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サステナブルホテル運営とは?サプライチェーンと認証・ラベルの可能性

2026 3/27
リジェネラティブツーリズム
サステナブルツーリズム ニュース 企業事例 取材 各国の事例 持続可能な観光
2026-3-27

ホテル運営を支える食材やアメニティ製品の多くは、国際的なサプライチェーンを経て届けられる。その調達のあり方次第で、遠く離れた森林や農地、そこで働く人々の暮らしに大きな影響を与えることになる。

近年、こうした課題への対応として注目されているのが「サステナブル・ラベル」だ。環境や社会への配慮を第三者機関が認証する仕組みであり、持続可能な調達を実現するための指標として活用されている。

本記事では、FSC認証やレインフォレスト・アライアンス認証を中心に、サステナブル・ラベルの概要とホテル運営への活用方法を解説する。

目次

サステナブルな調達がホテルに求められる理由

ホテルが仕入れる製品は、食材から紙製品、家具、アメニティまで実に幅広く、それらの多くは国際的なサプライチェーンを経て届けられている。そのためホテルの調達判断は、森林や農地などの環境や、生産地で働く人々の暮らしに直結しているといえる。

環境への負荷を減らし、公正な労働環境を支えるためには「何を・どこから・どのように調達するか」を見直すことが欠かせない。

ホテルの裏側にあるサプライチェーンの課題

画像提供:一般社団法人JARTA

ホテルで提供される製品の生産過程では、森林破壊や児童労働といった深刻な社会問題が発生しているケースもある。

たとえば、シーツやタオルなどの綿製品は海外の綿花栽培に依存していることが多く、産地によっては児童労働などの問題が指摘されている。[1]

一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会(以降JSL)の代表理事である山口真奈美氏は「普段使っている製品の原材料がどこから来て、どのような工程を経て私たちの手元に届いているのか。そのストーリーを知ることがサステナビリティの第一歩です」と話す。

観光産業が持続可能であるためには、調達する製品の生産背景を把握し、仕入れのあり方を見直すことが求められているといえる。

企業の調達判断を支える「サステナブル・ラベル」

企業が持続可能な製品を選ぶ際の指標となるのが「サステナブル・ラベル」だ。

JSLの山口真奈美氏は、認証制度について「企業が製造・販売すべき製品かどうかを判断する材料として活用できる」と述べている。

どの製品が環境や社会への配慮を経て作られたものかは、外見だけでは判断が難しい。サステナブル・ラベルは、そうした「見えにくい情報」を可視化する役割を担っており、ホテルのような多品目を調達する事業者にとって、とくに有効な判断基準となる。

世界に広がるサステナブル・ラベル

サステナブル・ラベルは、今や特定の分野にとどまらず、さまざまな産業に広がっている。主な認証制度には以下のようなものがある。[2][3][4][5]

  • FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)認証
    持続可能に管理された森林から作られた木材や製品(紙など)に関する認証制度
  • レインフォレスト・アライアンス(Rainforest Alliance)認証
    持続可能な農業を推進するための包括的な認証制度
  • MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)認証
    持続可能な漁業に関する認証制度
  • ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証
    養殖に関わる環境・社会面の重要な要素を総合的に評価する認証制度
  • GOTS(Global Organic Textile Standard:グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)認証
    オーガニック繊維製品の生産から流通にいたる工程全体の環境・社会基準を定めた認証制度

運営団体はそれぞれ異なるが、目指す方向性は共通だ。

生産から流通にいたるサプライチェーンの透明性を高め、環境や社会への影響を最小限に抑えること——サステナブル・ラベルは、その実現を支える共通の枠組みといえる。

業界を越えた連携の重要性

サステナブル・ラベルの効果を最大限に引き出すには、業界の枠を越えた連携が欠かせない。

JSLの山口氏は「地球は一つなのに、業界ごとに取り組みが分かれているのはもったいない。より広い連携が必要」と指摘する。

ホテルが認証を取得した生産者や供給事業者と積極的に連携すれば、食材・備品・建材など、あらゆる調達の場面でサプライチェーン全体のサステナビリティを高めることができる。個々の認証のつながりが、点ではなく面としての持続可能な仕組みを生み出すのだ。

