ロサンゼルスの鉄道「メトロリンク」がアースデイ(4月22日)に無料乗車イベントを開催

ロサンゼルス周辺の6郡(ロサンゼルス郡、サンディエゴ郡、オレンジ郡、リバーサイド郡、サンバーナーディーノ郡、ベンチュラ郡)をカバーする地域鉄道システム『メトロリンク(Metrolink)』が4月22日のアースデイ(Earth Day)に合わせて、全線を対象に乗車料金を終日無料にする恒例イベントを行いました。
その日、乗客は乗車券を購入する必要はありません。駅のプラットフォームからそのまま列車に乗り込み、好きな駅で降車することができます。1日に何回でも乗車できます。
メトロリンクが初めてアースデイに無料乗車イベントを行ったのは2019年。新型コロナウイルスの影響による中断がありましたが、今年で4年連続になります[1]。
アースデイとは毎年4月22日に世界中で祝われる環境保護の記念日です。1969年にカリフォルニア州サンタバーバラ沖で発生した大規模な原油流出事故をきっかけに、ウィスコンシン州選出の上院議員ゲイロード・ネルソン氏が提唱し、翌1970年4月22日に当時スタンフォード大学で学生運動の指導者だったデニス・ヘイズ氏が中心となって2,000万人を動員したと言われる伝説の環境デモが起源です。現在では、アースデイは192か国以上で10億人以上が参加する世界的な環境運動となっています(公式ウェブサイト)。
メトロリンクがアースデイに参加することはこうした世界的な流れの一環だと言えるでしょう。アースデイは1日だけのイベントですが、まずは人々に電車での移動を試してもらう機会を作ることが目的だと思われます。
ロサンゼルスといえば映画の都ハリウッドや美しいビーチのイメージが強い人気観光都市ですが、全米きっての交通渋滞と大気汚染が深刻な都市としての一面もあります。縦横無尽な高速道路システムが建設された反面、車でないと何処にも行けない都市になってしまいました。その結果として、都市全体をまるでドーナッツの輪のように取り囲む光化学スモッグの帯は一種の名物でもあります。
メトロリンクの開業は1992年。その頃からカリフォルニア州やロサンゼルス市は環境保護のためのさまざまな対策に取り組み始めていました。行き過ぎたクルマ社会からの脱却を目指し、公共交通システムの利用を市民に促す試みもそのひとつです。
3年後に迫った2028年のロサンゼルス・オリンピックでは”Car-Free”、つまりすべての会場への移動を公共交通機関に限ることを目指すことをカレン・バス市長が宣言しています。メトロリンクの路線が拡大しているだけではなく、地下鉄や地域バスとの連携も徐々に実現しつつあります。ロサンゼルス国際空港には無人運転モノレール「People Mover」がまもなく完成し、遅まきながら車以外での交通手段で空港に行き来することも可能になる予定です。
それでもロサンゼルスの現状を見ると、日本のような緻密な公共交通システムを作り上げることは非常に困難な課題だと感じざるを得ませんが、千里の道も一歩からと言います。
オリンピックを待たずとも、大谷翔平選手特需とも呼べるほどにロサンゼルスを訪れる日本人観光客は昨年から急増していますが、今後は野球観戦や市内観光に電車や地下鉄を利用する選択肢が以前よりは増えていくでしょう。
