インバウンドの増加を背景に、宿泊以外の収益源を確保できるMICE(マイス)市場への注目が高まっています。なかでも沖縄は、国内外からのアクセスの良さやリゾートならではの魅力、充実したMICE施設、行政による手厚い支援などを強みとした、国内有数のMICE開催地です。
一方で、ホテルはどのようにMICEの需要を取り込めばよいのかと、疑問を抱いているホテル経営者も多いのではないでしょうか。
本記事では、沖縄MICEが注目される理由や開催事例を紹介するとともに、ホテルがMICE需要を取り込み、収益向上につなげるためのポイントを分かりやすく解説します。
沖縄MICE(マイス)とは?沖縄が誘致を推進する背景

沖縄では、観光産業のさらなる発展に向けてMICE誘致を積極的に推進しています。MICEは宿泊や飲食、会場利用、交通、観光など幅広い消費を生み出すため、ホテル経営においても新たな収益機会として注目されています。
MICE(マイス)とは会議・報奨旅行・国際会議・展示会の総称
MICEとは、Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Eventの4つの頭文字を取った言葉で、ビジネス交流を目的としたイベントの総称です。[1] 具体的には、企業の会議、報奨旅行、国際会議や展示会・イベントなどが含まれます。
MICEは一般的な観光旅行と比べて参加者1人あたりの消費額が高く、宿泊や飲食、会場利用など幅広い経済効果が期待できることから、全国の観光地で誘致が進められています。


沖縄がMICE(マイス)誘致を推進する背景
沖縄がMICEの誘致を推進しているのは、以下のような背景があります。
- 観光消費額の拡大
- 閑散期需要の創出
- 地域経済への波及効果
- 高付加価値観光の推進
沖縄は地域経済の活性化に加え、ホテルをはじめとする観光産業者の収益向上や持続的な観光振興を実現する狙いがあり、MICE誘致に積極的に取り組んでいます。
沖縄がMICE(マイス)開催地として選ばれる4つの理由

沖縄がMICE開催地として選ばれる理由は、以下の4つです。[2] [3]
- 国内外からアクセスしやすい立地
- 大規模イベントに対応できる施設の充実
- 行政・業界団体による誘致支援の充実
- 沖縄独自の文化や自然を活用可能
沖縄には、MICE開催地として選ばれる多くの強みがあります。これらの特徴を把握し、自社ホテルのサービスや地域資源とどのように組み合わせるか考えていきましょう。
国内外からアクセスしやすい立地

国内外からアクセスしやすい立地が、沖縄がMICE開催地として評価される理由の一つです。東京や大阪など国内主要都市からの直行便に加え、ソウルや香港などアジア主要都市とも航空ネットワークが整備されており、参加者を集めやすい環境が整っています。アクセスの利便性は参加者の移動負担を軽減するため、主催者にとって開催地として選びやすい要因となります。
大規模イベントに対応できる施設の充実
沖縄には、大規模なMICEに対応できる施設が充実していることも強みです。[4]
たとえば、名護市の万国津梁館は、2000年の九州・沖縄サミット(G8サミット)の首脳会合の会場として利用され、国際会議にも対応できる高い機能性を備えています。[5]
また、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターは、展示会や国際会議、学術大会など数多くの開催実績を持つ、県内最大級のMICE施設です。[6] さらに、大型宴会場や会議室を備えたリゾートホテルも多く、宿泊・会議・宴会を一体的に提供できる環境が整っています。
宿泊施設のみに限らず、会議や宴会に対応できる設備を整えることで、自社ホテルでのMICE開催を勝ち取り、収益につなげていくことができます。
行政・業界団体による誘致支援の充実
沖縄県では、MICEを地域経済の活性化につながる重要な施策と位置付け、誘致・開催支援に取り組んでいます。[7] OCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)も、開催計画の提案、運営支援などを実施。開催内容や規模に応じて総事業費の3分の2、上限1,000万円までの補助金制度なども活用でき、主催者の負担軽減を後押ししています。[8]
こうした手厚い支援体制が整っていることも、沖縄がMICE開催地として選ばれる理由の一つです。
沖縄独自の文化や自然を活用可能
沖縄では、美しい自然や独自の歴史・文化を生かしたプログラムをMICEに取り入れられることも大きな魅力です。たとえば、世界遺産や歴史的建造物などを活用したユニークベニュー※1でのレセプションやマリンアクティビティ、伝統芸能の鑑賞、地域食材を使った食文化体験などが挙げられます。[9]
また、沖縄は自然環境の保全や地域との共生を重視したSDGs・サステナブルツーリズムとの親和性も高いことも特徴です。[10] 企業のESGやサステナビリティへの取り組みを反映したMICEの開催にも適しています。
ホテルとしては、立地や特徴を生かした文化や自然の独自体験プログラムを販売できれば、滞在価値を高めて参加者に選ばれるホテルを目指せます。
※ ユニークベニュー:文化施設や歴史的建造物、庭園などの空間で、会議・レセプションを開催することにより地域の特性や特別感を演出できる会場
沖縄MICE(マイス)の開催事例から学ぶ効果

