自然・街・世界とつながる。米国カリフォルニアで持続可能性をテーマにしたイベントが目白押し。

世界的に気候変動への関心が高まる中、米国カリフォルニア州を訪れる旅行者たちも例外ではありません。大自然を満喫する国立公園、あるいはテーマパーク巡りやスポーツ観戦など、従来型の観光に加えて、「見る」「学ぶ」「体験する」を通じて持続可能性を実感できるイベントが注目を集め始めています。
今回は、そうした4つのイベントをご紹介します。
自然と食のつながりを体験「Farm to Crag(ファーム・トゥ・クラッグ)」
アウトドア好きの方にぴったりなのが「Farm to Crag」です。これは、登山やロッククライミングなどのアウトドア活動と地元農業を融合させたユニークなイベントです。
食を通じて、自然保護や地域との共生をテーマに、ほぼ毎月のようにイベントが開催されています。5月にはカリフォルニア州のみならず世界的に有名なヨセミテ国立公園近くで2泊3日のキャンプが行われます。
参加者たちは地元農家の方と交流しながら、新鮮な食材を使った食事を楽しみ、ガイド付きのクライミング体験にも参加できます。土地の歴史や環境問題について学ぶワークショップも予定されており、アウトドア活動を通じて「自然とどう向き合うか」を考える貴重な機会になるでしょう。
ロサンゼルスの街を歩こう「CicLAvia(シクラビア)」
「車中心の都市から、人中心の都市へ」をテーマにしたイベント「CicLAvia」は、ロサンゼルスでほぼ月に1回のペースで開催されています。普段は車であふれる幹線道路を一時的に封鎖し、自転車、徒歩、ローラースケートなどで自由に通行できるようにする試みです。
参加は無料かつ自由。イベントによって多少異なりますが、開催時刻は午前10時から午後3時くらいまでのことが殆どです。
環境にやさしい移動手段を推進するだけでなく、地域の飲食店やショップ、アートパフォーマンスなども楽しめるので、まさにローカルな文化と環境意識の融合といえるでしょう。ロサンゼルス訪問中に開催日が合えば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。普段は車の窓を通してしか見えないロサンゼルスを体感するチャンスです。
また、同様のイベントはロサンゼルスだけではなく、全米各地の都市で行われています。コロンビアのボゴタで始まった”Ciclovia”(スペイン語で自転車道路の意味)が起源のため、イベント名に”Ciclo”がつくことが多いですが、より実際に近い”Open Street Festival”と説明されることもあります。それに都市名をつけて検索すればイベントを見つけやすいでしょう(例” Open Street Festival New York”)。
気候変動の脅威に直面したロサンゼルスから始まる「ロサンゼルス・クライメートウィーク」
2009年に始まり、毎年9月にニューヨークで行われる「Climate Week NYC」(クライメートウィークNYC)は、世界中の企業、政府、NPO、若者たちが集い、気候変動への具体的な対策を話し合う国際的なイベントです。現在では全米各地で同様のイベントが開かれるようになりました。
初のロサンゼルス・クライメートウィークは2024年9月に開催されました。皮肉なことに、そのわずか数か月後に史上最悪とも言われる大規模な山火事がロサンゼルス近辺で発生したことはご存知の通りです。
2回目のロサンゼルス・クライメートウィークは災害復旧の努力が続けられるさなかに行われました。コミュニティの健康、持続可能なインフラ、環境修復、そして2028年に迫ったロサンゼルス・オリンピックへ向けた回復力の構築に焦点が当てられました。
トップを切ったのは、初日の6日午前9時に始まったのは、上記で紹介したCicLAviaでした。ダウンタウンの韓国人街から映画の都ハリウッドまで、普段は交通量の多い約7.6㎞の車道が大勢の歩行者と自転車に開放されました。
ダウンタウンに位置しながら豊かな緑と池の景観で知られるエコー・パークでは都市型農業をテーマにした「リジェネラティブ農業の日」が6日に行われました。地元の農家や活動家が集まり、参加者は再生可能な食品の栽培方法と流通システムを学ぶ一日になりました。
そして、さすがはエンターテインメントの本場ロサンゼルスです。カンファレンスや映画上映、環境に配慮したファッションショーやヴィーガン料理のフードフェスなど、楽しい行事も目白押しの1週間でした。
革新都市で未来を考える「サンフランシスコ・クライメートウィーク」
サンフランシスコのクライメートウィークは世界的な環境保護の記念日であるアースデイ(4月22日)を挟んで行われたこともあり、地球環境やエネルギー問題に関するセミナーやエキスポが数多く開催されました。
サンフランシスコは有名な観光都市ですが、最先端テクノロジーの中心地でもあります。シリコンバレーが近くにあり、現在の市内には自動運転タクシーが走り回っています。
常に新しいものやアイデアを取り入れることに積極的な土地柄はクライメートウィークにも反映されます。参加企業やイベントにはAIや最先端の環境技術に関するものも多く見られました。
PG&E、Advanced Energy United、Carbon Direct、Asueneといったエネルギー関連企業のリーダーたちが一堂に会したSFCWエネルギーサミット(23日)もそのひとつ。エネルギーシステム変革の最先端を担う革新的なテクノロジーが紹介されました。
「AIを自然環境の再生にどう役立てるか」をテーマにしたフォーラム(21日)にはGoogleやMetaなどの世界的IT関連企業が多く参画したことで大きな注目を集めました。掲げられた議題は、AIはエネルギー分野にどのような課題と機会をもたらすのか?そしてエネルギー分野がAIの期待に応えるために、政府と企業には何が求められるのか?といったものでした。
まとめ
Farm to Cragで自然と共生する心を育み、CicLAviaで都市のあり方を再発見し、クライメートウィーク各地のイベントで地球規模の課題に向き合う。今回はカリフォルニアでのイベントを紹介しましたが、こうしたサステナビリティを軸にしたイベントや取り組みは、世界中の観光地や都市に広がっています。
気候変動や環境問題がますます身近なテーマとなる中で、旅そのものが「未来への投資」となる。そんな新しい観光の形が生まれようとしているのかもしれません。
