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【対談】障がい者雇用を経営戦略に。ビジネスの新たな常識へ

2025 4/23
社会(ヘルス、まちづくり、ジェンダー)
D&I 企業事例 対談 持続可能な観光
2025-4-23
【対談】障がい者雇用を経営戦略に。ビジネスの新たな常識へ

大分県別府市。湯けむりが立ち上る温泉地として知られるこの街は、立命館アジア太平洋大学(APU)を擁し、多様な国籍の学生たちが集う国際色豊かな側面も持ち合わせています。

さらに、障がい者雇用に積極的に取り組むオムロン太陽株式会社の存在も、別府市を語る上では欠かせません。街中にバリアフリーな環境が溶け込んでおり、車いすに乗った人もスーパーマーケットで働いている姿が見受けられます。

別府市は多様な人材を受け入れ、それぞれの個性や能力を生かすD&I(ダイバーシティ&インクルージョン:多様性と包摂性)の本質を体現する光景であり、私たちにその意義を問いかけているかのようです。

「多様性を受け入れ、人間性を尊重する社会へ」

そう語るのは、オムロン太陽株式会社の代表取締役社長である辻潤一郎氏。オムロン太陽は、50年以上も前から障がい者雇用を積極的に推進し、多様な人材が活躍できる社会の実現を体現しています。

今回は、D&Iを積極的に推進されている辻氏と、株式会社アスエクの代表取締役である市川氏が対談を行いました。企業トップが率先してD&Iを推進することの重要性、その先に広がる新たな価値創造。そして、組織全体の意識改革を促すリーダーシップのあり方について議論を交わしました。

辻潤一郎氏 プロフィール

1986年に立石電機(現オムロン)に入社。エンジニアとして数々の電子部品技術・商品開発を担当。よりよい社会を目指し、イノベーションを通じて社会課題の解決に挑む。香港デザインセンタの設立にも参画。その後、グループ会社で技術、事業部運営、営業を経験し、オムロン全電子部品のグローバル営業責任者に。2020年、オムロン太陽(株)に転籍し、2022年12月より現職。オムロン創業者の理念である「一人も不幸な人がいない、全員が生きる歓びを感じられる社会を作る」という信念を体現している。

D&Iの実現において「I」が重要なキーワード

市川:オムロン太陽の障がい者雇用の取り組みはもちろん、留学生を多く受け入れているAPU(立命館アジア太平洋大学)の存在も相まって、別府市は多様性に溢れた街ですね。車いすの方が多く働いていたり、多種多様な国籍の留学生を見たりしていると、D&Iでは何よりもインクルージョン(包摂性)の「 I 」が大事ということに気付かされました。

辻:従来のD&Iという言葉ではなく、I&D、つまりインクルージョンを先に置くことが重要かもしれません。多様な人々が組織に存在することは、ダイバーシティの前提ですよね。多様な人々が互いに交わり、つながりを持つ。それがインクルージョンであり、D&Iの本質であると考えています。

辻社長の写真

市川:D&Iを実現するためには、経営陣が率先してマジョリティ・マイノリティという区別をなくすといった、強い意志を示すことが不可欠だと考えています。公平性を大事にしたDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の重要性も問われますね。

辻:確かに、エクイティ(公平性)は大事ですが、行き過ぎたエクイティの追求は良くないと思っています。本来目指すべき機会の平等を損ない、真の公平性を失ってしまう可能性があるのではないかと。

例えば、アメリカではインクルージョン施策が分断を生むケースも見られます。急に従業員の属性のバランスを取ろうとし、マイノリティを優遇しすぎると、結果マイノリティに肩入れすることになる。それは本当にエクイティであると言えるのでしょうか。過度に「マジョリティ対マイノリティ」という対立構造を意識した施策は、社会の分断を助長しかねませんね。

市川:すべての人に、活躍できる機会を平等に保証することが大切と考えられますね。「マイノリティだから特別にサポートする」という考え方ではなく、誰もが持っている能力を最大限に活かせる環境を作るべきだということがわかります。

辻:そのためにも、公平な評価制度の導入が不可欠であり、採用後の高い離職率という課題を克服する必要があります。重要なことは、障がい者をサポート業務に限定せず、積極的に本業にインクルージョンすることです。本業には、想像以上に多くの「できる仕事」が存在します。

業務を細分化し、標準化や手順化を進めることで、より多くの人が対応可能な業務範囲を広げることができます。障がいのある社員が本業に参画することで、組織に新たな視点や革新的なアイデアがもたらされ、組織全体のイノベーションを促進する可能性を秘めているのです。

市川:多様な人種を受け入れ、政策を整えているアメリカでは、ダイバーシティの採用は比較的、自然に確保される状況にあります。一方、日本では意識的な意思決定を行わなければ、ダイバーシティの採用すら容易ではありません。だからこそ、日本においてはより積極的に中長期目線でダイバーシティ採用を推進していく必要があります。

辻:エクイティの実現は重要ですが、それを声高に主張する必要はないと考えています。それよりも、D&Iという言葉を継続的に発信し、その理念を組織全体に浸透させていくことが重要です。D&Iの理念が根付くことで、結果的に、エクイティは自然と実現に向かっていくでしょう。

