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「拡大」の旗を下ろし、等身大の「まちづくり」へ。高松市が描く、“軟着陸”とリジェネラティブな未来

2026 3/03
社会(ヘルス、まちづくり、ジェンダー)
サステナブルツーリズム 四国 持続可能な観光 香川 高松
2026-3-17

かつて、日本の多くの地方都市が「拡大」を夢見ていた。周辺自治体との合併を繰り返し、政令指定都市の規模を目指す「成長」のシナリオである。四国を代表する都市、香川県高松市も例外ではなかった。しかし現在、人口約40万7000人を抱えるこの中核都市は、規模の拡大から「住みやすいまちづくり」へと都市計画の理念を大きく転換させている。

画像出典:第7次高松市総合計画概要版

背景にあるのは、避けられない人口減少と都市の縮小という現実、そして地方都市共通の切実な危機感だ。香川県では、大学進学者の約8割が関西圏や東京など県外へ流出し、地元へ戻るのは多くて3割程度にとどまるという。本州へのアクセスの良さが、皮肉にも若者の流出を加速させているのだ。

この現実を直視した高松市は今、理想主義的な拡大路線から脱却し、現実的な「軟着陸」へと挑んでいる。自らの都市の適正規模を冷静に見極め、無限の経済成長を前提とした競争から、少しずつ降りる準備を始めている。

もはや、都市が生き残るための指標は、単純な経済規模や定住人口の数だけでは測れない。補助金による移住者の奪い合いという「ゼロサムゲーム」から抜け出し、新たに据えられたのは「心の豊かさ」や、地域への誇りである「シビックプライド」といった、目に見えない価値の醸成である。

「歩ける」が繋ぐ、経済と生活

地方都市の多くが「車社会」を前提とする中、高松市の中心市街地は特異な進化を遂げている。海の玄関口である「サンポート高松」には、国際会議場や県立アリーナ、さらには外資系高級ホテルの進出など、MICE(国際会議や展示会等)を牽引する巨大な都市機能が集積している。特筆すべきは、このサンポートエリアと、地元主導で独自の発展を遂げた「総延長距離が日本一長いアーケード商店街」が徒歩圏内でシームレスに接続している点だ。

高松で学会や国際会議が開催されると、ある特徴的な人の流れが生まれる。参加者の多くが、ホテルに用意された公式の懇親会に留まることなく、夜の商店街へと繰り出していくのだ。

国際会議場やホテルから、徒歩圏内に巨大なアーケード商店街が接続しているため、人々は施設内に閉じこもらず、地元の居酒屋や飲食店へと自然に足を運ぶ。その結果、ホテルという巨大資本の中だけで消費が完結するのではなく、街の個人店へとお金が落ちていく。

この「つい歩きたくなる」都市構造が、街全体に経済効果を波及させている。これこそが、高松が目指すウォーカブルシティのひとつの到達点と言える。

商店街の至る所に置かれるベンチ

さらに、この「移動の自由」は新たな滞在層も惹きつけている。車が必須とされる地方都市にあって、高松の中心部は複数路線の公共交通機関が交差しており「車なしでも生活できる」数少ないエリアだ。

中心部にはドロップインで利用できるワークスペースが複数点在しており、デジタルノマドやワーケーション層の受け皿として機能している。駅前でリモートワークをこなし、徒歩で港へ向かい、そのままフェリーで瀬戸内の島々へアクセスする。この流動性の高さこそが、都市部からの移住者や関係人口を呼び込む強力なポテンシャルとなっているのだ。

一方で、歩行空間が拡張され「歩ける街」へと変貌を遂げる裏では、歩行者と自転車の交錯による危険性など、新たな摩擦も生じている。理想の空間づくりが進むほど浮き彫りになる、現場ならではの課題である。

しかし、そうした現実的なジレンマと対峙しながらも、「歩けること」を起点に経済と生活が混ざり合う高松の中心部は、自律的な都市再生のひとつの解を力強く示している。

文化の再生。多様性と尊厳

歩いて楽しめる中心街から港へ向かい、フェリーで瀬戸内の島々へと渡る。近年、高松市が深く関わる「瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)」は、国内外から圧倒的な集客を誇るグローバルな祭典へと成長した。

