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欧州Land-Seaプロジェクトとは?陸と海をつなぐ持続可能な観光政策【Interreg Europe】

2025 10/30
リジェネラティブツーリズム
各国の事例
2025-11-17

ヨーロッパでは今、「陸」と「海」をひとつの視点で考える新しい地域づくりが進んでいます。その中心にあるのが、Land-Sea(ランド・シー)プロジェクト。この取り組みは、観光や環境保全、地域経済の発展をバランスよく進めるために、EUが支援する国際プロジェクト Interreg Europe(インターレグ・ヨーロッパ) の中で実施されました。

本記事では、「Land-Seaプロジェクトって何?」「どんな目的で進められたの?」「どんな成果があったの?」という疑問に答えながら、ヨーロッパで生まれた“陸と海の共存”という考え方を紹介します。

目次

Land-Seaプロジェクトとは?

Land-Seaプロジェクトは、ヨーロッパ全体で進められている「地域間協力プログラム(Interreg Europe)」のひとつです。[1]

このプログラムは、EU加盟国の地域同士が経験や政策を共有し、より良い地域づくりを目指すことを目的にしています。

Land-Seaプロジェクトがテーマとするのは、その名の通り「陸(Land)と海(Sea)」。

海岸線や沿岸地域では、観光・漁業・都市開発・自然保護など、さまざまな活動が重なります。しかし、これらがバラバラに進められると、環境への負担が増えたり、地域の持続性が失われたりする恐れがあります。

そこでLand-Seaプロジェクトは、「陸」と「海」をつなぐ視点で政策を考えることを目標にしました。

つまり、海辺の観光だけでなく、周辺の森林や農地、都市とのつながりを意識しながら、地域全体のバランスを整えるアプローチです。

このプロジェクトは2016年から2021年にかけて行われ、ヨーロッパの複数の国や地域が参加しました。環境保全・観光開発・地域経済の三つをどう両立させるかを学び合う場として進められたのです。

プロジェクトの目的と背景

Land-Seaプロジェクトが立ち上がった背景には、「観光の発展と自然保護のバランスをどう取るか」という共通の悩みがありました。

海辺の観光地は、人気が高まるほど人が集まり、経済的には潤います。しかしその一方で、海岸の侵食・ごみ問題・生態系の破壊など、環境への影響が深刻化することもあります。

また、観光が一部の季節や地域に集中することで、地元の暮らしに負担がかかるケースもあります。

そこでLand-Seaプロジェクトは、こうした問題を地域政策の改善によって解決しようとしました。単なる観光振興ではなく、自然環境を守りながら経済を持続させる。

そのために、各国の自治体や研究機関、観光組織が協力し合い、「持続可能な陸海統合型エコツーリズム」の仕組みづくりに挑戦したのです。

この考え方は、EU全体で進む「グリーンディール政策」[や「SDGs(持続可能な開発目標)」とも深く関係しています。[2][3]

つまりLand-Seaプロジェクトは、地域ごとの課題を解決するだけでなく、ヨーロッパの環境政策の方向性を象徴する取り組みでもあるのです。

参加した地域とそれぞれの課題

Land-Seaプロジェクトには、ヨーロッパ各地から多様なパートナーが参加しました。

  • ブルガリア・ヴァルナ地方:黒海沿岸の観光と自然保護の両立が課題。
  • ドイツ・ハンブルク地域:港湾都市としての産業発展と環境保全のバランス。
  • イタリア・モリーゼ州:内陸から海岸までをつなぐ地域振興の可能性。
  • スペイン・カタルーニャ州:人気観光地での持続可能な観光政策の実現。

それぞれの地域が抱える問題は異なりますが、共通しているのは「陸と海の境界に関わる地域課題」でした。

これらの地域では、プロジェクトを通してローカルアクションプラン(LAP)という具体的な行動計画を策定しました。これには、海岸線の保全方法、エコツーリズムのルート設計、地域住民の参加促進などが含まれます。

こうした活動を通じて、各地域が自分たちの強みと課題を再発見し、より長期的で持続可能な政策を考えるきっかけになりました。

Land-Seaプロジェクトの主な活動内容

Land-Seaプロジェクトでは、地域同士が学び合いながら「より良い政策づくり」を目指す活動が数多く展開されました。

その中心となったのは、知識の共有・地域間の連携・実践的な政策づくりという3つの柱です。

最初のステップとして、各地域が持つ経験や課題を紹介し合うワークショップやセミナーが開催されました。海岸侵食への対策、自然に優しい宿泊施設の運営方法、環境と観光を両立させる工夫など、参加地域が互いの取り組みを持ち寄り、学び合いました。

