ライアンエアー、紙の搭乗券を完全廃止へ——デジタル化で利便性向上と環境負荷軽減を推進

アイルランドのLCC(格安航空会社)として知られるライアンエアーは、2025年11月3日より紙の搭乗券を全面廃止し、デジタル搭乗券への完全移行を発表しました。乗客は、ウェブサイトや「myRyanair」アプリを通じてチェックインし、デジタル搭乗券を取得することになります。年間2億人以上が利用する同社では、既に約80%の乗客がデジタル搭乗券を利用しており、この移行により年間300トン以上の紙資源の削減が見込まれます。
ライアンエアーのマイケル・オレアリーCEOは、2024年10月の記者会見でこの方針を明らかにし、環境への配慮と運営の効率化を目的としていると述べました。同社のアプリを通じて搭乗券を発行することで、遅延情報の提供や代替便のオプション表示など、よりパーソナライズされたサービスが可能になります。これにより、顧客の利便性が向上するだけでなく、空港での混雑解消にも寄与することが期待されています。
デジタル化がもたらす変化と課題
デジタル搭乗券への完全移行に伴い、ライアンエアーは空港での紙の搭乗券発行を停止します。これにより、従来空港カウンターで課されていた55ユーロ(約8800円※2025年3月13日時点)のチェックイン手数料も不要になります。一方で、スマートフォンを持たない乗客や、バッテリー切れなどのトラブルに対応する仕組みも求められます。オレアリーCEOは「搭乗ゲートでの対応策は用意している」としていますが、その具体的な詳細は未発表のままです。また、モロッコやアルバニアのティラナなど、一部の空港ではデジタル搭乗券が現地の規制により受け入れられておらず、今後の対応が課題となっています。
ライアンエアーは、ヨーロッパで最も環境効率の良い航空会社を目指し、燃料効率の良い航空機の導入、持続可能な航空燃料(SAF)の活用、再生可能エネルギーの導入、CO2オフセットプログラムなど、多方面から環境負荷の低減に取り組んでいます。2050年までにネットゼロ排出を達成するという長期目標を掲げ、持続可能な航空業界の実現を目指しています。
その取り組みのひとつである、今回のデジタル搭乗券への完全移行は、航空業界全体のデジタル化の流れを加速させる可能性があります。既に多くの航空会社がペーパーレス化を進めており、紙の搭乗券の廃止やデジタルサービスの強化を模索しています。デジタル化による環境負荷軽減や業務効率化が期待される一方で、高齢者やテクノロジーに不慣れな人々への対応など、多様なニーズに応える柔軟なサービス提供が求められるでしょう。
ライアンエアーの紙の搭乗券廃止は、業界のデジタル化を象徴する一歩となりそうです。

参考資料