しかし、この芸術祭が真に提示しているのは、単なる「アートと自然の融合」といった表面的な観光消費ではない。その根底には、地域の記憶と人間の尊厳に深く向き合う「深淵な多様性」の視座がある。

その象徴とも言えるのが、高松港から海を隔てた「大島」である。全国に13あるハンセン病療養所のうち、唯一の離島施設を持つこの島の歴史は重く、長きにわたり隔離と偏見の歴史を歩んできた。入所者が生きた証や島の記憶にアートがそっと寄り添うこの場所は、単なるのどかな観光地ではなく、芸術祭の理念の根幹を成す極めて重要なエリアとなっている。

かつて社会から隔絶されたその場所は、芸術祭を通じて、少しずつ外部との穏やかな接続を取り戻しつつある。高齢化が進む入所者の方々にとって、海を越えて訪れる多様な人々との交流は、社会への窓であると同時に、これまでの歴史を次世代へ語り継ぐ大切な機会となっている。それは決して、消費的な観光ではない。訪れる者がその土地の記憶に触れ、他者への想像力を深める、真の意味での「再生と共生」を考える場として機能しているのである。

一方で、この瀬戸芸を起点として、コミュニティそのものが劇的な再生を遂げた島もある。男木島(おぎじま)だ。かつては高齢化と過疎化の一途を辿っていたこの島では、芸術祭をきっかけに休校していた小中学校や保育所が復活した。現在では島民約100人のうち半数が、都市部からのフルリモートワーカーなど新たな移住者で占められている。高松市役所の担当者によると、この12年間で、島の平均年齢は69歳から61歳へと若返ったという。

限界集落が息を吹き返したこの現象は、行政や現場でまちづくりに関わる者たちの間でも「男木島の奇跡」と呼ばれている。負の歴史を抱える大島での尊厳の回復と、男木島での新たなコミュニティの躍動。瀬戸内の海を舞台にしたこれらの事象は、多様な人々が交わり、地域が本来の生命力を取り戻していく「文化の再生」の確かな萌芽と言えるだろう。

「消費」から「循環」への模索

高松の観光の変遷を辿る上で、屋島(やしま)の軌跡は「再生」という概念の象徴である。現在でこそ、山上には流線型の美しい交流拠点施設「やしまーる」が整備され、多くの人を惹きつけているが、かつては山上へ向かうロープウェイが廃止されて施設の廃墟化が進み、地域の深刻な衰退を経験している。

再生の鍵となったのは、すでにある「本来の価値」の再定義と、アートという新たな文脈の掛け合わせだった。屋島は「夕景百選」と「夜景百選」の両方に選ばれる稀有な立地であり、刻一刻と表情を変える空と海の「時間経過」を楽しむことができる。

「やしまーる」は単なる景勝地の展望台にとどまらず、それ自体が瀬戸内の自然と調和する現代作家による建築物であり、現代アートへのひとつのアクセスポイントとして機能することで、土地の魅力を現代的に引き出している。

こうしたアートを通じた地域の再生は、屋島だけにとどまらない。高松には、讃岐漆芸や庵治石(あじいし)といった古来より息づく伝統的なクラフトマンシップが根付いている。

近年では、そうした伝統技術を継承するだけでなく、庵治石の採掘過程で生まれる産業廃棄物を活用し、新たなアート作品やプロダクトとして甦らせる取り組みも生まれている。新旧のアートが「資源の循環」と結びつきながら形を変えて再生し、まち全体を美しく彩っているのだ。

しかし、こうしたアートや文化の力が多様な人々を強烈に惹きつけるがゆえに、都市としての「受容力の現実」という重い壁が立ちはだかる。その最たる例が、世界的イベントとなった瀬戸内国際芸術祭の期間中に発生するキャパシティオーバーだ。

高松市の担当者によると、市の宿泊施設の収容力は約6000人規模であり、芸術祭のピーク時にはあっという間に上限に達してしまうと言う。ならばホテルを新設すれば解決するかといえば、そう単純ではない。深刻な人手不足に加え、シーツなどを供給するリネン業者の対応能力にも物理的な限界が存在するからだ。

