【Batu Batu】Pulau Tengahの自然を守るエコリゾートで体験するサステナブルツーリズム

南シナ海に浮かぶ小さな島「Pulau Tengah」(プラウ・トゥンガ/中間島)に佇むBatu Batu(バトゥバトゥ)は、自然保護と地域貢献を理念に掲げるエコリゾートです。
美しいビーチやサンゴ礁に囲まれたこの島では、旅行者自身が環境保全に参加できる仕組みが整えられており、「観光が自然を守る力になる」という新しい旅のスタイルを体験できます。
この記事では、Batu Batuの取り組みから、どのようにサステナブルな旅が実現できるのかを解説します。
Batu Batuとはどんなリゾート?

どこまでも澄んだ海、島に息づく豊かな生態系、そして独自の歴史が織りなす空気感により、特別な滞在を提供しています
Pulau Tengahの場所やアクセス方法
シンガポールやクアラルンプールからも陸路でアクセスできるため、都市部からでも比較的気軽に訪れることが可能です。
それでいて観光客の数は制限されており、島全体が静かでプライベート感あふれる空間として保たれています。
エコアイランドリゾートとしての魅力
Batu Batuは、自然を守りながら楽しむ滞在型エコリゾートです。島の資源や生態系を維持するため、施設は自然環境への負荷を最小限に抑える設計で建てられています。
このリゾートの主な取り組みは以下の通りです。
・太陽光エネルギーの活用
・廃棄物の分別管理、プラスチック削減
・地元住民の積極的な雇用による地域経済の活性化
このリゾートに滞在することで、旅行者は快適な滞在を楽しみながらも、「自然と人の共生」を実感できます。
島の歴史的背景
Pulau Tengahは自然の宝庫であるだけでなく、歴史的にもユニークな背景を持つ島です。
その後、テレビ番組の撮影地としても注目を集め、現在では環境保全を重視したリゾート島として生まれ変わっています。
観光で生物多様性を守る仕組み
Batu Batuの大きな特徴のひとつは、「観光で得た収益を環境保全へ還元する」仕組みです。一般的に、観光は自然に負荷を与えることがありますが、Batu Batuではその逆を目指しています。
宿泊費やアクティビティの利用料の一部が、生物多様性を守るためのプロジェクトに直接投資されており、旅行者の滞在そのものが保全活動の一翼を担う仕組みになっているのです。
ウミガメ保護の取り組みと成果

Pulau Tengahは、毎年ウミガメが産卵に訪れる貴重な繁殖地のひとつです。しかし、密漁や生息環境の破壊により、かつてはその数が大きく減少していました。
こうした危機を前に、Batu Batuは2015年に「Turtle Watch Camp」を立ち上げ、保護活動をスタートしました。
このプロジェクトでは、地元の漁師やボランティアの協力を得ながら、卵を安全な孵化場に移し替え、孵化した子ガメを海へと放流する取り組みをしています。
また、旅行者もこの活動に参加できます。孵化場の見学や保護プログラムの支援を通じて、実際に自然保護の現場を体験できるのはBatu Batuならでは。
単に「見て楽しむ」だけでなく、自らの手で未来の海を守る一歩を踏み出せる体験を提供しているのが、Batu Batuの大きな特徴です。
Tengah Island Conservation(TIC)の活動

2019年には、Batu Batuの取り組みをさらに発展させる形で、非営利団体 Tengah Island Conservation(TIC) が設立されました。
TICはPulau Tengah全体の生態系を保護することを目的とし、次のような幅広い活動を展開しています。
- サンゴ礁のモニタリングと修復
健康なサンゴ礁は海の生物多様性を支える基盤。TICは定期的な調査やリストア作業を行い、劣化したサンゴの再生に取り組んでいます。 - 海洋ごみの調査と回収
プラスチックごみや漁具の漂着は、海洋生物に深刻な被害をもたらします。TICはビーチクリーンやダイバーによる海中回収を定期的に実施。 - 地域社会への環境教育
地元の学校やコミュニティを対象にしたワークショップや講座を通じて、次世代への啓発を行っています。子どもたちが自分たちの海を誇りに思い、守りたいと感じられるような教育活動が進められています。
こうした活動はすべて、リゾートの収益や旅行者からの寄付によって支えられています。つまりBatu Batuに滞在すること自体が、サンゴ礁やウミガメ、そしてPulau Tengahの自然全体を守る一助となるのです。
サステナブルなリゾート運営
Batu Batuが他のリゾートと一線を画すのは、環境保全を「特別な活動」ではなく、日常の運営そのものに組み込んでいる点です。建築、廃棄物管理、水やエネルギーの利用、そして地域社会との関わりに至るまで、持続可能性を意識した仕組みが取り入れられています。
環境に配慮した建築とデザイン

