シェアエコノミーとは?メリット・サービス事例・企業への持続可能な戦略的アプローチを紹介

現代のビジネス環境では、シェアエコノミーは単なる流行ではなく、企業が利益を追求しながらも、社会や環境への責任を果たすための新しいビジネスモデルとして急速に広がりを見せています。
さらに、デジタル技術の進歩や消費者の価値観の変化により、「所有する」ことから「利用する」ことへと転換。これが企業に新たなビジネスチャンスをもたらしています。
この流れは企業にとって、社会的責任を果たすための強力な手段ともなりえます。
本記事では、シェアエコノミーの基本的な考え方から成功事例まで、企業が知っておくべきポイントを解説。持続可能なビジネスモデルを築くための実践的なアドバイスを提供します。
シェアエコノミーとは?
シェアエコノミーは、インターネットを通じて活用できる資産をシェアする新しい経済モデルです。ここでいう資産には、モノや場所だけでなくスキルも含まれており、シェアする資産の幅が広がっています。
シェアエコノミーの背景には、IT技術の進歩があり、これにより従来は難しかった個人間の取引が実現できるようになりました。
シェアエコノミーの特徴は、個人間取引(CtoC)が多いことです。もちろん、企業と個人(BtoC)や企業間(BtoB)の取引もありますが、中心は個人と個人の取引です。
これらのサービスに関わる企業の主な役割はプラットフォームの提供であり、見知らぬ個人が安心して取引できるようにサポートする重要な機能を担っています。
シェアエコノミーは、資源を循環利用することで価値を生み続けるサーキュラーエコノミーの一類型として、持続可能な社会の実現に向けた重要な経済活動とされています。
シェアエコノミーの市場規模
日本におけるシェアエコノミーの市場規模は、着実に成長しています。
これは、インターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるサービスにおける取引金額を指します。市場規模は2021年度の2兆4,198億円から順調に拡大しており、2032年度には8兆5,770億円に達すると予測されています。
さらに注目すべきは、認知度の低さなどの課題を解決できた場合の成長ポテンシャルです。課題解決が進めば、2032年度には市場規模が15兆1,165億円に成長する可能性があると予測されています。
この成長予測は、シェアエコノミーが日本経済において重要な位置を占めることを示しており、企業にとっては大きなビジネスチャンスを意味しています。
シェアワーカーの収入が既存産業に波及する効果は、2022年度に1兆6,992億円に到達。シェアエコノミーの成長が、既存産業にも好影響を与えていることが確認されています。
代表的なシェアエコノミーのモデル
現在のシェアエコノミーは、主に、以下の5つの領域に分類されます。[2]
分野 | 概要 | 代表的なサービス例 | 特徴・効果 |
---|---|---|---|
モノのシェア | 使わないものなどをシェアするサービス | ・フリマアプリ ・オークションアプリ | ・普段使わないモノの有効活用 ・SDGsへの貢献 ・循環型社会の実現 |
空間のシェア | 使っていない場所や住宅などをシェアするサービス | ・民泊 ・シェアハウス ・貸し会議室 ・駐車場シェア | ・地域課題の解決 ・遊休資産の活用 ・観光業の活性化 |
移動のシェア | 自動車や自転車などをシェアするサービス | ・カーシェア ・バイクシェア ・サイクルシェア ・キックボード ・船のシェア | ・所有から利用への転換 ・新しい移動スタイル ・環境負荷の軽減 |
スキルのシェア | 技能や特技をシェアするサービス | ・クラウドソーシング ・家庭教師 ・家事代行 | ・個人スキルの活用 ・新しい働き方の提供 ・副業機会の創出 |
お金のシェア | 資金を出しあって目標を達成するサービス | ・クラウドファンディング ・投資型プラットフォーム | ・新たな投資機会 ・資金獲得の民主化 ・イノベーションの促進 |
各分野は相互に補完し合いながら、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たしています。
シェアエコノミーに取り組むメリット
シェアエコノミーは、提供者、利用者それぞれに多面的なメリットを提供する革新的なビジネスモデルです。
ここでは、主な4つのメリットであるコスト削減、資産の有効活用、新たなビジネスチャンスの開拓、持続可能性の推進について解説します。
コスト削減
シェアエコノミーによるコスト削減効果は、利用者と提供者双方に顕著に現れます。
利用者は、従来より低コストでサービスを利用でき、必要なときにだけ利用することでコスト削減が実現できます。
