面ばかりであったという。現代の高校生はインターネットを通じて膨大な情報に触れている一方で、地元の情報はなかなか流れてこない。大西先生は「彼らは地元の魅力を知らないのではなく、単に知る術や機会がないだけだ」と語る。

中学校で教えるキタマネジメント
画像出典:キタ・マネジメント

しかし、古民家ホテルに宿泊する外国人観光客の姿を、日常的に目にするようになると、生徒たちの心境に変化が訪れる。「自分たちが何もないと思っていた田舎が、世界から注目されている」という事実に気づき始めたのだ。外からのまなざしに触れることで、自分たちの町を「誇れる場所」として捉え直すきっかけが生まれていった。

1年生が取り組む探究活動は、コンポスト作りや大洲城周辺の活用など多岐にわたるが、その本質は「自分たちの問題」として社会に関わることにある。例えば、「大洲市におけるゴミ分別の現状」に着目したチームは、多額の税金が投入されている実態を調査し、独自の視点で啓発ポスターを作成した。そして、彼らの活動は、市のシンポジウムにて発表された。

専門家や行政担当者の言葉よりも、地元の高校生が自ら調べた「客観的な数値」を持って語る「まちの未来」は、聴講していた市民の心に深く響いた。生徒たちは「大人に守られる対象」から、共に町の課題に向き合う「対等なパートナー」へと変わったのである。

大洲シンポジウム
提供:キタ・マネジメント

さらに踏み込んだ実践を見せるのが、商業科による「課題研究」の取り組みだ。より実務的な観点が必要とされる商業科では、キタ・マネジメントの伴走のもと「大洲のストーリーを自分たちで考え、商売にする」という事業を構築している。

象徴的な事例が、大洲の城下町を舞台に、レトロな賑わいを再現するイベント「城下のMACHIBITO」への出店プロジェクトだ。生徒たちは当初、「老若男女が食べやすい」という理由で「カレーだんご」の販売を考えた。しかし、教員やキタ・マネジメントの担当者から「大洲の文脈に欠けている」と、一度は却下された。

そこから生徒たちは、町の歴史を掘り下げた。大洲が栄えた明治期には、すでに “日本にカレーが伝来していた” ことに気づいたという。そこに着目し、「大洲を象徴する食べ物」としてストーリーを編み直し、地元の農業高校から食材を調達する。地域の喫茶店に味の監修を仰ぎ、歴史に根ざした「明治のライスカレー」として販売を実現させたのだ。

提供:キタ・マネジメント

また、2025年10月に大洲城下町で開催されたアートイベント「OZU ARTS and CRAFTS 2025 +TAIWAN」での取り組みも極めて実践的だ。

台湾から招かれたアーティストが、地域住民と交流しながら、作品を創り上げるこの催し。そこで生徒たちは、言葉の通じないもどかしさや現代アートの難解さという「壁」を、自らの手で取り払ってみせた。

台湾のイベント
画像出典:キタ・マネジメント

作家に直接インタビューを重ね、自分たちの言葉で紡ぎ出した独自の解説。それは、来場者の心へダイレクトに魅力を届ける確かな力となった。

彼らの挑戦は、表現の場に留まらない。地域の店舗で使える割引券を発行し、協力店舗の開拓まで自ら交渉。アートへの感動を「地域経済の活性化」へと繋げる、実益を伴う仕組みを見事に構築したのである。

提供:キタ・マネジメント

生徒たちを取り巻く環境について、大西先生は「この地域には、間違えるのを恥ずかしがるような、おとなしい気風がある」と指摘する。キタ・マネジメントの伴走が目指しているのは、その「枠」を取っ払い、自分の意思を恐れずに外に出せる若者を育てることである。多様なセクターの大人たちと対話する機会を通じ、生徒たちの視野は劇的に広がっている。

提供:キタ・マネジメント

こうした高校生たちの変化は、さらに下の世代へと波及している。現在、キタ・マネジメントが主体となり、小中学生向けに「20年後に欲しい商店街」を構想する授業を展開するなど、早い段階から地域への愛着を育むプログラムが動き出している。

全ての生徒が、将来的にまちづくりに直接関わる必要はない。大切なのは、一度町を出たとしても、故郷を想い、自らの意思で「考える力」を持つことだ。

キタ・マネジメントや大洲高校が目指しているのも、探究活動を通じて「自分たちの町について考える時間」を持つこと。その考える時間が、いつか「この町に帰ってきたい」と思えるシビックプライドの根っこになっていく。

未来を編み上げる、対話の正体

空き家再生というハードの整備から、外部の力を借りたビジネスモデルの構築、そして次世代へと還元される循環の創出。大洲市が辿ってきたプロセスは、一見すると鮮やかな成功物語に見えるかもしれない。

しかし、その根底にあるのは、システムと現場を繋ぐ「翻訳」の地道な繰り返しだ。何より、住民の日常に寄り添い、ともに未来を創ろうとする誠実な対話の積み重ねでもある。

観光を単なる外貨獲得の手段に留めず、そこに暮らす人々の生活を良くし、次世代の教育をアップデートするきっかけとして再定義すること。この「住民ファースト」の徹底した姿勢こそが、大洲のまちづくりが一時的なブームに終わらず、地域全体の誇りへと繋がっている理由だ。

地域住民に愛されている場所は、訪れる人の心をも解きほぐす。そんな観光の本質を、大洲の取り組みは体現している。

多様な人々の想いを汲み取りながらも、プロジェクトを前進させる「合意形成の機微」は、マニュアルや成功事例をなぞるだけでは、決して掴みきれないものだ。

だからこそ、大洲で交わされる生きた対話に触れることには、単なる学びを超えた「実体験」としての価値がある。

重要なのは、地域と真摯に向き合う最前線の空気に、自ら身を置くことだ。事業を地域に根ざし、ともに未来を編み上げていくための、揺るぎない指針が見えてくるに違いない。

取材協力:キタ・マネジメント、愛媛県立大洲高等学校

「リジェネ旅」がおすすめする実践的プログラム

記事でご紹介したように、観光まちづくりを一過性のブームで終わらせない鍵は、華やかな事業企画そのものではなく、住民の暮らしに寄り添う「現場の作法」と、次世代へと還元されていく循環の設計にあります。

一般社団法人キタ・マネジメントの「企業・自治体向け視察・研修」は、大洲の知見を活かし、皆さまの地域固有の課題に寄り添う実践的なプログラムです。

  • 観光収益を景観維持やインフラ補修へつなげる「還元の仕組み」を学ぶ場として
  • 住民の日常を豊かにする「住民のための観光まちづくり」の発想を持ち帰る場として
  • 高校・教育機関と連携し、次世代のシビックプライドを育てる「探究学習の伴走」を知る場として

単なる見学にとどまらない、住民の体温に近い対話のプロセスと、まちに根ざした実務の手ざわりを、皆さまの地域にも持ち帰ってみませんか?

研修内容の確認やご相談は、以下よりお問い合わせいただけます。

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