アドベンチャーツーリズム開発力国別ランキング|ヨーロッパ諸国が上位独占。日本は10位。

自然や文化を体験することを目的とする旅のスタイルをアドベンチャーツーリズムと呼びます。たとえば、富士山を眺めるだけではなく実際に登ってみる、寺社仏閣を見学するだけではなく禅を体験してみる、そんな付加価値が高い旅行のことです。ハード重視からソフト重視への移行と言い換えてもよいかもしれません。
そうしたアドベンチャーツーリズムの世界的ネットワーク「アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)」とアメリカの名門大学「ジョージ・ワシントン大学」の国際観光研究所が共同で、アドベンチャーツーリズムの開発力を国別に評価し、ランキングした2024年度版レポートを発表しました。
レポートは9つの評価項目を3つの分野に分け、世界186か国を対象に、環境対策(30%)、資源(40%)、取り組み(30%)の割合で国ごとのスコアを総合的に算出しました。
スコアはいくつかの国際的データベースからの包括的かつ客観的なデータと観光産業の専門家たちへの聞き取りデータを組み合わせたものです。
3分野と9評価項目
環境対策 | 資源 | 取り組み |
---|---|---|
持続可能な開発 安全性 健康 気候レジリエンス | 自然資源 文化資源 | 起業家精神 インフラ イメージ |
気候レジリエンスとは、気候変動の影響(気温上昇、海面上昇、異常気象など)に対して、社会や環境が持つ抵抗力、吸収力、回復力を高めることを指します。
経済先進国グループ(39)と新興・経済発展途上国グループ(147)それぞれのランキングトップ10は以下の通りです。
経済先進国グループ | 新興・経済発展途上国グループ | |
---|---|---|
1 | ドイツ (7.14) | コスタリカ (5.80) |
2 | フランス (6.93) | チリ (5.45) |
3 | スイス (6.87) | タイ (5,43) |
4 | ノルウェー (6.81) | ブラジル (5.38) |
5 | オーストリア (6.79) | 中国 (5.30) |
6 | スペイン (6.79) | ペルー (5.22) |
7 | イギリス (6.75) | トルコ (5.19) |
8 | ニュージーランド (6.67) | モンテネグロ (5.18) |
9 | カナダ (6.55) | アラブ首長国連邦 (5.17) |
10 | 日本 (6.55) | ルーマニア (5.14) |
*()内の数字は10点満点のスコア。世界平均スコアは3.9
日本の総合スコアは経済先進国グループで10位。同グループの1位から7位までをヨーロッパ諸国が占めています。トップ20に範囲を広げても、11位のオーストラリアを除く9か国はすべてヨーロッパに位置します。アメリカは24位と大きく立ち遅れています。
項目別に見ていくと、日本が高く評価されたのは「文化資源」(5位)と「イメージ」(6位)でした。観光産業の専門家に限ると、「安全」、「自然資源」、「インフラ」も高く評価されました。その一方で、「持続可能な開発」と「気候変動への対応」、そして「起業家精神」といったソフト的な分野には成長の余地が大きく残されているようです。
アドベンチャーツーリズムを志向する層は経済的に余裕があり、かつ自然や異文化に関心が深い傾向があります。したがって、滞在期間は長くなり、地元経済への波及効果も高くなります。その反面、自然破壊や文化的摩擦などのオーバーツーリズムによる弊害も社会問題化しつつあります。
観光に限った話ではありませんが、現代の私たちには持続可能性と経済効果のバランスを見据えた舵取りが求められているのでしょう。