さらに重要だったのが、実際の現場を訪ねるスタディビジット(現地視察)です。

他国の沿岸地域を直接訪れ、観光客の動き方、自然保全の取り組み、地域住民の関与などを目で確かめました。こうした現地での交流は、理論だけでは見えにくい「現場の課題と知恵」を共有するうえで大きな成果をもたらしました。

また、各地域ではプロジェクトの集大成として地域行動計画(Local Action Plan:LAP)が策定されました。

この計画は、プロジェクト終了後も地域が自立して持続可能な観光や環境保全を進めるための“未来の設計書”のような位置づけです。実際にこの計画をもとに、新しい政策や地域プロジェクトが始動した例も出ています。

つまり、Land-Seaプロジェクトは短期間で成果を出すことを目的としたのではなく、地域が長期的に変化を続けるための起点をつくることを狙いとしていたのです。

EU政策への影響

このプロジェクトの大きな成果は、学びの成果を実際の政策改善に反映させた点にあります。

その結果、EUの地域開発資金を運用する3つの構造基金プログラムと、1つの地方計画が改定され、Land-Seaの知見が政策に組み込まれました。これは単なる情報交換にとどまらず、政策レベルでの実質的な変化を生み出したという点で画期的です。

さらに、プロジェクトを通じて策定された4件の地域行動計画(LAP)は、観光・環境・経済を結びつけた取り組みを推進するための実践的ガイドとして活用されています。具体的には次のような事例が見られます。

  • 住民ボランティアによる海岸清掃や環境保全活動の仕組みづくり
  • 観光のピークシーズンを分散させ、オフシーズンにも地域経済を維持する取り組み
  • 漁業・農業などの地元産業と観光を組み合わせた体験型ツーリズムの展開

また、プロジェクトを通して政策担当者や地域リーダーがスキルアップしたことも重要な成果です。異なる文化や制度を持つ国の専門家と議論を重ねることで、「持続可能な地域づくりをどう実現するか」という現実的な視点が磨かれました。

結果として、Land-Seaプロジェクトは欧州地域政策の模範的事例とされ、EUの「グリーンディール政策」や「ブルーエコノミー(海洋経済)」の動きとも連携する取り組みとして高く評価されています。[4]

陸と海の共存を目指して

もちろん、このプロジェクトがすべての課題を解決したわけではありません。活動の中で明らかになったのは、国や地域の違いをどう乗り越えるかという課題でした。

行政の仕組みや観光産業の性質、文化的背景が異なるため、同じ「陸と海の連携」といっても各地域のアプローチは大きく違います。ある地域では環境保全を最優先にする一方、別の地域では経済的効果を重視するなど、価値観の違いが見られました。

さらに、気候変動の影響も無視できません。

海面上昇や異常気象による被害が拡大し、海岸線の維持が難しくなっている地域もあります。

こうした状況の中で、「短期的な観光収益」と「長期的な環境保全」の両立は、今も続く課題です。

しかし、Land-Seaプロジェクトで築かれた地域ネットワークと知識の共有体制は、今後の希望でもあります。プロジェクト終了後もパートナー地域間の交流は続き、新たな連携や政策改革の動きが生まれています。

また、EUの次期プログラム(2021〜2027年)では、「陸と海の統合的管理」や「ブルーエコノミー」が引き続き重要テーマとして設定されており、Land-Seaで得られた経験が次世代政策に確実に活かされています。

まとめ

Land-Seaプロジェクトは、「陸」と「海」という分野の壁を越えて、地域全体を一つの生態系として再構築する試みでした。観光・環境・地域経済をつなぎ、行政・住民・研究者が協力して新しい地域像を描くという挑戦は、ヨーロッパが持続可能な観光の答えを探すプロセスそのものでした。

日本でも近年、海辺のまちづくりや観光の再生が注目されています。Land-Seaプロジェクトのような「境界を越える発想」は、これからの地域政策や観光戦略を考えるうえで大切なヒントになるでしょう。

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参考文献

[1]Land Sea- Sustainability of the land-­sea system for eco-tourism strategies.

[2]欧州委員会、脱炭素と経済成長の両立を図る「欧州グリーンディール」を発表

[3]外務省|SDGsとは?

[4]WWFジャパン|ブルーエコノミーとブルーファインナンス




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