サクラクオリティとは?ホテル認証の特徴・メリット・サクラクオリティグリーンとの違い

安心して泊まれる宿泊施設の証として、国内外から注目を集めている「サクラクオリティ」。
サービスの質や安全性を可視化し、地域全体の観光価値を高める認証制度として、多くのホテルや旅館が導入を進めています。
さらに、SDGsやESG視点を取り入れた「サクラクオリティグリーン」の認証制度も誕生し、持続可能な観光への取り組みが加速しています。
この記事では、サクラクオリティの仕組みや評価基準、導入によるメリット、実際の事例までわかりやすく解説します。
サクラクオリティとは?

サクラクオリティ(Sakura Quality)は、一般社団法人観光品質認証協会が運営する、日本国内の宿泊施設向けの第三者認証制度です。
現地調査と定量的な基準に基づき、サービスの品質を可視化し、評価は1〜5段階の「桜マーク」で示されます。
サクラクオリティが見据える宿泊施設の品質とは、「安全性」「安心感」「誠実」の3要素です。
これらを継続的に保持し、信頼される運営を実現している施設のみに、認証マークが付与されます。[1] [2]
サクラクオリティグリーンとは?

サクラクオリティグリーン(正式名称:Sakura Quality An ESG Practice)は、宿泊施設の持続可能性をESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から総合的に評価する認証制度です。
サービス品質を評価する「サクラクオリティ」の認証を取得済みの施設を対象に、環境への配慮、地域社会との関係、多様性や人権への対応といったサステナビリティ要素を加えて設計されています。
サクラクオリティは、宿泊者の視点に立ったサービス品質の評価を中心とする基礎的な認証制度です。接客対応、清潔さ、設備の保守管理など、日常の運営に関わる要素を客観的に審査します。
この品質評価を基盤とし、持続可能性の観点を加えて発展させたのが、拡張認証であるサクラクオリティグリーン(正式名称:Sakura Quality An ESG Practice)です。[3][4]
項目 | サクラクオリティ | サクラクオリティグリーン |
---|---|---|
認証の目的 | 宿泊施設のサービス品質を可視化し、継続的な改善を促す | 宿泊施設の持続可能性(ESG視点)を評価し、国際的な信頼と競争力を高める |
評価対象 | 安全性・安心感・誠実さ、接客、清掃、設備管理など日常的な運営品質 | 環境配慮、地域貢献、雇用・多様性、人権尊重、持続可能な経営体制 |
対象施設 | 日本国内の宿泊施設(すべての施設が対象) | サクラクオリティ認証をすでに取得している施設 |
管理運営団体 | 一般社団法人 観光品質認証協会 | 一般社団法人 観光品質認証協会 |
国際基準を満たすGSTC承認
サクラクオリティグリーンは、2022年3月、国連関連の国際機関であるGSTC(Global Sustainable Tourism Council)から正式な承認を受けました。
GSTCは、サステナブル・ツーリズムにおける世界共通の基準を策定しており、この認証は制度そのものの国際的な信頼性と透明性を証明するものです。
環境・社会に配慮したサステナブル認証
サクラクオリティグリーンの評価項目は、温室効果ガスの削減やエネルギー効率、地域社会との連携、雇用促進や多様性の推進など多岐にわたり、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governanceの頭文字を取った言葉)の理念に基づいて総合的に評価されます。
この認証は単なる「サービス品質」の証明にとどまらず、「社会的責任の実践力」を示す指標としても機能し、国内外の旅行者や投資家、企業から高い信頼を得ています。
御衣黄ザクラ評価システムによる多角的評価
サクラクオリティグリーンでは、独自の「御衣黄ザクラ評価システム」を採用し、施設のESG取り組みを最大5段階で可視化します。
この評価システムは、国連のSDGs17目標を基にした172の評価項目を用いて、環境・社会・経済の3分野から施設を総合的に分析します。
数値による評価だけでなく、具体的な改善策のフィードバックも提供し、認証取得後も継続的な品質向上をサポートします。