削減内容 | メリット |
---|---|
カーシェアリングサービス | ・マイカー購入に伴う初期投資や維持費を削減 ・保険料や駐車場代を削減 ・必要な移動に対してのみ料金を支払い、総コストを抑制 |
オフィススペースのシェアリング | ・賃料や設備投資を削減 ・固定費から変動費への転換が可能 |
既存資源の有効活用によるコスト削減と新たな収益源の創出が可能となり、持続可能なビジネスモデル構築に貢献します。
提供者(個人・企業)は、使用していない資産やスキルを収益化することで追加収入を得ることができ、特に経済的な変動や不安定な時期において有効な手段として注目されています。
資産の有効活用
シェアエコノミーの中核にあるのは、眠っている資産を有効活用し、価値を生み出すことです。使われていないものを貸したり売ったりすることで、無駄をなくし、資産を最大限に活用できます。
収益化の対象 | メリット | |
---|---|---|
個人 | ・自動車・空き部屋・不要になった物品・専門スキル | 未活用資産から継続的な収入を得る |
企業 | ・オフィスの空きスペース・未使用の設備・従業員の専門知識 | 未使用の資産やリソースから収益を得る |
また、スキルや時間などの「無形の資産」も価値に変換できる点が革新的です。
シェアリングの種類 | 具体例 | メリット |
---|---|---|
空間のシェアリング | 民泊サービス(Airbnb) | 個人所有の物件や空き部屋を旅行者に提供し、未活用資産から収益化 |
企業スペースのシェアリング | 企業の会議室や研修施設 | 使用していない時間帯にレンタルスペースとして提供し、稼働率を向上、維持費用の回収 |
スキルのシェアリング | スキルシェアプラットフォーム(ココナラなど) | 個人の専門知識やスキルを商品化し、副収入を得る機会を提供 |
さらに、IoT*センサーやデータ分析技術を活用して、資産の利用状況をリアルタイムで把握し、最適なタイミングでシェアリングサービスに提供することで収益最大化を図る事例も増えています。
※IoT:Internet of Things(モノのインターネット)の略で、インターネットを介して物理的な機器や装置が互いにデータを交換し、情報をリアルタイムで共有する技術です。IoTセンサーは、これらの機器に取り付けられ、温度や湿度、位置などのデータを感知し、インターネットを通じてその情報を送信します。
新たなビジネスチャンスの開拓
シェアエコノミーは、従来のビジネスモデルでは実現困難だった新たなビジネスチャンスを創出しています。
個人と個人、個人と企業を直接つなぐプラットフォームの発展により、これまで参入障壁が高かった業界でも、新規事業者の参入が容易になりました。
テクノロジーの進歩と消費者行動の変化により、オンラインプラットフォームを通じて効率的に商品やサービスへのアクセスを共有できるようになっています。
企業にとって、シェアエコノミーを活用することで、初期投資を抑えつつ新市場への参入や新サービスの提供が可能になります。
業界 | リソースのシェアリング | 具体例 | メリット |
---|---|---|---|
製造業 | 設備シェアリング | 自社の遊休設備を他社に貸し出す | 設備の稼働率向上、収益化 |
小売業 | スペースシェアリング | 店舗の空きスペースを貸し出し、コワーキングスペース事業に参入 | 収益の多様化、未活用スペースの活用 |
異業種間 | リソース共有とコラボレーション | 異業種間でのリソース共有による新たな価値創造 | コラボレーションによるイノベーションの促進 |
デジタルプラットフォームの発展により、地理的制約を超えたビジネス展開が可能となり、地方企業でも全国規模でのサービス提供が実現できるようになっています。
持続可能性の推進
シェアエコノミーはモノの過剰な生産を抑えることで、過剰生産や大量廃棄による環境負荷を減少させます。
大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした経済システムから、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けた重要な要素となるでしょう。
不要になったものをゴミとして捨てるのではなく、必要としている第三者に渡すことで、物資の循環が促進され、持続可能な社会の実現に寄与しています。
消費者は所有ではなく利用に重点を置くことで、環境への配慮と持続可能な消費行動を実践でき、企業の環境目標達成にも繋がります。
シェアエコノミーの普及により、資源循環の促進と廃棄物削減が同時に実現し、持続可能な社会の構築に向けた具体的な成果が生まれるでしょう。
