千年の都で新しい旅を。京都のサステナブルホテルおすすめ7選

近年、観光産業において「サステナブルツーリズム」への関心が高まっています。サステナブルツーリズムとは、環境保護や地域社会への配慮を重視しながら、旅行を楽しむ新しい観光スタイルです。
古都京都でも、伝統文化の保護と環境負荷の軽減を両立させるホテルが続々と登場しています。
本記事では、京都で宿泊できるサステナブルホテルの中から、とくにおすすめの7つの宿泊施設を紹介します。
なぜ今、京都で「サステナブルホテル」が注目されているのか?
古都京都で今、サステナブルホテルへの注目が高まっています。
歴史と伝統を重んじる京都だからこそ、持続可能な観光への取り組みが重要視され、環境に配慮した宿泊施設が数多く誕生しています。
京都は世界的にもサステナブルな町として評価されている
京都は古い文化遺産や美しい自然景観の保護に力を入れており、世界的に見てもサステナブルな町として高く評価されています。具体的な取り組みとしては、条例による建物の高さ規制や屋外広告規制などが挙げられます。[1]
また、1997年12月には、京都で地球温暖化防止京都会議(COP3)が開催され、先進国の温室効果ガス排出削減についての数値目標を定めた「京都議定書」が採択されました。[2]
このように京都は、20年以上前から持続可能な社会の実現に向けた先進的な取り組みを続けており、その結果日本だけでなく世界的に見てもサステナブルな町として知られています。
近年はオーバーツーリズムが問題に
近年の京都では、オーバーツーリズム(観光客の過度な増加により地域住民の生活や自然環境に影響が及ぶ問題)が発生していることから、とくに観光産業でサステナブルな活動を求める動きが高まっています。
2019年5月には、観光地や市バスの混雑、マナー問題解決のために「市民生活と調和した持続可能な観光都市」推進プロジェクトチームが設置されました。[3]
さらに、2020年11月には、持続可能な京都観光を創り上げるための行動基準「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を策定。[3]
こうした流れを受け、宿泊施設でもサステナブルツーリズムを実現するためのさまざまな取り組みが求められています。

京都のおすすめサステナブルホテル7選
京都でサステナブルな宿泊体験を求める旅行者にとって、環境に配慮した宿泊施設選びは欠かせません。
以降では、持続可能な取り組みを積極的に行っている京都のおすすめサステナブルホテル7選を紹介し、それぞれの特徴や取り組みについて解説します。
GOOD NATURE HOTEL KYOTO

GOOD NATURE HOTEL KYOTOは、宿泊者の心地よさを追求しつつ、地球環境にも配慮した宿泊体験を提供するホテルです。天然木を基調にした客室や、オーガニックなアメニティにこだわっています。
世界初、WELL認証・LEED認証の同時取得

GOOD NATURE HOTEL KYOTOは、世界で初めてホテル版評価基準によるWELL認証及びLEED認証を同時に取得したホテルです。[4]
2020年8月、GOOD NATURE HOTEL KYOTOは環境や健康に配慮した建物が認定されるWELL認証*をゴールドランクで取得しました。
また、同年8月に環境に配慮したグリーンビルディングを評価するプログラムLEED認証*もシルバーランクで取得しました。[4]
※WELL認証:人々の健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システム。
※LEED認証:米国グリーンビルディング協会(USGBC)によって開発された、国際的な認証プログラム。
壁面緑化と100%再生エネルギーの使用

GOOD NATURE HOTEL KYOTOの特徴として、日本最大級の緑化された壁面が挙げられます。四条河原町という京都の最も賑やかなエリアの一つに位置しながらも、ゲストが緑と自然に囲まれる空間を用意することで心安らぐ宿泊体験を提供しています。
また、電力は実質的に100%再生可能エネルギーを使用。多大な電力を必要とする宿泊施設だからこそ、可能な限り自然への負担が少なくなるよう、再生可能エネルギーの活用を積極的に推進しています。
食品廃棄物を農業用肥料に

ホテルに併設された複合施設「GOOD NATURE STATION」では、施設から出る食品廃棄物を肥料として活用する取り組みを行っています。
農家と協力して施設内で生じた食品廃棄物を農業用肥料として再生することで、循環型農業の確立に貢献しています。
Ace Hotel Kyoto

Ace Hotel Kyotoは、旧京都中央電話局を利用した「新風館」内にある宿泊施設です。
歴史的建造物を活用していることからサステナブルホテルとして高く評価されており、東洋と西洋の美学が融合した唯一無二の宿泊体験を楽しめます。
サステナブルに生まれ変わる建築