沖縄では、国際会議やインセンティブ旅行、展示会など、さまざまなMICEが開催されてきました。ここでは、代表的な開催事例を通して、MICEがホテルや地域経済にもたらす効果を見ていきます。
【国際会議・学術会議】医学会や大学を中心とした開催事例
沖縄では、医学会や沖縄科学技術大学院大学(OIST)をはじめ、国内外から研究者や専門家が集まる会議が開催されています。こうした実績は、沖縄が国内有数のMICE開催地として評価される理由の一つです。
2024年には「自然史標本保存学会・生物多様性情報標準化委員会 沖縄合同大会(SPNHC-TDWG 2024)」が沖縄コンベンションセンターで開催されました。377人が現地、約200人がオンラインで参加。大会では県内エクスカーション*や環境配慮型の運営を取り入れ、沖縄の自然や文化を体験するプログラムを実施したことで、地域の魅力発信にもつながりました。[11]
ホテルにとって国際会議や学術会議は、宿泊需要だけでなく、会議室や宴会場の利用、レセプションや懇親会などの付帯収益を見込める重要な市場です。また、参加者がエクスカーションに参加することで、観光施設や飲食店、交通事業者など地域全体への経済効果も期待できます。
※エクスカーション:現地での体験や会話を通じて参加者が見識を深められる、体験型の見学会
【インセンティブ旅行】海外企業の報奨旅行の事例
沖縄は美しい自然や充実したリゾート施設を生かせることから、海外企業のインセンティブ旅行(報奨旅行)の開催地として評価されています。
2020年には「JAPAN Best Incentive Travel Awards」で、シンガポール企業を招いた報奨旅行が企画賞を受賞しました。[12] [13] 体験、チームビルディング、ユニークベニューのそれぞれに以下のような沖縄らしさが含まれている点が高く評価されました。具体的には、以下のようなプログラムが実施されました。
- 獅子舞いやエイサーによる沖縄文化の体験
- 沖縄のハーリー船※1のレース大会を活用したチームビルディング
- 沖縄美ら海水族館で、特別感のあるガラディナー※2をを開催
こうしたインセンティブ旅行は、宿泊や飲食だけでなく、観光施設や交通、地域事業者の利用にもつながるため、地域経済への波及効果が大きい点が特徴です。ホテルにとっては、付帯サービスの提案や地域と連携したプログラムの提供により、収益拡大を図る機会となります。
※1 ハーリー船:伝統行事「ハーリー(海神祭)」で使われる、船首に龍の頭が装飾された舟
※2 ガラディナー:企業の表彰式などのために開催される特別な豪華ディナー
【展示会・イベント】地域活性化に繋がる事例
沖縄を代表するMICEイベントの一つが、毎年開催されている「ResorTech EXPO in Okinawa」です。観光やデジタルトランスフォーメーションをテーマに、県内外・海外から多くの企業や来場者が集まり、ビジネスマッチングや商談の場として活用されています。2023年には約9,900人が来場し、主催者によると県外からの宿泊費だけでも約5,580万円の経済効果を創出しました。[14]
これらのイベントは、地域企業との商談機会や新たなビジネス創出にも貢献しています。また、開催期間中はホテルの稼働率向上や宴会・レストラン利用の増加も期待できるため、地域全体の経済効果を高める重要な役割を果たしています。
MICEは一時的な集客にとどまらず、宿泊・飲食・交通・商談機会などを通じて、地域全体の経済循環を生み出す役割を担っています。
ホテルが沖縄MICE(マイス)の需要を取り込む4つのポイント

