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バルセロナ発、未来につながる宿泊のカタチ|INOUT Hostelに学ぶサステナビリティ

2025 7/30
リジェネラティブツーリズム
DEI サステナブルツーリズム 持続可能な観光
2025-8-6
INOUT hostel
画像出典:INOUT Hostel

観光においてサステナビリティは、今や欠かすことのできない視点となっています。

そんな中、バルセロナ郊外の森にたたずむ INOUT Hostel は、社会・環境・経済の調和を体現する宿泊施設として注目されています。

ここでは、障がい者がスタッフの大半を占め、環境に配慮したエネルギー利用や資源循環の仕組みが日常として根付いています。そしてそれらは、経済的にも持続可能な運営へとつながっています。

本記事では、INOUT Hostelの実例から、持続可能な観光を実現するヒントを探ります。

目次

社会と環境の共存を目指すホステル

バルセロナのにぎやかな街から電車で少し離れた、緑に囲まれた静かな丘の上に、「INOUT Hostel(イナウト・ホステル)」という特別な宿泊施設があります。[1]

ここは、観光客に快適な滞在を提供するだけでなく、社会や環境への貢献を大切にしている場所です。

このホステルの最大の特徴は、スタッフの約9割が知的障がいや身体障がいを持つ人たちであること。フロントの対応からベッドメイキング、レストランの調理や掃除まで、日々の運営を彼らが主体となって担っています。

INOUT Hostelは2004年、「障がいのある人たちが誇りを持って働ける職場をつくろう」という思いから生まれました。

いまでは、スペインだけでなくヨーロッパでも先進的な取り組みとして広く知られています。

さらに、INOUT Hostelは環境にもやさしい宿泊施設です。施設では太陽光を利用してお湯を沸かし、使い終えた水を庭の水やりに再利用するなど、さまざまなエコの工夫がなされています。

プラスチックの使用を減らし、照明には省エネセンサーを使うなど、地球の未来に配慮した取り組みが施設全体に根づいています。

「人にやさしく、地球にもやさしく」——INOUT Hostelは、その両立を実現する持続可能なホステルです。

1.社会的サステナビリティ:障がい者雇用とインクルーシブな職場

INOUT Hostelの取り組みは、環境だけでなく「人」にも目を向けています。

とりわけ注目すべきは、障がいのある人々が働く職場としての姿勢です。彼らの雇用が、社会的サステナビリティを支える中核となっています。

INOUT Hostelの中心にある障がい者雇用

INOUT Hostelが他の宿泊施設と一線を画している理由の一つは、障がいのある人々が運営の中心を担っていることです。

スタッフの9割以上が、知的障がいや身体障がいを持つ人たちで構成されており、受付業務から客室の清掃、レストランの調理・サービスまで、日常的な運営をすべてプロとして遂行しています。

ここでの雇用は、特別な配慮の対象としてではなく、対等な労働者としての役割と責任を尊重する姿勢に貫かれています。

雇用契約の多くは無期限であり、長期的・安定的な職場環境の中で、スタッフ一人ひとりが自信と誇りを持って働いています。

「働く場」を超えた社会参画のしくみ

画像出典:Icària Iniciativas Sociales

INOUT Hostelを運営する非営利団体「Icària Iniciativas Sociales」は、ホステルにとどまらず、障がいのある人々が活躍できる多様な仕事の場を提供しています。[2]

印刷工房、カフェ、子ども向けのレジャー施設など、多岐にわたる事業を通じて、障がいの有無にかかわらず社会に参画できる機会の拡充を図っています。

INOUTでの仕事は、単なる労働ではなく、社会との接点を築き、自立と成長につながる重要なプロセスです。

スタッフは日々の経験を通じて、自らの可能性を広げています。そしてこの現場は、地域社会に対して「インクルージョン(包摂)」という理念を具体的に示す実践の場でもあります。