宿泊者・地域・投資家が信頼できる指標
サクラクオリティグリーンは、評価の透明性と国際標準であるGSTC承認に基づく体系により、多様なステークホルダーから高い信頼を得ています。
宿泊者にとっては「環境や人に配慮したホテルの証明」となり、地域住民には「観光による地域貢献の見える化」として役立ちます。
投資家にとっては「ESGリスクを抑えた施設運営の裏付け」として機能します。
宿泊者・地域・投資家が信頼できる指標
ステークホルダー | サクラクオリティグリーンの意義 |
---|---|
宿泊者 | 環境や人に配慮したホテルの証明 |
地域住民 | 観光による地域貢献の見える化 |
投資家 | ESGリスクを抑えた施設運営の裏付け |
こうした多角的な信頼性は、単なる観光施設の評価を超え、地域のまちづくりや観光政策と連動する重要な指標として注目されています。
地域社会と観光の持続可能性を高める認証
サクラクオリティグリーンは、地域全体の持続可能性を高めることを最終目的としています。
評価項目には、地域の雇用創出や地産地消の推進、文化資源の継承、さらには災害対策まで幅広く含まれており、宿泊施設が地域社会と密接に連携しながら価値を生み出す視点が強く反映されています。
こうした包括的なアプローチは、地方自治体やDMO(観光地域づくり法人)からの注目を集めており、地域経済の強靱化や観光産業の質的転換を推進するための重要な手段として、導入が急速に広がっています。
サクラクオリティ認証施設の導入事例
サクラクオリティの認証は、全国の多様な宿泊施設で導入が進んでいます。都市型ホテルや温泉旅館、ホテルチェーンなど、さまざまな施設がそれぞれの特色を生かしながら、認証基準をクリアしています。
なかでもサクラクオリティグリーンを取得し、地域や環境に配慮したサービスの向上を実現している具体的な事例をご紹介します。
ORIX HOTELS & RESORTS「クロスホテル」(札幌・京都・大阪)の事例

都市型ライフスタイルホテルブランド「クロスホテル」は、ORIX HOTELS & RESORTSが展開するブランドで、2025年に札幌・京都・大阪の3施設でサクラクオリティグリーン「4 御衣黄ザクラ」を取得しました。[5]
また、同ブランドが運営する「クロスライフ博多天神」と「クロスライフ博多柳橋」も、福岡県内で初めて同認証を取得しました。[6]
この認証は、各施設が地域文化との共創を軸に、宿泊そのものをサステナブルな体験として設計している点が高く評価されたものです。
環境配慮や地域社会との連携、文化発信といったESG視点の取り組みをホテル運営に組み込み、持続可能な宿泊モデルを体現しています。
施設名 | コンセプト | 取り組み内容 |
---|---|---|
クロスホテル札幌 | 心おどる 北海道クオリティに出逢う場所 | 北海道のアート・カルチャーに触れられる展示やクラフト商品を販売。 地域と観光客の接点を創出する街歩きコンテンツも展開。 |
クロスホテル京都 | だから、あえて、ここを選ぶ。心の贅沢に出会う場所 | 地元企業との連携による宿泊プランや、「Cross Experience Map」による地域体験の提案など、京都らしい滞在価値を提供。 |
クロスホテル大阪 | 大阪ミナミの中心でにぎわいとやすらぎに出逢う場所 | 地元クリエイターや職人の製品展示、地域文化をテーマにした館内イベントを開催し、「大阪らしさ」を演出。 |
クロスライフ博多天神 クロスライフ博多柳橋 | 地域との共創をテーマに、周辺店舗と連携した宿泊プランや「春吉10 minutes MAP」の制作を通じてローカル体験を強化。 福岡出身アーティストとのコラボやフラワーロスをテーマにしたワークショップなど、地域課題と文化に寄り添う取り組みを実施。 環境面ではエコフレンドリー施策を推進し、多言語・バリアフリー対応にも注力することで、サステナブルで包摂的な宿泊環境を提供。 |
これらの施設は、都市部に位置しながらも地域との関係性を深め、観光客が地域の魅力に触れるきっかけを提供する、持続可能な宿泊体験を実現しています。
クロスライフ博多天神・博多柳橋の両施設では「Play with Local 地域と一緒に」をコンセプトに掲げ、地域店舗との連携企画や地元アーティストとのコラボレーションを通じて、街とつながるホテルづくりを進めています。