ホテルが沖縄MICEの需要を取り込むには、宿泊だけでなく、MICEに必要なサービスを総合的に提案することが重要です。具体的には、以下の4つのポイントを意識しましょう。
- 宿泊以外の収益機会の拡大に向けた付帯サービスの設計
- 法人顧客との継続的な関係の構築によるリピート化の促進
- 地域と連携した体験プログラムの提供
- ハイブリッド開催や国際会議に向けた設備の整備
これらを整えることで、主催者に選ばれやすいホテルを目指せます。
宿泊以外の収益機会の拡大に向けた付帯サービスの設計
MICEでは、会議室や宴会場の利用料に加え、懇親会やパーティーでの飲食提供、ケータリング、音響・映像設備のレンタルなど、さまざまな付帯サービスが必要です。そのため、ホテルは単に客室を提供するだけでなく、会議、宴会、飲食、設備、送迎などを組み合わせたプランを設計することが重要です。主催者のニーズに合うサービスを提供することで、ホテルは宿泊以外の収益機会を拡大できます。
とくに数日間におよぶ国際会議や企業研修は、宿泊・会議・飲食を一体で提供できるため、ホテル全体の売上増加が期待できます。
法人顧客との継続的な関係構築によるリピート化の促進
会議や研修などは単発ではなく定期的に開催されるケースが多いです。そのため、その年のMICEを成功裏に開催して企業や団体との継続的な関係を構築できれば、翌年の継続開催や別部署の利用につながる可能性が高まります。[15] MICEを受け入れることで、法人顧客との関係構築につながる点は重要なポイントです。こうした継続的な取引は、閑散期の稼働率向上や安定した収益基盤の確保にも寄与します。
MICEを単発のイベントとして捉えるのではなく、長期的な顧客との関係を築く機会として活用することが重要です。
地域と連携した体験プログラムの提供
参加者の満足度を高めるためにも、サービス提供はホテル単独ではなく、地域と連携した体験プログラムを企画することが重要です。OCVBやDMO、地域事業者と連携することで、沖縄ならではのコンテンツを提供できます。[16]
歴史的建造物や文化施設、景勝地などを活用したユニークベニューは、参加者に特別な体験を提供し、イベントの差別化にも役立ちます。
地域全体でMICEを受け入れる体制を構築することが、参加者の満足度向上だけでなく、ホテルの競争力強化にも寄与するでしょう。
ハイブリッド開催や国際会議に向けた設備の推進
近年のMICEでは、現地参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド開催や、海外からの参加者を想定した国際会議への対応が求められています。[17] そのため、ホテルには高速かつ安定した通信環境の整備に加え、高品質な音響・映像設備やライブ配信システムなどの整備が必要です。また、多言語対応が可能なスタッフの配置や案内表示、通訳・翻訳サービスの手配も、海外参加者の満足度を高める上で重要です。こうした設備やサービスを整えることで、大規模なMICE案件の受注機会を広げるだけでなく、ホテルの競争力強化やブランド価値の向上にもつなげられでしょう。
沖縄MICE(マイス)はホテルの新たな成長機会となる
沖縄は、優れたアクセス環境やリゾートならではの魅力、充実したMICE施設などを備えた国内有数のMICE開催地です。さらに、沖縄県やOCVBによる誘致活動や開催支援、補助制度なども充実しており、ホテルがMICE需要を取り込める環境が整っています。
ホテルはMICEを受け入れることで、宿泊だけでなく会議室や宴会場、飲食など新たな収益源の確保や、法人顧客との継続的な取引による経営の安定化も期待できます。
今後も成長が見込まれるMICE市場を見据え、地域と連携した受入体制を整え、自社ホテルならではの価値を提供することが競争力の向上につながるでしょう。
参考文献
[1]MICEとは | MICEとは | 自治体・MICE関係者向け | 日本政府観光局(JNTO)MICEの誘致・開催支援
[2]沖縄が選ばれる理由 | おきなわMICEナビ – 沖縄の会議・研修・展示会の開催をサポートする専門サイト
[4]会場・施設|沖縄MICE – 展示会・商談会・見本市開催をサポート
[8]<公募期間終了>【令和7年度】沖縄県観光事業者収益力向上サポート事業 補助金のご案内|一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー
[9]ユニークベニュー | おきなわMICEナビ – 沖縄の会議・研修・展示会の開催をサポートする専門サイト
[10]SPNHC-TDWG 2024 | 沖縄が選ばれる理由 | サステナビリティ | おきなわMICEナビ – 沖縄の会議・研修・展示会の開催をサポートする専門サイト
[12]日本政府観光局主催「JAPAN Best Incentive Travel Awards2020」 県内で開催されたMICEが大賞と企画賞を受賞|沖縄観光コンベンションビューロー
[13]「JAPAN Best Incentive Travel Awards 2020」の受賞者が決定~訪日インセンティブ旅行のベストプラクティスを表彰~|日本政府観光局
[14]イベント成果:ResorTech EXPO 2023 の経済波及効果|新着情報|ISCO | 沖縄ITイノベーション戦略センター
[15]MICEとは | MICE の推進 | インバウンド回復戦略 | 観光政策・制度 | 観光庁