リゾートのヴィラや施設は、周囲の自然環境と調和するよう設計されています。建材にはFSC認証を受けた木材や、地元で調達された天然資源を使用。
また、植栽には在来種を中心に採用し、外来種による生態系への影響を防止。建物は低密度で配置されており、島本来の景観や生物多様性を損なわないよう細心の配慮がなされています。
廃棄物・プラスチック削減の実践
Batu Batuは「使い捨てを前提としない」リゾートです。
プラスチック削減のため、以下の取り組みを行っています。
- ペットボトルではなく、リユース可能なガラスボトルで水を提供
- バスアメニティは詰め替え式を採用
- ストローや使い捨てカトラリーを廃止し、再利用可能な素材を使用
館内では徹底した分別回収をし、ガラスや金属はリサイクル、生ゴミはコンポスト化して肥料として再利用。こうした仕組みにより、リゾートが生み出す廃棄物の大幅な削減を実現しています。
水とエネルギーの持続可能な利用

島という限られた資源環境において、水とエネルギーの管理は特に重要です。
エネルギー面では、太陽熱温水器やLED照明を導入し、電力消費を最小限に抑制。自然通風と採光を最大限に取り入れ、冷房機器に頼らない快適な空間づくりを実現しています。
タオルやリネンの交換もゲストの要望時のみ行い、資源消費の削減につなげています。
地元コミュニティへの還元

Batu Batuは、環境だけでなく「人」への還元も大切にしています。スタッフの多くは近隣の町メルシン出身で、リゾートは地域の雇用創出の場となっています。
観光収益が島の外に流出するのではなく、地域社会に還元される仕組みは、持続可能な観光を実現するうえで不可欠です。Batu Batuは、自然と人の両方を守る「共生型リゾート」として、持続可能な未来に貢献しています。
旅行者が参加できる体験プログラム
Batu Batuでの滞在は、ただリゾートで寛ぐだけではありません。
旅行者自身が自然保護に関わり、環境問題への理解を深められる多彩なプログラムが用意されています。こうした体験は、旅そのものをより意義深いものに変えてくれます。
心が変わる旅の体験ができる(Transformational Tourism)

Batu Batuが重視しているのは「Transformational Tourism(心を動かす旅)」という考え方です。
これは単なる娯楽としての観光にとどまらず、自然や地域社会とのつながりを通して、自分自身の価値観や行動が変化するような体験を意味します。
Pulau Tengahの美しい自然に触れながら、私たちが地球市民の一員であることを実感できるのです。
旅行者が「自然を守る行動に自分も関われる」と感じたとき、その体験は心に深く刻まれ、帰国後のライフスタイルにも影響を与えていきます。
ウミガメ孵化場見学やビーチクリーン

リゾート内にはウミガメの孵化場があり、訪問者は保護活動の現場を直接見学できます。孵化したばかりの子ガメが海へ向かう姿を見守る体験は、忘れられない思い出になるでしょう。
また、ビーチクリーン活動も定期的に行われており、宿泊者はスタッフやボランティアと一緒に浜辺の漂着ゴミを回収できます。
こうした体験を通じ、海洋ごみ問題の深刻さを実感できます。
ネストアダプトや寄付、ボランティア活動

