ブレジャーとは?働き方の未来を変える“仕事+余暇”の新常識を徹底解説

働き方が多様化する中で、注目を集めているのが「ブレジャー」という新しいスタイルです。これは出張などのビジネスに、観光や休暇といったレジャーを組み合わせることで、仕事もプライベートも充実させようという考え方です。
本記事では、ブレジャーの基本から、そのメリット・デメリット、導入企業の事例、導入に向けたポイントまでをわかりやすく解説します。働く環境を見直すうえでの一つのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
ブレジャーとは?

「ブレジャー(Bleisure)」とは、「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を組み合わせた言葉で、出張や業務などの仕事に、余暇や観光といったプライベートな時間を組み合わせる新しい働き方を指します[1]。
たとえば、地方への出張の後にそのまま現地に滞在し、観光やリラックスの時間を楽しむといったケースが典型です。
従来の出張は、仕事が終わればすぐに帰るのが一般的でしたが、ブレジャーではその滞在を延ばし、個人の時間も充実させられます。
これにより、働く人の満足度やモチベーションの向上が期待され、企業にとっても人材の定着や生産性向上といったメリットがあります。
テレワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方が広がる中で、ブレジャーは“仕事と私生活のバランス”をより自由に取れる手段として注目を集めています。
ワーケーションとの違い
ワーケーション(Workcation)とは、「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」を組み合わせた造語で、観光地や帰省先など普段と異なる環境で仕事と休暇を両立させる働き方です。仕事をしながら、その合間に観光やリフレッシュの時間を取り入れるのが特徴です。
一方で、ブレジャーは「ビジネス」と「レジャー」を分けて捉え、出張などの仕事を終えた後に余暇を楽しむスタイルです。
つまり、ワーケーションは“仕事と休暇が同時進行”であるのに対し、ブレジャーは“仕事の前後に休暇をプラス”する形です。
ブレジャーの方がオンとオフの切り替えが明確で、メリハリをつけやすいという利点があります。どちらも柔軟な働き方の一つとして注目されており、目的やライフスタイルに応じて選ぶことが大切です。
なぜ今、ブレジャーが求められているのか

近年、テレワークやフレックスタイムなど、働き方の柔軟化が進んでいます。その背景には、「ただ働くだけでなく、自分の時間も大切にしたい」「仕事と私生活を無理なく両立させたい」といった価値観の変化があります。
さらに、新型コロナウイルスをきっかけにリモートワークが広まり、働く場所を自由に選べる環境が整いつつあります。
こうした流れの中で、「出張のついでに休暇を楽しむ」といったスタイルは、ごく自然な選択肢として受け入れられるようになってきました。
また、地方創生や観光産業の支援といった社会的な目的にもつながるため、企業や自治体が制度化や施策の検討を進めるケースも増えています。
ブレジャーのメリット

ブレジャーには、働く個人だけでなく、企業や地域社会にも多くの利点があります。
ここでは、ブレジャーを取り入れることによる代表的な3つのメリットについて、「従業員」「企業」「地域・行政」の視点からそれぞれ解説します[2]。
従業員側のメリット
ブレジャーを取り入れることで、出張先で観光や休息の時間を持つことができ、気分転換や心身のリフレッシュにつながります。
こうした時間がストレスの軽減やモチベーションの向上を促し、仕事とプライベートのバランスを整えやすくなります。
働きながら「自分の時間」も大切にできる点が大きな魅力です。
企業側のメリット
従業員の満足度や働きがいが高まることで、離職率の低下やエンゲージメントの向上が期待できます。
また、柔軟な働き方を推進する姿勢は企業イメージの向上につながり、採用活動でもプラスに働く可能性があります。
さらに、出張と休暇を組み合わせることで、交通費や宿泊費などを効率化できる場合もあり、コスト面のメリットも見逃せません。
地域・行政側のメリット
ビジネス目的で訪れた人が、そのまま観光などに時間を使うことで、地域内での消費が増加し、地元経済への波及効果が見込まれます。
特に観光地を抱える地方では、平日の宿泊需要の拡大やリピーター獲得といった効果が期待されており、地域活性化の一手として導入を進める動きも広がっています。
ブレジャーのデメリットと運用上の課題

