JR東日本、インバウンド向け乗り放題パス10日間用発売

JR東日本は、日本に長期滞在する訪日外国人観光客向けに「JR EAST PASS(Tohoku area)」10日間用を発売することを発表しました。値段は大人4万8千円、小人2万4千円で、販売は2025年4月15日から、利用開始が可能となるのは5月15日からです。選んだ日付から連続する10日間有効となります。
利用可能エリアは東北地方を中心に、関東地方のほか新潟県・長野県・静岡県の一部が含まれ、このエリア内のJR東日本の路線(新幹線・特急を含む)が乗り降り自由となります。また、東武鉄道の一部の区間・列車、東京モノレールや伊豆急行線、青い森鉄道線、IGRいわて銀河鉄道線、仙台空港鉄道線の全線も利用可能です。
インバウンド客をターゲットとした背景
コロナ禍で打撃を受けたJR東日本ですが、新幹線の利用者数は回復傾向にあります。2023年の東北新幹線の平均通過人員(人/日)を2019年と比べると、各区間とも概ね90%台前半まで数字を戻しています。
一方で、人口減少や超高齢化社会の到来により、今後、新幹線をはじめとした鉄道の利用者が減少することは避けられません。そこで、インバウンド客をターゲットとし、鉄道を利用してもらう取り組みを強化する方針を示したと捉えることができます。
JR東日本は訪日外国人観光客の東北への誘客について、これまでもDMOや地方自治体と連携し取り組んできたとしたうえで、このきっぷの設定に合わせ、一層力を入れると説明しています。そこで鍵を握るのが「AdventureWeek」と「イーストジャパン・ゴールデンルート~はやぶさライン~」です。
AdventureWeek
「AdventureWeek」は、アドベンチャートラベル商品の磨き上げを目的としたプログラムで、2025年秋ごろに東北エリアでの開催が予定されています。世界最大のアドベンチャートラベル業界団体であるAdventure Travel Trade Associationが定める基準を満たした地域において、同団体が厳選した旅行会社やメディア関係者が、現地でアドベンチャートラベル商品を体験し、地域との商談会などを行い、商品のさらなる磨き上げを目指すプログラムです。
Adventure Week 2025 東北は、海外の旅行会社より12名、メディア関係者3名の参加を想定し、1 週間程度のファムトリップや参加者と地元サプライヤーとの商談会が行われる予定です。このプログラムをもとに、より魅力的なアドベンチャートラベル商品が企画・展開されることでしょう。
イーストジャパン・ゴールデンルート~はやぶさライン~
JR東日本は函館市、JR北海道、東北観光推進機構と連携し、2024年5月に「イーストジャパン・キャンペーン推進協議会」を設立しました。これは 欧米豪市場の訪日外国人旅行者を主なターゲットとし、首都圏から 「仙台・盛岡・八戸・青森・函館」までのルートを「イーストジャパン・ゴール デンルート~はやぶさライン~」と名付け、ブランド化に取り組むプロジェクトです。
インバウンドとサスティナブルツーリズムに資するJR東日本
訪日外国人観光客はしばしば、マナーやオーバーツーリズムの観点から、地元住民にとっては好ましくないとされることもあります。一方で、日本独特の自然や文化を求めて訪れる外国人観光客が大勢いることも事実です。こうした外国人観光客の長期滞在を促進することにより、その地域や文化の理解は一層深まると考えられます。また長期間の滞在は、経済的にも地域へ大きなプラスの効果を与えます。特に、アドベンチャーツーリズムは自然を活かしたツーリズムの形態であり、サスティナブルなツーリズムと言えるでしょう。JR東日本がこうした環境に優しいツーリズムの促進に、どのような役割を果たしていくのか注目が集まります。
参考文献
JR東日本ニュース「東北滞在を長期でお楽しみいただける訪日外国人向け鉄道パスを発売します! ~JR EAST PASS(Tohoku area)10 日用の発売~」