旅行用アプリのサステナブルツーリズムへの活用

デジタル技術の発展は日々、人々の行動に変化をもたらしています。旅行についても例外ではありません。様々な旅行用アプリの登場は、人々の旅行様式や旅先での行動にプラスの変化を与えています。
山梨県での「wowp」の実証実験

やまなし観光推進機構は、観光アプリを開発するwowpと共同で、新たな人流創出や滞在満足度の向上を目的とする実証実験を行っています。
「wowp」は、利用者の現在地周辺のおすすめ観光スポットのまとめや、イベント情報をリアルタイムに表示するアプリです。さらに現在地周辺で利用できるクーポンも配信されます。観光情報をリアルタイムで入手したいという旅行客は多く、そのニーズに対応したアプリです。もちろん、出発前に目的地周辺の観光スポットのまとめ記事を読むことや、SNSの投稿を基にしたおすすめ観光スポットをマップに表示することもできます。言うなればガイドブックを進化させた旅行用アプリです。
この実証実験は、「wowp」を活用し、山梨県内の観光施設・店舗などの観光情報やクーポンなどのお得な情報を、利用者の位置情報に基づいてリアルタイムで発信します。また期間中、やまなし観光推進機構会員をはじめとした山梨県内の事業者を対象に、wowp上でのクーポン・記事広告無料出稿キャンペーンも実施します。
島根県隠岐島・海士町での取り組み
島根県隠岐島にある海士町では、LINEミニアプリ「miniama」を活用して関係人口創出に向けた取り組みが行われています。
「miniama」では、海士町の住民と関わりを持つことや文化に触れることができるミッションが設定されており、達成するとLINEミニアプリのマイページ上であまポイントが獲得できます。海士町に初めて訪れた観光客でも、観光だけではなく、海士町での“ないものはない”という暮らしのスタイルや、海士町特有の価値観にも触れられるという特長があります。貯めたポイントは海士町の地域通貨との交換や海への寄付といった特典と交換することができます。
多くのポイントを貯めるほど、海士町の文化の理解が深まるとともに、地元住民との関係も深くなる仕組みとなっています。この取り組みを行っている島前ふるさと魅力化財団は、海士町ファンの輪を拡げることで、関係人口を創出し、町の一員として町民とともに地域の魅力を高めていくことを目指しています。
観光分野の課題解決に向けた一助に
観光産業におけるアプリの活用は今後、一層進むと考えられます。旅行者にとっては計画段階のほか、出発後には位置情報を活用したリアルタイムの情報取得といった場面でも高い有用性があると言えるでしょう。
Booking.comが発表した2025年のトレンド予測には「個の欲求を満たすAI活用の旅」が入っており、すでに多くの旅行者がリアルタイムの情報取得や、混雑回避といった場面でAIなどのテクノロジーを活用しています。また、情報技術を上手に活用することは、オーバーツーリズムを避けたい地域にとっても活用の余地が大いにあると言えます。特に規模が小さく観光分野に十分な投資を行えない自治体や事業者にとっては、AIや旅行用アプリといったテクノロジーは大きな役割を果たすでしょう。観光分野の課題解決に向け積極的な活用が期待されます。