宿泊者にも広がる共生の気づき

また、ホステルを訪れる宿泊客や学生ボランティア、企業の研修参加者などにとっても、INOUTは貴重な学びの場となっています。

多様な背景を持つ人々と自然に関わる体験は、共生社会の意義を体感的に理解するきっかけを与えてくれます。

INOUT Hostelは、雇用のあり方を通じて「誰もが役割を持ち、尊重される社会」の可能性を示しています。

それはまさに、人と人とのつながりを基盤とした社会的サステナビリティを体現する取り組みだといえるでしょう。

2.環境的サステナビリティ:自然との共生を目指した取り組み

INOUT Hostelは、社会的な包摂だけでなく、環境への配慮を明確に理念として掲げています。

バルセロナ郊外の「コルセロラ自然公園」内に位置するこの施設は、豊かな自然に囲まれた立地を活かしながら、持続可能な運営を実現しています。[3]

太陽と木の力を活用した再生可能エネルギー

ホステルの屋根には200枚以上のソーラーパネルが設置され、施設内で使用される電力の一部を太陽光発電によってまかなっています。

また、バイオマスボイラーも導入されており、木材チップなどの自然由来の資源を活用して給湯するなど、可能な限り化石燃料への依存を減らす努力がなされています。

これらのシステムは、温室効果ガスの削減という観点からも高く評価されています。

水資源の再利用と循環型システム

水の使用においても、INOUTは無駄を省き、自然の循環を意識した仕組みを導入しています。施設で使用した生活排水は、専用の設備で処理されたのち、植栽や庭園の灌水に再利用されています。

都市部では難しいこうした循環型の水利用は、自然に近い環境だからこそ実現できる取り組みです。

ごみ削減とリユースの徹底

プラスチックの使用削減にも積極的に取り組んでいます。使い捨て製品の排除や、再利用可能な器具・備品の導入、さらには家具や設備の修理・再利用を通じて、ごみの総量を抑える工夫がなされています。

これに加え、ごみの分別収集の徹底とリサイクルの推進により、環境負荷の最小化を図っています。

自然との調和を意識した滞在環境

コルセロラ自然公園内という立地条件もあり、INOUTでは自然保護への配慮が宿泊者にも求められています。

たとえば、公園内では動植物を傷つけない、音を控える、ごみを持ち帰るといった自然との共生マナーが徹底されています。

ホステルはそのためのガイドラインや案内資料も用意しており、訪れる人が自らの行動を通じて環境保護に参加できるよう設計されています。

INOUT Hostelは、単なる「エコな宿泊施設」ではありません。エネルギー、水、ごみ、自然保護といった多角的な観点から環境的サステナビリティを日常の運営に組み込み、訪れる人々にその価値を伝える教育的な空間でもあります。

観光を通じて、より持続可能な未来への一歩を提案する、それがこのホステルのもう一つの顔です。

3.経済的サステナビリティ:共生を基盤としたビジネスモデル

INOUT Hostelは、社会的・環境的な配慮を重視するだけでなく、経済的にも持続可能な運営を実現しています。

単なる慈善活動ではなく、明確な収益構造と経営戦略を持つことで、理念と実務の両立を図っています。

非営利でありながら戦略的に運営

ホステルを運営するのは、「Icària Iniciativas Sociales(イカリア・イニシアティバス・ソシアレス)」という非営利団体です。

ここでいう「非営利」とは、利益を上げないという意味ではなく、利益を株主や経営者のためではなく、社会的目的のために再投資する運営形態を指します。

実際に、INOUT Hostelの収益は、障がいのある従業員への研修、設備の改善、雇用機会の拡大などに充てられており、経済活動を通じて社会的な価値を生み出す循環が確立されています。

多様なサービスによる安定的な収入源

INOUT Hostelでは、宿泊業だけに依存しない、多角的なサービス展開をすることで収益の安定化を図っています。

具体的には以下のような施設・活動があります。

  • レストラン・カフェの運営
  • プールやスポーツ施設の開放
  • 企業向けの研修・チームビルディングプログラム
  • 教育機関向けの自然体験・環境学習プログラム
  • 各種イベントやワークショップの開催スペースの提供

