世界の海外旅行支出額、2025年は過去最高の307兆円に

世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、最新の経済影響調査(EIR)において、世界の海外旅行者の支出額が2025年に過去最高の2兆1000億ドル(日本円で約307兆円※2025年4月現在)に達するとの予測を発表しました。
これは、最高額を記録していた2019年の1兆9000億ドル(同約279兆円)を大きく上回っており、パンデミックからの完全な回復を示すものです。
観光産業による世界経済への貢献額は過去最高の11兆7000億ドル(同約1708兆円)に上ると予測されており、世界全体のGDPの10.3%を占めます。
また、観光産業関連の雇用も拡大することが予想され、雇用者数は世界全体で約1400万人増加し、3億7100万人に達すると見込まれています。
好調なサウジアラビアとヨーロッパ、回復に遅れが見られる大国も
世界的に海外旅行者の支出が回復基調にある中、特に目覚ましい成長を見せているのがサウジアラビアとヨーロッパの国々です。
サウジアラビアは国家主導で観光分野に積極的な投資を進め、目標以上のスピードで成長しています。インフラ整備やイベント誘致、2019年の観光ビザ発給開始などが功を奏し、かつて石油依存とされた経済構造の脱却にもつながりつつあります。
当初、サウジアラビア政府は2030年までに年間1億人の観光客を誘客するという目標を設定していましたが、その数字は2023年に達成。現在は2030年までに年間1億5000万人の観光客を受け入れるという目標を打ち出しています。
また、ヨーロッパの国々については、各国に世界的に有名な観光地が点在し、多くの観光客が訪れていることが要因にあげられます。さらに、観光産業への継続的な投資も成長を後押ししていると考えられます。とりわけ観光客数で世界1位と2位を誇るフランスとスペインが市場を牽引し、ヨーロッパ全体の好調を支える構図となる見込みです。
好調の国々がある一方、回復が進まない国・地域があることも示されています。
特にアメリカでは、2024年の海外旅行者支出額は2019年の水準を大幅に下回っていることから、2025年中に完全に回復するとは難しいとみられています。また、中国についても2024年の海外旅行者支出額はパンデミック前の水準を上回ったものの、2025年には成長が鈍化するとの見通しです。


日本を訪れる外国人観光客の消費額も過去最高に
また、日本国内に目を向けると、2024年の外国人観光客の消費額が過去最高となる8兆1395億円となっています。この金額は、2023年(5兆3065億円)と比べて53.4%、新型コロナウィルス感染拡大前の2019年(4兆8135億円)と比べて69.2%の増加となっており、コロナ禍を経て大幅な伸びを示しています。
今後もこの傾向は変わらず、世界的な潮流に乗り、好調が続くことが予想されます。
10年後の旅行支出額の予想も
WTTCは、2035年までの海外旅行支出額に関する予想も示しています。年平均成長率(CAGR)は3.4%の伸びを示し、最終的に2兆9000億ドル(約423兆円)に達すると見込まれています。同様に国内旅行支出額もCAGR3.3%、7兆7000億ドル(約1124兆円)に上るとしています。
これらの数字は観光産業が国内はもとより、世界経済のなかでより重要な役割を果たしていくことを示しています。実際、観光分野の世界経済への貢献額をみると、2023年は9.9兆ドル(約1495兆円)、2024年には10兆9000億ドル(約1590兆円)と、年々増加しています。
加えて雇用の増加も伴っており、もはや観光産業抜きに世界経済は回らなくなっていると考えられます。
日本を含む多くの国々では今後も観光産業が発展するとともに、市場規模の拡大は今後も継続していくでしょう。
付記のない場合1ドル=146円換算


観光客1億人を7年前倒しで実現 現地で見たサウジアラビアの本気 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)