シェアエコノミーのサービス事例
シェアエコノミーの実践例として、日本国内外で成功を収めている代表的なサービスをご紹介します。
これらのサービスは、それぞれ異なる領域でシェアエコノミーの概念を実現し、利用者に新たな価値を提供しています。
メルカリ(個人間でのモノの売買によるビジネス)
メルカリは、日本最大級のフリマアプリとして、個人間でのモノのシェアリングを革新した代表的な成功事例です。[3]
メルカリの成功は、使わないモノを有効活用したいという潜在ニーズを顕在化させ、簡単で安全な取引プラットフォームを提供した点にあります。
スマートフォンで商品を撮影し、簡単な操作で出品できる手軽さと、配送から決済まで一括でサポートするシステムにより、従来のリサイクルショップでの売買市場を大きく変革しました。
もう一つのメルカリの成功要因は、利用者の心理的障壁を下げる仕組み設計にあります。
出品者と購入者の個人情報を匿名配送システムで保護し、トラブル時のサポート体制を充実させることで、個人間取引に対する不安を解消しています。
また、商品の状態評価や出品者の評価システムにより、取引の透明性を確保し、安心して利用できる環境を提供しています。
売上手数料は一定割合で設定されており、出品の手軽さと高い成約率により利用者の満足度は高く、継続的な利用を促進しています。
Airbnb(短期滞在の宿泊施設シェアリング)
Airbnbは、世界190ヶ国100,000以上の都市で展開される短期滞在施設シェアリングの最大手プラットフォームとして、宿泊業界に革命をもたらしました。[4]
ゲスト(旅行者)とホスト(宿運営者)をつなぐ、通常の旅行サイトとは異なる特徴があります。
Airbnb(バケーションレンタルサービス) | 一般的な旅行サイト (ホテル・旅館予約) | |
---|---|---|
提供サービス | ホームステイや体験型観光の予約長期休暇やワーケーション用の賃貸物件検索[5] | ホテルや旅館の予約 |
宿泊体験の特徴 | ユニークな宿泊体験を提供 | 伝統的なホテルや旅館での宿泊 |
価格帯 | ホテルや旅館より安く済むことが多い | 通常の宿泊施設より高額になることが一般的 |
ターゲット層 | 長期滞在、ワーケーション利用者 | 短期滞在の観光客やビジネス客 |
Airbnbの成功要因は、スーパーホストや優良認定宿という品質管理システムと、レビューの翻訳機能による情報の透明性確保にあります。
また、すべての予約に「aircover」という4つの保証(予約キャンセル時の返金、予約内容が異なる場合の返金、チェックイン不可時の返金、24時間の緊急サポート)が提供され、トラブル時の対応体制を充実させることで、利用者の不安を解消しています。
Airbnbは、単なる宿泊予約サイトを超えて、地域の文化体験や人的交流を促進するプラットフォームとしても機能しており、観光産業全体の付加価値向上に貢献しています。
Uber(移動手段としての自家用車シェアリング)
Uberは、サンフランシスコに本社を置き、世界10,000 以上の都市で事業を展開するライドシェアリングサービスの最大手です。[6]
Uberの成功は、既存のタクシー業界に革新をもたらし、都市部の交通システム全体の効率化に貢献している点にあります。Uberはギグエコノミー*の代表的な企業であり、乗客や積荷の運搬時に需給に応じて料金や条件を決定する仕組みを導入。この仕組みにより、運賃は変動制となっており、サービス提供時の需要と供給に基づいて料金が決まります。[7]
また、事前に運賃や配送料の見積もりが提供されるため、料金体系は透明性が高いと言えます。
※ギグエコノミー:特定の企業に雇用されることなく、インターネットやアプリを活用して短期間の仕事や単発の仕事を受ける働き方を指し、そのような働き方が成り立つ経済システムのこと。
Uberのビジネスモデルの特徴は、運転手が自家用車を提供することにあります。
運転手は年齢や健康、車両の年式や種別を満たし、運転免許証とスマートフォンを持っている必要があります。運転手と顧客は取引後に相互評価を実施し、低評価のユーザーは以後利用を断られる場合もあります。
これにより、サービス水準の維持が図られています。日本では法規制の関係で完全なライドシェアリングは実現していませんが、料金や高速道路料金を割り勘にする相乗りサービスとして展開されています。
ココナラ(スキルシェアリング)
ココナラは、個人が持っている技術や知識を必要としている人に提供できるスキルシェアリングプラットフォームです。