多くのメリットがあるブレジャーですが、実際に制度として導入・活用するためには理解しておかなければならない課題もあります。
勤怠管理の煩雑さ、労災への対応や勤務評価の線引きの難しさ、社内ルールの未整備など、企業が円滑に業務を進めるためには対応が不可欠です。
ここでは、ブレジャーを導入する際に直面しやすい代表的な3つの課題について、ひとつずつ見ていきます。
勤怠管理が複雑になりやすい
ブレジャーでは仕事と余暇の境界が曖昧になりがちで、勤務時間の正確な把握が難しくなるケースがあります[2]。
とくにリモートワークと組み合わせた場合、上司や管理者が実際の稼働状況を把握しづらくなるため、管理体制の見直しが求められることもあります。
労災対応や業務評価の線引きが不明確になりやすい
仕事中の出来事か、休暇中の出来事かの判断が難しい場面も想定されます。たとえば、移動中や宿泊中の事故などが発生した際、その責任範囲が不明確だとトラブルにつながる可能性があります。
また、業務成果の評価が不透明になると、公平性への不信感を招くおそれがあり、客観的かつ一貫性のある評価ルールの整備が不可欠です[2]。
社内制度・ガイドラインの整備が不可欠
ブレジャーを安心して活用してもらうためには、社内ルールの明文化が重要です。申請方法、利用条件、対象業務の範囲などをあらかじめ明確にしておかないと、運用面での混乱や不公平感の原因になります[2]。
制度を形骸化させず、社員が安心して利用できる環境を整えることが、導入成功のカギとなります。
ブレジャーを取り入れた企業の実践例

ブレジャーを積極的に取り入れている企業では、柔軟な働き方の推進とあわせて、地域との連携や人材育成といった社会的な価値の創出にも取り組んでいます。
ここでは、日本航空、ユニリーバ・ジャパン、日本マイクロソフトの3社が行っている具体的な事例を紹介します。
日本航空(JAL):出張と休暇を組み合わせた制度で地域連携を促進
日本航空は、2019年5月に出張に休暇を組み合わせるブレジャー制度を導入[3]。従業員は、出張業務の後に現地で休暇を取得し、観光やリフレッシュの時間を確保できるようになりました。
さらに、青森県弘前市、和歌山県みなべ町、香川県三豊市などの地方自治体と連携し、ワーケーションの取り組みも実施[4]。これにより、地域とのつながりを深めるとともに、地方の人材育成や関係人口の拡大にも貢献しています。
ユニリーバ・ジャパン:働く場所と時間の自由が地域とのつながりを生む
ユニリーバ・ジャパンは、2016年に「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」制度を導入し、働く場所や時間の選択を個人に委ねる柔軟な働き方を推進しています[5]。
2019年からは、8つの自治体と提携した「地域 de WAA」を展開。従業員は地域の施設をコワーキングスペースとして利用できるほか、地元イベントや課題解決に関わることで、宿泊費の支援などの優遇を受けられる仕組みを整えました。こうした取り組みが、従業員のウェルビーイング向上と地域への貢献の両立を実現しています。

日本マイクロソフト:ブレジャーを自然な働き方として組み込む
日本マイクロソフトは、「いつでも、どこでも、誰とでもコラボレーションできる環境」を基本方針とし、テレワークを特別な制度ではなく日常的な働き方として定着させています[6]。
場所に縛られずに働ける環境が整備されているため、従業員はブレジャーやワーケーションといった柔軟なスタイルを無理なく活用できるようになりました。これにより、多様な働き方が現実の選択肢として浸透しています。
企業事例からは、ブレジャーが単なる福利厚生にとどまらず、働き方改革や地域連携の一環としても機能していることがわかります。今後、同様の取り組みを通じて、より多くの企業が自社に合った柔軟な働き方のあり方を模索していくと考えられます。
観光庁による取り組みと今後の方向性