多様性を受け入れ、人間性を尊重する社会へ

辻:D&Iを推進する上で、個々人の多様性を尊重する姿勢は欠かせません。しかし、それは単に個性を認めるだけでなく、組織全体の結束力を高め、持続的な成長につなげることを目指すものでなければ、真のD&Iとは言えないと考えています。

個々の「個性」ばかりに目を向けてしまうと、組織はまとまりを欠き、バラバラなものに見えるでしょう。しかし、本来人間の心には「人を慈しみ、大切にする」という普遍的な感情が備わっています。D&Iは、この根源的な人間性を土台として進めるべきなのです。

私たちは皆、異なる個性を持つ一方で、人間として共通の感情や価値観を共有しています。しかし、その表現方法は人それぞれであり、一律的な対応では、真の意味で多様性を活かすことはできません。

だからこそ、D&Iという包括的なアプローチが求められるのです。それぞれの個性や背景を深く理解し、尊重しながら、共通の価値観に基づいた組織文化を育むことで、多様性を組織の力に変え、新たな発想やイノベーションを生み出す源泉とすることができるのです。

市川氏の写真

市川:オムロンの創業者、立石一真氏らが提唱した「SINIC(サイニック)理論 *」では、社会構造の変化が、人々の価値観や行動に大きな影響を与えることが示唆されています。

例えば、個人の自由と責任を重視する「自律社会」では人間性を回復させ、自然との調和を重んじる「自然社会」では、人々の精神性を高めていくとされています。

辻さんが言及されている「人間性」とは、多様な人々が互いを尊重し、支え合う社会において再び取り戻すことができる、人間本来の温かさや共感力とも言えますね。より豊かな社会を築き上げていくための道筋でもあるかもしれません。

辻:そうですね。D&Iの取り組みは、多様な個性を尊重し、組織や社会の力を最大限に引き出すことを目指すものですが、その究極の目標は、私たち一人ひとりが「人類の一員である」という共通認識を深め、連帯感を醸成することにあると言えるでしょう。

市川: これからの現代社会において、企業も社会全体も「人間性を取り戻す」ことが強く求められるかもしれませんね。D&Iは、まさに人間の尊厳を基盤とした社会づくりに不可欠な要素であり、その実現を通じて、私たち一人ひとりが人間らしく生きられる社会を目指すべきだと思います。

※ SINIC理論:オムロン創業者・立石一真氏らが提唱した、未来の社会構造や技術革新を予測する理論。科学・技術・社会が円環的に相互に影響を与え合いながら発展していくという考え方を基本としている。

障がい者雇用を通じて共創し、新たな価値の創造を

辻:障がい者雇用は、単なる社会貢献ではなく、経営戦略としても大きな可能性を秘めています。経営トップが率先して障がい者雇用を推進することで、組織全体の意識改革を促し、新たな価値創造につなげることができます。障がい者雇用のマーケットは非常に大きく、全世界で約20億人もの雇用ニーズが存在すると言われています。

市川:20億人ですか!そんなにいるとは、驚きです。

辻:この数字は企業にとって単なる社会貢献に留まらず、経営戦略としても見逃せないビジネスチャンスとなり得ることを示唆しています。今年はThe Valuable 500の会議が東京で開催される予定であり、日本における本業での障がい者雇用への関心が、飛躍的に高まることが期待されます。

特に注目すべきは、通常はビジネスで競い合う企業同士が、障がい者雇用という共通の目標のもと垣根を越えて連携し、共に新たな価値を創造しようとする動きです。単なるビジネスを超え、人間性の尊重、そして人類としての連帯感というD&Iの本質を体現する素晴らしい事例と言えるかもしれませんね。

また、特例子会社が積極的に障がい者雇用に関する情報開示を進めていることも、この流れを力強く後押ししています。同じ地域にある、太陽の家の関連企業様は皆、工場見学も積極的に受け入れられており、他の企業が障がい者雇用に関する理解を深め、自社の取り組みを検討する上で貴重な機会を提供されています。

市川:障がい者雇用は、企業が互いに連携し、新たな価値を創造するための最初のきっかけ、つまり「共創」への入り口として非常に有効なテーマですよね。まずは障がい者雇用をテーマに連携を深め、その成功体験を他の分野へと広げていくことが理想だと考えています。

辻:障がい者雇用が共創のフックであると象徴しているのが、立石一真氏と中村裕氏だと言えますね。行政や市民活動だけでなく、企業トップの積極的なリーダーシップが不可欠だということが分かります。

市川: だから、多くの企業が先進的な取り組みを学ぶため、オムロン太陽株式会社の視察に訪れているわけですか。まさに企業のトップが、障がい者雇用を積極的に推進することで、組織全体の意識改革を促し、新たな価値創造につなげている好例と言えますね。

辻:いろんな企業や行政の方が工場見学に来られますね。ぜひ一度、オムロン太陽にお越しいただき、現場を体感してもらえたらと思います。

対談の様子
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https://www.thevaluable500.com/




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