グラフィックデザインやプログラミングなどの一般的なスキルに加え、ユニークな点として「占い」や「恋愛相談」など、これまで「商品化しにくい」とされていたニッチなスキルを提供できる点が挙げられます。これらはまさに「潜在的なニーズを顕在化した」秀逸な事例と言えるでしょう。
ココナラでは、750種類以上の多様なサービスカテゴリが提供されており、ユーザーは自分のニーズにぴったり合ったスキルを簡単に見つけることができます。
サービスはすべてオンラインで完結し、どこにいても、いつでも利用できるのが大きな特徴です。サービスの検索から比較、購入、納品までがインターネット上で完結するため、非常に便利で効率的です。
ココナラの特徴は、出品者と直接コミュニケーションを取れることです。
具体的なニーズやカスタマイズの要望を簡単に伝えることができ、パーソナライズされたサービスを受けることができます。安全な取引も特徴の一つで、ココナラが取引の仲介者となり、金銭的なやり取りはプラットフォームを通して安全に行われます。万が一のトラブルにもサポートチームが迅速に対応してくれるため、安心して利用できます。
ココナラの成功は、従来の職業紹介や外注サービスでは対応困難だった小規模・個別ニーズに対応し、個人の専門スキルを商品化する新たな働き方を創出した点にあります。
Makuake(クラウドファンディング、お金のシェアリング)
Makuakeは、日本最大級の新商品特化型クラウドファンディングプラットフォームで、「応援購入型先行販売プラットフォーム」としての性格が強いのが特徴です。[9]
サイバーエージェント系の株式会社マクアケが運営し、新商品・先行販売に特化(ガジェット、食品、日用品など)し、販売実績を基に大手流通・バイヤーに展開可能です。
クラウドファンディングの枠を超え、「クラファン+EC+PR」の機能を一体化した販売強化プラットフォームとして活用されています。
Makuakeの成功要因は、単なる資金調達プラットフォームを超えて、商品開発からマーケティング、販路開拓まで一貫したサポートを提供している点にあります。
約20%の手数料(システム利用料+決済手数料)とAll-in方式(目標未達でも資金を受け取れる)により、プロジェクト実行者にとってリスクを抑えた資金調達が可能となります。
専任担当と二人三脚でプロジェクトページを作成し、商品の「尖り」を明確にすることで高い支援額を実現しています。
Makuakeの成功は、従来の金融機関や投資家からの資金調達では難しかった小規模・個人プロジェクトに対し、消費者から直接資金を集める仕組みを提供した点にあります。
これは、クラウドファンディングという形で「お金をシェアする」ことにより、個人や少人数のプロジェクトでも支援を受けることができ、イノベーションを広く一般に開放したとも言えるでしょう。
消費者が自ら資金を提供することで、より多くのアイデアやプロジェクトが実現可能となり、その結果、イノベーションの民主化が進みました。
シェアエコノミーの未来と企業への提案
シェアエコノミーの将来展望は非常に明るく、シェアリングエコノミー協会の市場規模予測では2032年度に最大15兆1,165億円まで拡大する可能性が示されています。
この成長を牽引する主な要因として、コロナ禍をきっかけに進んだ社会のオンライン化や、多様な住み方や働き方へのニーズの高まりがあります。
特に「スペースのシェア」や「スキルのシェア」分野では、場所や時間に縛られない新しい働き方・住み方への対応として、今後も継続的な成長が期待されます。
企業にとって、シェアエコノミーの活用戦略は単なるコスト削減や新たな収益源の確保にとどまらず、持続可能なビジネスモデルの構築と社会的責任の履行を同時に実現する戦略的アプローチとして位置づけられるでしょう。
企業は自社の既存資産やスキルを活用したシェアリングサービスの開発、既存のシェアリングプラットフォームとの連携、内部リソースの最適化などを通じて、競争優位性の確保と社会貢献の両立を図ることができます。
特に、デジタル技術との融合により、AIやIoTを活用した需給予測やマッチング精度の向上、ブロックチェーン技術による取引の透明性確保など、技術革新を取り入れた次世代シェアリングサービスの開発が、重要な差別化要因となるでしょう。

参考文献
[1]シェアリングエコノミー協会|【シェアリングエコノミー市場調査 2022年版】市場規模は過去最高の「2兆6,158億円」を記録し、2032年度には「15兆1,165億円」に拡大予測
[2]シェアリングエコノミー協会|代表的なシェアリングエコノミーサービス
[3]メルカリ公式ホームページ|メルカリの安心安全の取り組み方針
[6]Uber 公式ホームページ|Uber を利用できる世界の都市
[7]Uber 公式ホームページ|Uber のご利用方法に関するご案内