MICE(マイス)とは「Meeting」「Incentive Travel」「Convention」「Exhibition/Event」の4つの頭文字を取った言葉で、ビジネス交流を目的としたイベントの総称です。宿泊に加え、飲食、宴会など幅広い需要を生み出すため、ホテル業界にとって重要な市場として注目されています。
なかでも札幌市は、多彩な観光資源などを強みに、国内外から積極的にMICEを誘致しています。ホテルとしては客室稼働率の向上に加え、宴会や飲食などによる収益拡大も期待できるでしょう。
MICE需要を取り込むには、札幌市の取り組みや開催事例を理解したうえで、自社ホテルの強みを生かした戦略を立てることが重要です。本記事では、札幌市がMICE開催地として選ばれる理由や開催事例を紹介するとともに、ホテルがMICE需要を取り込むための実践ポイントを解説します。


札幌MICE(マイス)がホテル市場で注目される理由

MICEは一般観光と比べて宿泊日数が比較的長く、宿泊費に加えて宴会や飲食、会議室利用など幅広い収益が見込めることから、ホテルにとって収益機会の大きい市場です。また、平日に開催されるケースもあるため、観光需要が落ち着く時期の稼働率向上や、需要の平準化にも貢献します。
札幌市では、地域経済の活性化や国際競争力の強化を目的に、MICE誘致を推進。札幌でMICEを開催しやすい環境が整うことで、ホテルにとっても新たなビジネスチャンスが生まれます。[1]
札幌市がMICE(マイス)開催地として選ばれる4つの理由

札幌市がMICE開催地として選ばれる理由として、主に以下の4つが挙げられます。[2]
- 国内外からアクセスしやすい交通環境がある
- 国際会議から展示会まで対応できる施設が充実している
- 宿泊施設・観光資源が豊富で参加者満足度を高められる
- 産学官連携やGXなど産業集積も強い
利便性の高い都市機能と地域資源が相乗効果を生み出し、ホテルにとって継続的なMICE需要が期待できる都市として注目されています。
国内外からアクセスしやすい交通環境がある
新千歳空港は国内主要都市に加え、アジアを中心とした国際路線も充実しており、国内外から参加者を集めやすい環境です。空港と札幌駅間は快速列車で約40分で、市内には地下鉄や路線バスが整備されており、会場やホテルへの移動手段を確保しやすい環境です。
こうした利便性は、参加者の負担軽減だけでなく、主催者にとっても参加者の集合や移動を計画しやすいことは、開催地を選ぶうえで重要な判断材料になります。
国際会議から展示会まで対応できる施設が充実している

札幌市には国際会議や学会、大規模展示会などに対応できる「札幌コンベンションセンター」をはじめ、多彩なMICE施設が整っています。[3]
画像出典:札幌市における国際会議等誘致の取組と現況について|札幌市
また、市内のホテルには大小さまざまな宴会場や会議室が備わっており、宿泊・会議・懇親会をワンストップで提供できる点も強みです。
MICEの種類や参加人数に応じて会場を選びやすいため、大規模な国際会議から企業の小規模なミーティングまで、幅広い催事に対応できます。
ホテルがメイン会場にならない場合でも、参加者の宿泊、分科会、控室、関係者の会食などを受け入れられる可能性があります。
宿泊施設・観光資源が豊富で参加者満足度を高められる
札幌市内にはラグジュアリーホテルからビジネスホテルまで多様な宿泊施設が集積しています。主催者は、参加者の予算や目的に応じて宿泊先を選べます。
また、新鮮な海産物やラーメンなどの食文化、大通公園やすすきの、定山渓温泉など魅力的な観光資源も豊富です。[4] 会議後の交流会やエクスカーション※を組み合わせやすく、参加者の満足度向上につながります。
※エクスカーション:現地の見学や体験を通じて参加者が見識を深められる、体験型の見学会
産学官連携やGXなど産業集積も強い

札幌市には北海道大学をはじめとする大学・研究機関が集積しており、大学や研究機関と関係する学術会議の開催地にもなっています。 また、北海道では半導体関連産業やGX(グリーントランスフォーメーション)、金融、食分野への投資が進んでおり、新たなビジネスイベントや展示会の需要拡大が期待されています。こうした産業集積は、関連分野の学会や視察、企業会議などを誘致する上で強みとなり、継続的なMICE需要を支える基盤にもなります。。
※GX:化石燃料への依存を減らし、再生エネルギーの活用などによって脱炭素化と経済成長の両立を目指す取り組み
札幌市が進めるMICE(マイス)誘致の取り組み