テレワークの普及や働き方の選択肢が広がる中、観光庁は「ブレジャー」や「ワーケーション」といった、仕事と休暇を組み合わせる新たな旅のスタイルを積極的に後押ししています。
これらの取り組みは、働き方改革の推進と同時に、観光需要における平準化や地域経済の活性化といった政策目標とも一致しています。
ワーケーション実績と効果を示すデータ
企業側の認知と導入状況
観光庁の調査によると、企業におけるワーケーションの認知度は約8割に達し、テレワークの導入率も38.3%にまで拡大[7]。多様な働き方への対応が進む中で、ブレジャーやワーケーションの導入が選択肢のひとつとして定着しつつあります。
従業員のパフォーマンス向上
NTTデータ経営研究所の調査によれば、ワーケーション実施中は業務パフォーマンスが平均20.7%向上し、その効果は実施後5日間持続することが確認されました[8]。仕事と休暇のバランスが生産性にも良い影響を与えていることがうかがえます。
ストレスの軽減効果
同調査では、ワーケーション期間中に職業性ストレスが37.3%低減したとの結果も示されており、心身の健康面にも良好な効果が期待されています[8]。
地域経済への波及効果
ワーケーション実施者による旅行消費額は年間で約1,580億円と試算されており、とくに平日の観光需要創出に貢献する新たな経済活動の形として注目されています[9]。
観光庁は今後、ブレジャーやワーケーションの一層の普及に向け、企業と地域が連携するモデル事業の展開や、情報発信、受け入れ環境の整備支援などを継続的に進めていく方針です。
これらの施策を通じて、持続可能な形で発展する観光エリアの形成とともに、働き方の柔軟化と地域振興の両立をめざしています。
ブレジャー導入に向けた実践チェックリスト

仕事と余暇を組み合わせる「ブレジャー」を職場で実現するには、事前の準備と明確な運用ルールが欠かせません。
以下のチェックリストをもとに、導入前のポイントを整理しましょう。
1. 出張先の業務環境を確認する
ブレジャー中も業務を円滑に進めるためには、出張先の仕事環境が十分に整っているかをあらかじめ確認しておくことが重要です[10]。
チェック項目
通信環境 | 安定したWi-Fiやモバイルネットワークの利用が可能か |
---|---|
セキュリティ | 業務用デバイスに適した安全なネットワークが確保されているか |
作業スペース | デスクや椅子、コワーキングスペースの利用可否 |
基本設備 | 複合機、電源、照明など、業務に必要な環境が整っているか |
これらの項目を事前にチェックすることで、業務とプライベートを無理なく両立できる環境を確保できます。
2. 勤怠管理と申請プロセスを整える
制度としてブレジャーを導入するには、労務管理の仕組みを明確にし、従業員が安心して利用できる仕組みづくりが欠かせません[11]。
チェック項目
勤怠システムの整備 | リモート環境でも正確に勤務実績を記録できるツールを導入 |
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申請・承認のルール化 | ブレジャー利用に関する事前申請や承認手続きを文書化 |
社内への周知 | 制度内容や利用条件を全社に共有し、理解を促す教育や説明会を実施 |
適切な管理体制が整うことで、制度の利用促進とトラブルの回避が期待できます。
3. 上司・同僚・家族との合意形成
制度があっても、実際に利用するためには周囲の理解と協力が欠かせません。以下のような関係者との調整が必要です。
チェック項目
上司との相談 | 業務に支障が出ないよう、スケジュールや業務内容を事前に共有し、承認を得る |
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チーム内の調整 | 業務の引き継ぎや対応体制を明確にし、同僚の負担が偏らないよう配慮 |
家族との話し合い | 私生活への影響を最小限に抑えるために、家庭内でも理解を得ておく |
こうした合意形成は、ブレジャーを無理なく継続的に運用していくための土台になります。
以上のポイントを参考に、企業の制度や業務特性に合った形でブレジャーを設計することが重要です。形式だけでなく、現場で実際に活用される制度とするためには、社員の声を取り入れた柔軟な制度設計が求められます。
ブレジャーは柔軟な働き方を支える一つの選択肢
ブレジャーは、「ビジネス(Business)」と「余暇(Leisure)」を組み合わせた働き方で、出張先などでの業務とリフレッシュを両立させることを目的としています。テレワークやフレックスタイム制が広がるなか、こうした柔軟なスタイルは、従業員の満足度向上や生産性の維持・向上に寄与するだけでなく、地域経済にも好影響をもたらす可能性があります。
一方で、勤怠管理や労務対応、社内ルールの整備といった面での課題もあるため、導入にあたっては事前の準備と慎重な設計が求められます。
自社の制度や業務環境に照らして、ブレジャーをどのように取り入れるかを検討することが、持続可能で実効性のある導入につながります。柔軟な働き方が日常となりつつある今、ブレジャーはその選択肢のひとつとして、現実的な価値を持っていると言えるのではないでしょうか。