より積極的に関わりたい人には、ウミガメの巣を「アダプト(里親)」として支援する仕組みも用意されています。一定額を寄付すると、自分が支援した巣から孵化した子ガメの情報を受け取れる仕組みで、自然とのつながりを一層強く感じられます。
さらに、長期滞在者向けにはボランティアプログラムも実施されています。
旅行が一過性の体験で終わらず、持続的な保全活動に貢献できるのは大きな魅力です。
日常に活かせる環境配慮アクション
Batu Batuでの体験は、単にその場限りの思い出ではなく、日常の暮らしを見直すきっかけにもなります。
リゾートではプラスチックの代わりにリユース可能なガラスボトルを使用し、廃棄物はコンポストやリサイクルに回されています。こうした仕組みは、自分の生活にも応用できます。
たとえば、
- 家庭での生ごみコンポスト化:台所の廃棄物を肥料として循環させることで、都市でも小さな「循環型生活」を実現
- 自然素材の選択:暮らしの中でも竹や木製の道具、再利用可能な素材を選ぶ意識を持つ
- 地域を支える買い物:「地元産」を優先して購入することで、輸送による環境負荷を減らし、地域経済を支援
Pulau Tengahで学んだ環境配慮は「特別なこと」ではなく、暮らしに取り入れられる小さな工夫へと変換できるのです。
旅の学びを日常に落とし込むことこそ、真のサステナブルな行動といえるでしょう。
滞在型リゾートとしての魅力
Batu Batuの魅力は環境保全の取り組みだけではありません。ゲストが心からリラックスし、自然と調和した時間を過ごせるように設計された滞在体験そのものも大きな魅力です。
島の静けさ、南国の美しい景観、そして温かいホスピタリティが、訪れる人に忘れられない思い出を残してくれます。
自然に溶け込むヴィラのデザイン

リゾートには、ビーチフロント、ジャングル、オーシャンビューなど、異なるロケーションに建てられたヴィラが点在しています。いずれも低密度で配置され、島の自然環境に違和感なく溶け込む設計が特徴です。
ヴィラは伝統的なマレー様式を取り入れた木造建築で、床から天井まで届く窓や広いベランダを備え、部屋の中にいても外の景色や風を感じられる造りになっています。
人工的な快適さではなく、自然そのものを贅沢に感じられる空間。夜には波の音やジャングルの虫の声がBGMとなり、都市生活では味わえない静けさが広がります。
ダイビングやスノーケルなどの自然体験

Pulau Tengahの周囲はサンゴ礁に囲まれ、海洋生物の宝庫です。Batu Batuでは、初心者から上級者まで楽しめるダイビングやシュノーケリングが用意されており、色鮮やかな熱帯魚やサンゴの森を間近で観察できます。
また、カヤックやスタンドアップパドルで島を一周したり、熱帯林を散策して野鳥や小動物に出会うなど、海と陸の両方でアクティブな体験が可能です。
子ども向けのネイチャープログラムもあり、家族連れでも楽しめるのが特徴です。環境教育を兼ねたアクティビティは、子どもたちの心に「自然と共生する大切さ」を植え付けるきっかけとなります。
レストランやイベント、家族旅行にも対応

リゾート内のレストランでは、地元食材を活かした料理を楽しめます。
また、Batu Batuは家族旅行やウェディング、社員研修旅行など多様なニーズに対応しています。自然に囲まれた環境は、日常を離れて心を解放するのに最適で、家族の思い出作りや特別なイベントにもぴったりです。
特にウェディングでは、白砂のビーチを舞台にした挙式や、夕暮れ時の海を背景にしたパーティーが可能で、環境に配慮しながらもロマンチックな体験を実現できます。
まとめ
Batu Batuは、自然と人、そして地域社会が調和するサステナブルリゾートです。Pulau Tengahの豊かな生態系を守る取り組みと、環境配慮を徹底した運営が融合し、訪れる人に貴重な体験を提供しています。
滞在中は、ウミガメ保護やビーチクリーン、サンゴ礁観察など、自然と向き合うアクティビティを通じて、島の美しさと儚さを肌で感じることができます。
この島での体験は、観光を超えた“心を動かす旅”として、日常に小さな変化をもたらします。自然との共生を学びながら心身をリフレッシュするこの旅は、旅行者の記憶に深く刻まれるでしょう。


参考文献