これにより、観光客に加えて地元住民や教育関係者、企業など幅広い層からの利用が見込まれ、収入構造が分散されている点も特徴的です。

環境配慮がコスト効率にもつながる

INOUTの環境配慮は、単なる理念にとどまらず、運営コストの削減にも寄与しています。

  • 太陽光発電とバイオマスボイラーによるエネルギーコストの圧縮
  • 水の再利用による上下水道費の削減
  • 廃棄物の削減とリサイクルによる処理費の最小化

こうした経済合理性と環境意識を両立した設備投資は、中長期的に見ても持続可能な経営基盤の一端を担っています。

地域経済への波及効果

ホステルの運営は、バルセロナ郊外という立地において、地域の雇用創出と経済活性化にも寄与しています。採用されているスタッフの多くは地元在住であり、地域の事業者や生産者との連携も進められています。

さらに、観光客の流入によって周辺地域の店舗や交通インフラにも好影響をもたらしており、地域全体にとっての経済的価値が高まっています。

INOUT Hostelは、「利益追求」と「社会的責任」を両立させるサステナブルなビジネスモデルの好例です。

非営利という形態を活かしながら、戦略的かつ着実な経営を続けており、その実績は今や、他の社会的企業の模範となる存在といえるでしょう。

サステナビリティが生み出す好循環

INOUT Hostelの真の価値は、単に「障がい者が働いている」「環境にやさしい施設である」といった個別の特徴にとどまりません。

むしろ注目すべきは、社会・環境・経済という3つの側面が連動し、相互に強化し合っている点にあります。

こうした複合的な効果は、「相乗効果(シナジー)」とも呼ばれ、サステナブルな運営の中核を成しています。

働く人の成長が、サービスの質を高める

INOUTで働く障がいのあるスタッフは、自らの役割を持ち、自信と責任を持って日々の業務に取り組んでいます。

この前向きな姿勢は、接客の丁寧さや施設の清掃状態、食事のクオリティなどに明確に表れており、訪れるゲストの満足度にも直結しています。

ゲストからの好意的なフィードバックは、さらにスタッフの意欲を高め、職場全体の雰囲気やチームワークにも良い影響を与えます。社会的支援がサービス価値へと転換される好循環がここに生まれているのです。

環境配慮が経済的メリットをもたらす

INOUTは、太陽光発電やバイオマスボイラー、水の再利用システムなど、複数の環境負荷低減策を導入しています。

これらの取り組みは、自然環境への貢献にとどまらず、エネルギーコストや水道費などの運営経費削減にもつながっており、その浮いた資源は施設の改善やスタッフへの還元に活用されています。

つまり、環境への投資が経済的安定を支える構造が形成されており、持続可能な経営の基盤として機能しています。

実体験を通じた学びの場

INOUT Hostelは、ヨーロッパを中心に多くの学生、ボランティア、企業の研修参加者を受け入れています。

滞在中、彼らは障がいのあるスタッフと共に働き、自然環境への配慮を実践する中で、「共生」や「持続可能性」を自らの経験として深く理解する機会を得ています。

こうした体験は、単なる宿泊や労働体験にとどまらず、参加者一人ひとりの価値観や行動に変化を促す教育的機能を持ち、サステナビリティに対する意識を広げる重要な役割を果たしています。

INOUT Hostelでは、「障がい者の社会参加」「環境保全」「地域との共生」「安定的な経営」という要素が、個別に存在するのではなく、互いに支え合いながらより大きな価値を創出しているのです。

このような重層的で有機的な取り組みこそが、サステナビリティの理想形であり、INOUTが国際的にも注目される理由の一つといえるでしょう。

まとめ

INOUT Hostelは、社会、環境、経済のすべてにやさしい宿泊施設として、サステナビリティの理想をかたちにしています。

誰もが安心して働き、自然と調和しながら過ごせる場所づくりは、これからの観光や暮らしのヒントにもなりそうです。未来につながる宿泊施設のかたちを、私たちも考えるきっかけにしてみませんか。

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参考文献

[1]INOUT Hostel 

[2]What do we do? Support and Attention to Intellectual Diversity

[3]Ambiental Sustainability | INOUT Hostel




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