札幌市と札幌コンベンションビューローは、国内外からより多くのMICEを誘致するため、主催者に対してさまざまな支援を行っています。企画段階での相談対応や会場・宿泊施設の紹介に加え、助成制度札幌ならではの地域資源を生かしたプログラムの提案や、サステナブルMICEの推進などが主な取り組みです。こうした取り組みは都市としての競争力を高めて、MICEの誘致を加速させ、ホテルをはじめとする地域事業者に新たなビジネス機会をもたらします。
札幌コンベンションビューローによる開催支援
札幌コンベンションビューローでは、国内外の学会や企業、団体に対してMICE開催を支援しています。開催地の提案や会場・宿泊施設の紹介、視察の受け入れ、関係機関との調整など、企画から開催まで幅広くサポートしていることが特徴です。
また、開催に役立つ各種データや観光情報も提供しており、主催者が安心してイベントを運営できる体制を整えています。ホテルにとっても、コンベンションビューローとの連携はMICE需要を獲得する要となります。[5]
助成制度や開催支援プログラムの提供
札幌市では、一定の要件を満たすMICEやイベントを対象に、開催費用の一部を支援する助成制度を設けています。対象となるMICEの種類や規模に応じて補助を受けられるほか、歓迎看板の設置や観光パンフレットの提供など、開催を円滑に進めるための支援メニューも提供。こうした制度を活用することで、主催者の負担軽減につながるだけでなく、ホテルの宿泊需要や宴会利用の拡大も期待できます。
ユニークベニューや地域資源を活用したMICE(マイス)プラン
札幌市では、会議や展示会だけでなく、地域ならではの魅力を生かしたユニークベニューの活用にも取り組んでいます。[6] 歴史的建造物や文化施設、自然豊かな公園などを会場として活用することで、参加者に特別な体験を提供できることが特徴です。
また、北海道ならではの食文化やナイトコンテンツ、周辺エリアへのエクスカーションを組み合わせることで、イベントの付加価値向上にもつながります。ホテルが地域事業者と連携すれば、滞在満足度をさらに高められるでしょう。
サステナブルMICE(マイス)・国際競争力強化への取り組み
近年、札幌市では環境や社会への配慮を取り入れたサステナブルMICEにも力を入れています。札幌市は「サステナブルなMICE開催のためのガイドライン」を策定し、廃棄物の削減や省エネルギー、ペーパーレス化など、環境に配慮したイベント運営を推進。[7]
サステナブルMICEの推進は、MICE都市としてのブランド向上につながります。こうした流れは、ホテルの環境配慮型サービスと親和性が高く、MICE営業における差別化につながるでしょう。
札幌MICE(マイス)の開催事例