FSC認証が支える持続可能な森林利用

画像提供:FSCジャパン

FSC認証は、適切に管理された森林から生産された木材であることを証明する、国際的な認証制度だ。森林生態系の保全や、地域社会への配慮を重視しながら、持続可能な林業の実現を目指している。

認証を取得するには、違法伐採の禁止や生物多様性の保護、森林で働く人々の権利尊重など、厳格な基準を満たす必要がある。

つまりFSC認証のマークは、その製品が森林や人に対して責任ある方法で作られたことを示す、信頼性の高い指標といえる。

FSC認証の仕組みや取得プロセスについては、以下の記事をご覧いただきたい。

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認証の有無で森林の状態は大きく変わる

画像提供:一般社団法人JARTA

特定非営利活動法人日本森林管理協議会(以降FSCジャパン)事務局長の西原智昭氏は「認証を取得している森林とそうでない森林では、環境の状態に大きな差があります」と説明する。

見た目には豊かに見える森林でも、生態系が失われているケースは少なくない。FSC認証は、そうした外見だけでは判断しにくい森林の実態を、客観的な基準で評価するための仕組みとして機能している。

ホテル運営で活用できるFSC認証

FSC認証は、ホテル運営のさまざまな場面で活用できる。建築や内装、家具にFSC認証木材を採用することで、森林保全に配慮した施設づくりが可能になる。

またFSC認証の活用範囲は、建材にとどまらない。紙コップやランチョンマット、紙製歯ブラシ、パンフレットといった紙製品にもFSC認証素材は使われている。[6]

画像提供:FSCジャパン

大規模な改修をせずとも、日常的な調達の見直しからサステナブルな運営に踏み出せるのだ。

建築全体でなくても取得できる「プロジェクト認証」

画像提供:FSCジャパン

ホテル全体をFSC認証木材だけで建設することは、コスト面でも調達面でも現実的ではない。そこで活用したいのが「プロジェクト認証」の仕組みだ。[7]

プロジェクト認証は、建築や内装の一部にFSC認証材を使用することで認証を取得できる制度だ。全面的なリノベーションを行わなくても認証を取得できるため、導入のハードルを大きく下げられる。

たとえば、ロビーの床材や客室の家具など、特定の箇所に限定して認証材を採用する場合でも対象となる。

農産物の持続可能性を示すレインフォレスト・アライアンス認証

画像出典:一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会

レインフォレスト・アライアンス認証は、森林保護と持続可能な農業の実現を目的とした国際認証制度だ。コーヒー、カカオ、紅茶といったホテルの朝食やラウンジでも身近な農産物を中心に、幅広い品目で活用されている。

画像提供:レインフォレスト・アライアンス

認証を取得した農園では、森林の過剰な伐採を抑制しながら、農薬使用の適正管理や農業従事者の労働環境改善といった取り組みが求められる。つまり認証マークは、その農産物が環境にも人にも配慮した方法で生産されたことを示す証といえる。

レインフォレスト・アライアンス認証の詳しい仕組みや取得要件については、以下の記事をご覧いただきたい。

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認証農園で見られる効果

画像提供:一般社団法人JARTA

レインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園では、取得していない農園と比べて、さまざまな面での改善傾向が報告されている。[8]

レインフォレスト・アライアンスの調査によると、認証農園では収穫量や利益率の向上に加え、生態系の質や農業従事者の労働環境にも良好な変化が見られたという。

画像提供:レインフォレスト・アライアンス

環境保全と経済的な安定、そして働く人々の権利保護が同時に前進している事実は注目すべき点だ。認証取得が農園にとって「負担」ではなく「持続可能な経営への投資」として機能することが、データからも裏付けられている。

