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オーバーツーリズムの定義とは?近年問題となっている観光公害の本質を解説

2026 6/10
リジェネラティブツーリズム
オーバーツーリズム サステナブルツーリズム 各国の事例 持続可能な観光
2026-6-22
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近年、「オーバーツーリズム」という言葉が広く使われるようになりました。観光地の混雑問題を指す言葉として認識されていますが、その意味は単に人が多いという状況だけを指すものではありません。

本記事では、オーバーツーリズムの基本的な定義と、その背景にある「観光収容力」という考え方を整理したうえで、国内外の事例を通じて本質を解説します。

目次

オーバーツーリズムの定義とは?2016年から広まった概念

オーバーツーリズム(Overtourism)は比較的新しい言葉であり、2016年頃に観光産業メディアのSkift社が積極的に使用したことで国際的に広まりました。[1]

それ以前にも観光集中による問題は存在していましたが、当時は以下のように個別の概念・言葉として扱われていました。

  • tourism congestion(観光混雑)
  • tourism pressure(観光圧力)
  • tourism phobia(観光忌避)
  • 観光公害

このように、オーバーツーリズムは新しい現象そのものではなく、既存の問題を統合的に捉え直した概念といえます。

国連機関が定義するオーバーツーリズムとは

国連世界観光機関(UN Tourism / 旧UNWTO)や研究機関では、オーバーツーリズムを単なる観光客数の多さではなく、より広い影響から定義しています。[2]

具体的には以下のような領域への悪影響が生じている状態を指します。

  • 住民の生活環境の悪化
  • 観光体験の質の低下
  • 地域社会の持続性への影響
  • 環境・自然資源への負荷

つまりオーバーツーリズムとは、観光によって地域の受け入れ能力を超えた結果、複数の側面に影響が生じている状態と整理できます。

オーバーツーリズムの本質は「観光収容力」とインフラ負荷のミスマッチ

オーバーツーリズムは観光地の混雑と混同されがちですが、両者は同義ではありません。

一時的に人が多く集まる状況でも、インフラや運営によって適切に管理されていれば、必ずしも問題になるとは限らないからです。

問題となるのは、観光地の受け入れ能力を超えた結果として、次のような影響が継続的に発生するケースです。

  • 住民生活への支障
  • 環境負荷の増大
  • 観光体験の質の低下

この「受け入れ能力を超えているかどうか」という視点が、オーバーツーリズムの重要な視点になります。

観光収容力とは何か

観光収容力とは、自然環境や住民生活、観光体験の質を大きく損なうことなく受け入れられる観光の限界を指します。[3] 単純な人数ではなく、地域全体のバランスが保たれる範囲という意味合いです。

イメージとしては、コップの水があふれるように、一定の容量を超えると一気に問題が表面化する構造です。

観光収容力は、以下の4つの要素から成り立っています。

分類内容具体例問題が起きるとどうなるか
インフラ的収容力物理的な受け入れ能力道路・交通機関・上下水道・電力・ごみ処理渋滞・サービス低下・インフラの限界
経済的収容力地域経済・住宅環境への影響地価上昇・家賃高騰・民泊増加住民流出・生活環境の悪化
社会心理的収容力住民の受容度騒音・混雑・マナー問題観光への反感・住民ストレス増加
環境的収容力自然・景観の維持能力自然公園・景観資源・生態系景観劣化・環境破壊

このように観光収容力とは、単一の指標ではなく、複数の要素が同時に維持されている状態を指します。

なぜ時間・季節の集中がオーバーツーリズムを生むのか

観光には、特定の時期に需要が集中しやすいという特性があります。連休や長期休暇、桜・紅葉・雪景色といった季節要因や、SNSによる急激な注目などが発生すると、観光客は短期間に集中します。

その結果、年間の総量では問題がなくても、特定の時期だけ負荷が急激に高まり、インフラの限界を超えてしまうのです。

つまり問題の本質は観光客の総数ではなく、時間と場所の「偏り」に他なりません。

住民向けインフラを観光客が利用する構造的問題

多くの観光地にある道路や上下水道、電力、公共交通、ごみ処理などのインフラは、もともと地域住民の生活を支えるために整備されたものです。そのため、維持にかかる費用は主に住民の税金でまかなわれています。

しかし、観光客が大幅に増えると、これらのインフラの負荷量も大きく増加します。観光客はインフラを利用するものの維持費は直接負担しないため、負荷とコストだけが自治体・住民側に集中してしまうのです。

つまり、インフラを利用する側と、その費用を負担する側のバランスが崩壊してしまうという「構造的な課題」こそが、オーバーツーリズムの本質といえます。

国内事例から見るオーバーツーリズムと観光収容力の限界

国内のオーバーツーリズムは、主に2つのパターンに分類できます。

ひとつは地方のようにインフラ規模が限られた地域へ観光需要が急激に集中するケース、もうひとつは都市部で住民向けインフラと観光利用が競合するケースです。

富士山|観光集中による環境負荷と安全管理の課題

富士山は世界的な知名度を持つ観光地であり、登山シーズンになると多くの登山者や観光客が集まります。人の流入が短期間に集中することで、自然環境だけでなく安全管理体制にも大きな負担がかかっているのが実情です。[4][5]

登山道や周辺道路では混雑が発生し、交通渋滞やごみ処理、登山者の安全確保など継続的な対応が求められています。[6]

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白川郷|世界遺産と住民生活が共存する地域の課題

白川郷は世界遺産として国内外から多くの観光客を集める一方で、現在も住民が暮らす生活の場でもあります。そのため、観光地としての魅力向上だけでなく、日常生活との共存が重要な課題です。[7]