Ace Hotelがある建物「新風館」は、京都市指定・登録文化財である旧京都中央電話局を活用したサステナブルな建築として知られています。
2001年には商業施設として開業。2016年に一時閉館したものの、2020年にはAce Hotel Kyotoやさまざまなショップが入った新しい形で運営を再開しています。
既存の建物を解体せず、形を変えながら活用し続けることで、建設廃棄物の削減と歴史的価値の保全を両立させた模範的な事例となっています。
環境に配慮したアメニティの使用
Ace Hotel Kyotoでは、環境に配慮したアメニティを使用することでサステナブルツーリズムに貢献しています。
竹製歯ブラシや歯磨き粉、コットンセットなどを使用し、従来のプラスチック製品から持続可能な素材への転換を図っています。
また、くしやシェーバーセット、パジャマなどは備え付けではなく、ゲストから要望があった場合のみ提供する方式を採用。提供数量を減らすことでプラスチック製品の使用削減に繋がります。[6]
THE THOUSAND KYOTO

THE THOUSAND KYOTOは、千年先まで続く持続的な心地よさを追求した「千年ホテル」がコンセプトの宿泊施設です。「今だけでなく、何世代先までも心地よく過ごせる場所であり続けたい」という思いで運営されています。
コンセプト通り、文化や自然環境などあらゆる側面でサステナビリティを意識した取り組みが行われています。
京都の伝統や文化を継承している

THE THOUSAND KYOTOは、ゲストが京都の伝統を体感できるプログラムを提供することで、京都の伝統と文化の継承に貢献しています。
主なアクティビティには、地元文化を体験できる「OKUTRIP KYOTO」や京都の知識と伝統を学べる「THE THOUSAND SALON」などがあります。
また、近年は京都三大祭りの一つ、葵祭で使用される「フタバアオイ」が激減していることから、葵を育て奉納する取り組みを実施。伝統行事の存続と自然環境保護の両面で貢献しています。[7]
自然エネルギーや再生可能エネルギーを活用している

THE THOUSAND KYOTOでは、自然エネルギーや再生可能エネルギーの活用にも力を入れています。
当ホテルを代表するアート作品「wind_form」と「大階段デジタルアート」には、実質再生可能エネルギー由来の電力を導入し、芸術表現と環境配慮を両立。[7]
また、建物には京都の美しい山々の風景を表現した緑化を行うほか、太陽光発電をはじめ、京都の豊富な地下水脈を活かした井水活用システムなど、自然エネルギーも積極的に取り入れています。
地域社会とのさまざまな取り組みを行っている
THE THOUSAND KYOTOは、京都の地域コミュニティとともに、以下のようなさまざまな取り組みを行っています。
- 「京都駅周辺を美しくする会」という美化活動への定例参加
- 京都府のワイナリー「丹波ワイン」との共同商品開発
- 洛北のベストツーリズムヴィレッジ「美山町」とタイアップした体験ツアーの実施[7]
宿泊事業者が地域コミュニティと綿密な連携を取ることで、地域の取り組みをより広い人々に知ってもらうきっかけを作っています。
MIMARU SUITES 京都四条

MIMARU SUITES 京都四条は「みんなで泊まるを楽しむホテル」をコンセプトに、家族や仲間と一緒に過ごす旅の楽しさに焦点を当てた宿泊施設です。
人と人とのつながりを大切にするMIMARUらしく、サステナビリティへの取り組みも地域社会や働く人々への配慮を重視したものが多いのが特徴です。
人と働き方の多様性を重視している
MIMARUでは、さまざまな国籍や年齢、経歴のスタッフがもつ個性を尊重しています。また、お互いの夢の実現を応援しながら働ける場所も提供しています。
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を積極的に推進し、その過程を発信することで、社会全体のD&I実現に貢献。D&Iとは“年齢や性別、国籍、学歴、特性、趣味嗜好、宗教などにとらわれない多種多様な人材が、お互いに認め合い、自らの能力を最大限発揮し活躍できること”です。[8]
ゲストと地域を結ぶ体験を提供している
MIMARUでは、世界各地から訪れたゲストが、日本でも安心して快適に過ごせる環境を届けることを目指しています。
多国籍スタッフによる多言語対応や文化的背景に配慮したサービス提供により、ゲストが日本を楽しみ、地域とつながるサポートを提供しています。
梅小路ポテル京都

梅小路ポテル京都は、京都水族館のとなり、梅小路公園沿いにある宿泊施設です。
「京都SDGsパートナー制度」や「食品ロス削減国民運動」への参加など、数多くのサステナブルな取り組みを行っています。
「京都SDGsパートナー制度」の登録企業である

ポテル京都は2024年1月、環境や社会に配慮した取り組みを行う企業として「京都SDGsパートナー制度」に認定されました。
京都SDGsパートナー制度とは、SDGsへの過去・現在の取り組みやこれから行う取り組みを見える化することで、より深い活動への取り組みや連携を促すための制度です。
主にプラスチックの削減や国籍・年齢・性別に関わらず多様な人材が活躍できる職場づくり、地域でのイベント開催などに取り組んでいます。[9]
「食品ロス削減国民運動」へも参加している

