グリーンモビリティが観光を変える | サステナブルな移動がもたらす新たな価値

環境負荷の低減や地域交通の課題解決策として、環境にやさしいグリーンな再生型モビリティが注目を集めています。スローモビリティなど国内外の事例にも触れながら、グリーンモビリティがもたらす価値を紹介していきます。
グリーンモビリティとは?

環境や地域への負荷を抑えながら、持続可能なまちづくりを支える移動手段や仕組みをグリーンモビリティと呼びます。
ガソリン車は、走行時に一定量のCO2を排出します。一方で、グリーンモビリティは、従来の内燃機関車両と比べてCO2排出量や騒音を抑えられる点が特徴です。そのため、交通の利便性向上を図りながら、自然環境や住民の生活環境への影響を低減できる可能性があります。
グリーンモビリティの種類
グリーンモビリティには、以下のような種類があります。
- スローモビリティ
- 再生可能エネルギー×EV、E-バイクなど
- FCV(水素自動車や水素バス)
「スローモビリティ」は、時速20km未満で走行する電動車(EV)です。特に、ラストワンマイル・ファーストワンマイルなどの短い距離での移動を得意とするモビリティです。[1]
バッテリーの電力で動く「EV」「E-バイク」は、従来の電源ではなく再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、グリーンモビリティと位置づけられます。
「FCV」は、水素を燃料にすることで有害な排出ガスを出さない、水素自動車や水素バスです。EVよりも短時間で燃料を補給でき、かつ長距離走行できるというメリットがあります。
グリーンモビリティが観光にもたらす効果

グリーンモビリティは、交通手段が限定されている地域において、新たな移動の選択肢として注目されています。加えて、グリーンモビリティは、観光客にとっての新たな体験価値や、地域経済の活性化ももたらします。
観光課題の解決
交通手段不足の解消にグリーンモビリティは効果的です。グリーンモビリティは騒音や環境負荷が少ないため、地域や自然への負担を考慮しながら新たな交通手段を提供できます。
また、グリーンモビリティは、観光客の行動範囲を広げるのにも効果的です。E-バイクなど気軽に使える交通手段があることで、地域内で複数のスポットに足を運んでもらいやすくなります。
観光体験の質向上
観光客にとっても、グリーンモビリティは単なる移動手段にとどまりません。ゆっくり走行するスローモビリティや、独特な走り心地を体感できるE-バイクなどは、新たな体験価値をもたらします。
このようにグリーンモビリティは、移動時間も価値創造の時間へと変えるなど、観光の質を高める効果もあります。
地域の活性化
以下のようなグリーンモビリティの活用は、観光と地域経済を強く結び付け、活性化をうながします。
- 地域で生産された再生可能エネルギーのモビリティへの活用
(例:地域で生産された再生可能エネルギーでEVを充電するなど) - グリーンモビリティを活用したサービスへの地元住民の雇用
(例:スローモビリティの運転手として、地域の高齢者を雇用するなど) - 観光客と新たな地域資源との接点の創出
(例:大自然でのトレッキングや陶芸体験など体験イベントを訪れる機会が増える)
上記のように観光産業の活性化がうながされると、そこに関わる住民が増加。結果的に住民の地域への誇りや愛着が育ち、若い世代を中心とした地域の人口の定着にもつながると考えられます。
国内外のグリーンモビリティ活用事例
観光における課題解決や、住民の生活の質向上のために、各市町村ではさまざまなグリーンモビリティの実証実験が進められています。中には、実際に導入・運用が始まっている地域もあります。
グリーンモビリティを導入する際は「どのような目的」で「どのグリーンモビリティを選ぶか」が大切です。
島根県大田市|環境と人に優しいスローモビリティ「ぎんざんカート」

島根県大田市にある石見銀山周辺では、車両の通行が制限されている地域もあり、徒歩・自転車での移動が中心です。しかし、上り勾配により、高齢者や障害者などの移動制約者は観光しにくいという課題が発生しています。
課題解決のため、大田市では新たな移動方法として、スローモビリティの導入が進められています。[3]
基本的には歩く体験を楽しんでもらいつつ、疲れたときに使う補助的な役割として活用しています。扉も窓もないスローモビリティからは、世界遺産の豊かな環境が楽しめます。[4]

取り組みの効果は、以下のとおりです。[5]
- 歩きにくい区間を低炭素電動車でサポートすることで、移動負担を軽減。高齢者・子どもにも優しく幅広い層へのユニバーサル観光を実現
- 観光アクセシビリティの改善で、観光客の滞在・周遊時間が増加。地域資源の活用と消費による地域経済の活性化に貢献
- 自動車の利用減少によるCO2削減

結果的に、スローモビリティの導入は、観光の利便性向上にとどまらず、さまざまな効果をもたらしています。滞在時間の延長や地域消費の拡大を促し、石見銀山エリア全体の価値を高める再生型観光の基盤となっています。
栃木県日光市|環境配慮型MaaSサービス「NIKKO MaaS」

栃木県日光市は、日光東照宮で有名な観光地です。しかし、マイカーで訪れる人が7割と多く、渋滞が長年の問題になっていました。[6]

取り組みの効果は、以下のとおりです。
NIKKO MaaSは、環境負荷低減と観光価値向上を両立させ、持続可能な観光地づくりを支えるモデルとして注目されています。今後はMaaSの利用者データを分析し、さらなる観光戦略、脱炭素のまちづくりにつなげることが想定されています。
スペイン・ポルトガル|国境自然公園を巡るエコモビリティ旅行「MOVELETUR」

「MOVELETUR」は、電動モビリティで自然・文化的価値のあるルートを回るというプロジェクトです。スペイン北西部とポルトガルの自然公園を「グリーン」に移動する体験を提供しています。[10]
本プロジェクトの特徴は、グリーンモビリティを単なる移動手段ではなく、観光ルート設計の中心としている点です。
EVやEバイク、Eスクーターなど、複数の電動車両を無料で提供。それぞれの特性に合わせたルートが用意されており、移動そのものを楽しむことが旅の中心となります。
充電ポイントも複数用意されているため、交通手段が電力切れになる心配もありません。
「移動を楽しむ」というコンセプトは、観光客をほかの地域に分散させるアプローチとしても効果的です。そのためMOVELETURプロジェクトは、間接的なオーバーツーリズムの対策としても期待されています。
グリーンモビリティは「新たな観光の価値」をもたらす
グリーンモビリティは、単なる脱炭素のための移動手段ではありません。移動の設計そのものを観光体験の中心にすることで、観光客の行動範囲を広げ、さまざまな地域との接点を生み出します。
結果として、特定の観光地への集中を緩和し、地域全体に消費や価値を循環させる力を持ちます。世界的に「サステナビリティ」への注目が集まる昨今、モビリティを主軸にした新しい観光は今後ますます広がっていくでしょう。