函館・湯の川温泉 ホテル万惣の取り組み

函館・湯の川温泉 ホテル万惣は、2025年5月に函館市で初めてサクラクオリティグリーンの「4 御衣黄ザクラ」を取得しました。
地域資源の活用と環境配慮を両立したサステナブルな取り組みが評価され、観光を通じた地域との共創を実現しています。[7]
分野 | 取り組み内容 |
---|---|
地域連携 | ・「万惣おさかなマルシェ」を実施。 ・地元の若手漁師グループ「ハコダテフィッシャーマンズ」と連携し、低利用魚や規格外の魚を使ったお刺身コーナーを提供。 ・持続可能な漁業支援に貢献。 |
地域文化の発信 | ・函館の歴史や文化に触れる宿泊プランを展開。 ・地元の調理学校と連携したメニュー開発コンテストを実施し、地元の食文化の魅力を発信。 |
環境配慮 | ・EV充電スタンドを設置し、宿泊客の脱炭素移動を支援。 ・ごみの重量を計測することで食品ロスを可視化し、廃棄物削減を推進。 |
これらの取り組みを通じて、ホテル万惣は「地域と共につくる持続可能な観光地づくり」に取り組み、地域社会への価値提供を深めています。
ジェイアール東海ホテルズ 全6ホテルの取り組み

株式会社ジェイアール東海ホテルズでは、運営する全6ホテル(名古屋マリオットアソシアホテル、名古屋JRゲートタワーホテル、ホテルアソシア高山リゾート、ホテルアソシア豊橋、ホテルアソシア静岡パーゴラ、ホテルアソシア新横浜)が、2025年3月25日付でサクラクオリティグリーン「4 御衣黄ザクラ」を一斉に取得しました。[8]
同社が掲げる「日本の観光産業と地域社会の発展への貢献」という理念のもと、グループ横断で持続可能な観光と社会的価値の創出を目指す取り組みが評価されました。
施設名 | 取り組み内容 |
---|---|
名古屋マリオットアソシアホテル | 鉄板焼レストランにて、お肉の切れ端を活用したアミューズを提供 |
名古屋JRゲートタワーホテル | 朝食で規格外野菜を使用した「ベジブロスおでん」を提供 |
ホテルアソシア高山リゾート | 紙の朝食券を廃止しICチップ対応、非接触&ペーパーレス化を推進 |
ホテルアソシア豊橋 | 宴会利用者に食品ロス削減を啓発する「3010運動」を案内 |
ホテルアソシア静岡パーゴラ | 地元農家と連携し、規格外野菜・果物の活用を拡大 |
ホテルアソシア新横浜 | 客室清掃案内のマグネット化による紙資源の削減 |
また全ホテル共通で、廃棄制服を再利用した巾着袋の製作・客室設置や、スタッフの健康と働きがいに配慮する「WBC(ウェルビーイング委員会)」の活動など、企業全体としてのESG推進体制も整備されています。
サクラクオリティ認証導入で得られる5つのメリット
サクラクオリティ認証は、単なる品質チェックを超えた「経営戦略ツール」として多くの宿泊施設で注目されています。
第三者による客観的評価を通じて、施設の強みや課題を可視化し、サービス品質の向上や国際的な信頼獲得につなげることが可能です。
サクラクオリティ導入によって得られる主な5つのメリットを解説します。
1.外部評価で品質を数値化し改善を促進
サクラクオリティは、第三者による客観的な評価制度です。評価項目は清掃状況、バリアフリー対応、ホスピタリティの水準など多岐にわたり、1〜5段階で数値化されます。
この可視化により、施設ごとの強みと課題が明確になり、定量的な目標設定と継続的な品質改善サイクルが可能になります。
経営陣から現場スタッフまで共通の認識を持てる点も大きな強みです。
2.顧客ニーズとのズレを早期発見
内部だけで見落としがちな「顧客目線での課題」も、サクラクオリティの評価プロセスで浮き彫りになります。
特に、設備の老朽化や対応サービスの不均一さ、文化的配慮の不足など、細部にわたる顧客体験のギャップを外部視点で発見できるのが特徴です。
早期にズレを修正できることで、口コミ評価の向上やリピーター獲得にもつながります。
3.サステナビリティ強化で海外市場へ訴求
サクラクオリティグリーンは、世界持続可能観光協議会(GSTC)承認のESG基準に対応しています。
これは、欧州や北米の旅行会社・OTAにおいて重要な選定基準となるため、環境・社会配慮を重視する海外旅行者に訴求できます。
持続可能な取り組みが「証明されたブランド」として認知されることで、インバウンド需要の獲得や海外向け販促にも有利になります。