梅小路ポテル京都は、農林水産省主催の「食品ロス削減国民運動」へも参加しています。[9]
料理の食べ残しを削減するためにゲストへの啓発活動を行い、持続可能な食事体験の提供に努めています。
連泊時のエコメイク(清掃)を実施している
梅小路ポテル京都では、連泊のゲストにエコメイクの協力を促しています。エコメイクとは、タオル交換やシーツ交換、パジャマ交換などを行わないことにより、洗濯時に利用する洗剤や重油などの削減を進める取り組みです。
2024年4月〜9月には、連泊エコメイク実施率72.2%を達成しました。[9]
鈴

鈴は、京都の町家を活用した宿泊施設です。古くから残る京都の伝統建築を利用することで、他では味わえない京都ならではの宿泊体験を提供しています。
京都の伝統建築を活かした宿泊体験を提供している

鈴では「京町家」と呼ばれる京都の伝統建築を活かした宿泊体験を提供しています。京町家とは、平安時代から続く京都の伝統的な木造建築です。
実際の京都の生活に即した建物に触れることで、千年以上続く京都の生活を肌で体験できる点が鈴の魅力。
「虫籠窓」や「格子戸」「通り庭」「走り庭」といった京町家特有の構造をゲストが直接体験し、京都の伝統や文化を楽しむ機会を提供しています。
環境に配慮したオリジナルアメニティを導入している

2024年10月より、鈴では環境に配慮したオリジナルアメニティを導入しています。[10]
竹や木・再生プラスチックなどの素材を使用したアメニティを提供し、従来のプラスチック製品から持続可能な素材への転換を図っています。
ROKU KYOTO

ROKU KYOTOは、豊かな自然に囲まれた京都洛北にあるラグジュアリーホテルです。
京都の自然や芸術を守る取り組みを数多く行っており、京都の奥深い魅力に浸る唯一無二の体験と非日常のリラクゼーション空間を提供しています。
京都の自然を守るさまざまな取り組みをしている
地域のコミュニティと協力し、自然を守るためのさまざまな活動を行っている点がROKU KYOTOの特徴です。以下のような多岐にわたる環境保全活動を展開しています。
- 紙屋川の清掃や
- 宿泊施設周辺のごみ拾い活動
- 自社農園の運営
- 生ごみを肥料化するリサイクルを実施 [11]
自然豊かな場所に位置する宿泊施設だからこそ、自然を重んじ未来につなげるため、さまざまなサステナブルな取り組みを行っています。
伝統文化や芸術の持続に尽力している

洛北は古くから芸術家たちに愛されたリゾート地です。さまざまな伝統技術や表現が生み出された地にある宿泊施設だからこそ、ROKU KYOTOは伝統文化や芸術の持続にも力を入れています。
京都在住のアーティストと協力したアクティビティの他、客室の茶器に地元・京都のアーティストの作品を採用したり、コンシェルジュによる館内アートツアーも実施したりしています。
働きやすい労働環境を整備している
ROKU KYOTOでは、サステナブルな労働環境の整備にも力を入れています。
外国人の従業員が働きやすいように環境を整えたり、育児支援を行ったりするなど、多様な働き方をサポート。ホテルの専門学校生や調理学校の生徒を積極的に受け入れ、次世代の人材育成にも貢献しています。
京都のサステナブルホテルから学ぶ、持続可能な観光の取り組み
持続可能な観光は、もはや一時的なトレンドではなく、これからの観光産業にとって欠かせない取り組みです。古都京都のサステナブルホテルが実践する環境配慮の活動は、地域文化の保護と新たな観光価値の創造を両立させる優れた事例といえます。
本記事で紹介した事例を参考に、持続可能な観光の実現に向けた第一歩を踏み出しましょう。

参考文献
[3] 京都市:「市民生活との調和を最重要視した持続可能な観光都市」の実現に向けた基本指針と具体的方策について(中間とりまとめ)
[4] Sustainability | GOOD NATURE HOTEL KYOTO
[7] SDGs Actions|THE THOUSAND KYOTO(ザ・サウザンド京都)宿泊・観光に最適な京都駅徒歩2分のラグジュアリーホテル<公式>
[8] 広報誌「厚生労働」2022年9月号 特集2|厚生労働省
[9] 【公式】梅小路ポテル京都(Umekoji Potel KYOTO)|梅小路京都西駅から徒歩5分のホテル
[10] エシカルな京都旅でサステナブルな未来へ! ホテルブランド「Rinn」が 環境に配慮したオリジナルアメニティを導入 | 株式会社レアル