特に繁忙期には、道路や駐車場の混雑による交通渋滞が発生し、住民の移動や生活動線にも影響が及びます。鉄道のない白川村では、主要道路の混雑が観光だけでなく地域生活そのものに影響しかねません。

こうした背景から白川村では、混雑予想カレンダーや交通ライブカメラを活用した「ずらし観光」を進め、観光と暮らしの両立を図っています。

白川村公式の混雑予想カレンダー
画像出典:白川郷すんなり旅ガイド「SHIRAKAWA – Going」

白川郷の事例は、観光客数の多さそのものではなく、「観光地」であることと「生活の場」であることをどう両立するかがオーバーツーリズムの重要な論点であることを示しています。

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京都|都市インフラと住民生活の競合

京都の特徴は、観光地と住民生活の距離が非常に近いことです。観光スポットが市街地に広く点在しているため、日常生活と観光利用が同じ都市インフラ上で重なります。[8]

その影響は、市バスの混雑や交通渋滞にとどまりません。住宅地でも民泊利用が広がるなど、生活空間と観光利用の距離が近づいています。[9]

京都で問題になっているのは、単なる「観光客の多さ」ではなく、観光と都市生活が同じ基盤を共有することで生じる摩擦です。

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北海道|インバウンド急増と農業・地域生活への影響

北海道では、訪日外国人観光客の急増を背景に、美瑛・ニセコ・小樽など一部の人気エリアへ観光需要が集中しています。

特に美瑛では、SNSなどで注目を集めるエリアに観光客が集中し、農地への無断侵入や路上駐車、生活道路の混雑といった問題が発生。こうした行動は景観だけでなく地域の産業にも影響を及ぼします。[10]

またニセコでは、世界的なスキーリゾート化によりインバウンド需要が急増し、宿泊施設や交通インフラへの負荷が高まっています。小樽でも観光客の増加により、生活道路の混雑やマナー面の課題が顕在化している状況です。[11][12]

北海道の事例は、観光客数そのものの多さではなく、限られた地域や生活空間に観光需要が集中することで、農業や住民生活との摩擦が生じる構造的な問題を示しています。

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オーバーツーリズムにより求められる観光の「量から質」への転換

オーバーツーリズム対策で重要なのは、地域が受け入れられる範囲を踏まえながら、観光需要を調整することです。[13] 

そのため今後は、観光の「量」よりも「質」と「分散」を重視した考え方が求められます。

時間・場所の分散で観光負荷を平準化する

オーバーツーリズムが起こる背景には、特定の場所や時期への集中があります。観光需要を適切に分散できれば、インフラ負荷は大きく変わります。

主な方法は以下の通りです。

  • オフシーズンへの観光誘導
  • ナイトタイム観光の活用
  • 周辺地域への周遊促進
  • 予約制や時間指定入場
  • 入場人数の管理

目指すのは観光客の排除ではありません。ピーク集中を緩和し、地域全体で無理なく受け入れられる状態をつくることです。

観光税・入域料でインフラ負担を適正化する

オーバーツーリズムに悩む多くの地域では、観光客が増えたことで膨れ上がったインフラの維持費を、地域住民や自治体が背負っているのが現状です。

こうした負担の偏りを調整する方法として、近年「観光税」や「入域料」の導入が進んでいます。

観光客にも費用の一部を負担してもらうことで、観光に関わるすべての人で地域のインフラや環境を支えるサステナブル(持続可能)な観光につながります。

まとめ|オーバーツーリズムの定義を理解し持続可能な観光へ

オーバーツーリズムという言葉は2016年頃から広く使われるようになりました。しかし、観光集中によって地域へ負荷がかかる問題自体は以前から存在しています。

重要なのは、オーバーツーリズムを「観光客が多い状態」と単純化しないことです。本質にあるのは、地域の観光収容力と観光需要のバランスが崩れることにあります。

これからの観光に必要なのは、人数拡大だけを目指す発想ではありません。地域が無理なく受け入れられる形へ設計し直し、サステナブルな観光を目指すことが求められています。

参考文献

[1]It Is Time to Ditch the Phrase ‘Overtourism’

[2]Measuring Overtourism: A Necessary Tool for Landscape Planning

[3]Tourism carrying capacity as dynamic property of complex socio-ecologic a l systems

[4]富士登山オーバーツーリズム対策パッケージについて | 関東地方環境事務所

[5]「富士山における適正利用推進協議会」の取組

[6]富士山保全協力金の導入

[7]【白川村公式】車の混雑予想カレンダーや渋滞をリアルタイムに見れる旅マエ情報サイト「白川郷すんなり旅ガイド シラカワ・ゴーイング(SHIRAKAWA-Going)」を公開

[8]“地下鉄への利用誘導”と“手ぶら観光の推進”市バスの混雑緩和に向けた新たなサ ービスの実証 | KYOTO CITY OPEN LABO

[9]「民泊」とは | 京都市 民泊ポータルサイト

[10]「本当に危ない」道路埋め尽くす観光客に住民ため息…畑侵入され怒る農家も―北海道美瑛町の『オーバーツーリズム』|FNNプライムオンライン

[11]訪日外国人旅行者に対する 利便性確保調査等業務 【報告書】

[12]持続可能な観光地域づくりへの取組み(オーバーツーリズムの未然防止・抑制) | 小樽市

[13]The Decline of Tourist Destinations: An Evolutionary Perspective on Overtourism

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