4.チーム力とモチベーションを向上
認証取得は施設全体で取り組むプロジェクトであるため、部署横断的な連携が生まれます。
外部評価による「見える成果」があることで、スタッフ一人ひとりの自律的な改善意識が育まれ、モチベーションアップにもつながるのです。
特に現場の努力が数値や評価として返ってくることで、チームの結束と誇りを高める好循環が期待できます。
5.認証マークでブランド価値と広報効果を向上
サクラクオリティの認証マークは、宿泊予約サイトや公式サイト、施設パンフレット、SNSなど多様なチャネルでの発信に活用できます。
第三者機関による認証であることから、信頼性・安心感の高い「品質証明」としてブランド価値を向上させる効果があります。
特に差別化が難しい観光地では、認証が「選ばれる理由」になることも少なくありません。
サクラクオリティ認証の評価基準と流れ
サクラクオリティの認証は、宿泊施設の品質を多角的に評価し、段階ごとにその信頼性を可視化する制度です。
調査はステップごとに構成されており、認証の精度や内容に応じて取得可能なランクが異なります。
認証取得までのプロセスと手順
フェーズⅠの簡易調査を起点に、より高度なフェーズⅡやESG対応のサクラクオリティグリーンなどへ進めます。
項目 | フェーズⅠ(簡易調査) | フェーズⅡ(インスペクション調査) | サクラクオリティグリーン(ESG認証) |
---|---|---|---|
対象 | 認証希望すべての宿泊施設 | フェーズⅠで3サクラ以上の見込み施設 | フェーズⅠ認証済み施設 |
調査項目数 | 約300項目 | 2,000項目以上 | 172項目(SDGsに準拠) |
主な評価内容 | 設備、清潔さ、安全性、外国語対応など | ハード面:照度・湿度・清掃/ソフト面:接遇、対応品質など | ESG視点(環境・社会・ビジネス)からの持続可能性評価 |
調査形式 | DMO調査員による現地確認 | 中立的な調査員による覆面調査 | 外部団体による書面審査+現地視察 |
認証ランク | 1サクラ ~ 3サクラ | 3.5サクラ ~ 5サクラ | 緑色のサクラ(最高位:5御衣黄ザクラ) |
調査費用(税込) | 27,500円 | 275,000円 | 400,000円 |
有効期間 | 2年間(6ヶ月ごとの自己診断で更新無料) | 同左 | 同左 |
特徴 | 地域DMOと連携し、安心できる施設として広報が可能 | 詳細なフィードバックで経営改善・人材育成に活用可能 | 国際市場におけるSDGs対応施設としてのブランディングが可能 |
フロー図:取得の流れ
① フェーズⅠ(必須) ② フェーズⅡ(希望制/3サクラ以上と見込まれる施設) ③ サクラクオリティグリーン(希望制/フェーズⅠ認証済み施設) |
段階的なプロセスを通じて、施設の魅力と信頼性を高めながら、持続可能な観光の実現にも貢献できる仕組みとなっています。
まとめ
サクラクオリティは、宿泊施設の安心・安全・高品質を見える化し、国内外の旅行者に信頼される施設づくりを後押しする認証制度です。
また、サクラクオリティグリーンは、SDGsやESGの観点からサステナブルな取り組みを評価する仕組みとして、より幅広い価値を施設にもたらします。
それぞれの認証を通じて、サービスの改善やチームの成長、ブランド力の向上など、さまざまなメリットが期待できるでしょう。施設の個性や地域の魅力を生かした運営の一助として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献
[4]サクラクオリティ|会社概要|【公式】ホテルオークラ福岡 Hotel Okura Fukuoka(博多座隣り、中洲まで徒歩2分)
[5]クロスホテル札幌・京都・大阪 3館すべてで 宿泊施設品質認証制度「Sakura Quality An ESG Practice(通称:サクラクオリティグリーン)」4御衣黄ザクラを獲得
[8]ジェイアール東海ホテルズ全6ホテルで『Sakura Quality An ESG Practice』の「4御衣黄ザクラ」を取得
[9]Blog Archive » 品質認証の調査方法をご紹介
[10]サクラクオリティ認証の基準|宿泊施設の品質認証制度・品質向上プログラム