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カナダ観光局が提唱する「再生型観光(リジェネラティブツーリズム)」とは? 事例と実践ガイド

2025 10/29
リジェネラティブツーリズム
各国の事例 持続可能な観光
2025-11-4

観光業界はいま、大きな転換期を迎えています。新型コロナウイルスの流行を経て、カナダ観光局が注目する再生型観光(リジェネラティブツーリズム) が世界的に広がり始めました。ただ観光客の数を増やすのではなく、「訪れた地域と自然を前よりもっと良い状態にする」という次世代の観光モデルについて見ていきましょう。

目次

再生型観光(リジェネラティブツーリズム)とは?

再生型観光(リジェネラティブツーリズム) とは、訪れる地域や自然環境を「守る」だけでなく、「訪問前よりも良い状態へ再生させる」ことを目的とした観光の考え方です。従来の サステナブルツーリズム(持続可能な観光) が「悪化を防ぐ・現状維持」を目指していたのに対し、再生型観光は「価値を高める」「関係性を育てる」ことに重点を置きます。

この考え方は、気候変動やオーバーツーリズム、地域経済の疲弊といった課題が深刻化する中で、世界的に広がっています。地域の生態系を保護しながら観光を産業として成長させるには、単なる抑制ではなく、地域社会・文化・自然を巻き込んだ「再生」という視点が不可欠だからです。

カナダ観光局(Destination Canada) は、こうした世界的な動きに呼応し、「人・場所・繁栄(People, Place, Prosperity)」の3つの視点から観光を再構築しています。[1]

具体的には、地域の歴史や文化を尊重し、地域住民が主体となる観光開発を推進することで、観光客だけでなく地域全体が恩恵を受けるモデルを構築しています。

この「リジェネレーション(再生)」の考え方は、観光を地域の未来づくりの手段とする新たな基準となりつつあります。業界関係者にとっては、従来型の集客・収益モデルを超え、地域とのパートナーシップを基盤とした持続的な価値創造が求められているのです。

Orillia(オリリア)の地域再生の取り組み

カナダ・オンタリオ州の小都市 Orillia(オリリア) は、かつて農業と工業で栄えた町でしたが、時代の変化とともに衰退し、地域再生が課題となっていました。近年、行政と住民が協力し、地域固有の「物語(Story of Place)」を軸にしたまちづくりが進められています。

取り組みのきっかけとなったのは、作家のスティーブン・リーコックの小説「Sunshine Sketches of a Little Town」。オリリアをモデルにした架空の町「マリポサ」の物語を手がかりに、住民自らが歴史や文化を掘り起こし、地域の魅力を再発見しました。さらに、先住民がこの地を「Mnjikaning(集まる場所)」と呼び、古くから交流や交易の場として大切にしてきた歴史も再評価されました。

こうしたビジョンを基に、図書館をコミュニティの中心に据えた「集いの場」づくりや、ダウンタウンのアート地区化、音楽・芸術フェスティバルの開催などが展開されています。オリリアは今、物語・共感・創造性を大切にした持続可能な地域再生モデルとして注目を集めています。

海外事例から学ぶ再生型観光

世界の各地でも、地域資源を守りながら観光を成長させる「再生型観光」の取り組みが進んでいます。自然保全や地域経済の活性化を両立させる事例は、観光の新しい可能性を示しています。ここでは、成功事例を通じて具体的な取り組みとその効果を探っていきます。

Playa Viva(メキシコ)

画像出典:tablethotels

メキシコ・ゲレーロ州の小さな村 Juluchuca(フルチュカ) の近くで、2006年に開発されたエコリゾート「Playa Viva(プラヤ・ビバ)」は、持続可能な観光の成功例として注目されています。

放棄されたヤシ農園を活用した開発計画は、当初は外部資源に依存するリゾート構想でしたが、地域の長老たちの知恵や文化を学んだことで方向性が一変。

「リゾートが村を利用する」のではなく、「リゾート=村」という発想のもと、地域の暮らしや自然環境と共に成長する仕組みが構築されました。

Playa Viva は、地元雇用の促進や有機農業・廃棄物削減の教育プログラム、塩の協同組合の設立、ウミガメ保護活動などを通じ、地域の経済・教育・環境を同時に再生。