札幌市では、国際会議や学術会議、インセンティブ旅行、展示会・イベントなど、多様なMICEが開催されています。ここでは、実際の開催事例をもとに、札幌市がMICE開催地として選ばれる理由や、ホテルにとってのビジネスチャンスを解説します。
【国際会議・学術会議】医学会や国際団体の開催事例
札幌市では、医学会をはじめとする全国規模・国際規模の学術会議が数多く開催されています。たとえば2026年4月の「第126回日本外科学会定期学術集会」は、札幌市民交流プラザや京王プラザホテル札幌など、市内の複数会場で開催されました。参加者向けには、会場周辺ホテルの宿泊枠が用意され、学会公式サイトでも宿泊予約が案内されました。
大規模な学術集会の開催、参加者や運営関係者による宿泊、飲食、会議室利用などの需要が生まれたと考えられます。[8] また2025年の「東洋東南アジアライオンズフォーラム」では約1万人が札幌市を訪れ、海外からも多くの参加者が集まりました。世界の子どもたちのワクチンのためにペットボトルキャップを集めるというサステナブルな取り組みも特徴的です。
こうした学術会議や国際会議では、宿泊だけでなく、歓迎レセプションや懇親会、会議室の利用など、ホテルが担う役割は多岐にわたります。そのため、MICE対応の設備や運営体制を整えることに加え、多言語対応や団体向けプランの充実、主催者との連携を強化することが、継続的なMICE需要の獲得につながるでしょう。
【インセンティブ旅行】海外企業の報奨旅行の事例
札幌市では、海外企業のインセンティブ旅行(報奨旅行)の誘致にも力を入れています。インセンティブ旅行とは、企業の成績優秀者や販売代理店などを対象に実施する報奨旅行です。一般的な団体旅行とは異なり、参加者に特別感を感じてもらえる食事や体験、表彰式などが重視されます。
札幌やその周辺では、インセンティブ旅行のプログラムとして、たとえば以下のような体験を組み合わせることが可能です。
- YOSAKOIソーラン演舞を通じたチームビルディング
- スイーツ王国札幌ならではのスイーツ作り体験
- アイヌ文化に触れられる伝統楽器の演奏
- ノーザンホースパークでのガーデンパーティー
札幌コンベンションビューローは、開催支援やユニークベニューの提案、ガラディナーの企画支援などを行っており、海外企業が開催しやすい受入環境の整備を進めています。[9] [10]
インセンティブ旅行は、宿泊に加えて特別感のある食事や地域体験などが求められるため、ホテルが付加価値の高いサービスを提案すると、他施設との差別化につながるでしょう。
【展示会・イベント】地域活性化につながる事例
札幌市では、産業展示会や見本市など、多様な展示会・イベントが定期的に開催されています。たとえば2026年に初開催された「札幌産業交流フェア」はイベント・防災・クリエイティブ分野の企業や団体が集まる展示会です。[11] 新たなビジネス創出や異業種連携を目的に、会場では商談や情報交換が活発に行われ、地域企業同士の新たなつながりづくりに貢献しました。
こうした展示会には道内外から多くのビジネス関係者が訪れます。ホテルが会議室や宴会場を含めたプランを提案することで、MICE需要を取り込む新たなビジネスチャンスにつながるでしょう。
札幌市のホテルがMICE(マイス)需要を取り込むための実践ポイント

札幌市でMICE需要を取り込むには、宿泊だけでなく付加価値の高いサービスを提供することが重要です。客室以外の利用も含めて収益につなげるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 主催者や旅行会社への営業を強化する
- 宴会・レストラン・会議利用を組み合わせた提案を行う
- 多言語対応やデジタルサービスを充実させる
- 地域との連携による参加者の満足度を高める
- ブレジャー*需要を取り込み、客単価を向上を目指す
MICE需要を取り込むには、主催者や旅行会社、地域事業者との連携を強化し、参加者に魅力的な滞在プランを提案することが重要です。ホテルが観光施設や飲食店などと連携し、札幌ならではの食や文化、自然を生かした体験を提供することで、参加者の満足度や滞在価値の向上につながります。さらに、MICEに観光を組み合わせる「ブレジャー」需要を取り込めば、宿泊日数の延長や客単価の向上も期待できるでしょう。
※ブレジャー:出張の機会に、滞在を延長するなどして余暇(レジャー)を楽しむ旅行スタイル
札幌MICE(マイス)はホテルの新たな挑戦の場になる
MICEは、宿泊だけでなく宴会や飲食、会議室利用などホテル内の複数部門に収益機会を生み出す市場です。札幌市では助成制度や開催支援を通じてMICE誘致を積極的に進めており、国際会議や学会、企業イベントなど多様な催事が開催されています。
こうした需要を継続的に取り込むには、自社が対応できる催事の規模や種類を明確にし、主催者、旅行会社、行政、地域事業者との連携を早い段階から進めることが重要です。宿泊、会議、飲食、地域体験を一体的に設計し、主催者と参加者の双方にとって利用しやすい受け入れ体制を整えることで、継続的なMICE需要の獲得とホテル経営の発展につなげられるでしょう。
参考文献
[3]札幌市における国際会議等誘致の取組と現況について|札幌市
[4]札幌 | 都市・施設を探す | 都市・施設・事業者を探す | 国際会議主催者向け | 日本政府観光局(JNTO)MICEの誘致・開催支援
[6]ユニークベニュー検索 | 札幌コンベンションビューロー
[9]Sapporo Planners Guide| 札幌コンベンションビューロー
