南欧で「観光利用過剰」反対の抗議活動

爆発南欧各地でデモ、観光過剰に住民の怒り

南ヨーロッパの主要観光都市は今、あらたな課題に直面しています。
観光客の過剰な流入によって生じる「オーバーツーリズム」への不満が住民の間で高まり、2025年6月のある週末には、各地で大規模な抗議活動が繰り広げられました。中でもスペイン・バルセロナでは、デモ参加者が水鉄砲や煙幕を使って怒りを表現する場面も見られました。
観光が地域住民の日常を奪う

バルセロナの通りでは、デモ参加者たちが「あなたのバカンス、私の苦痛」と訴え、手には「大量の観光客が街を蝕む」「彼らの欲望が私たちを破滅させる」といったメッセージを掲げました。一部の住民は、店の窓に水をかけたり、ホテルや店舗に「地元を守れ、観光客は帰れ」という内容のステッカーを貼ったりするなど、強い態度で抗議の意思を示しました。
今回の抗議活動は、カタルーニャ語で「観光過剰に反対する南ヨーロッパ」を意味する「SETアライアンス」が主導しました。彼らの主張は明確です。無秩序な観光客の流入が不動産価格の急騰を招き、長年そこに住む人々が住み慣れた場所を追われる事態が多発しているというのです。昨年、バルセロナには約160万人の住民に対し、その16倍にあたる2600万人の観光客が訪れており、市民生活への影響は看過できないレベルに達しています。
広がる不満はスペインからイタリアへ

抗議の波はバルセロナに留まりません。スペイン国内では、人気のリゾート地であるイビサやマラガ、パルマ・デ・マヨルカ、歴史的な街サンセバスチャンやグラナダでも同様のデモが行われました。
イタリアでも事態は深刻です。ジェノバ、ナポリ、パレルモ、ミラノといった大都市から、世界遺産を抱えるベネチアまで、各地で住民による抗議活動が展開されました。特にベネチアでは、市内に約1,500床もの宿泊施設を追加する新たなホテル建設計画に対し、地元住民が強硬に反対しています。
バルセロナの住宅賃貸規制で未来への模索
こうした住民の切実な声を受け、バルセロナ市は昨年、具体的な対策に乗り出しました。2028年までに観光客向けの短期マンション賃貸を全面禁止すると発表したのです。これは、市民がより快適に暮らせる都市環境を取り戻すための、大胆かつ画期的な試みとして注目されています。
デモの参加者は、「自分の街で肩身の狭い思いをするのは、もううんざりだ」と語ります。
観光が経済的な恩恵をもたらすという一般的な見方に異を唱え、「バルセロナにおける観光客数を抜本的に減らし、地域に真の豊かさをもたらす別の経済モデルを追求すべきだ」と強く訴えています。
これまで観光産業は経済成長の原動力とされてきましたが、南ヨーロッパの都市では今、住民の暮らしと持続可能な観光の両立という難しい課題に直面しています。
今後、これらの都市がどのような観光モデルを構築していくのか、その動向に注目が集まります。
【参考記事】
https://www.japantimes.co.jp/news/2025/06/16/world/society/protesters-overtourism-southern-europe