モンゴルの大草原を馬で駆ける。体験型ツアーがツアーグランプリ2025 【大賞】国土交通大臣賞を受賞!

2025年7月2日、日本旅行業協会(JATA)は今年で31回目となる「ツアーグランプリ2025」の受賞ツアー作品を発表し、表彰式を実施しました。
大賞にあたる国土交通大臣賞には、風の旅行社が企画・催行するモンゴルでの乗馬ツアー「未経験者から上級者までみんなで草原集合!!ほしのいえセレクト6日間」が選出されました。
奇しくも筆者は、このツアーに表彰式の当日まで参加していました。私たちがモンゴルで乗馬を楽しんでいたツアー期間中に受賞が決まり、成田空港での解散後、添乗員は足早に表彰式会場へ。後日掲載された各賞受賞者たちの記念写真で、ひとりだけ普段着で満面の笑顔を浮かべていたのが、ツアー企画者でもある山田基広さんです。
乗馬合宿のような観光ツアー
同ツアーの日程及び内容は風の旅行社ウェブサイトでも見ることができます。5泊6日、しかし初日と最終日はほぼ移動のみなので、実質的には4日間のツアーです。
1日目 | 成田国際空港からチンギスハーン国際空港へ。到着後、キャンプ地にバスで直行。ゲル宿泊。 |
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2日目 | 終日乗馬、ゲル宿泊。 |
3日目 | 終日乗馬、ゲル宿泊。 |
4日目 | 終日乗馬、ゲル宿泊。 |
5日目 | 終日乗馬、ゲル宿泊。 |
6日目 | バスでチンギスハーン国際空港、帰国の途へ。 |
上記の通り、2日目から5日目の4日間は基本的に同じ流れです。
具体的には、午前8時頃に皆で朝食を摂り、午前10時ごろから約2時間の乗馬体験があります。昼食と休憩の後、午後4時ごろからふたたび乗馬タイム。夕食を摂った後は寝るだけです。
オプションとして、遊牧民のゲル訪問、夜の星空観察、モンゴル音楽のミニコンサート、羊の解体見学などが組み込まれましたが、参加は自由でした。
食べては馬に乗り、食べては休む。そしてまた馬に乗り、食べて、眠りにつく。このシンプルな繰り返しが素晴らしい体験になる理由は、大きく3つあると考えています。
1. 大草原の風景
モンゴルの表玄関、チンギスハーン国際空港はこの国の首都であるウランバートル近郊にあります。
しかし、このツアーの送迎バスは都心には向かいません。空港を出て、舗装道路を10分ほど走ると、すぐにバスは草原の中へ入り、約30㎞離れた風の旅行社直営キャンプ地「ほしのいえ」へ向かいます。
キャンプ地はまさに大草原の中にあります。見渡す限り、とは陳腐な表現かもしれませんが、本当にどこまでも緑の草地が続いています。ゆるやかな丘の起伏と、動物たちの群れ。そして、大空に浮かぶ雲だけが変化と言えるでしょう。
作家の椎名誠さんはモンゴルの草原を旅した紀行文に「草の海」というタイトルをつけました。そんな風景の中に身を置くことだけでも、何事にも代えがたい贅沢だと感じられます。
2. 快適なゲル宿泊

キャンプ地には白い円形のテントのような住居「ゲル」が並んでいます。紀元前からほとんど構造が変わっていないという遊牧民たちの住まいです。常に移動して生きる彼らは、大人が数人いれば、わずか数時間でゲルの設営や撤収ができるのだそうです。
ゲルの内部は立って歩ける高さがあり、放射状にベッドや椅子が配置され、中央にストーブがあります。
モンゴルの冬はとても寒く、氷点下40度にも達することもあるそうです。それでいて夏は暑く、実際に今回のツアーでも30度を超えた日がありました。
ゲルはそんな夏冬の厳しい自然環境の中でも快適に暮らせるよう、壁と天井には羊毛フェルトを重ねて断熱し、中央の天窓で通気を調整することで、夏は涼しく冬は暖かく過ごせるように工夫されています。

ツアー中に激しい風雨に見舞われた日が1日ありましたが、防水も完璧でした。
ツアー参加者たちは2~4人ごとにひとつのゲルに分かれ、期間中はずっと同じゲルに宿泊しますが、寝ることだけでも貴重な異文化体験と言えるでしょう。
3. レベル別の乗馬プログラム
ツアー名にある通り、参加者の乗馬レベルはさまざまです。たとえば、筆者はほぼ未経験でしたが、一緒に参加した妻と息子はどちらも数年以上の経験がありました。
参加者19名は上級者、中級者、そして初心者の3グループに分けられ、それぞれのレベルに応じたプログラムで乗馬を楽しめるように工夫されていました。
なかでも、初心者向けの乗馬練習プログラム「モリン・スクール」(モリン=馬の意味)は特筆すべき内容でした。
初日は馬の乗り降りから始まり、ゆっくり歩く常歩(なみあし)、小刻みな2拍子であるく速歩(はやあし)と段階的に進み、最終日には3拍子で走る駈歩(かけあし)ができるようになります。
それまで馬に乗ったことがない人でも、たった4日間で、草原を風のように駆け抜けられるようになります。
アドベンチャーツーリズムという新たなトレンド
自然や文化を体験することを目的とした旅のスタイルを、アドベンチャーツーリズムと呼びます。観光地を「見たり」「買い物したり」することを主な目的とする従来型の旅とは異なり、自分で何かを「体験する」ことが主眼になります。
まさにその典型的な例と言えるこのツアーがグランプリ大賞に選ばれたことは、日本でもアドベンチャーツーリズムの人気が徐々に高まってきている証ではないでしょうか。