ツリーハウス型の宿泊施設は自然を守りながら観光資源となり、観光客も地域活動に参加することで深い交流が生まれています。結果として、若者が村に残り、経済的にも黒字経営を維持するなど、自然・文化・経済が調和した地域再生モデルを実現しています。

ラス・サリナス(チリ)

画像出典:expedia

チリの有名な観光都市 Viña del Mar(ビニャ・デル・マル) は、19世紀後半のガーデンシティ運動を背景に、長く持続的な成長を遂げてきました。しかし近年、観光の急成長が地域に負担をかけ、若者の流出や地域サービスの衰退が深刻化し、都市の魅力が失われつつありました。

そんな中、地元の大企業が、海岸近くの放置された油槽跡地(19ヘクタール)を住宅地として再開発する「ラス・サリナス計画」を発表。

しかし、当初は25以上の住民団体から強い反発を受け、地域は「開発vs住民」の対立構造に陥りました。

転機となったのは、再生型開発(Regenerative Development)の専門チーム導入です。開発側は「都市全体の健康を取り戻す」という共通ビジョンを掲げ、対話を通じて「その土地本来の物語(Story of Place)」を掘り起こしました。ビニャ・デル・マルがかつて持っていた自然との調和やコミュニティの豊かさを基盤にした議論が進む中、反対していた住民団体が協力的なパートナーへと変化しました。

その結果、エスチュアリー(河口域)の復元プロジェクトや、農業と飲食店の連携、地域交通の改善、若者リーダー育成など、多様な地域活動が連鎖的に進展。

計画の承認期間やコストも削減され、都市全体が再び未来を描けるようになったのです。

このプロジェクトは、都市再生における「対話」と「共有された物語」の力を示す象徴的な事例となっています。

観光業界への示唆

これらの再生型観光事例が示す共通点は、「地域が主体となること」と「協力して新しいものを生み出すこと」の重要性です。カナダ観光局が推進するプロジェクトでも、地域の特性を活かした観光開発と、観光客を巻き込む参加型体験を設計することで、同様の成果を期待できます。特に都市型観光や自然観光の両分野で、こうした国際事例の知見を応用する余地は大きいでしょう。

再生型観光の進め方

再生型観光とは、地域に関わる人々が共通の関心を行動に変え、地域全体の持続的な発展を目指す取り組みです。

以下の5つの原則を意識することで、観光を通じた地域活性化と価値向上を実現できます。

原則1:地域の全体像を把握して行動する

住む地域の地理的特徴や生態系、経済や文化など、多面的な要素を理解します。

たとえば、どんな山や川があるか(地理)、どんな生き物がいるか(生態系)、どんな仕事があるか(経済)、どんなお祭りがあるか(文化)などです。

個々の行動が地域全体にどのような影響を与えるかを考え、部分的な視点にとどまらず、地域全体のつながりを踏まえた取り組みを行うことが重要です。

原則2:地域の潜在力を見極める

地域独自の魅力や資源を、バラバラのものではなく、人・文化・自然が互いにつながっているものとして見てみましょう。過去の歴史や住民の経験、自然環境に目を向けることで、まだ活かされていない可能性を発見し、地域の特徴や物語を明確にしていきます。

単なる問題解決に留まらず、地域が持っている隠れた本当の力(潜在力)を引き出すことが目的です。

原則3:人と人のつながりを育てる

住民や事業者が互いに支え合うネットワークを築きます。情報やアイデアを共有する場を作ることで、地域全体の生態系や経済、コミュニティの活力向上につながる活動を促進します。

原則4:個人の強みを地域に活かす

住民や事業者それぞれの個性やスキルを理解し、地域活動や観光に役立てていきます。

人々が自分の情熱や能力を地域のために発揮できる環境を整えることで、皆で協力しながら今までにない新しく素晴らしい成果が生まれます。

原則5:共創の仕組みで継続的に地域を支える

「管理・保全のサークル(Stewarding Circle)」を構築し、地域の持続的発展を見守ります。行政・企業・住民が協力し、地域の健康や生態系を守りながら、新しい取り組みや学びを長期的に育てていきます。