インフラや労働力における「サステナブルな上限」を直視せず、ただプロモーションで人を呼び込み続ければ、いずれ地域社会は破綻する。季節要因やイベント開催に伴い、一時的に観光客が過度に集中するオーバーツーリズムを防ぎながら、いかに滞在の「質」を担保するか。無限の消費から持続可能な循環へ、観光産業そのものの舵取りが問われている。

さらにその先には、自然環境という避けては通れない課題が横たわっている。豊かな瀬戸内の海を活かした「ブルーエコノミー」や、社会全体の脱炭素化、あるいは水資源の多くを他県に依存する高松市にとっての森林・水源涵養問題。これらに対して、市は背伸びをせず「まだ意識が向き始めた段階である」と正直な現在地を認めている。

環境先進都市としての綺麗なストーリーを取り繕うのではなく、これからの「泥臭い課題」として包み隠さず直視する姿勢。そこに、本質的な都市の再生へと向かう確かな覚悟を感じた。

「縦割り」を超えて、共創へ

都市のハード面が整い、文化が再生へと向かう中で、それを支える行政のシステム(OS)自体もまた、アップデートを迫られている。かつての自治体における「官民連携」は、首長と企業トップが握手を交わす包括連携協定の締結式がピークとなり、その後の具体的な協働へと発展しにくいケースも見受けられた。

しかし、人口減少や環境問題といった複雑化する地域課題に対し、高松市は行政側から具体的なフィールドや課題を提示し、ともに知恵を出し合って事業を創り上げる「官民共創」へと舵を切っている。

その象徴として、都内のコワーキングスペースに東京事務所が設置された。これは単なる連絡調整のための出先機関ではない。委託契約ありきの関係ではなく、フラットな目線で課題解決のパートナーとなる企業やスタートアップを探索し、新たな知見を市へ還元させるための戦略拠点なのだ。

しかし、こうした新しい試みは、現場の泥臭い葛藤と常に隣り合わせでもある。人口約40万人という「中核市」の立ち位置は、時に行政機構にジレンマを生む。政令指定都市のように、潤沢な予算で大規模な実証実験を次々と打てるわけではない。かといって、小規模な町村のようにトップダウンで即決・実行できる身軽さもない。庁内の合意形成や縦割りの壁など、その規模感ゆえに直面するリアルな苦悩がそこにはある。

だからこそ、自らの限界や泥臭い現実を隠さずに外部へ開示し、共に乗り越えてくれるパートナーを探す姿勢にこそ、本質的な「共創」の芽が宿るのである。

自律的な「地方都市」のモデルへ

人口減少という抗えない波の中で、地方都市が生き残るための「正解」はどこにあるのか。高松市の現在地を紐解くと、それは決して、無機質な規模の拡大ではないことがわかる。

むしろ、都市の身の丈に合った「縮小」を静かに受け入れ、その中でいかに「人間らしく生きられるか」というWell-being(心の豊かさ)の追求にこそ、次なる時代の活路を見出している。

この現実的な「軟着陸」を支える鍵となるのが、定住人口の奪い合いから脱却した「関係人口の深化」である。ふるさと納税の返礼品目当てといった消費的な繋がりや、一過性の観光客をひたすらに追い求めるフェーズはすでに終わった。

高松が10年後に目指しているのは、都市の中心部にあるコワーキングスペースを拠点に複数拠点を飛び回るノマドワーカーや、地域の泥臭い課題解決に自らのリソースを投じる企業など、多様なプレーヤーたちが交わり、共に街を耕していく「居場所」としての都市である。

だからこそ、外からの人間が単なる「来訪者」として、美しい景色やアートを消費して立ち去る時代もまた、終わりを告げようとしている。その土地の文脈や痛みを読み解き、共に再生の物語を描く「共創者」となれるか。高松市の静かなるパラダイムシフトは、そこを訪れ、関わろうとする私たち自身の「在り方」をも深く問いかけているのである。

取材協力:高松市 政策局




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