ホテルの食材調達で活用できるレインフォレスト・アライアンス認証

レインフォレスト・アライアンス認証は、ホテルの食材調達と相性が良い。

コーヒーや紅茶はレストランや客室で日常的に提供される農産物であり、認証製品への切り替えは比較的取り組みやすいだろう。特別な設備投資や大規模な業務変更を必要とせず、仕入れ先や商品の選び方を見直すだけで環境への配慮を実践できるのだ。

こうした日々の調達の積み重ねが、遠く離れた生産地の環境と人々の暮らしを支えることにつながる。

ホテル運営でサステナブル・ラベルを活用するメリット

サステナブル・ラベルは、環境への配慮を示すにとどまらず、ホテルのサステナビリティ戦略全体を支えるツールとして機能する。

認証を取得した製品を調達・活用することで、取り組みの信頼性を第三者機関のお墨付きとして対外的に示せるメリットは大きい。

「サステナブルな宿」と自ら発信するだけでは、宿泊客にその実態は伝わりにくい。認証マークという客観的な根拠があることで、ホテルの取り組みをより説得力のある形で伝えられるようになる。

宿泊客にストーリーを伝えられる

サステナブル・ラベルは、環境配慮の証明であると同時に、宿泊客へのコミュニケーションツールでもある。JSLの山口氏は「サステナブル・ラベルは、消費者にストーリーを伝えるためのツールでもある」と話す。

たとえば、朝食で提供するコーヒーがレインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園産のものであれば、その一杯が森林保護や生産者の生活向上につながっていることを宿泊客に伝えられる。

製品の背景にあるストーリーを共有することで、宿泊体験そのものの価値が高まり、ホテルへの共感や愛着へとつながるのだ。

若い世代の共感を得やすい

サステナブル・ラベルへの関心は、若い世代ほど高い傾向がある。[9]

FSCジャパンとJSLが行った調査では、サステナブル・ラベルの認知度は若年層ほど高く、多少価格が高くても認証製品を選ぶ傾向があることが示されている。

画像提供:一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会

旅行においても、透明性や環境配慮を重視する旅行者は近年増加しており、宿泊先を選ぶ際にサステナビリティへの取り組みを判断基準とするケースも珍しくない。

認証製品の採用や取り組みの発信は、価値観を共有できる旅行者との接点を生み出し、ひいてはホテルのファンづくりにもつながるといえる。

持続可能な未来を模索する一歩を踏み出す

サステナビリティは一度の取り組みで完成するものではない。レインフォレスト・アライアンスの一倉千恵子氏は「最初は水や電力の管理から始まり、次に食材などの調達へと広がっていく」と語る。

認証製品は短期的には調達コストが上がる可能性もあるが、長期的には持続可能な生産を支え、未来の地球や社会につながる重要な投資といえる。

大切なのは、ホテルが自分たちの言葉で未来を語り、その物語を従業員や宿泊客など多くのステークホルダーと共有できるかどうかだ。短期的なコスト増加にとらわれるのではなく、この投資を自分たちのブランディングや価値観に、どのように反映させていくのかが問われている。

こうした一歩を多くの事業者が踏み出すことで、未来は少しずつ変わっていくだろう。

参考文献

[1]インド・コットン生産地の児童労働 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)

[2]FSC認証について | Forest Stewardship Council

[3]レインフォレスト・ アライアンス RAINFOREST ALLIANCE INC. | 一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会

[4]MSC認証の概要 | Marine Stewardship Council

[5]GOTS – 日本オーガニックコットン協会

[6]回収原材料の扱い | Forest Stewardship Council

[7]プロジェクト認証 | Forest Stewardship Council

[8]再生農業認証はどのようにビジネスにメリットをもたらしますか? | Rainforest Alliance | 法人向け

[9]5年間で日本におけるFSCマークの認知度が1.5倍に増加 | Forest Stewardship Council




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