これらの原則に沿った取り組みを通じて、観光は経済活動にとどまらず、地域の自然環境や人々のつながり、文化の力を高める手段となります。

初めは複雑に感じるかもしれませんが、一歩ずつ進めることで、地域に根ざした再生型観光の実現が可能です。

再生型観光におけるスチュワードシップと評価の考え方

再生型観光では、観光地を単なる管理対象として扱うのではなく、地域の自然環境や文化、人々のつながりの健康を育み、維持・向上させる役割を担います。この役割を「スチュワードシップ」と呼びます。

ここで重要になるのが、取り組みの進捗や成果をどのように評価するかという点です。

1. 目標を具体的に設定する

まずは、「どのような地域の暮らしを目指すか」「そのためにどのステップが必要か」をはっきりさせます。成果は以下の3つの視点で捉えます。

  • アウトプット:活動そのものの成果
  • アウトカム:地域やコミュニティに起きた変化
  • インパクト:長期的な効果や持続的な影響

これを経済的・社会的・環境的観点から複数の指標で評価します。

2. 数値だけでなく地域の物語で評価する

評価は数字だけでなく、地域で起きた変化や成長の物語を描くことも含まれます。量的指標だけでは見えない、コミュニティや地域の活力を理解するためです。

3. 地域特有の「活力」を測る

例えばモントリオールの語学学校「CLC Canada」では、以下のような観点で地域や組織の「生き生きとした状態」を評価しています。

  • 学校や地域が人を引きつける魅力を持っているか
  • 学生が活力や所属感を感じているか
  • 教職員の満足度や協働の雰囲気はどうか

量的に測りすぎず、観察や対話を通じた継続的な評価が重視されます。

4. 地域全体のつながりを意識する

個々の取り組みは孤立させず、地域全体の関係性の中で評価します。

例えばレストランの取り組みを評価する際には、その建物が環境に優しいか(環境認証)だけでなく、食材の調達ルートや地元農家とのつながりも含めて俯瞰することが大切です。

5. 定期的な振り返りと柔軟な調整

再生型ステュワードシップとは、地域の変化に合わせて学び、やり方を変えていくことです。です。地域の変化や住民の行動を観察し、必要に応じて戦略や活動を調整しながら、地域の健康、多様性、活力を高めていきます。

ポイントは、数値だけでなく物語や関係性を通して地域の活力を総合的に評価し、学びながら改善することです。

こうした取り組みによって、観光や地域開発は単なる経済活動にとどまらず、地域全体の持続的な発展に貢献するものとなります。

再生型観光の課題とこれからの展望

再生型観光は、地域の文化や自然、経済を同時に活性化しながら観光を推進する新しい取り組みです。しかし、その実践にはいくつかの課題も存在します。

地域住民、事業者、行政などさまざまな関係者が協力する必要があり、価値観や利害の違いを調整しながら進めることが求められます。また、地域の活力や繁栄力を測るための評価方法の設計や、持続可能な資源・投資の循環を構築することも簡単ではありません。

今後は、地域ごとの知識や経験を共有する「学びの場」や成功事例の紹介、地域活動をサポートする専門家の助けを通じて、それぞれの地域が再生観光を実践する力を高めることが重要です。さらに、様々な立場の人が協力し、同じ目標に向かって行動することで、観光を通じて地域全体の健康と持続的な成長を実現することが期待されます。

まとめ

カナダ観光局が提唱する再生型観光(リジェネレーションツーリズム)は、観光業の未来を考えるうえで欠かせない指針です。このアプローチでは、地域の文化や自然環境を再生しつつ、旅行者に新しい体験を提供し、事業者の持続的成長も促す「三方良し」のモデルを目指します。

短期的な利益だけでなく、長期的な価値創造を重視することで、観光地全体の魅力と競争力を高められます。再生型観光は、地域・旅行者・事業者のすべてに利益をもたらす、次世代型の観光戦略として、今後ますます重要性を増していくでしょう。

参考文献

[1]A Regenerative Approach to Tourism in Canada




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